2018年12月23日

いつか家族に(英題:Chronicle of a Blood Merchant)

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監督:ハ・ジョンウ 
原作「血を売る男」余華(河出書房新社)
出演:ハ・ジョンウ、ハ・ジウォン、チョ・ジヌン、ユン・ウネ

1953年、朝鮮戦争終戦直後。現場仕事で生計を立てるサムグァン(ハ・ジョンウ)は、ポップコーン売りの美しい女性オンナン(ハ・ジウォン)に一目ぼれ。オンナンには羽振りのいい恋人がいると知りながら、猛アタックして結婚。3人の息子に恵まれて幸せいっぱいのはずだったが、長男は元カレの子と判明。家族の絆が解けてしまう。そんなとき、長男が脳炎にかかる。

血が繋がっていないとわかった途端、息子に冷たく当たるサムグァン。コミカルに見えるくらい、いい父親全開だった前半との対比が半端ない。付き合っている男性がいることを知りつつ、結婚したのだから覚悟すべき。子どもに罪はない。男としての器の小ささを突きつける。
そんなサムグァンが息子の病を知り、父親としての意識を取り戻す。命懸けで息子を助けようとする姿は気迫に満ちていた。
コミカルからシリアスまで振り幅のあるサムグァンを『1987、ある闘いの真実』のハ・ジョンウが見事に演じきる。妻は『マンハント』のハ・ジウォン(堀)


2015/韓国/韓国語/124分 
配給:ファインフィルムズ
(C) 2015 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & DHUTA. All Rights Reserved
http://www.finefilms.co.jp/kazoku/
★12月22日(土)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋他にてロードショー





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2018年12月16日

家(うち)へ帰ろう    原題:El ultimo traje 英題:The Last Suit

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監督・脚本:パブロ・ソラルス
出演:ミゲル・アンヘル・ソラ、アンヘラ・モリーナ、ナタリア・ベルベケ、フリア・ベールホルド、オルガ・ボラス

ブエノスアイレスで仕立て屋を営んできたアブラハム。88歳となり右足は不自由だ。娘たちは彼を老人ホームに入れることを決め、家も売ってしまった。明日は老人ホームに入るという夜、アブラハムはそっと抜け出し、故郷ポーランドを目指す。戦争中、ユダヤである自分を匿ってくれた親友に、彼のために仕立てたスーツを届けるという約束を果たしにいくのだ。
知人に切符の手配を頼むが、すぐに飛べるのはスペインのマドリッド行き。そこからはフランスを経由してポーランドに列車で行けるという。ところが、パリからはドイツ経由だとわかり、決してドイツの土は踏みたくないアブラハム。ポーランドで無事、親友に会えるのだろうか・・・

ちょっと頑固なアブラハム爺さんの、人生最後の願いを叶える旅。
孫娘とのユダヤらしい駆け引きや、旅先でのハプニングをユーモアを交えながら描いていて、大いに笑わせていただきました。
アブラハムのモデルになったのは、パブロ・ソラルス監督の父方と母方の双方の祖父。特に、父方の祖父はアルゼンチンに来る前のポーランド時代のことを一切語らなかったそうです。ホロコーストを生き抜いたお祖父さまにとって、口にしたくない、あまりに悲惨な時代。
映画の中では、文化人類学者のドイツ人女性が、イディッシュ語でアブラハムに語りかけ、ドイツの土を踏みたくない彼の願いを叶えます。わだかまりが、少し溶ける瞬間。今を生きる私たちは、忌まわしい歴史を忘れることなく、お互いを敬うことが共存の一歩なのだと思います。(咲)


70年前に交わした約束を守るため、主人公はアルゼンチンからポーランドに向かう。老いた病身には行くだけでも辛いが、トラブルも起こる。それでも心優しき人々の助けを受け、友との再会を果たすべく旅を続ける。

ドイツ、ポーランドの国名を発したくない。ドイツの土地に1pたりとも足を踏み入れたくない。ナチスの迫害を受けた人々の悲しみは今なお癒えていないことを知る。そんな主人公がドイツ人に助けられ、ドイツを受け入れたときに未来の可能性を感じた。

冒頭で主人公が子や孫に「老いを受け入れるのは難しいが向き合っていく」『家族には迷惑をかけないで生きていきたい」と語る。これは誰もが思うこと。しかし実現は難しい。(堀)



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SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018で、『ザ・ラスト・ス―ツ(仮題)』のタイトルで上映され、観客賞を受賞。その折に来日したパブロ・ソラルス監督にお話を伺う機会をいただきました。(白・咲)
パブロ・ソラルスインタビュー

スタッフ日記
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018 Q&A 


2017年/アルゼンチン・スペイン/スペイン語他/カラー/スコープサイズ/5.1ch/93分
配給:彩プロ
公式サイト:http://uchi-kaero.ayapro.ne.jp/
★2018年12月22日(土)シネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開







posted by sakiko at 18:36| Comment(0) | アルゼンチン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

グリンチ(原題:The Grinch)

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監督:ヤーロウ・チェイニー、スコット・モシャー
原作:ドクター・スース「いじわるグリンチのクリスマス」
音楽:ダニー・エルフマン
声の出演:ベネディクト・カンバーバッチ
日本語吹替え大泉洋、杏、秋山竜次、横溝菜帆、宮野真守

ひねくれ者のグリンチは人里離れた山の洞窟で、愛犬マックスだけを話し相手に、ひとり侘しく暮らす。買い置きの食料が底を尽き、大っ嫌いなクリスマスで賑わう村に買い出しに行くことに。みんながウキウキしているのが我慢できず、サンタクロースに変装して、村中のクリスマスプレゼントを奪うことを思いつく。
その頃、フーの村に住む少女シンディ・ルーはある願いを叶えるために、秘密の計画を立てていた。そして、クリスマス・イブにシンディはサンタクロースの格好をしたグリンチと出会うのだった。

ひねくれ者の主人公グリンチが人の優しさに触れ、心を開いていく。定番の展開ではあるが、グリンチの生活を快適にしている発明の数々や舞台となるフーの村のカラフルでポップな感じに心がウキウキしてくる。
前半、グリンチは村の人々に意地悪をするが、心に抱える悲しみがにじみ出ているので、嫌いにはなり切れない。初めて、人の優しさにふれたときの戸惑いも伝わってくる。
グリンチを変えることとなるシンディ・ルーには双子の弟がいる。彼らを育てるシングルマザーのドナは忙しい中でも子どもに対してしっかり愛情を示す。これは親として大事なこと。接する時間が短くても、母の深い愛情があるから、シンディ・ルーは人を愛し、赦すことができるのだろう。この気持ちがグリンチを変えた。愛は連鎖していくのだ。(堀)


2018年/アメリカ/カラー/スコープサイズ/ドルビーデジタル/86分
配給:東宝東和
(C) 2018 UNIVERSAL STUDIOS
https://grinch.jp/
★2018年12月14日(金)ロードショー




posted by sakiko at 09:21| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月15日

シシリアン・ゴースト・ストーリー(原題:SICILIAN GHOST STORY)

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監督・脚本:アントニオ・ピアッツァ、ファビオ・グラッサドニア
撮影:ルカ・ビガッツィ
原作:マルコ・マンカッソーラ「白い騎士」
出演:ユリア・イェドリコヴスカ(ルナ)、ガエターノ・フェルナンデス(ジュゼッペ)、コリンヌ・ムサラリ(ロレダーナ)、アンドレア・ファルツォーネ(ニノ)、ビンチェンツォ・アマート(ルナの父親)、サビーネ・ティモテオ(ルナの母親)

1993年、イタリア。シチリアの小さな村で13歳の少年ジュゼッペが姿を消した。同級生のルナは彼に思いを寄せ、手紙を渡して心を伝えていた。幸せに包まれていたのに、何もいわずにいなくなるなんて考えられない。ジュゼッペの家を訪ねても母親は泣くばかり。マフィアの父親が仲間の情報を警察に渡したため、息子のジュゼッペを報復のために誘拐したらしい。
村の大人たちは関わりを怖れてみな口を閉ざし、誰もふれようとしない。ルナは両親の反対に耳を貸さず、たった一人でジュゼッペを探し歩く。

出だしはふたりの小さな恋の物語。ルナ役のユリア・イェドリコヴスカ、ジュゼッペ役のガエターノ・フェルナンデス、どちらもこの映画が初出演。周りをベテランが囲んでいるとはいえ、初めて演技する子どもたちには重い内容の作品です。何の色もついていない俳優のみずみずしさ、相手を思うひたむきさが良い作用をしていました。若いふたりがどんな風に成長していくのか、次の作品が楽しみです。
ジュゼッペに加えられる暴力のシーンに息をつめてしまいましたが、ルナがジュゼッペを探すシーンが幻想的で、気持ちを和らげてくれます。撮影のルカ・ビガッツィを検索しましたら、これまで映像が綺麗だったと思った作品のほとんどを撮影した方でした。元になった誘拐監禁事件は酷い結末を迎えるのですが、映画ではルナという少女が配されて、ジュゼッペばかりでなく何もできなかった人々の魂を救います。(白)


シチリアで起きた誘拐殺害事件に着想を得て作られた幻想的なラブストーリー。突然いなくなった少年を必死に探す少女。現実と幻想世界の狭間に落ちてしまうが、魂の自由を得た少年に救われる。二人の邂逅がアートな雰囲気で神秘的。残酷な結果に目をそむけるのではなく、確かに存在していたと記憶に留めることが何よりも大切なのかもしれない。(堀)

2018年/イタリア/カラー/シネスコ/123分/R15+
配給:ミモザフィルムズ
(C)2017 INDIGO FILM CRISTALDI PICS MACT PRODUCTIONS JPG FILMS VENTURA FILM
http://sicilian-movie.com/
★2018年12月22日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 16:07| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

私は、マリア・カラス(原題:Maria by Callas) 

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監督:トム・ボルフ
朗読:ファニー・アルダン
出演:マリア・カラス、グレース・ケリー、イブ・サン=ローラン、アリストテレス・オナシス

世界的な歌姫として知られるマリア・カラス(1923-1977)。トム・ボルフ監督は3年をかけてマリアの友人を訪ね、これまで目に触れることのなかった多くの手紙や映像の存在を知る。殊にマリア自身による言葉の力強さに感銘を受け、マリアの映像と未完の自叙伝、手紙を中心にこの作品をまとめあげた。浮かび上がるのは率直で自制心に富んだ努力家、歌と人を愛した一人の女性の姿。

マリアの手紙などを朗読しているのは『永遠のマリア・カラス』 (2002)で、晩年のマリアを演じたファニー・アルダン。それまでアーカイブで観・聞きしていたマリアの声とそっくり(2002年の作品を観ていなかった)なので、観ながら「これは誰〜?」と思っていました。さすがにベテランの女優さん、感情もこもっていて本人かと思うほどでした。
マリアは子どものころは強圧的な母、若くして結婚してからは年上の夫のマネージメントで働きづめでした。ようやく心から愛する人に出会ったかと思えば、手ひどく裏切られ、バッシングやスキャンダルにもさらされます。「間違っていた」と戻ってきたオナシスを看取り、復帰を目指していたはずなのに、急死とは残念でなりません。オペラの知識がなくとも、その人生に心を寄せることができるとても濃密な1本です。(白)


過去の公演やインタビュー映像、プライベート映像には自叙伝や友への手紙の朗読を被せて、マリア・カラスを紐解く。若い頃の弾けるような美しさが歳を重ねて豊かさを身につけていくのが一目瞭然。それに伴い、声に艶も感じられるようになる。
オナシスとの出会いと別れ、許しが彼女を支え、成長させた。亡くなる前にオナシスが伝えた言葉は何よりの愛情表現。
バッシングを受けることが多かったが、反論はせず。自らを高めることに意識を向けた生き方は誰にでもできることではない。舞台に立つために最後まで努力を続けた生き様に後悔はなかっただろう。(堀)


私は歌や音楽は好きだけど、オペラやミュージカルはどうも苦手。でも、さすがにマリア・カラスの名前だけは知っていました。でも、スキャンダルばかりが有名で、彼女の歌声を聴いたことはほとんどなかった。この作品で彼女の歌っているところや、歌声を聴き、やはりすごい歌手だったのだと思いました。そして、これまではわがままで、高慢な人なのかと誤解していたのかもしれないとも思いました。やはりこういう芸術家は繊細なのだなと感じ、この作品で遅ればせながら、彼女が生きた時代と人生に思いを馳せることができました(暁)。

2018年/フランス/カラー、白黒/114分
配給:ギャガ
(C)2017 - Elephant Doc - Petit Dragon - Unbeldi Productions - France 3 Cinema
https://gaga.ne.jp/maria-callas/
★2018年12月21日(金)TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマ他全国ロードショー
posted by shiraishi at 15:05| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする