2018年12月16日

グリンチ(原題:The Grinch)

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監督:ヤーロウ・チェイニー、スコット・モシャー
原作:ドクター・スース「いじわるグリンチのクリスマス」
音楽:ダニー・エルフマン
声の出演:ベネディクト・カンバーバッチ
日本語吹替え大泉洋、杏、秋山竜次、横溝菜帆、宮野真守

ひねくれ者のグリンチは人里離れた山の洞窟で、愛犬マックスだけを話し相手に、ひとり侘しく暮らす。買い置きの食料が底を尽き、大っ嫌いなクリスマスで賑わう村に買い出しに行くことに。みんながウキウキしているのが我慢できず、サンタクロースに変装して、村中のクリスマスプレゼントを奪うことを思いつく。
その頃、フーの村に住む少女シンディ・ルーはある願いを叶えるために、秘密の計画を立てていた。そして、クリスマス・イブにシンディはサンタクロースの格好をしたグリンチと出会うのだった。

ひねくれ者の主人公グリンチが人の優しさに触れ、心を開いていく。定番の展開ではあるが、グリンチの生活を快適にしている発明の数々や舞台となるフーの村のカラフルでポップな感じに心がウキウキしてくる。
前半、グリンチは村の人々に意地悪をするが、心に抱える悲しみがにじみ出ているので、嫌いにはなり切れない。初めて、人の優しさにふれたときの戸惑いも伝わってくる。
グリンチを変えることとなるシンディ・ルーには双子の弟がいる。彼らを育てるシングルマザーのドナは忙しい中でも子どもに対してしっかり愛情を示す。これは親として大事なこと。接する時間が短くても、母の深い愛情があるから、シンディ・ルーは人を愛し、赦すことができるのだろう。この気持ちがグリンチを変えた。愛は連鎖していくのだ。(堀)


2018年/アメリカ/カラー/スコープサイズ/ドルビーデジタル/86分
配給:東宝東和
(C) 2018 UNIVERSAL STUDIOS
https://grinch.jp/
★2018年12月14日(金)ロードショー




posted by sakiko at 09:21| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月15日

シシリアン・ゴースト・ストーリー(原題:SICILIAN GHOST STORY)

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監督・脚本:アントニオ・ピアッツァ、ファビオ・グラッサドニア
撮影:ルカ・ビガッツィ
原作:マルコ・マンカッソーラ「白い騎士」
出演:ユリア・イェドリコヴスカ(ルナ)、ガエターノ・フェルナンデス(ジュゼッペ)、コリンヌ・ムサラリ(ロレダーナ)、アンドレア・ファルツォーネ(ニノ)、ビンチェンツォ・アマート(ルナの父親)、サビーネ・ティモテオ(ルナの母親)

1993年、イタリア。シチリアの小さな村で13歳の少年ジュゼッペが姿を消した。同級生のルナは彼に思いを寄せ、手紙を渡して心を伝えていた。幸せに包まれていたのに、何もいわずにいなくなるなんて考えられない。ジュゼッペの家を訪ねても母親は泣くばかり。マフィアの父親が仲間の情報を警察に渡したため、息子のジュゼッペを報復のために誘拐したらしい。
村の大人たちは関わりを怖れてみな口を閉ざし、誰もふれようとしない。ルナは両親の反対に耳を貸さず、たった一人でジュゼッペを探し歩く。

出だしはふたりの小さな恋の物語。ルナ役のユリア・イェドリコヴスカ、ジュゼッペ役のガエターノ・フェルナンデス、どちらもこの映画が初出演。周りをベテランが囲んでいるとはいえ、初めて演技する子どもたちには重い内容の作品です。何の色もついていない俳優のみずみずしさ、相手を思うひたむきさが良い作用をしていました。若いふたりがどんな風に成長していくのか、次の作品が楽しみです。
ジュゼッペに加えられる暴力のシーンに息をつめてしまいましたが、ルナがジュゼッペを探すシーンが幻想的で、気持ちを和らげてくれます。撮影のルカ・ビガッツィを検索しましたら、これまで映像が綺麗だったと思った作品のほとんどを撮影した方でした。元になった誘拐監禁事件は酷い結末を迎えるのですが、映画ではルナという少女が配されて、ジュゼッペばかりでなく何もできなかった人々の魂を救います。(白)


シチリアで起きた誘拐殺害事件に着想を得て作られた幻想的なラブストーリー。突然いなくなった少年を必死に探す少女。現実と幻想世界の狭間に落ちてしまうが、魂の自由を得た少年に救われる。二人の邂逅がアートな雰囲気で神秘的。残酷な結果に目をそむけるのではなく、確かに存在していたと記憶に留めることが何よりも大切なのかもしれない。(堀)

2018年/イタリア/カラー/シネスコ/123分/R15+
配給:ミモザフィルムズ
(C)2017 INDIGO FILM CRISTALDI PICS MACT PRODUCTIONS JPG FILMS VENTURA FILM
http://sicilian-movie.com/
★2018年12月22日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 16:07| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

私は、マリア・カラス(原題:Maria by Callas) 

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監督:トム・ボルフ
朗読:ファニー・アルダン
出演:マリア・カラス、グレース・ケリー、イブ・サン=ローラン、アリストテレス・オナシス

世界的な歌姫として知られるマリア・カラス(1923-1977)。トム・ボルフ監督は3年をかけてマリアの友人を訪ね、これまで目に触れることのなかった多くの手紙や映像の存在を知る。殊にマリア自身による言葉の力強さに感銘を受け、マリアの映像と未完の自叙伝、手紙を中心にこの作品をまとめあげた。浮かび上がるのは率直で自制心に富んだ努力家、歌と人を愛した一人の女性の姿。

マリアの手紙などを朗読しているのは『永遠のマリア・カラス』 (2002)で、晩年のマリアを演じたファニー・アルダン。それまでアーカイブで観・聞きしていたマリアの声とそっくり(2002年の作品を観ていなかった)なので、観ながら「これは誰〜?」と思っていました。さすがにベテランの女優さん、感情もこもっていて本人かと思うほどでした。
マリアは子どものころは強圧的な母、若くして結婚してからは年上の夫のマネージメントで働きづめでした。ようやく心から愛する人に出会ったかと思えば、手ひどく裏切られ、バッシングやスキャンダルにもさらされます。「間違っていた」と戻ってきたオナシスを看取り、復帰を目指していたはずなのに、急死とは残念でなりません。オペラの知識がなくとも、その人生に心を寄せることができるとても濃密な1本です。(白)


過去の公演やインタビュー映像、プライベート映像には自叙伝や友への手紙の朗読を被せて、マリア・カラスを紐解く。若い頃の弾けるような美しさが歳を重ねて豊かさを身につけていくのが一目瞭然。それに伴い、声に艶も感じられるようになる。
オナシスとの出会いと別れ、許しが彼女を支え、成長させた。亡くなる前にオナシスが伝えた言葉は何よりの愛情表現。
バッシングを受けることが多かったが、反論はせず。自らを高めることに意識を向けた生き方は誰にでもできることではない。舞台に立つために最後まで努力を続けた生き様に後悔はなかっただろう。(堀)


私は歌や音楽は好きだけど、オペラやミュージカルはどうも苦手。でも、さすがにマリア・カラスの名前だけは知っていました。でも、スキャンダルばかりが有名で、彼女の歌声を聴いたことはほとんどなかった。この作品で彼女の歌っているところや、歌声を聴き、やはりすごい歌手だったのだと思いました。そして、これまではわがままで、高慢な人なのかと誤解していたのかもしれないとも思いました。やはりこういう芸術家は繊細なのだなと感じ、この作品で遅ればせながら、彼女が生きた時代と人生に思いを馳せることができました(暁)。

2018年/フランス/カラー、白黒/114分
配給:ギャガ
(C)2017 - Elephant Doc - Petit Dragon - Unbeldi Productions - France 3 Cinema
https://gaga.ne.jp/maria-callas/
★2018年12月21日(金)TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマ他全国ロードショー
posted by shiraishi at 15:05| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月14日

宵闇真珠    原題:白色女孩   英題:The White Girl

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監督:クリフトファー・ドイル、ジェニー・シュン
出演:アンジェラ・ユン、オダギリジョー

香港の片隅にたたずむ漁村、珠明村。
透き通るような白い肌の16歳の少女は、太陽を浴びるとやせ細って死んでしまう奇病だとして、父親から昼間は外に出ることを禁じられている。村人たちからは幽霊のようだと疎んじられている。
ある日、幼い頃に亡くなったと聞かされている母親のドレスと、歌声が入ったカセットテープを見つける。村を出ることを夢見て、ミスコンテストのオーディションの時のものだったと知る。母に思いを馳せ、歌をくちずさむ少女。
一方、村を見下ろす丘の上の廃屋に、どこからかともなくやってきた異邦人の男が住みつく。屋上に取り付けた望遠鏡のような特殊カメラで、村の様子を部屋にいながらにして眺めていた男は、神秘的な美少女の存在に気づく。ある月夜、彼は海辺の洞窟にたたずんでいた少女に声をかける。初めて自分の存在を認めてくれた彼に、次第に心を開く少女。
二人が心を通わせるようになった頃、村では大企業と村長の間で開発計画が密かに進められていた。男が住みついた廃屋も目を付けられ、開発計画の渦中に巻き込まれる。そんな折、少女は母親の秘密を知る・・・

『欲望の翼』(91)『恋する惑星』(94)などウォン・カーウァイ監督作品をはじめ、ジム・ジャームッシュ、アレハンドロ・ホドロフスキーといった世界の名匠と組んで、独特の映像を楽しませてくれる撮影監督クリフトファー・ドイルが、公私共にパートナーのジェニー・シュンと組んで放った物語。環境問題を盛り込みながらも、映像はあくまで幻想的。
ロケ地の大澳(たいおう)は、ランタオ島の西に位置する小さな漁村。ランタオ島の東側には香港国際空港やディズニーランドが出来て、橋で九龍半島とも繋がり便利になったけれど、山にはばまれて、大澳は今も辺鄙なところ。
まだ空港の出来る前、1990年代半ばに訪れたことがあります。村の中央を流れる水路の両側に水上家屋が並ぶ独特の光景。当時は、狭い水路を綱で引っ張る渡し船で行き来していたのですが、橋が出来て渡し船はなくなったと聞いていました。『宵闇真珠』に映し出される大澳には、確かに水路を渡る橋が出来ていましたが、水上家屋の並ぶさまはかつてのまま。香港の原点のような風情がいつまでも壊されないことを願うばかりです。(咲)


2017年/香港・マレーシア・日本/広東語・北京語・英語・日本語/97分/カラー/ビスタ
配給:キノフィルムズ/木下グループ
公式サイト:https://yoiyami-shinju.com/
★2018年12月15日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかにて全国順次公開




posted by sakiko at 22:25| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

葡萄畑に帰ろう  英題:The Chair

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監督:エルダル・シェンゲラヤ
出演:ニカ・タヴァゼ、ニネリ・チェンクヴェタゼ、ナタリア・ジュゲリ

ジョージア、国内避難民追い出し省の大臣ギオルギ。肘掛についたボタン一つで操作ができる夢のような椅子を手に入れ、要職の座り心地にご満悦だ。そんな折、首相から避難民対策の思い切った手を打つよう命じられる。力づくで避難民を追い出そうとするが大混乱に陥る。逃げ惑う女性ドナラの美しさに一目惚れし、妻を亡くして独り身のギオルギは彼女を家に連れ帰り、息子ニカの家庭教師にする。同居する義姉マグダは不満げだ。
選挙で、ギオルギの与党が野党連合に大敗。ギオルギは大臣をクビになる。大臣の要職を失ったギオルギだが、ドナラと結婚。ジョージア伝統の結婚式が繰り広げられる。幸福の絶頂にいるギオルギのもとに、財務局から家の明け渡し命令がくる。首相の口利きで不法に入手した家だったのだ。久しぶりに故郷に帰ったギオルギは、母から「あんたの居場所はここ。葡萄畑で働けばいい」と優しく声をかけられる。そうだ、葡萄畑に帰ろう。そんなギオルギのあとを、椅子はどこまでもついてくる・・・

エルダル・シェンゲラヤ監督が、自身の政治家としての経験をもとに描いたユーモアたっぷりの風刺劇。

2017年/ジョージア(グルジア)/ジョージア語/99分/カラー
配給:クレストインターナショナル、ムヴィオラ
後援:在日ジョージア大使館
公式サイト:http://www.moviola.jp/budoubatake/
★2018年12月15日(土)〜岩波ホールほか全国順次ロードショー




posted by sakiko at 11:03| Comment(0) | ジョージア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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