2017年10月08日
立ち去った女 英題:The Woman Who Left
監督:ラヴ・ディアス
出演:チャロ・サントス・コンシオ、ジョン・ロイド・クルズ
1997年6月30日、フィリピン。女性刑務所の作業場。香港の中国返還に伴うフィリピン経済弱体化のニュースが流れている。かつて小学校の教師だったホラシアは、身に覚えのない殺人の罪で、30年の歳月を刑務所で静かに過ごしてきた。
ある日、受刑者で親友のペトラから思いがけない告白を受ける。ホラシアが犯人とされた殺人事件の真犯人はペトラで、ホラシアに罪を着せた黒幕は、ホラシアのかつての恋人・ロドリゴだというのだ。
ホラシアは釈放され、家に戻るが夫はすでに亡くなり、息子は行方不明だった。ホラシアは、自分にぬれぎぬを着せたロドリゴを追って復讐の旅に出る。ロドリゴの住むという町で、ホラシアはバロット(アヒルの卵)売りの貧しい男からロドリゴの情報を得る。一方でパロット売りの身の上話を聞いて助けてあげるホラシア。昼は教会で過ごし、夜になるとパロット売りのところに行き、ロドリゴへの復讐の時を待つホラシアの前に、物乞いの女や、心と身体に傷を抱える謎の女が現われる・・・
モノクロで描かれる圧倒的な映像美。
無実の罪で30年もの年月を刑務所で過ごしたホラシアの虚しい思いが、ぐっと迫ってくる。ロドリゴへの復讐に燃えながら、自分の前に現われる弱い人たちには温かく手を差しのべるホラシア。本質的に、鬼になれない女性なのだ。
本作は、『ショーシャンクの空に』の原点ともなったロシアの文豪トルストイの短編小説に着想を得た人間ドラマ。
3時間48分、息を殺して画面を見守った。(咲)
2016年/フィリピン/228分/モノクロ/1.85:1/DCP
配給:マジックアワー
公式サイト:http://www.magichour.co.jp/thewoman/
★2017年10月14日 シアター・イメージ フォーラムほか全国順次ロードショー!
2017年07月23日
ダイ・ビューティフル(原題:Die Beautiful)
監督:ジュン・ロブレス・ラナ
脚本:ロディ・ベラ
撮影:カルロ・メンドーサ
音楽:リカルド・ゴンサレス
出演:パオロ・バレステロス(トリシャ)、ジョエル・トーレ(トリシャの父)、グラディス・レイエス(トリシャの姉)、クリスチャン・バブレス(バーブ)
ミス・ゲイ・フィリピーナで念願のミスコン女王に輝いた直後、急死してしまったトランスジェンダーのトリシャ。彼女の遺言は「ゴージャスなセレブメイクで、美しい姿で逝きたい」というもの。それも日替わりで7日間。トリシャの父親は元の男性の姿に戻そうと反対するが、友人達は彼女の遺言どおりにして送るべく、病院から遺体を盗み出す。そして腕によりをかけてトリシャに美しいメイクを施すのだった。
昨年10月の東京国際映画祭で主演男優賞と観客賞に輝いた作品。フィリピンでトランスジェンダーのトリーシャを妖艶かつ可愛らしく演じたパオロ・バレステロス、ご覧のとおりのイケメンです。メイクは全部彼自身がしているので、監督は「メーキャップ担当を雇わなくて済んで助かった」そうです。「男優賞・女優賞どちらでしょうか」という記者の質問にパオロは「どっちも!」と回答。場内大ウケでした。「日本の観客にこんなに喜んでもらえて嬉しい」と声を詰まらせていたロブレス監督。フィリピンでトランスジェンダーの殺害事件があり、心無い中傷をした人たちにもっと理解してほしいと思って企画した作品だそうです。ありのままの自分に誇りを持ち、最後まで自分らしく美しく生きたトリシャの波乱の物語をご覧ください。(白)
2016年/フィリピン/カラー/ビスタ/120分
配給:ココロヲ・動かす・映画社○
(C)The IdeaFirst Company Octobertrain Films
https://www.cocomaru.net/diebeautiful
★2017年7月22日(土)より新宿シネマカリテにてロードショー
2017年07月16日
ローサは密告された (原題 Ma'Rosa)
監督:ブリランテ・メンドーサ 製作:ロレート・ラリー・カスティーリョ
製作総指揮:ブリランテ・メンドーサ 脚本:トロイ・エスピリトゥ
出演:ジャクリン・ホセ,フリオ・ディアス 他
ローサはマニラのスラム街の片隅で小さな雑貨店を家族で経営している。家計のため、少量の麻薬を扱っていたが、ある夜、密告からローサ夫婦は逮捕される。警察による麻薬売人の密告要求、高額な保釈金… ローサの子どもたちは、両親の自由を取り戻すため奔走する。
◆主役ローサを演じるジャクリン・ホセは本作で第69回カンヌ国際映画祭で主演女優賞を獲得。 監督は第3黄金期と呼ばれるフィリピン映画界の鬼才ブリランテ・メンドーサ。私的にはラヴ・ディアス監督よりは好きかもです、ハイ。現在、同国第16代大統領ロドリゴ・ドゥテルテ氏は「麻薬を完全に撲滅する。逆らう者が望むなら、与えるのは死だ」の発言どおり「麻薬撲滅」のもと警察、自警団による超法規的な処分をおこなっている… しかし一般市民は貧困のせいで麻薬密売に手を出さざるをえない… そんなフィリピンの現在が垣間見れる作品に仕上がってました。なんとなく終始、画面がスモークしているのもマニラって、きっと日々湿度が高そうです… フィリピンは訪れたい国のひとつだったけど色んな意味で当分ムリそう…。 (千)
(c)sari-sari store2016
2016/フィリピン/配給ビターズ・エンド
公式サイト http://www.bitters.co.jp/rosa/
★7月29日(土)より渋谷イメージフォーラムほか全国順次公開
2014年10月26日
SHIFT 恋よりも強いミカタ(原題:Shift)
監督・脚本:シージ・レデスマ
撮影:サシャ・パロマレス
出演:イェン・コンスタンティーノ、フェリックス・ローコー、マット・バレナ、アレックス・メディーナ
エステラは、シンガーソングライターか写真家になるのを夢見ている。まだまだ実現には程遠く今はコールセンターの夜勤として働いているが遅刻ばかり。先輩で仕事もできるイケメンのトレバーが教育係としてつき、エステラはたちまち仲良くなる。優しくて頼りになるトレバーにエステラは次第に恋心を抱くのだが…。
親元を離れ、夢を叶えたいと思うエステラ。真っ赤な髪は勝負服のような気合の形なのかも。コールセンターの仲間は多様で、とても開放的な職場なのが見て取れ、エステラのトレバーへの思いが届かないのはなぜかもすぐわかります。夢に届かない口惜しさ、自分への苛立ちと共に、この一番近くにいるのに叶えられない切なさを細やかに描いて、初お目見えの大阪アジアン映画祭2014ではグランプリを受賞しました。キャストの一人ひとりがとても魅力的でした。(白)
2013年/フィリピン/カラー/81分/
配給:ピクチャーズデプト
(C)2013 Cinema One Originals
http://picturesdept.com/jp/titles/shift/
★2014年10月25日(土)より新宿シネマカリテにてレイトショー、ほか全国順次ロードショー