2018年02月20日

ナチュラルウーマン 原題 Una Mujer Fantastica/A Fantastic Woman

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監督:セバスティアン・レリオ
製作:フアン・デ・ディオス・ラライン,パブロ・ラライン
製作総指揮:ジェフ・スコール,ジョナサン・キング
出演:ダニエラ・ベガ,フランシスコ・レジェス,ルイス・ニェッコ 他

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愛する人に最期、もう一度会いたい
ウェイトレスをしながらナイトクラブでも歌っているマリーナは年の離れた恋人オルランドと暮らしていた。マリーナの誕生日を祝った夜、自宅のベッドでオルランドは急死… 最愛の人を失った悲しみの最中にも関わらず、マリーナはトランスジェンダーであるが故に容赦のない差別や偏見を浴びせられる… ふたりで暮らしていた部屋から追い出され葬儀にも参列させてもらえない--

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自分らしく生きたいと願う すべての人へ贈る人生賛歌
ヒロインを演じるのは自身もトランスジェンダーの歌手であるダニエラ・ヴェガ。トランス女優として初のオスカーノミネートもささやかれる注目のひとです。とても綺麗で外見も中身も女性そのものなのに、時折ふと見せるオトコの部分が面白い。私は生育した環境のためか周囲に割と同性愛者が多いほうで、散々差別を見てきたが、日本に限らず、あんな明るいイメージのラテン・アメリカ(舞台はチリです) でもゲイに対する酷い差別は存在してるんですね、ちょっとビックリ…、それでも自分の生き方を変えず、ノンケに負けず、深い想いを貫く姿は感動的。人間が人間を愛して何が悪いんだ!! 心の中で叫んだ私。理不尽な現実を乗り越えて前向きに生きるマリーナに共感します。 (千)

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C)2017ASESORIAS Y PRODUCCIONES FABULA LIMITADA; PARTICIPANT PANAMERICA, LCC; KOMPLIZEN FILM GMBH; SETEMBRO CINE, SLU; AND LELIO Y MAZA LIMITADA
2017年/チリ・アメリカ・ドイツ・スペイン/104min. 
配給:アルバトロス・フィルム
公式 http://naturalwoman-movie.com/
★2018年2月24日(土)より恵比寿ガーデン・シネマほか全国順次公開


posted by chie at 00:00| Comment(0) | チリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月22日

ネルーダ 大いなる愛の逃亡者   原題:NERUDA

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監督:パブロ・ラライン
出演:ルイス・ニェッコ、メルセデス・モラーン、ガエル・ガルシア・ベルナル

1971年にノーベル文学賞を受賞したチリの国民的詩人パブロ・ネルーダ。
本作は、1948年、ビデラ政権によってチリで共産党が非合法とされ、共産党員だったネルーダが国外逃亡を余儀なくされた時代を描いた物語。

第二次世界大戦終結から3年。上院議員のネルーダが、共産党を裏切った政府を批判したことから、ビデラ大統領は警察官ペルショノーに、ネルーダの逮捕を命じる。ネルーダは妻で画家のアルゼンチン女性デリア・デル・カリルと共に亡命を試みるが失敗し、国内で身を潜める。追われる中で、代表作となる詩集「大いなる歌」を綴る。欧州では、パブロ・ピカソ率いるアーティストたちが詩人ネルーダの自由を訴えていた。
逃亡生活中にもネルーダは酒場に繰り出し、追っ手が近づくと姿をくらましていた。
いよいよ国を出る手はずが整い、ネルーダはチリ南部の山奥をマプチェ族に助けられながら馬で進む・・・

追う側の警察官ペルショノーが、詩人としてのネルーダに徐々に惹かれていく姿や、追いかける中で亡くなったペルショノーを手厚く葬るネルーダに、二人の不思議な関係を見て取れました。圧倒的なチリの大自然にも目を奪われました。
ネルーダの存在感を体現したチリの人気コメディアン俳優ルイス・ニェッコもなかなかなのですが、なんといっても、徐々にネルーダに傾倒していく警察官ペルショノーの思いを静かに演じたガエル・ガルシア・ベルナルが光ります。

冒頭、男ばかりの集会でネルーダがアラビアのロレンスに扮して、詩について熱く語る場面。立派な部屋の壁際に男性用便器が並んでいて、酒に酔った男たちが時折、用を足していて、この部屋って一体????  宴会場なのか大きな立派なトイレなのかと。
その後は、警察官役ガエル・ガルシア・ベルナルの心地よい語りで物語は進むのですが、最初に観た光景の不思議さがずっと後を引きました。

ネルーダは、1934年に外交官として赴任したスペインで内戦を目の当たりにしています。友人となった詩人ガルシア・ロルカがフランコ派のファシストに暗殺されたことが、その後の共産党への入党に繋がったようです。
『エンドレス・ポエトリー』が11月18日に公開されるアレハンドロ・ホドロフスキー監督もチリの出身。やはりスペインの詩人ガルシア・ロルカに影響を受けたそうで、ロルカが海を越えて多くの人に愛されたのを感じます。(咲)



2016年/チリ・アルゼンチン・フランス・スペイン/108分/カラー/シネマスコープ/5.1ch
配給:東北新社 / STAR CHANNEL MOVIES
後援:チリ大使館 / セルバンテス文化センター東京
公式サイト:http://www.neruda-movie.jp/
★2017年11月11日(土)より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー





posted by sakiko at 16:00| Comment(0) | チリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月11日

チリの闘い  原題:LA BATALLA DE CHILELa Lucha de un Pueblo sin Armas 英題:THE BATTLE OF CHILE −THE STRUGGLE OF AN UNARMED PEOPLE

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監督:パトリシオ・グスマン(『光のノスタルジア』『真珠のボタン』)

東西冷戦期の1970年、チリで選挙によって世界初の社会主義政権が誕生し、サルバドール・アジェンデが大統領に就任した。「反帝国主義」「平和革命」を掲げ、民衆の支持を得ていたが、国内の保守層、多国籍企業、そして米国政府は、その改革路線に反撃を加え、チリの社会・経済は混乱に陥る。
1973年9月11日、米国CIAの支援を受けた軍事クーデターで、アウグスト・ピノチェト将軍を中心とした軍事独裁政権が発足する。アジェンデ大統領は、自殺したとされる。(諸説あり)

『チリの闘い』は、この顛末をパトリシオ・グスマン監督率いる5人による映画製作チーム「三年目」が記録した3部構成のドキュメンタリー。

第1部「ブルジョワジーの叛乱」(1975年/96分)
第2部「クーデター」(1976年/88分)
第3部「民衆の力」(1978年/79分)
合計 4時間23分

第一部:ブルジョワジーの叛乱
1973年3月の議会選挙で左派(人民連合)が予期せぬ勝利をおさめる。右派は、議会制民主主義がアジェンデの社会主義政策を阻止できないことを思い知り、その戦略を国民投票から街頭闘争へと転換する。政府を弱体化させるため、右派はデモやストライキを扇動。ついには軍部がクーデター未遂事件を引き起こすまでの数か月間を追う。

第二部:クーデター
第一部の終盤に登場した1973年6月29日のクーデター未遂事件で幕を開ける。いずれクーデターの「本番」が起こることを誰もが認識しはじめ、左派は戦略をめぐって分裂する。1973年9月11日の朝、クーデターが実行され、大統領府は軍による爆撃で破壊される。アジェンデはラジオを通じてチリ国民に向け演説をした後、自殺と思われる死を遂げる。同日夜、アウグスト・ピノチェトを議長とする軍事評議会のメンバーがテレビ出演し、軍事政権の発足を宣する。

第三部:民衆の力
平凡な労働者や農民が協力し合い、"民衆の力"と総称される無数の地域別グループを組織してゆく姿を追う。食糧を配給し、工場や農地を占拠・運営・警備し、暴利をむさぼる闇市場に対抗し、近隣の社会奉仕団体と連携する。
当初、反アジェンデ派の工場経営者や職業団体によるストライキへの対抗手段として始められたが、やがて"民衆の力"は、右派に対し決然たる態度で臨むことを政府に要求するようになる。

民衆に指示されて誕生した社会主義政権が、結果的に終焉を迎える過程を記録することになった本作。クーデターの後、グスマン監督は逮捕・監禁されたが、処刑は免れ、フランスに亡命。撮影されたフィルムも奇跡的に国外に持ち出され、映画監督クリス・マルケルやキューバ映画芸術産業庁(ICAIC)の支援を得て完成する。
映画製作チーム「三年目」の5人のうち、撮影者ホルヘ・ミューラー・シルバのみ、1974年11月に秘密警察DINAに捕らわれ、尋問および拷問されたのち"行方不明"となった。『チリの闘い』は「ホルヘ・ミューラーの思い出に」捧げられている。


グスマン監督が、ピノチェト軍事政権下で虐殺され、沙漠や海の底に葬られた人々のことを描いた『光のノスタルジア』と『真珠のボタン』で、誌的で美しい映像の背景に、チリの民衆の悲劇があることを知りました。
本作『チリの闘い』は、そのピノチェト独裁政権が生まれた過程を記録したもの。あからさまなプロパガンダではなく、エッセイのような映画をめざしたとのこと。労働者や農民など、社会的に底辺にいる人々が果敢に立ち向かう姿に迫っていて、この人たちはその後どうなったのだろうと胸が痛みました。

また、本作を観て、1951年に石油国有化を行ったイランのモサデグ首相が、アメリカなどの後押しによる軍部クーデターで1953年に倒されたことを思い出しました。
ちょうどイランの当時のことを扱ったニュースで、チリのアジェンダ政権に触れたのを見て、民主主義を掲げながら、民の心よりも利益を優先する大国のスタンスは変わらないとつくづく思いました。(咲)



配給:アイ・ヴィー・シー
支援:キューバ映画芸術産業庁 / マッカーサー基金
チリ・フランス・キューバ/デジタル/モノクロ
公式サイト:http://www.ivc-tokyo.co.jp/chile-tatakai/
★2016年9月10日より渋谷ユーロスペースほかにて全国順次ロードショー
posted by sakiko at 10:07| Comment(0) | TrackBack(0) | チリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月31日

NO ノー (原題:No)

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監督:パブロ・ラライン
脚本:ペドロ・ペイラノ
オリジナル戯曲:アントニオ・スカルメタ
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル(レネ・サアベドラ)、アルフレド・カストロ(ルチョ・グスマン)、ルイス・ニェッコ(ホセ・トマ・ウルティア)、アントニア・セヘルス(ベロニカ)、マルシアル・タグレ(アルベルト)
1988年、ピノチェト独裁政権末期の南米チリ。政権の信任継続を問う国民投票が行われることになり、政権賛成派は「YES」、反対派は「NO」を選んで投票する。広告マンのレネのもとに友人で反対派の主要メンバーのウルティアが訪ねてくる。投票に向けた選挙キャンペーンの責任者にレネを抜擢し、深夜15分だけの放送枠で、「NO」派のCMを作ろうという。独裁政権のマイナスを前面に出した内容を考えていた首脳陣に、レネは明るくて斬新な広告を提案する。レネの上司は「YES」派のアドバイザーになり、熾烈なCM合戦が展開していく。

パブロ・ラライン監督によるチリ独裁政権3部作の完結編。実話をもとにして、実際の当時の映像もおり込み、わざわざビンテージカメラで撮影したそうです。
初めは出来レースだろうとあまり乗り気でなかったレネが、反対派の活動家の元妻が逮捕されるに及んで広告マンとしての力を発揮していく過程と、広告キャンペーンが人々に働きかけていくようすがとても面白いです。こうやって世の中を変えていくことができるのね〜!圧倒的な上からの力に対抗できるのは、抑えつけられた一人ひとりの集合体なのでした。逆にメディアに扇動されることもあるはずで、見極めが大事と心しました。ガエル・ガルシア・ベルナルが息子を守る父親役。もうそんな年頃でしたか・・・。(白)


2012年/チリ・アメリカ・メキシコ合作/カラー/118分/
配給:マジックアワー
(C)2012 Participant Media No Holdings, LLC.
http://www.magichour.co.jp/no/
★2014年8月30日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 13:09| Comment(0) | TrackBack(0) | チリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする