2017年07月15日

ハートストーン(原題:Hjartasteinn)

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監督・脚本:グズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン
出演:バルドル・エイナルソン(ソール)、ブラーイル・ヒンリクソン(クリスティアン)、ディルヤゥ・ワルスドッティル(ベータ)、カトラ・ニャルスドッティル(ハンナ)

ソールとクリスティアンは幼なじみで、何をするのも一緒の大親友だった。ソールは母親と個性的な二人の姉と暮らしている。母親がほかの男に女の顔を見せるのが嫌でたまらない。クリスティアンは支配的な父親を怖れ、気弱な母親は夫に従うばかりだ。けれどもソールにはそんなところは見せず、いつも優しい。
ソールは同級生の少女ベータが気になっているが、気持ちを伝えられない。クリスティアンが後押ししてくれて、少し前進することができた。ベータの友達のハンナがクリスティアンに想いを寄せて、4人は一緒に出掛けるようになる。

アイスランドから届く映画を何本か観ましたが、どれも心に沁みてきました。思春期にさしかかった少年たちのこの物語もその一つ。チラシ画像のこちらを見据える少年がソール、彼を見守るようなまなざしを向けているのがクリスティアンです。アイスランドを地球儀で見ると(南北が広がっているメルカトル図法の地図では大きくなってしまいます)北大西洋のグリーンランド寄りにぽつんとある島国(北海道と四国を足したくらいの広さ)です。約31万人が住んでいます。人口密度は3人/km2。
自然だけは豊かな小さな漁村で、少年たちは思春期を迎え、大人に近づいていきます。しかし大人の世界に楽しそうな要素が見当たりません。
小さな村では人の出入りが少なく、どの人も長い付き合い、家の事情もお互いに知られています。そういう村で異分子とされたら、住み続けることができません。人に埋もれてしまう都会の孤独も辛いでしょうが、狭い社会で好奇と嫌悪の視線にさらされる辛さも相当なものでしょう。通らねばならない道だと思っても、ソールとクリスティアンの友情と愛情の切なさに胸が痛みました。出演している少年たちの情報がなにもありませんが、1982年生まれの監督の青春時代の思い出が色濃く反映されているそうです。(白)


2016年/アイスランド、デンマーク/カラー/シネスコ/129分
配給・宣伝:マジックアワー
http://www.magichour.co.jp/heartstone/
★2017年7月15日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 22:32| Comment(0) | TrackBack(0) | アイスランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月19日

ひつじ村の兄弟  原題RAMS

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監督:グリームル・ハゥコーナルソン
出演:シグルヅル・シグルヨンソン、テオドル・ユーリウソン

アイスランドの人里離れた村で牧羊を営むグミーとキディーの老兄弟。二人は隣に住んでいるのに仲が悪く、もう40年以上口をきいていない。
年に一度の羊の品評会。兄弟の飼う羊は先祖代々から受け継がれて来た優良種。その中でもとびきりの羊を出品するが、僅差で1位2位となり、負けた方は悔しがることしきり。
数日後、キディーの羊が伝染病に冒されていることが判明し、村のすべての羊が殺処分されることなる。先祖から受け継いだ種が絶えてしまうことになる一大事に、グミーもキディーもそれぞれに策をたてる。あることからお互いに助け合わなければいけない事態になる・・・

アイスランドの映画といえば、『馬々と人間たち』を思い出します。北極圏に近い島国で、馬?と驚いたものですが、今度は、羊。北極圏に近くて、馬や羊には寒すぎないのかとちょっと心配になりますが、実は馬も羊もたくさん飼われている国。凍えそうな時には、人肌で温めるのが一番という場面が、どちらの映画にも出てきました。やはり寒い国ならではの常套手段なのでしょう。
よけいなものがない大自然に包まれたアイスランドの景色の中で繰り広げられる仲の悪い兄弟の物語には、ユーモアさえ漂います。それもそのはず、兄役のシグルヅル・シグルヨンソンさんは、俳優・コメディアン・監督・脚本家とありました。弟役のテオドル・ユーリウソンさん共々、映画やテレビシリーズで活躍している方たちですが、ほんとに孤高の頑固者の羊飼いのようでした。(咲)


2015年/アイスランド・デンマーク/93分
配給エスパーズ・サロウ
第68回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」グランプリ受賞
公式サイト:http://ramram.espace-sarou.com
★2015年12月19日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
posted by sakiko at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | アイスランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年11月01日

馬々と人間たち(原題:Of Horses and Men)

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監督・脚本:ベネディクト・エルリングソン
製作:フリズリク・ソール・フリズリクソン
出演:イングヴァール・E・シーグルソン(コルペイン)、シャーロッテ・ボーヴィング(ソルヴェーイグ)、ステイン・アルマン・マグヌソン(ヴェルンハルズル)、キャルタン・ラグナルソン(グリームル)、ヘルギ・ビョルンソン(エーギットール)

アイスランドの小さな村。独身のコルベインは美しい白馬グラウーナが自慢。子持ちの未亡人ソルヴェーイグを憎からず思っているが、なんと愛馬たちの恋のほうが先に進展してしまった。コルベインがグラウーナと散歩中にソルヴェーイグの馬ブラウンが、いきなり行為に及んでしまったのだ。愛馬をキズモノにされたコルベインは怒り心頭。村中が見守る恋は大波乱の様相を見せる。
酒飲みのヴェルンハルズルはウオッカほしさに海に飛び込み、グリームルはエーギットールが張り巡らしたばかりの有刺鉄線を切ってまわる。旅行者のフアンはスウェーデン娘のヨハンナを見初めて、乗馬観光に参加するが…。

まだ春浅いころから秋までのアイスランドの広大な風景をバックに、個性豊かな村人たちが引き起こす騒動。エピソードが変わるたびに、綺麗な馬の眼がアップになります。馬の眼から見たおかしな人間たちのドラマに引き込む装置のようです。昨年の東京国際映画祭で監督賞を受賞しましたが、ベネディクト・エルリングソン監督は舞台の演出家・俳優であり、長編映画はこれが初めての作品。脚本も書かれた、これまでにないスタイルの映画で、強く印象に残りました。
アイスランドの生活にはごく普通に馬がいて、監督も俳優さんたちもみな馬好きとのこと。よく知っているからこそ狙えたシーン、演出できたシーンの連続です。写真は昨年の映画祭での舞台挨拶のようす。ベネディクト・エルリングソン監督(右)とプロデューサーのフリズリク・ソール・フリズリクソン氏です。(白)


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2013年/アイスランド/カラー/81分
配給:マジックアワー)
(C)Hrossabrestur2013
http://www.magichour.co.jp/umauma/
★2014年11月上旬、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 02:47| Comment(0) | TrackBack(0) | アイスランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする