2018年10月19日

世界で一番ゴッホを描いた男 原題 中國梵高 China's Van Goghs

10月20日(土)より、新宿シネマカリテ/伏見ミリオン座他、全国順次ロードショー

本チラシ表『世界で一番ゴッホを描いた男』.jpg
c Century Image Media (China)

監督:ユイ・ハイボー、キキ・ティンチー・ユイ
製作キキ・ティンチー・ユイ
製作総指揮ユイ・ハイボー
撮影ユイ・ハイボー
キャスト
趙小勇(チャオ・シャオヨン)

芸術に人生を捧げた孤高の画家ゴッホ。
そしてゴッホに魅せられ、ゴッホに人生を捧げる男

フィンセント・ファン・ゴッホ。後期印象派を代表する画家ではあるが、生前は不遇な人生を送り、自分の命を削りながら芸術に人生を捧げて芸術の高みを目指した。そんなゴッホに魅せられた男、趙小勇(チャオ・シャオヨン)。
複製画制作で有名な、中国南部、深圳市大芬(ダーフェン)。ここは世界の有名画家の複製画制作が産業として根付いていて、世界最大の「油画村」として知られ、世界市場の6割ものレプリカがこの地で制作されていると言われている。
出稼ぎでこの街にやって来た趙小勇は、独学で油絵を学び、20年もの間ゴッホの複製画を描き続けてきた。独立し、自らの工房を持ち、弟子もいる生活になったが、絵を描くのも、食事も寝るのも全て工房の中。そんな生活の中、ゴッホの複製画なら趙小勇と言われるまでになった。
オランダの画商の信頼も得て、交流を続けるうち、いつしか「本物のゴッホの絵を見たい」と思うようになったが、毎日の締め切りに追われる生活の中、その願いはなかなかかなわない。
しかし、本物の絵を見ればゴッホの絵に対する想いがわかるのではないか、自分のこれからの人生や仕事に役立ち、きっと何かを得られるという思いが勝り、長年の夢だった「本物のゴッホの絵」を見る旅を実行し、ゴッホ美術館があるアムステルダムを訪れた。そして得られたものは。
本物のゴッホの絵を見て衝撃を受けた趙小勇は、「自分は職人か芸術家か」と悩み、何をすべきか自分を見つめ直すようになる。考えた末、長年離れていた故郷の姿を描き始めた。長年培った絵の技から生まれた作品は見事なものだった。ゴッホの複製画に人生を捧げる男と、自身の想いの目覚めを追った感動のドキュメンタリー。

「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017」で、『中国のゴッホ』のタイトルで上映され、監督賞を受賞した作品。映画祭の上映作品の中でも、一際強く印象に残った作品でした。
まずは、1万人もの人が有名画家の複製画の制作に携わっている油画村があるということにびっくり。さすが、中国! 
オランダの画商に招かれてオランダに行ったジャオ・シャオヨン一行が、自分たちの描いた絵がお土産屋にぶらさがっていることに唖然とする場面には、思わず彼らのこれからが心配になってしまいました。監督は、ジャオ・シャオヨンが本物のゴッホの絵に接して、自身の絵心に静かに目覚めるところを捉えていて素晴らしいです。
映画祭での上映後、有名な写真家でもあるハイボー・ユウ監督が登壇。
写真を撮りに大芬に通う内に親交を深めたジャオに私生活部分も撮らせてほしいと依頼。寝室にもカメラをセットして、自分たちは現場から去り、後日、編集したものを見せて、使用していいか承諾をもらった上で映画に使用したそうです。
オランダで本物のゴッホを見て、オリジナル作品を作るようになるとは、監督も想像してなかったそうです。
会場からの「ジャオは今どうしているのでしょう?」との質問には、「ジャオはこの映画で知名度があがって、オリジナル作品も売れるようになって生活が向上しました。もっと自分の作品を描く様になるのでは」と監督。
なお、共同監督のキキ・ティエンチー・ユウは娘さん。制作会社を持ち、上海の学校で教鞭も取っている方。
映画祭の折に撮った監督の写真を、残念ながら保存しそこねてしまいました。知的で温和な監督の姿をここに載せられなくて残念! (咲)

去年「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017」で見損ない、(咲)さんから「良かったよ」と聞き、もう見る機会ないかなと残念に思っていたら、今年の「あいち国際女性映画祭」で上映されると聞き、行ってきた。そこで日本公開されることを知った。こういう生活があるということを、ぜひ、いろいろな人に見てもらいたい、知ってもらいたい。
趙小勇の最後の決断。そして彼の絵の素晴らしさ。模倣の20年はだてではなかった。でも、何が芸術で、何が職人なのか。こんなに技術があってもぎりぎりの生活。都市に暮らしてはいるけど戸籍は田舎のまま(都市戸籍を得られない)。そして娘も、そのために田舎の高校にしか通えない。でも都市で生まれ育った娘は、田舎の先生が言っている言葉が聞き取れず、この学校に通いたくないと言い出す。しかし、そんな娘に学校は卒業しておけと諭す。その理由が後でわかる。娘を学校に通わせることができたけど、自分は子供の頃は貧乏で、中学校も卒業できなかったと吐露。そして、出稼ぎでこの大芬にやってきたと語る。これらのシーンに中国の戸籍のことや、田舎と都市部の差などが浮かび上がる。
彼の確かな腕。今後の「芸術家」としての生活が、より良くなっていけばいいなと思った。もちろん彼だけでなく、この油画村の職人さんたち全体の生活向上も。もしかしたら、この作品はそれに大きく貢献したのではないかと思った(暁)。


【サブD】補正.jpg
c Century Image Media (China)

中国・オランダ合作 2016年
公式サイト: http://chinas-van-goghs-movie.jp/
配給 アーク・フィルムズ/スターキャット 



posted by akemi at 08:34| Comment(0) | 中国・オランダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする