監督:張艾嘉(シルヴィア・チャン)
脚本:張艾嘉(シルヴィア・チャン)、游暁頴(ヨウ・シャオイン)
撮影:李屏宾(リー・ピンビン)
出演
張艾嘉(シルビア・チャン):ユエ・フイイン
田壮壮(ティエン・チュアンチュアン):イン・シアオピン
郎月婷(ラン・ユェティン):ウェイウェイ
吴彦姝(ウー・イエンシュー):ツォン
宋宁峰(ソン・ニンフォン):アダー
劉若英(レネ・リウ):教習所の生徒ワン
耿乐(コン・ラー):生徒の父親
父の遺骨をめぐる騒動を3世代の女性の視点を通して描く
監督は『山中傳奇』(79)、『過ぎゆく時の中で』(88)、『フルムーン・イン・ニューヨーク』(89)、『恋人たちの食卓』(94)など数多くの香港・台湾映画に出演してきた女優張艾嘉(シルヴィア・チャン)。その後、映画製作にも進出し、映画監督・プロデューサーとしても活躍し、監督作としては『君のいた永遠』(99)、『20.30.40の恋』(04)、『念念』(15)などを製作、プロデューサーとしては『美少年の恋』 (98)がある。
最新作『妻の愛、娘の時』(相愛相親)は、母の死をきっかけに、田舎にある父の墓の移動めぐる3世代の女性たちの思いを、シリアスに、時にユーモアを交えて描いた。
撮影は、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督作品や、『春の雪』『空気人形』『長江 愛の詩』などを手掛けた李屏宾(リー・ピンビン)。シルヴィア・チャン演じるヒロインの夫役は、中国映画界第5世代監督の田壮壮(ティエン・チュアンチュアン)。シルヴィア・チャンが田壮壮監督の『呉清源 極みの棋譜』(07)に出演した時に知り合い、今回の夫役にピッタリと出演要請に至ったという。
ストーリー
母を看取ったフイイン(シルヴィア・チャン)が田舎にある父親の墓から父の遺骨を自宅のそばに移し、母親と一緒に埋葬しようと思い、夫や娘と共に父の故郷を久しぶりに訪れるが、父の最初の妻ツォンや村人に抵抗され大きな波紋を巻き起こしてゆく。数多くの香港、台湾映画に出演してきた女優シルヴィア・チャンが監督・主演を兼ね、現代の中国を舞台に、最初の妻ツォン、主人公フイイン、フイインの娘ウェイウェイ、3世代の女性の想いを描く。
田舎で夫の帰郷を待ち続けた最初の妻ツォンは田舎の家で一人暮らしをしている。
「母の遺言」と主張し、父の遺骨を母の元に埋葬したいフイインは、自分の母こそが本妻だと証明するために母の結婚証明書を取り寄せようとするが、役所の移転で書類がみつからずうまくいかない。TV局に勤める娘は自分の人生の選択に迷いつつ、強引な母親の行動に反発。
教師のフイインは定年間近。学校にもこの騒動が伝わり噂になったりして、思い通りにいかないフイインはイライラを募らせていく。そんな妻を静かに見守る夫シアオピンは、フイインのために定年祝いのメッセージカードを娘と買いに行ったりして陰から妻を支えようとするのだが、妻は勤め先の自動車教習所の生徒ワンさんとの仲を疑う。
ウェイウェイはミュージシャンのボーイフレンド、アダーから北京に一緒に行こうと言われ迷っていた。そんな時、彼女が働いているテレビ局が、この「お墓をめぐるトラブル」に注目し取材をしようとする。ウェイウェイは、ツォンのところへ通い、映像に撮り、TV局の番組に仕立てようとする。あしげく通い取材を進めるうち、ふたりは次第に打ち解けていく。
夫婦、親子、都市対田舎の対立、家族の歴史をユーモア込めて描く。最後は人情、人の心の変化を愛情込めて描き、心にしみる物語になった。また、古くから置かれてきた女性の立場が浮かび上がってくる。
フイイン、ウェイウェイ、ツォン。3人の女性たちの大切に想う人への気持ちがぶつかりあう中、最後に下した結論に観る人たちはホッとし心癒される。人は捨てたものでないと思わせてくれた。
早いテンポで話は進むが、音楽が大きな役割を果たしている。こういう土くさい物語なのに、中に出てくる音楽はロック。ウェイウェイの彼アダーがライブで歌っているのは、BEYOND(香港)の「海闊天空」(遥かなる夢に)。墓をめぐって村人たちと対峙するシーンでは崔健の「花房姑娘」がバックに流れる。
主人公が必死であればあるほどコミカルさが際立ち、融通の聞かないお役所仕事やTV局に対する皮肉も効いていて、シルヴィア・チャンうまい!と思った。
田壮壮監督は味わい深い包容力ある演技を披露しているし、アダーも田舎のお婆ちゃんに優しく接していて、女たちを支える男たちがいい味出している。
東京フィルメックス2017で上映され、シルヴィア・チャンも来日した(暁)。
2017/中国台湾合作/中国語/カラー/2.35:1/DCP/121分
日本語字幕:鈴木真理子 配給:マジックアワー
公式サイト: http://www.magichour.co.jp/souai