2017年04月23日

ノー・エスケープ 自由への国境   原題:DESIERTO

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監督:ホナス・キュアロン
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、ジェフリー・ディーン・モーガン

灼熱の砂漠を歩く人々。やがて、鉄条網が現れる。国境! 引っかからないようにくぐり抜け、さらに砂漠を進むと、どこからか銃弾が飛んでくる。ちりちりになり、15人いたのが、いつの間にか男女二人になる。残り少ない水を分け合って飲み、怪我した女性を置いて、偵察にいく男。襲撃者は執拗に追いかけてくる。隙を狙って襲撃者の車に乗り込み、逃避行が始まる・・・

舞台は、メキシコとアメリカの国境地帯に広がる砂漠。国境には、簡単にくぐり抜けられる鉄条網が続いている。ここにトランプ大統領は、分離壁を建設しようとしているのかと、なんだか悲しく、虚しくなる。苛酷な砂漠を越えてでもアメリカに移民したいメキシコの人たち。誰だって故国で幸せに暮らせれば、移民などしたくないはず。例え、幸せに暮らしていたとしても、どこにでも行く自由は誰にでもあるはず。国境を閉ざそうなどという心の狭い人がいる限り、世界は平和にならないとつくづく思う。そんなことを、ずっしり思わせてくれた映画。ガエル・ガルシア・ベルナルも、美男子ぶりを封印して不法移民を試みるのに必死な男を体現していて、そこまでして国を離れなければならない人たちが世界に数多くいることに思いが至り、心が痛みました。(咲)

2015年/メキシコ=フランス/88分/ヴィスタサイズ
配給:アスミック・エース
公式サイト:http://desierto.asmik-ace.co.jp
★2017年5月5日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
posted by sakiko at 10:15| Comment(0) | TrackBack(0) | メキシコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月28日

或る終焉(原題:Chronic)

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監督・脚本:マイケル・フランコ
撮影:イブ・カープ
出演:ティム・ロス(デヴィッド)、サラ・サザーランド(ナディア)、ロビン・バートレット(マーサ)、マイケル・クリストファー(ジョン)

デヴィッドは妻や娘と別れて一人暮らしの介護士。担当している終末期の患者の家を訪ねて、親身なケアをする。自分の健康管理のためランニングも欠かさない。妻とは息子ダンの死以来疎遠のままだけれど、娘のナディアとはときどき会っている。患者との距離のほうがよほど近くて親密だ。患者の家族に嫉妬されるほどに。がんの末期で苦しむ患者マーサに、安楽死するのを手伝ってと頼まれるデヴィッドは…。

マイケル・フランコ監督は1979年生まれ。長編2作目の『父の秘密』(2012)で第65回カンヌ映画祭「ある視点」部門グランプリ、3作目の本作は第68回カンヌ映画祭脚本賞を受賞した俊英監督です。30半ばの若い監督がなぜこんな題材を?と資料を読めば「祖母が倒れて要介護になった」体験から生まれたのだとありました。介護する人、される人双方に細やかな心配りがあるのも納得です。
冒頭でやせ衰えた女性患者の身体を丁寧に洗うシーンがあり、在宅女性患者に男性介護士が?とちょっと驚きました。動けないわりに元気な患者ジョンにはぴったりですが、家族にセクハラだと言われてしまうんです。淡々と仕事を続けるデヴィッドの過去に何があったのか、デヴィッドが何を考えているのか観客はだんだん気になってきます。ラストまで気をぬくことができませんでした。
ティム・ロスは65回カンヌ映画祭で審査委員長をつとめ、フランコ監督にトロフィーを授与。本作では主演だけでなく製作総指揮に名を連ねています。(白)


2016年/メキシコ・フランス合作/カラー/ビスタ/94分
配給:エスパース・サロウ
(c)Lucia Films-Videocine-Stromboli Films-Vamonos Films-2015 (c)Credit photo (c)Gregory Smit
http://chronic.espace-sarou.com/
★2016年5月28日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開
posted by shiraishi at 01:51| Comment(0) | TrackBack(0) | メキシコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月24日

闇のあとの光   原題:Post Tenebras Lux

監督・脚本・プロデューサー:カルロス・レイガダス 
出演:アドルフォ・ヒメネス・カストロ、ナタリア・アセベドほか

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(C) No Dream Cinema, Mantarraya Productions, Fondo para la producci'on Cinematogr'afica de Calidad (Foprocine-Mexico), Le Pacte, Arte France Cinema


薄暗い大地。牛が走る、女の子が追いかける、犬が走る、馬が駆ける・・・ そして落雷。
家の中、赤く光る不思議な物体がうろついている。
森の中の一軒家で幸せそうに暮らす若い夫婦とふたりの子供たち。兄エレアサルと妹ルートゥ。まだ幼い。
静寂を打ち砕く犬の悲鳴。夫ファンが一匹の犬をほかの犬を噛んだとして殴ったのだ。
夫ファンがアルコールや薬物依存症の人たちの懺悔の会に参加している。ポルノ映像を毎晩8年間も見続けているネット中毒だと告白するファン・・・
ラグビー場。10代の男の子たちがウォーミングアップしている。汗がほとばしる。
ゴージャスなレストラン。少年少女に成長したアレアサルとルートゥが親戚の集まりに参加している。
太陽が満ち溢れた浜辺。青年になったアレアサルとルートゥ・・・

不思議な光景が次々にあらわれて、なんだか訳がわからないままに映画は終わりました。でも、一つ一つの場面が妙に脳裏に残っているのです。最初の幼い時代の子供たちは、監督の実のお子たち。大地を駆け回る女の子の可愛いこと! 後に出てくる若者たちが、この子供たちの成長した姿だとは、実はとっさにはわかりませんでした。なにしろなんと説明したらいいのかわからない映画の筋なのです。
それにしても、ちょっと滑稽にも思える赤い物体。何を象徴していたのでしょうか・・・ (咲)


メキシコ=フランス=ドイツ=オランダ/2012年/カラー/115分
配給:フルモテルモ、コピアポア・フィルム 
公式サイト:http://www.yaminoato.com/
★2014年5月31日(土)ユーロスペースほか全国順次ロードショー
posted by sakiko at 21:55| Comment(0) | TrackBack(0) | メキシコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする