2017年01月22日

エリザのために  原題:BACCALAUREAT  英題:GRADUATION

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監督・脚本・製作:クリスティアン・ムンジウ(『4ヶ月、3週と2日』、『汚れなき祈り』)
出演:アドリアン・ティティエニ、マリア・ドラグシ

何者かに石を投げ込まれ窓を割られた朝、医師ロメオは、体調の悪い妻の代わりに娘エリザを学校に送っていく。急いでいたロメオは、学校に入る手前でエリザを降ろす。工事現場の脇を通って学校に向かう娘の後姿を見送り、愛人である英語教師サンドラの家に急ぐロメオ。サンドラと過ごしているロメオのところにエリザが暴漢に襲われたと電話が入る。病院に駆けつけると、妻も既に到着していて、エリザは大事には至らなかったが、両親の前で泣き崩れる。翌日に卒業試験を控えていて、それに受からないと、既に航空券も用意している英国への留学が出来なくなるのだ。ロメオの友人の警察署長は必ず犯人を捕まえると約束する。
翌日、エリザは一日目の試験を受けるが、事件のショックで思うような点が取れない。その結果を知ったロメオは、自分の職権で副市長に便宜を図ることで、2日目の試験の点数を操作する約束を取り付ける。ロメオは、娘に名前の脇に印をつけるよう指示する・・・

エリザには恋人がいて、どうしてもイギリスに留学したいわけではないのに、父親は不正を犯してでも留学させたいと必死。1991年の民主化の折、ロメオは妻と共に外国から帰ってきたのに、期待したような社会にならず、娘には外国に出て自分らしい人生をおくってほしいと願っているのです。
白昼、女性が暴漢に襲われても無関心な人たち。そして、すべてがコネで動く社会。
切羽詰った息苦しい空気がずっしり迫ってきた『4ヶ月、3週と2日』は、民主化の前のルーマニアが舞台だったけど、民主化後のルーマニアでも、違った意味の息苦しさがあることを感じさせられる映画。娘を思う父親の思いはずっしり伝わってくるのですが、壊れきった夫婦の姿があまりに虚しい。その虚しさは、ムンジウ監督が今のルーマニアに感じているものを象徴しているのでしょうか。(咲)


2016/ルーマニア・フランス・ベルギー/カラー/ルーマニア語/128分
配給:ファインフィルムズ
公式サイト:http://www.finefilms.co.jp/eliza/
★2017年1月28日(土)より新宿シネマカリテ、 ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
posted by sakiko at 09:25| Comment(0) | TrackBack(0) | ルーマニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月21日

『私の、息子』(原題:POZITIA COPILULUI)

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監督: カリン・ピーター・ネッツァー
出演: ルミニツァ・ゲオルギウ(コルネリア)、 ボクダン・ドゥミトラケ(バルブ)、イリンカ・ゴヤ(カルメン)、ブラド・イヴァノフ(ディヌ)

ブカレストに住むセレブのコルネリアは、30になっても自立していない息子バルブが悩みの種。誕生日パーティにも顔を出さず、子持ちのカルメンを恋人にしているのにも腹が立つ。買い与えたマンションに家政婦を掃除にやってそれとなく探らせている毎日だ。そんな中、バルブが交通事故を起こしたと知らせが入る。前の車を追い越そうとスピードを上げ、飛び出した子どもをよけきれず死なせてしまったという。
コルネリアは思いつくだけのコネクションとお金の力で、バルブを助けようと画策する。

第63回ベルリン国際映画祭で金熊賞受賞。
子離れできない母と親離れできない1人息子の愛憎半ばするドラマ。
密着していた時代はあるはずもなかった距離と溝が、30才にもなればできてあたりまえ。それを認められないコルネリアは、息子が離れていくのは恋人のせいだと思い、自分の愛情が息子を苦しめていることに気づかない。
超セレブな家庭の話ながら、母親ならば誰でも少しは思い当たるふしがあるはず。生まれたときからそばにいるわが子は、いくつになっても「私の子」だから。けれど普通は進学したり、就職したり、結婚したりで順当に親離れしていく。この母子はその機会を逸してしまったのでしょう。
ルミニツァ・ゲオルギウの存在感が日本なら杉村春子さんかな、というくらい凄い。ルーマニアを代表する女優で、日本公開されたルーマニア映画『4ヶ月、3週と2日』(2007)、『汚れなき祈り』(2012)にも出演していた(すみません、記憶は彼方へ)そうです。コルネリアをゆする目撃者ディヌのブラド・イヴァノフは、『4ヶ月、3週と2日』で、堕胎医役でした。『オーケストラ!』や『スノーピアサー』にも出演と海外作品でも活躍中。(白)

配給・宣伝:マジック・アワー
(C)Parada Film in co-production with Hai-Hui Entertainment All rights reserved
http://www.watashino-musuko.com/
6月21日(土)よりBnukamuraル・シネマほか全国順次公開
posted by shiraishi at 20:13| Comment(0) | TrackBack(0) | ルーマニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする