2018年11月25日
チェコ・スワン(原題:Czech Swan)
監督:アレクサドラ・テルピンスカ
チェコの農村に暮らすシニアの女性たち。一仕事終えると、おやつやお酒を持ち寄っては盛大に食べ、飲み、お喋りをして笑いあう。そんな彼女たちのもう一つの楽しみはときどき大勢の前で披露するダンス。このところマンネリになっているので、新しい出し物を考えている。一度は踊ってみたいのは「白鳥の湖」。自分たちにできるのか?と訝りながらも高名な振付師に相談の電話を入れた。みんながそんなに真剣ならば、とプロのバレリーナ、マルケタを指導者として紹介される。
田舎のおばちゃんたちが、憧れのスワンになるべく挑戦するドキュメンタリー。孫娘のようなプリマの指導で、彼女の2倍は体重のありそうなスワン予備軍がダンスのレッスンに励みます。これまでのダンスは民族衣装を着て、ゆったりと踊るシンプルなもの。まったく違うクラシックバレエは無謀だと思うものの、年は取っても好奇心旺盛、楽しむこと優先の彼女たちは意に介しません。いつしかマルケタも親戚のおばちゃんやお婆ちゃんに対するように、親密になってゆきます。52分の中篇。はるか遠くのチェコの美しい風景や、可愛い民族衣装などもお楽しみください。(白)
2015年/ポーランド、チェコ/カラー/シネスコ/52分
配給:コピアポア・フィルム
http://www.czechswan.jp/
★2018年11月24日(土)〜12月7日(金)
劇 場:東京都写真美術館ホール
休映日:11月26日(月)、12月1日(土)、12月3日(月)
上映時間:10:20/11:40
2017年11月21日
プラハのモーツァルト 誘惑のマスカレード (原題:Interlude in Prague)
監督:ジョン・スティーブンソン
製作:ヒュー・ペナルット・ジョーンズ,ハンナ・リーダー
製作総指揮:サイモン・モーズリー,マシュー・スティルマン
出演:アナイリン・バーナード,モーフィッド・クラーク,ジェームズ・ピュアフォイ 他
1787年、プラハはオペラ「フィガロの結婚」の話題で持ちきりだった。上流階級の名士たちは、モーツァルトをプラハに招き、新作を作曲させようと決める。その頃、モーツァルトは息子を亡くし失意のどん底にあり、喜んでプラハにやってきた。「フィガロの結婚」のリハーサルと新作オペラの作曲にいそしむモーツァルト。やがて、彼は、『フィガロの結婚』のケルビーノ役に抜擢された若手オペラ歌手スザンナと出会い、魅了される。一方、スザンナもモーツァルトが妻帯者と知りながら、その天才ぶりに引き付けられずにはいられなかった。しかし、オペラのパトロンであり、猟色家との噂のあるサロカ男爵もまた、スザンナを狙っていた--
クラシック音楽に興味の無いひとでもモーツァルトの名前くらいは知っている。神童で天才だった音楽家モーツァルトに焦点を当てた『アマデウス』以降の久々に制作された本格的モーツァルト映画。プラハを訪れたモーツァルトが、その地でオペラ「ドン・ジョヴァンニ」を作曲したという史実があり、猟色家ドン・ジョヴァンニを主人公にしたオペラ創作の背景に、モーツァルト自身を巻き込んだ三角関係があったとする独創的な作品…実際には三角関係は無いけれども、モーツァルトの人となりが伝わってくる。ほんと、あんなに精魂こめて作曲やら演奏活動をしていたら過労死するのも仕方ない…天才は色んな目にも遭うし短命なんですね、、 私、実は音楽一家に育っていて、3歳から15歳の高校受験までの12年間はクラシックピアノを習っていて、将来は音楽の先生になるんだとばかり思っていたのに、どこでどう間違ったのか(笑) …モーツァルト先生の、ゆいいつトルコ行進曲は暗譜してるので、しばらくぶりに弾いてみたくなった。 (千)
(C)TRIO IN PRAGUE 2016
2016年/チェコ・イギリス/103min. 配給:熱帯美術館
公式: http://mozart-movie.jp/
★2017年12月2日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
2017年08月06日
ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦 原題:Anthropoid
監督・脚本:ショーン・エリス
出演:キリアン・マーフィ、ジェイミー・ドーナン、ハリー・ロイド、 シャルロット・ルボン、アンナ・ガイスレロヴァー
第二次世界大戦中、チェコスロヴァキアを統治していたナチスの親衛隊大将ラインハルト・ハイドリヒ。
本作は、ヒトラー、ヒムラーに次ぐナチス第三の男ハイドリヒ暗殺の史実の影で暗躍した若き英雄たちの物語。
1941年12月、大英帝国政府とロンドンのチェコスロヴァキア亡命政府の指令を受け、ヨゼフ・ガブチークとヤン・クビシュの2人の軍人がパラシュートでチェコに降り立つ。森を彷徨い、プラハのレジスタンス仲間のもとにたどり着く。2人からハイドリヒ暗殺作戦「エンスラポイド(類人猿)作戦」を明かされたプラハの抵抗組織の人々の中には、係わったことが知られると、家族の身も危なくなると反対する者もいた。
やがて、ハイドリヒが次の任地に向かうらしいことがわかり、ロンドンから暗殺決行の指令がくだる。1942年5月27日、ヨゼフとヤンは、ついにハイドリヒを狙撃するが、ナチスは想像を絶する報復に出る・・・
潜伏先の隠れ家でお手伝いとして働いていた可憐な娘マリーと恋に落ち、結婚までしたヤン。無謀な暗殺作戦に反対するレジスタンス仲間もいたし、暗殺決行の指令とは別に、イギリスからはもう一通、作戦中止の伝言も届いていたそうです。
ヨゼフやヤンだけでなく抵抗組織の人たちは、作戦決行の日、自決用の青酸カリを手に家を出ています。教会にたてこもって、ナチスの報復に抵抗しますが、悲惨な最期を迎えます。自分を犠牲にしてでも、残虐なナチスの権力者を倒したいという思いに胸を打たれました。そんな勇気ある人たちの行動も虚しく、その後のナチスの血の報復命令で、1万人以上の市民が犠牲になったそうです。
プラハに旅した時、地図をみていて王宮と反対側の川沿いにユダヤ人墓地を見つけて行ってみました。ユダヤ人が多く住んでいた地区だったらしく、シナゴーグの壁一面にナチスの犠牲になったユダヤ人のお名前が記されていました。ドイツやオランダ、フランス、ポーランドだけでなく、チェコでも多くのユダヤ人が犠牲になったことを知りました。
プラハというと、「プラハの春」で、ソ連軍によって多くの市民が犠牲になったことがまず思い浮かびますが、ナチスもこの町に暗い歴史を刻んだのですね。それが、こんな出来事だったとは・・・ (咲)
2016年/チェコ・イギリス・フランス/ 120分/5.1ch/シネスコ
配給:アンプラグド
公式サイト:http://shoot-heydrich.com/
★2017年8月12日(土)新宿武蔵野館ほか全国順次公開
2017年01月15日
太陽の下で 真実の北朝鮮 原題:V paprscich slunce 英題:UNDER THE SUN
監督・脚本ヴィタリー・マンスキー
出演リ・ジンミ
北朝鮮の平壌で模範労働者の両親と共に暮らす8歳の少女リ・ジンミを、ロシア出身のドキュメンタリー映画の巨匠ヴィタリー・マンスキー監督が1年にわたって密着取材した作品。
冒頭、「北朝鮮は朝日が一番早く昇る地球の東にある美しい国」と紹介するジンミ。
授業風景、友人との会話、舞踊の練習風景、家での生活などが映し出されていく。
金日成の生誕記念「太陽節」で舞踊を披露する朝鮮少年団にジンミが入団することが決まる。両親が職場で全職員からお祝いを受ける場面を撮影する段になり、父親はジャーナリストなのに、縫製工場のエンジニアに仕立てられていることを知る。母親もまた、乳製品工場の職員を演じさせられている・・・
ベールに包まれた北朝鮮の庶民の暮らしを伝えたいと、撮影許可を得るまで2年。ようやく密着取材を始めたものの、当局の深い介入を感じた監督は、撮影前から密かにカメラに電源を入れることで、当局が理想の家族を演出した実態を映し出すことに成功したとのこと。
このことて思い出したのが、『シネマパラダイス★ピョンヤン』(2012年 / シンガポール、監督:ジェイムス・ロン、リン・リー )のことでした。
やっと北朝鮮当局から撮影許可を獲得した時の条件は二つ。
1.外出する際は、必ず案内員が同行する。
2.撮影したものは、その日毎に検閲に出す。
まさに、当局のスタンスは本作の監督が経験したのと同じ。その監視体制をいかに突破したものを撮るかが、どちらの監督も狙ったことでした。
一糸乱れぬ舞踊の様子や、金日成像に深々と礼をする人々の姿は、これまでにも観たことのある光景ですが、今回、印象に残ったのは、故障したトロリーバスを皆で黙々と引っ張る様子。従順な庶民の姿。でも、実際、胸の内はどうなのでしょう。
ジンミの教室で、敬愛する首領金日成元帥様が、日本と日本人の手下を倒した話が語られます。敵を倒したところで大きな拍手をと、前もって指示が出ます。やらせも問題だけど、この手の話を小さい時から聞かされ続けたら、日本もその協力者(韓国?)も、悪者だと心に植えつけられてしまうのも仕方ないなぁと。ジンミは、どんな女性に成長するのでししょう。10年後、20年後のジンミが知りたいと思いました。(咲)
2015年/チェコ・ロシア・ドイツ・ラトビア・北朝鮮/110分/カラー
配給:ハーク
公式サイト:http://www.taiyouno-shitade.com
★2017年1月21日(土)シネマート新宿ほか全国ロードショー
2016年11月20日
ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち 原題:Nicky's Family
監督・脚本・製作:マテイ・ミナーチュ
製作・脚本:パトリック・パッシュ
音楽:ヤヌシュ・ストクロサ
出演:ニコラス・ウィントン、ヴェラ・ギッシング、アリス・マスターズ、ベン・アベレス、クラーラ・イソヴァー、エリ・ヴィーゼル、ダライ・ラマ14世
ナレーション:ジョー・シュレシンジャー
ナチスの迫害から669人の子どもたちを救ったニコラス・ウィントンの物語。
1938年、第二次大戦開戦前夜のチェコスロヴァキア。ナチス・ドイツによる迫害の危機が迫り、イギリスのビジネスマン、ニコラス・ウィントンが中心となって、ユダヤ人の子どもたちを安全な国に疎開させる<キンダートランスポート>の活動を始める。だが、多くの国が協力を拒否し、唯一子どもたちの入国を受け入れたのはニコラスの母国イギリスだけだった。ニコラスはイギリスで里親を探し、書類を偽造して、子どもたちを次々と列車で出国させるが、1939年9月1日の第二次世界大戦勃発によって中止を余儀なくされてしまう。彼が救った669人の子どもたちはホロコーストを生き延び、各国でさまざまな職に就き、その子孫はいまや約6000人におよぶ。
ナレーションを務めたジョー・シュレシンジャーも、ウィントンに助けられた子どもたちの一人。
多くの子どもたちを救ったニコラス・ウィントンですが、彼はそのことを家族にさえ一切話していませんでした。本人は偉業を成し遂げたという意識はなく、それよりも受け入れ先の里親も決まっていたのに、戦争勃発で救えなかった子どもたちのことを思うと胸が痛み、とても口に出せなかったようです。
50年後の1988年、ウィントンの奥様が屋根裏部屋で当時のことを克明に記録した一冊のスクラップブックを見つけたことから、ウィントンの偉業が世に知らされ、ウィントンに救われた当時の子どもたちとの再会が実現します。
感心したのは、ウィントンが一人一人の記録をきちんと整理し、戦争が終わった後、親子が再会できるようにしていたことです。
ニコラス・ウィントンは、2015年7月1日、子どもや孫たちに囲まれながら106歳で亡くなられました。この映画をどんな思いでご覧になったのでしょう。(咲)
2011年/チェコ+スロヴァキア合作/101分/英語/カラー&BW/1:1.85ビスタ
後援: チェコ共和国大使館、チェコ・センター、スロヴァキア共和国大使館
配給:エデン+ポニーキャニオン
公式サイト:http://www.nicholaswinton.jp
★2016年11月26日(土)からYEBISU GARDEN CINEMAほか全国で順次公開