2016年12月10日

ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た(原題:Ants on a Shrimp)

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監督:モーリス・デッカーズ
撮影:ハンス・ボウマ
音楽:ニコラス・ジャー
出演:レネ・レゼピほかスタッフ

英国の月刊誌「レストラン」が選ぶ“世界ベストレストラン50”で7年連続ベストテン入り、しかも4度も第1位の座に輝いたのが、デンマーク・コペンハーゲンのレストラン“noma(ノーマ)”。2015年、カリスマシェフ、レネ・レゼピがデンマークの本店を休業し、東京のマンダリンホテルに期間限定(2015年1月㏨〜2月14日)で出店することになった。期間中提供できるのは2000席。6万円近い高価なメニューにも関わらず世界各地からの予約が殺到し一日で満席、6万2000人がウェイティングリストに名をつらね、2週間の期間延長が決定した。レネ・レゼピとスタッフは、その土地の食材のみを使うというコンセプトを貫き、日本各地へと食材探しに奔走する。開店までの彼らに密着したドキュメンタリー。

『ノーマ、世界を変える料理』(2015年作/2016年4月日本公開)で、3年連続首位にたったノーマが2位に落ち、再びトップに返り咲くまでのドキュメンタリーを見ました。レネ・レゼピの天才とカリスマぶりが強烈に記憶に残っています。本作は初めてスタッフ全員が海外にいくという気合の入った出店です。レシピ開発チームのスタッフたちが、慣れない日本でレネの高い要求にこたえるため日々寝るまも惜しんで苦心する様にこちらも緊張が高まりました。ようやくレネのOKが出てメニューが完成したのは開店5日前。鬼コーチと選手のようなやりとりが繰り広げられますが、誰よりも独創的なメニューを生み出すレネにスタッフが食いついていくさまに、内心声援を送っていました。
庶民には縁のなさそうなお値段で、一生口福にはあずかれそうもありませんが、レネの審美眼に叶った14〜16品のメニューはどれも美しく眼福でした。原題はチラシ画像のお料理。あ、蟻…!(白)

「ノーマ」という世界一のレストランというのも知らなかったし、その店が日本にやってきたということ自体も知らなかったのですが、この作品で知りました。グルメなんて、私には関係ないなと思いながら観ていたのですが、スタッフたちが日本全国各地へ食材探しに奔走する姿を見て興味を持ちました。
私も長野県で働いていた25年くらい前、山菜や木の実などを食材として採集しに行っていたのですが、その中で毎年秋に山へ採集しに行っていたのがサルナシでした。そのサルナシの実を、このノーマ日本が料理に使っていたのでびっくり。ミニキウイと言っていたのがそれです。(暁)


2016年/オランダ/カラー/ビスタ/92分
配給:彩プロ
(C)2015 BlazHoffski/Dahl TV. All Rights Reserved.
http://www.nomatokyo.ayapro.ne.jp/
★2016年12月10日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開
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2016年07月03日

ハリウッドがひれ伏した銀行マン  原題:Hollywood Banker

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監督・脚本:ローゼマイン・アフマン
登場する人々:フランズ・アフマン
アンニャ・アフマン、 スティーブ・ブルーム、ケヴィン・コスナー、ガイ・イースト、ハロルド・フリードマン、デレク・ギブソン、ヨーラン・グローバス、メナヘム・ゴーラン、ピーター・ホフマン、ロス・ジョンソン、 アーノルド・コペルソン、マーサ・デ・ランレンティス、ブルース・マクナル、ジョン・ミラー、スカイラー・ムーア、バックリー・ノリス、スティーヴン・ポール、ミッキー・ローク、ジョン・シュルマン、フレッド・サイドウォーター、ピエール・スペングラー、オリヴァー・ストーン、ジェームズ・トーマ、アンディ・ヴァイナ、ポール・ヴァーホーヴェン

フランズ・アフマン。1933年生まれ、オランダ人の銀行マン。
彼のもとに、映画会社トップから製作資金集めに奔走するプロデューサー、監督に至るまで、多くの映画人が面会を求めてきたという。
「なぜ成功したのか知りたい。ただの銀行マンなのに」とつぶやくフランズ・アフマン。

大学卒業後、ロッテルダムのスレーブブルク銀行に入社。エンタテインメント事業部を立ち上げ、映画プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスとともに、映画配給会社に対し、作品の配給権を作品完成前に販売することで、その対価を制作費に充当することができる「プリセールス」というシステムを開発する。これにより、新興の映画会社の映画製作が盛んになり、各国のインディペンデント配給会社もアメリカ映画の大作を手がけることが可能になった。ひとりの銀行マンが編み出したシステムが世界の映画市場を大きく変えたのだ。
1987年、第59回アカデミー授賞式で、『プラトーン』のプロデューサーであるアーノルド・コペルソンが「本当に必要とする時にフィリピンのジャングルに資金を用意してくれた」とフランズへの謝辞を述べた。
「ジャングルに金を届けた男と言われたけれど、ロッテルダムからマニラに送金しただけ」と笑うフランズ。
フランズが融資した映画は、実に約900本。『キングコング』(1976年版)、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』『眺めのいい部屋』『ドライビング Miss デイジー』『氷の微笑』等々、数多くの名作が並ぶ。

この映画を作ったのは、娘であるローゼンマイン・アフマン。
2010年、ニューヨークに住んでいた彼女は、父が末期癌との知らせを受け、オランダに帰る。回顧録を残したいという父の思いを、娘は映画という形で残すことに決める。製作途中で父は亡くなり、まさに遺志を継いだ形で、関係者に取材を続け、父のたどった道を映画に収めている。
すらっとしたフランズ・アフマンは、いかにも堅実な銀行マンという雰囲気の穏やかな紳士。時折見せる笑顔は父親らしい愛情に満ちている。
銀行を引退した後は、オランダ国際映画祭の会長を12年にわたって務めている。ほんとうに映画を愛した方なのだと実感させられた。こういう方がいて、多くの映画が世に生み出されたことに私も感謝したい。そして、監督経験のないローゼンマイン・アフマンにとって、映画を作り上げるのは、いかに大変な作業だったことだろう。お父様への深い愛を感じた。(咲)


2014年/オランダ/82分/カラー/ビスタ
配給:アークエンタテインメント / 東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
公式サイト:http://www.hollywoodbk.com
★2016年7月16日 (土)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー.
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2016年04月03日

孤独のススメ(原題:Matterhorn)

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監督・脚本:ディーデリク・エビンゲ
出演:トン・カス(フレッド)、ロネ・ファント・ホフ(テオ)、ポーギー・フランセン(カンプス)、アリーアネ・シュルター(旅行社の女性)

オランダの静かな田舎町。妻に先立たれ一人暮らしのフレッド。規則正しい生活を守り、教会通いも欠かさない。ある日、浮浪者とおぼしき男を家に招き入れ一緒に暮らし始める。何もしゃべれない男が、山羊を見るとメ〜と鳴き真似をして嬉しそうにする。子供達の誕生パーティーに呼ばれ余興をして小遣い稼ぎをしながら暮らす二人。やがて家の壁にゲイ差別をする落書きをされる。居住区には厳格なキリスト教信者が多いのだ。隣人の牧師も、フレッドに男との二人暮らしに意見する。
一方で、フレッドには一人息子がいたのだが、ゲイであることをカミングアウトしたことから追い出したという事情があった・・・

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014で『約束のマッターホルン』のタイトルで上映。最優秀作品賞を受賞。
(白)

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SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014で長編コンペティション部門で最優秀作品賞を受賞した折、主演俳優の一人、ポーギー・フランセンさんが登壇。
男との二人暮らしに意見する隣人の牧師役。実は羨ましく思っている節もあるという役どころ。映画の中では、ちょっと陰険で嫌なヤツなのですが、授賞式には、なぁんとビーチサンダルで登壇! 結構、いい人そう!
「寛容」ということを考えさせられる物語でした。
原題が、なぜ『マッターホルン』なのかは、ぜひ映画をご覧になって確認を。(咲)



2013年/オランダ/カラー/シネスコ/86分
配給:アルバトロス・フィルム
http://kodokunosusume.com/
★2016年4月9日(金)新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
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2016年01月24日

ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る(原題Om de wereld in 50 concerten:)

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監督:エディ・ホニグマン
撮影:フフト・ヒルタイ
出演:ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)

オランダのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団は、ウィーン・フィル、ベルリン・フィルと並ぶ世界三大オーケストラ。2013年に創立125年を迎えるのを記念して、一年に50回の公演を開催することになった。このワールドツアーに密着し、舞台裏や指揮者、楽団員、コンサートを楽しむ観客たちを撮影した公式記録映画。

エディ・ホニグマン監督は山形国際ドキュメンタリー映画祭にたいへん縁の深い方で、これまで何度も作品が上映され受賞もしています。この楽団の公式記録映画として撮影された本作は、観客が興味を持ちそうなバックステージ、練習風景がおさめられています。それだけでなく、オフの楽団員のようす、世界各地でコンサートを楽しみにしているファンたちの表情を細やかにとらえていて、門外漢の私にも音楽の良さがしみじみと伝わってきました。厳しい生活を送っている南アフリカの学生たちが、楽器の演奏中に見せるはじける笑顔、ステージを食い入るように見る強い視線に生の音楽の力をびんびんと感じます。(白)

2014年/オランダ/カラー/ビスタ/98分
配給:S・D・P
(C)2014 Cobos Films & AVRO
http://rco-movie.com/
★2016年1月30日(土)より渋谷ユーロスペース 他全国順次公開
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2014年12月20日

みんなのアムステルダム国立美術館へ(原題:HET NIEUWE RIJKSMUSEUM)

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監督:ウケ・ホーヘンダイク
撮影監督:サンダー・スヌープ、グレゴール・メールマン
録音:マーク・ウェスナー
音響:ミシェル・ショーピン
音楽:モーリス・ホルストフイス

2004年にスタートしたオランダ・アムステルダム国立美術館の改修工事。2008年には完成の予定だったが、遅れに遅れて10年。ようやくグランドオープンの日を迎えた。これは、その間の様々な作業や話し合いや揉め事まで、あますところなく映し出したドキュメンタリー。

レンブラントの「夜警」、フェルメール「牛乳を注ぐ女」など美術の教科書などで一度は目にしたことのある名画を所蔵している美術館の改修がなにゆえそんなに手間取ったのでしょうか?日本なら絶対映させないだろう内輪の会議や、サイクリスト協会との攻防シーンまであります。自転車が通れない!とのクレームに設計変更を余儀なくされたり、長丁場にすっかり疲れてしまった館長が退陣。新館長が選出されます。このへんの人事も面白いです。美術館が運営されるために多くの人々の力が寄り集まっていることを内側から見せてもらいました。
一方施設の改修が滞っても、名画の修復は粛々と進み、アジア館には日本の金剛力士像が搬入されます。小さなお寺にひっそりと保存されていた力士像を見つけてくれたアジア館長さんにお礼を言いたくなります。日本の学芸員さんは臍を噛んだでしょうか?数々の名画を至近距離で観られて得した気分です。(白)

『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』(2008年)で、改修工事が遅れている最大の理由が、美術館の真ん中にある通路が自転車で通り抜けなくなることへの市民団体の反対運動であることが描かれていました。という次第で、続編である本作で、その通路がどのように解決されたのかを確認するのが楽しみでした。
新所長の椅子を巡る候補者の思惑も、実に楽しく描かれています。
そして、なにより、日本の金剛力士像搬入の折のお坊様たちによるダイナミックなご祈祷には、感動を覚えました。(咲)


2014年/オランダ/カラー/97分
配給:ユーロスペース
http://amsmuseum.jp/
★2014年12月20日(土)渋谷 ユーロスペースにて上映
posted by shiraishi at 19:21| Comment(0) | TrackBack(0) | オランダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする