2017年03月15日

わたしは、ダニエル・ブレイク 原題:I, Daniel Blake

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監督:ケン・ローチ
出演:デイヴ・ジョーンズ、 ヘイリー・スクワイアーズ

イギリス北東部ニューカッスル。59歳になるダニエル・ブレイクは最愛の妻を看取り、今は一人暮らし。心臓発作を起こし、医者から大工の仕事を止められ雇用支援手当てを受けている。紋切り型の継続審査で、心臓が悪いと言っても聞いて貰えず、「就労可能・手当中止」の通知を受け取る。窓口に電話するも、1時間48分も待たされ、「サッカーの試合が終る位待たされた」とつぶやく。あげく、苦情申し立てはネットからと言われる。
そんな折、遅刻して給付金を受け取れず、悲痛な声で担当者に申し立てしている若い女性ケイティを見かける。思わず加勢するダニエル。事情を聞いてみれば、ロンドンから役所が斡旋したアパートに越してきたシングルマザー。ぼろアパートの修理をしたり、食料や日用品が支給されるフードバンクに付き添ったりと、ダニエルは手助けする・・・

イギリスといえば、「ゆりかごから墓場まで」国が面倒をみてくれるものと思っていたら、どうやらそうでもないらしい。「お役所仕事」に振り回されるのも、どこかの国と同じ。
苦情申し立てするのに、職業安定所で慣れないパソコンに向かい、四苦八苦してやっと入力したら、フリーズして時間切れ。あるある! こういう経験!と、同情します。
ほんとに今は何でもネットから。アナログ人間には住み難い世の中になってしまいました。
苦情くらい、ちゃんと人間が対応してほしいもの。
ダニエルは自身も窮地に立たされているのに、人を気遣う心の余裕を持っていて、見習いたい。
そして、最後にダニエルは、理不尽な役所の対応に、「人間、尊厳を失ったら終わり」と言い放って思い切った行動に出ます。声をあげなければ、何も変わらない!
これまで、社会的弱者に寄り添うように映画を作り続けてきたケン・ローチ監督。80歳を目前に、またもや社会に一石を投じてくれた一作です。(咲)


2016年/イギリス・フランス・ベルギー/1時間40分/アメリカンビスタサイズ/カラー/5.1ch
配給:ロングライド
公式サイト:http://danielblake.jp
★2017年3月18日(土)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国順次公開
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2017年01月21日

僕と世界の方程式  原題:X+Y  

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監督:モーガン・マシューズ
出演:エイサ・バターフィールド(『ヒューゴの不思議な発明』)、サリー・ホーキンス、レイフ・スポール、エディ・マーサン

ネイサンは、人とのコミュニケーションは苦手だけど、数学は大得意の少年。大好きだった父親が事故で突然亡くなり、ますます周囲に心を閉ざしてしまう。母親ジュリーは、普通の学校生活に適応できない息子のために、数学の個人教師を探す。学校から紹介してもらった高校教師のマーティンは、ネイサンに可能性を感じて、全力で数学を教える。やがて、ネイサンは数学オリンピックのイギリス代表に選ばれ、台北でのトレーニング合宿に参加する。そこでネイサンは中国チームの聡明で美しい少女チャン・メイとパートナーを組むことになる・・・

心を閉ざして、数学にしか興味のなかった少年が、だんだん心を開いていく様が生き生きと描かれていて爽やかな作品。中国の美少女を演じたジョー・ヤンがとてもキュート。北京電影学院を卒業した中国系イギリス女優。

ネイサンは自閉症スペクトラムと診断されているのですが、1月21日公開の『ザ・コンサルタント』の主人公クリスチャン・ウルフも、自閉症スペクトラムで、やたら数字に強い人物でした。他者との係わりが苦手な反面、集中力が凄いのですね。
ネイサンの個人教師を務めた教師マーティンは、かつて数学オリンピックにも挑戦したこともあるけれど、多発性硬化症のため、すべてを諦めていた人物。教えることで、生き甲斐を見つけます。
人は一人では生きていけないことを強く感じさせてくれます。

ところで、ネイサンが挑戦する数学オリンピックの本番の会場は、イギリスのケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ。到着した時に、ここは偉大な数学者の数々が学んだところと、名前が挙がる中に、ラマヌジャンの名前が。 『奇蹟がくれた数式』 (2016年、イギリス/マシュー・ブラウン監督)で、その人生が描かれた1920年、32歳の若さでこの世を去ったインドの天才数学者です。私は映画で初めてラマヌジャンの名前を知ったのですが、インドだけでなく、数学の世界では名を轟かせている人物であることを実感しました。(咲)


☆イギリスでは『X+Y』、アメリカでは『A Briliant Young Mind』のタイトルで公開されました。

2014年/イギリス/111分/カラー/シネマスコープ
後援:ブリティッシュ・カウンシル
製作:BBC Films
配給:レスペ
公式サイト:http://bokutosekai.com
★2017年1月28日(土)、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー
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2016年12月04日

ミス・シェパードをお手本に   原題:The Lady in the Van

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監督: ニコラス・ハイトナー
出演: マギー・スミス、アレックス・ジェニングス、ジム・ブロードベント

ロンドンの北にある静かな住宅地カムデンに引っ越してきた劇作家のベネット(アレックス・ジェニングス)。近くには、路上に止めた黄色いおんぼろ車で暮らす名物女性ミス・シェパード(マギー・スミス)がいて、近所の人たちが時折差し入れをしている。ある日、路上駐車をとがめられているのを見かけたベネットは、親切心から自宅の駐車場に招き入れる。ほんのちょっと避難場所のつもりで声をかけたのが運の尽き。高飛車な態度をとるミス・シェパードだが、時折フランス語でつぶやき、ピアノも弾けるらしい謎めいた彼女を、なぜだか見捨てることのできないベネット。なんと、ミス・シェパードは亡くなるまでの15年、そこに居続けた。そして明らかになる過去・・・

イギリス屈指の劇作家アラン・ベネットの経験に基づく“ほとんど本当の話”。
ミス・シェパードを演じたイギリスの名女優マギー・スミスが、16年間にわたり主演してきた舞台劇の映画化。
映画は、カムデンのグロスター・クレセント通り23番地にある実際にベネットとミス・シェパードが暮らした家で撮影されました。
だんだん老いてくるミス・シェパード。「介護は汚れ物の世話だ」という言葉がぐっと迫ります。実はベネットは自分の老いた母親は養護施設に預かってもらっているのに、自宅でミス・シェパードの下の世話までしているのです。情がうつって見捨てられなくなったとはいえ、なかなかできることではないと感服です。自問自答するベネットと分身。本音もちらりと見えて、そうそう!と楽しい。(咲)


2015年/イギリス/英語/104分/アメリカンビスタ
後援:ブリティッシュ・カウンシル、英国政府観光庁
配給: ハーク
公式サイト:http://www.missshepard.net
★2016年12月10日 (土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー!
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2016年11月27日

マダム・フローレンス! 夢見るふたり(原題:Florence Foster Jenkins)

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監督:スティーブン・フリアーズ
脚本:ニコラス・マーティン
撮影:ダニー・コーエン
音楽:アレクサンドル・デプラ
出演:メリル・ストリープ(フローレンス・フォスター・ジェンキンス)、ヒュー・グラント(シンクレア・ベイフィールド)、サイモン・ヘルバーク(コズメ・マクムーン)、レベッカ・ファーガソン(キャサリン)、ニナ・アリアンダ(アグネス・スターク)

1944年。ニューヨーク社交界の大物マダム、フローレンス・フォスター・ジェンキンスは、親から受け継いだ莫大な遺産を愛する音楽と音楽家たちのために惜しまずに使ってきた。オペラが好きなフローレンスはソプラノ歌手になる夢を抱き続け、専門家の指導を受けていた。サロンに人を集めては自ら歌い、人々は賞賛したが実は彼女は絶世の「音痴」。その事実を本人だけが知らなかった。夫のシンクレアがいつも周到に根回しし、彼女への悪評を耳に入れないように苦労していたからなのだが、彼女は舞台に立ち、大勢の聴衆の前で歌うのを夢みていた。伴奏者として雇われたサイモンは、すぐに彼女の欠陥に気づきシンクレアに無謀だと忠告するが、いつしか天真爛漫な彼女の魅力に引き込まれていく。

10月25日、東京国際映画祭のオープニング作品としていち早く上映されました。来日したメリル・ストリープの映像をご覧になった方も多いことでしょう。歌に定評のあるストリープですが、演技のためにちゃんと正しく歌うレッスンをしてから少しずつ外していったのだそうです。
フローレンス・フォスター・ジェンキンスは実在の女性で「音痴の歌姫」として有名、彼女の歌声はCDになっています。同じ題材を扱ったフランス映画『偉大なるマルグリット』(カトリーヌ・フロ主演/2月公開)もありますが、不実な夫にマルグリットが苦しみ、さらに歌に打ち込んでいるのが哀しいです。
史実に近いのはこのイギリス版のようで、夫シンクレアとの夫婦愛が描かれています。持病はあっても夢を捨てずに前向きなフローレンスと、演じるストリープの魅力がないまぜになって、元気の出る作品でした。これまで知らなかったサイモン役のコズメ・マクムーンがとても愉快で、しかも本当にピアノを弾いているのに驚きました。吹き替えではなく子どもの頃からピアノを習っていたそうです。(白)


2016年/イギリス/カラー/シネスコ/111分
配給:ギャガ
(C)2016 Pathe Productions Limited. All Rights Reserved
http://gaga.ne.jp/florence/
★2016年12月1日(木)TOHO シネマズ 日劇ほか全国公開
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2016年10月16日

奇蹟がくれた数式   原題:The Man Who Knew Infinity

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監督:マシュー・ブラウン
主演:デヴ・パテル(『スラムドッグ$ミリオネア』)、ジェレミー・アイアンズ、デヴィカ・ビセ、トビー・ジョーンズ、ドリティマン・チャタージー、アルンダティ・ナグ

1920年、32歳の若さでこの世を去ったインドの天才数学者ラマヌジャンの物語。
英国植民地時代のインド。大学を出ていないことから、インドの数学者たちに受け入れてもらえないラマヌジャン。研究成果をイギリス、ケンブリッジ大学に送る。才能に驚いた数学者ハーディ教授は、ラマヌジャンをイギリスに招聘する。母親は遠い異国に行くことを反対するが、新婚の妻に、すぐに呼び寄せると言い残してイギリスに旅立つ。1914年のことだ。
ハーディ教授の後押しで、研究の一つをロンドンの数学会の会報に発表し、歓喜するラマヌジャン。だが、ハーディ教授も彼の才能を認めながらも、彼の”直感“は否定する。
やがて、第一次世界大戦に英国が参戦したことが、ラマヌジャンの運命に影を落とす・・・

インドといえば、ゼロを発見した国。そして、二桁の掛け算を小さい頃から暗記している国。そんなインドで、数学者ラマヌジャンは、誰もがその名を知る有名人。ラマヌジャンの考え方は、いまだに世界の数学者たちに影響を与えているそうです。例えば、コンピューターのセキュリティに用いられる数学の分野にも応用されているのだとか。
天才数学魔術師と呼ばれるほどのラマヌジャンですが、戦争で野菜不足となったことが、菜食主義者の彼には打撃だったようです。愛妻をすぐに呼び寄せることができなかったことも、命を縮めたのではないでしょうか。
権威主義がはびこる中で、自身の研究成果をなんとか認めてもらおうとするラマヌジャンの姿に、なにごとも諦めてはいけないと勇気づけられました。(咲)


2016年/イギリス/英語/108分/スコープ/5.1ch
配給:KADOKAWA
公式サイト:http://kiseki-sushiki.jp
★2016年10月22日(土)より角川シネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ、角川シネマ新宿他全国ロードショー
posted by sakiko at 08:55| Comment(0) | TrackBack(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする