2018年01月28日

花咲くころ  原題Grzeli nateli dgeebi  英題In Bloom

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監督:ナナ・エクフティミシュヴィリ、ジモン・グロス
出演:リカ・バブルアニ、マリアム・ボケリア

1992年春、ジョージア(グルジア)の首都トビリシ。ソ連解体後、独立したものの、まだまだ落ち着かない。14歳の少女ナティアとエカは、今日もパン屋に並び争奪戦。
ナティアの父は酒乱で父母の喧嘩が絶えない。一方、エカの父は不在がち。久しぶりに父が帰ってきた翌日、遅刻し「父がアブハジアから帰ってきたので」と言うと、先生から「あそこに行く目的は泥棒」と言われてしまう。
学校を飛び出し遊園地に行くエカたち。追いかけてきた男の子がエカに「結婚してくれ」と迫るが、「いや! 馬鹿だから」と追い払う。ナディアも二人の男の子から思いを寄せられていた。ナティアはその一人ラドから銃弾の入ったピストルを渡される。喧嘩している男の子たちに銃口を向けてみるエカ。
ある日、通りを歩くナティアは車で連れ去られ、彼女に目をつけていた男と無理矢理結婚させられてしまう。ナティアには好きな人がいたのに、諦めの境地。結婚式に招かれ、男踊りを踊ってみせるエカ。
ナティアの新居を訪れたエカは、学校をやめた彼女に皆の近況を報告する。結婚式で借金して、皆を家に招きたいけどできないと寂しがるナティア・・・

内戦の続く不安定な社会で友情をはぐくむ少女たちの姿をみずみずしく描いた作品。
ベルリン国際映画祭国際アートシアター連盟賞、2013年・第14回東京フィルメックスの最優秀作品賞など、各国の映画祭で評価されている。
ジョージアの女性監督ナナ・エクチミシヴィリと、ドイツのジモン・グロス監督との共同監督作品。ナナ・エクチミシヴィリは、1978年生まれで、本作の時代1992年の時には14歳。エカは自身の分身だという。

略奪婚(誘拐婚)といえば、トルコ系のキルギス族が代表格と思っていた。調べてみたら、グルジアや北コーカサスでも、何百年も続く土着の慣習とあった。持参金・結納金の心配をしなくてもいいという利点があってのこと。合意の上で、略奪場所も決めて女性を男性の家に連れ込むことも多い。それが、キルギスでも最近は誘拐まがいの略奪婚が横行していて問題になっているそうだ。人権無視もはなはだしい。 
 あと、注目したのが、冒頭、「キプチャク人4万人を移動させて…」と、ラジオから流れてくるニュース。ロシアが意図的に民族移動をさせたことが元で、今もあちこちで火種が絶えない。映画の最初にさりげなく入れたところに、監督たちの思いを感じた。(咲)


*岩波ホール創立50周年 記念作品第1弾

2013年/ジョージア(グルジア)・ドイツ・フランス/ジョージア語/102分/カラー/1:2.35
配給:パンドラ
後援:在日ジョージア大使館
公式ページ http://www.hanasakukoro.com/
★2018年2月3日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー


posted by sakiko at 10:08| Comment(0) | グルジア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月18日

あの日の声を探して  原題:THE SEARCH

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監督・脚本:ミシェル・アザナヴィシウス(『アーティスト』)
原案:フレッド・ジンネマン『山河遥かなり』
出演:ベレニス・ベジョ(『アーティスト』『ある過去の行方』)、アネット・ベニング(『キッズ・オールライト』)、マキシム・エメリヤノフ、アブドゥル・カリム・ママツイエフ、ズクラ・ドゥイシュビリ

1999年、チェチェン。8年前の独立を認めたくないロシアが、モスクワで起きたテロをチェチェン独立派の犯行だとして侵攻してくる。9歳のハジの目の前で両親がロシア兵に殺されてしまう。姉ライッサも殺されたと思ったハジは、まだ赤ちゃんの弟を抱いて家を出る。人の住む家の玄関先に弟を置き、難民キャンプに向かうトラックに乗せて貰うが、名前を聞かれても声が出なくて答えることができない。あまりのショックに声を失ってしまったのだ。隣国イングーシ共和国内にある難民キャンプで、ハジはEU人権委員会職員のキャロルと出会い、彼女の家に保護される。その頃、姉ライッサは、写真を手にハジを探し続けていた・・・

EU職員のキャロルが、家にハジを連れ帰ったのは、難民に対して何もできないでいる自分に苛立ち、せめて一人でも自分の手で助けたいという思いから。声が出なくて何も語れないハジにフランス語でまくしたてるけど、訳のわからない言葉で聞かれては、例え声が出たとしても答えられないでしょう。(言葉が通じなくても、笑顔なら気持ちが通じるのに・・・と、ちょっと私のほうがいらついた場面!)
ハジを演じたのは、オーディションで400人の中から選ばれたチェチェン生まれの男の子。物憂げな眼にぽろりと涙が浮かび、両親を殺された少年を体現しています。キャロルの家に一人でいる時にリズミカルにステップを踏んで踊っている姿は絶品。少年が心の安らぎを得たのを感じさせてくれます。
撮影はチェチェンではなく、チェチェンに接するグルジアで行われています。姉ライッサを演じたのは、グルジア生まれの素人の女性で、やはりオーディションで選ばれたのですが、亡き父がロシア人と闘った経験を持つとのこと。清楚な美人。
この映画の中で、物語がもう一つ同時に進みます。同じロシア連邦でも、チェチェンから2300キロ離れた平和なペルミ市。19歳の青年コーリャはマリファナを吸っているところを警察に捕まり、ロシア軍に強制入隊させられます。戦死や自殺した兵士の始末を命じられ、だんだん正気を失っていくコーリャ。上官たちから手荒い扱いを受けるうちに、自身も新兵を殴りつけるようになります。
人の心に狂気を芽生えさせるものは何なのか・・・ 
人はどうしたらわかりあえるのか・・・
戦争のない世界は、どうすれば実現するのでしょう・・・
答えは簡単なはずのに、解決しないのが悲しい。(咲)


2014年/フランス・グルジア/135分/カラー/ビスタ/5.1chデジタル
配給:ギャガ
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
公式サイト:http://ano-koe.gaga.ne.jp/
★2015年4月24日(金) TOHOシネマズ シャンテほか全国順次ロードショー!
posted by sakiko at 17:46| Comment(0) | TrackBack(0) | グルジア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする