http://zounoie.com/theater/?id=okujirasama
NY在住女性監督が見つめる、世界の分断とその先の未来
監督 佐々木 芽生(ささき めぐみ)
音楽 デヴィッド・マズリン
プロデューサー佐々木芽生
エグゼクティブプロデューサー真木太郎 飯田雅裕
撮影 折笠貴
主な出演者たち
太地町の捕鯨漁師たち
三軒一高 太地町町長
中平敦 日本世直し会会長
リック・オバリー イルカの元調教師/保護活動家
スコット・ウエスト シーシェパード代表
ジェイ・アラバスター ジャーナリスト・元AP通信記者
つつましい生活をしながら、世界屈指の現代アート作品を集め続けた夫婦を描いた『ハーブ&ドロシー』の佐々木芽生(めぐみ)監督が、この作品の後、6年の歳月をかけて「捕鯨論争」に挑んだ。その理由は『ザ・コーヴ』が紀伊半島南部にある太地町のイルカの追い込み漁を一方的に非難した作品だったのに対し、日本人の考え方を世界に伝える映画を作りたいと思ったことでした。
和歌山県太地町。この町のイルカの追い込み漁を批判した『ザ・コーヴ』がアカデミー賞を受賞して以来、この人口約3000人の小さな漁師町は世界的論争に巻き込まれてしまった。「くじらの町」として400年の歴史を持つ「誇り」は、シーシェパードを中心とした世界中の活動家たちから集中非難の的となり、ヒートアップする中の2010年秋、佐々木監督は太地町を訪れる。
そこでカメラは、「伝統である捕鯨を守りたい日本人漁師とそれを許さない外国人 」 という単純な対立ではなく、賛否に縛られない多様な意見を捉えていく。 歴史・宗教・イデオロギーと、相容れない他者との共存は果たして可能なのか? いろいろな立場で太地町に集まる人々の姿を通して、それぞれの考え方をすくい上げる。排除ではなく、共生する道をさぐる作品になっている。
『ザ・コーヴ』を観た時、あまりに一方的な作品で、アジアと欧米諸国の食文化の違いや、他者の嗜好を認めない、自分たちの思想や嗜好を押し付ける作品だと思った。佐々木監督もそれを感じたのだろう。前作品『ハーブ&ドロシー』のあと、次は『ザ・コーヴ』に対し、日本の漁師の思いを表明した作品を作りたいと語っていた。その作品、いつ形になるんだろうと見守っていたが、6年かかってできてきた。
『ザ・コーヴ』は、言語の問題で、意見を戦わせたり、コミュニケーションが取れないことも話がこじれてしまった原因と感じていたけど、佐々木監督はアメリカ在住の監督らしく、日本の漁師たちの意見だけでなく、シーシェパードのメンバーの意見も取り付ける。どっちの味方なんだという人もいるけど、もともと監督の思いは共生にあるわけだから、この形になっていったのだろう。2015年に公開された八木景子監督の『ビハインド・ザ・コーヴ〜捕鯨問題の謎に迫る〜』も、同じように『ザ・コーヴ』に対して、いてもたってもいられない気持ちから出発した作品だったけど、二人の日本の女性監督たちが漁師たちの思いを世界に伝えたいという思いから作った作品に敬意を表したい(暁)。