2015年10月21日

シーヴァス 王子さまになりたかった少年と負け犬だった闘犬の物語   原題:Sivas

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監督・脚本:カーン・ミュジデジ
出演:ドアン・イズジ、ムターリップ・ミュジデジ、オカン・アヴジュ、バーヌ・フォトジャン、ハサン・ヤズルタシュ、ハサン・オズデミル

トルコ東部アナトリア高原の小さな村。11歳のアスランは小柄で、クラスの中でも何かとのけ者扱い。鬼ごっこで鬼になったアスランは、目をつむって数えている間に置いてきぼりにされてしまう。
ある日、4月23日の子どもの日に上演する「白雪姫」の衣装が届く。白雪姫は、憧れの美少女アイシェ。アスランは王子様を演じたい。でも、先生は村長の息子オスマンに迷うことなく王子様を指名する。教師宅を訪ねて、「王子になりたい」と言うが、取り合ってくれない。
村に闘犬の一団がやってくる。村長の息子オスマンの闘犬ボゾと闘って負けた犬シーヴァスが血だらけで息絶え絶えになる。アスランはシーヴァスを家に連れ帰り手厚く介護する。
学校では「白雪姫」の練習が進んでいるが、小人役では面白くないアスランは、学校に行かず、シーヴァスと過ごす日々だ。やがて、オスマンの闘犬ボゾとシーヴァスの再対決の日が訪れる・・・

村長の息子が王子役をもらうという理不尽。世の中、権力がものをいうことを象徴しているようでした。それに対抗しようとするアスラン。チビで何かとのけ者にされていても、なんとか思っていることを伝えようとする強い心の持ち主のアスラン。強権に黙っていてはいけないことを教えてくれます。そして、負けてよれよれになったシーヴァスを助ける姿からは、弱い者に手を差し伸べる慈悲の心を学びました。
映画の最後に2012年にこの世を去った吟遊詩人ネシェット・エルタシュの歌「悪いのは私だ」が流れます。彼に捧ぐと映画の最後にありました。来日した監督にお聞きしたら、「私がこの映画を彼に捧げたのではなく、映画そのものがネシェット・エルタシュのものなのです」との答えがかえってきました。もう一度映画を観て、詩の意味をじゅっくり噛みしめてみたいと思います。(咲)

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カーン・ミュジデジ監督インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2015/sivas/index.html

ユーロスペース公開初日・2日目 10月24日(土)、25日(日)
ハズレなし! ご鑑賞御礼くじ引き大開催!
特等 成田・関空⇔イスタンブール ペア航空券1組様
http://sivas.jp/campaign.html


配給:ヘブンキャンウェイト(第一回配給作品)
2014年/トルコ・ドイツ合作映画/トルコ語/ 97分
2014年/トルコ・ドイツ合作/トルコ語/97分/1:2.35/DCP
配給:株式会社ヘブンキャンウェイト
公式サイト:http://sivas.jp
★2015年10月24日よりユーロスペースほか全国にて公開
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2015年07月05日

サイの季節    英題: Rhino Season 原題:Fasle Kargardanha.

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製作・監督・脚本:バフマン・ゴバディ(『亀も空を飛ぶ』『ペルシャ猫を誰も知らない』)
提供:マーティン・スコセッシ
撮影:トゥラジ・アスラニ
出演:ベヘルーズ・ヴォスギー、モニカ・ベルッチ、ユルマズ・エルドガン、カネル・シンドルク

1979年2月、イラン革命成就。クルド人詩人サヘルは、反政府的な詩を書いたとして投獄される。妻のミナは、大佐だった父親が国王派の烙印を押され、夫と共謀した罪で10年の刑となる。執事のアクバルが革命防衛隊に手を回して夫と面会する許可を取ったとミナに伝え、ミナは刑務所内で頭巾を被らされた状態で夫と肌をあわせる。ミナに横恋慕していた執事は途中で夫とすり替わる。やがて双子の赤ちゃんが生まれ、ミナは釈放される。夫は獄中で死んだと知らされ、ミナはトルコで新しい生活を始める。
一方、サヘルは投獄から30年後に釈放され、イスタンブルにいるという妻の行方を探す。サヘルは海辺の町で「詩が父の形見なの」という若い女性と出会う・・・

政治犯として収監された実在のクルド人詩人サデッグ・キャマンガールの体験をもとに描かれた作品。
サヘル役に、革命前イラン映画の大スターだったベヘルーズ・ヴォスギー、ミナ役に、イタリアの女優モニカ・ベルッチを起用。モニカ・ベルッチは短い台詞ながらペルシャ語の発音が綺麗で違和感がない。
『ペルシャ猫を誰も知らない』撮影後、イランに戻れないでいるゴバディ監督。トルコで撮った本作は、題材といい、大胆に肌を見せたことといい、決して今のイランでは撮れない作品。

サヘル演じるベヘルーズ・ヴォスギーの存在感がすごい。声をほとんど発しないのは、サヘルが30年間刑務所で沈黙の中にいたことと、ベヘルーズ自身、35年間映画に出ず沈黙を保っていたこと、そして、監督自身が言葉のわからない外国にいてあまりしゃべれない状態だったということを反映したものという。
一方で、トルコから資金を得たため、トルコの俳優も起用したため、できるだけペルシア語の台詞を減らしたという事情も。

サイが走り、亀が落ちる・・・ 
映画を詩を詠むように作ったという監督。
ダイナミックで詩的な映像は、ぜひ大きな画面で!(咲)


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Web版シネマジャーナル特別記事「バフマン・ゴバディ監督来日レポート」

http://www.cinemajournal.net/special/2015/rhinoseason/index.html
●バフマン・ゴバディ監督インタビュー
●トークイベント@東京外国語大学

スタッフ日記:『サイの季節』7/11公開を前に、3度目の正直で来日したゴバディ監督と嬉しい再会(咲)
http://cinemajournal.seesaa.net/article/420107143.html

2012/イラク・トルコ/スコープサイズ/DCP/93 分/カラー/ペルシャ語・トルコ語・英語
提供:新日本映画社、コムストック・グループ
配給・宣伝:エスパース・サロウ
公式サイト:http://rhinoseason-espacesarou.com
★2015年7月11日(土)からシネマート新宿ほか全国順次公開
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2015年06月20日

雪の轍(わだち)   原題:Kış Uykusu(冬の眠り) 英題:Winter Sleep

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監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
脚本:エブル・ジェイラン、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
出演:ハルク・ビルギネル、メリサ・ソゼン、デメット・アクバァ、アイベルク・ペクジャン、セルハット・クルッチ、ネジャット・イシレル

トルコ、奇岩が美しいカッパドキア。
舞台俳優を引退したアイドゥンは、親の資産を受け継ぎ、洞窟ホテル「オセロ」の主として何不自由なく暮らしている。だが、若く美しい妻ニハルとは、お互い干渉しない生活が2年も続き、出戻った妹ネジラからは、色々と意見される日々だ。
ある日、車の窓に小石をぶつけられる。投げた少年が小川に落ち、家に送っていく。家はアイドゥンの貸家で、家賃滞納のため数日前に家具を差し押さえたと執事が言う。借主で少年の父イスマイルは刑務所帰りで職がない。「父上の時代には信頼で結ばれていた。強制執行する前に相談してほしかった」とイスマイルから恨みをぶつけられるが、アイドゥンにとって資産は使用人任せで初耳だった。
イスマイルの弟でイスラームの導師ハムディが、時折許しを求めてやってくる。両者の思いは平行線だ。
一方、自分の資産を当てにして慈善活動をしている妻ニハルとも分かち合えない。アイドゥンは、妻と距離を置く為、イスタンブルに行く決意をする。雪に閉ざされ、飛行機は欠航、列車も遅れている。アイドゥンはイスタンブルに行くのをやめ、やもめ暮らしをしている友人宅にころがりこむ。
夫の留守、ニハルは大金を持ってイスマイルの家を訪ねる・・・

196分、ひと言も聞き漏らすまいと、息を殺して画面に見入ってしまった。壮大な自然の中で、舞台劇のように物語が展開していく。
地元の新聞にエッセイを連載しているアイドゥン。コラムにイスラームの導師のことを「高尚文化の宗教を伝えてくれる存在・・・」と書きながら、ハムディ導師のことは、みすぼらしくて狡猾とけなす。それでいて、かつて舞台で演じた導師の役を「よく演じすぎたかな?」と妹に問うたりする。「外国にいたから見てない」と素っ気ない妹。
地方紙じゃなくて大きな新聞に書けばいいのにという妹に、「大新聞には興味ない」と強がりも見せる。
イスマイルとハムディの母親は、ニハルが訪ねていくと、家主の妻が差し押さえのテレビを返しに来てくれたのかと、「これで宗教番組が観れる」と歓迎する。
宗教的に保守的な者と、宗教に疎い世俗的な生活をする者が共存する社会は、トルコの縮図でもあるが、広く世界の縮図でもある。
夫と妻の関係にも目が離せない。アイドゥンとニハルのように歳が離れてなくても、どこの夫婦にもありえる心のすれ違い。
裕福なのに心が満たされない者、金はなくとも自尊心を失わない者・・・ 生きる意味を模索する人々の姿に釘付けになった。(咲)


◆公開記念トークショー
日時:6月28日(日)10:30の回上映終了後
登壇者:沼野充義さん(ロシア文学者)、亀山郁夫さん(ロシア文学者)
場所:角川シネマ有楽町

◆7/4(日)新宿武蔵野館でも、サラーム海上さん、『雪の轍』劇中に登場する日本人・村尾政樹さんのトークイベントが決定!

★『雪の轍』公開記念  ジェイラン映画祭 オープニングイベント

日程:7月8日(水)
会場:草月ホール(青山)
<プログラム内容>
プログラムA(昼)
13:30−16:00上映『繭』(20分)『五月の雲』(130分)
16:10−レクチャー
「トルコ文化の中の映画とヌリ・ビルゲ・ジェイラン」 
野中恵子(トルコ研究者/「都市を巡るトルコの歴史」著者)

プログラムB(夜)
18:00−トーク
「国際映画祭とトルコ映画 ヌリ・ビルゲ・ジェイランを中心に」
石坂健治(日本映画大学教授/東京国際映画祭アジア部門プログラミングディレクター)
市山尚三(東京フィルメックスプログラムディレクター)
矢田部吉彦(東京国際映画祭プログラミングディレクター)
19:00−21:30上映『繭』(20分)『五月の雲』(130分)

参加費:1プログラム  
一般1500円 / シニア・学生・アテネ・フランセ文化センター会員=1000円


★ヌリ・ビルゲ・ジェイラン映画祭2015
日程:9月29日(火)−10月3日(土)
会場:アテネ・フランセ文化センター(御茶ノ水)
上映作品(予定):『カサバー町』(1997)、『冬の街』(2002)、『うつろいの季節(とき)』(2006)
『スリー・モンキーズ』(2008)、『昔々、アナトリアで』(2011)+シンポジウム実施予定。 
※詳細は7月8日(水)のオープニングイベントで発表


☆『昔々、アナトリアで』(2011)
*カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作
7月11日(土)より 【ワンコイン(500円) 1週間限定レイトショー】


2014年/トルコ・仏・独/196分/カラー/シネマスコープ
配給:ビターズ・エンド
協力:ターキッシュ エアラインズ
後援:トルコ大使館 / ユヌス・エムレ インスティテュート
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/wadachi
★2015年6月27日(土)、角川シネマ有楽町、新宿武蔵野館 ほか全国順次ロードショー
posted by sakiko at 21:53| Comment(1) | TrackBack(0) | トルコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする