2018年12月23日
ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス 原題:Westwood: Punk, Icon, Activist
監督 : ローナ・タッカー
エリザベス女王から「デイム」の称号を与えられた英国のファッションデザイナー、ヴィヴィアン・ウエストウッド。77歳にして世界数十カ国、100店舗以上を展開する独立ブランドのトップかつ現役デザイナー。
本作は、生涯現役を誓う彼女を追ったドキュメンタリー。
米国アカデミー賞Rの授賞式では、メリル・ストリープやヘレン・ミレンなど数々の女優が彼女のドレスでレッドカーペットを歩き、映画『セックス・アンド・ザ・シティ』ではサラ・ジェシカ・パーカー扮する主人公キャリーの大胆なウエディングドレスで登場。華やかな成功をおさめている彼女も、1985年には無一文になる挫折を味わっている。
3年間の密着取材で、現場でテキパキ指示する姿や、パートナーとのエピソード、そして、環境保護、人権保護問題への支援活動を積極的に行う姿を映し出している。
とにかくパワフル! 妻、母親としての役目も果たしながら、自らデザインして事業を拡大し、さらには社会に還元する資金援助も。
「無知だからこそ、世界で何が起きているのか知ろうとした」
「大事なのは人目を引くこと、即行動すること」
「引退した人が自由な余生を送るように、私の意志で今すべき事をしている」等々。
彼女の言葉には、人生のヒントもいっぱい。
元気を貰える映画です。(咲)
女王陛下からデイムの称号を授けられ、英国の「今年のデザイナー」賞を3回受賞しているデザイナー、ヴィヴィアン・ウエストウッド。3回結婚し、2回目の結婚相手の嫌がらせにより、生活保護を受けるほど困窮したことも。そこを踏ん張り、世界数十カ国、100店舗以上を展開する独立ブランドまでに育て上げた。現在は25歳年下の現在のパートナーとブランドを二人三脚で守る。本作は77歳にして生涯現役を宣言する彼女の波瀾万丈な人生を紐解くドキュメンタリー作品。
「世界のことを知りたい」。この好奇心が彼女の原点。知的好奇心が満たされず、最初の夫とは子どももいたが、3年で離別する。そして、2度目の夫、マルコムがプロデュースするバンドの衣装をデザインして、パンク・ファッションを生み出した。彼女が才能を感じたマルコムもやがて停滞。ヴィヴィアンがマルコムを越えてしまったのだ。この先の男女関係はよくある話。しかし、母と息子が力を合わせて乗り越えた。彼女のパワフルな生き方は真似できるものではないが、勇気はもらえる。
家族で始め、守ってきたブランドも、気がつけば世界規模の広がりに。その過程で判明する意見の相違。息子と道を分かつことに。そしてトップの意思がきちんと伝わっていない場面が出てくる。それは組織の問題ではなく、彼女の老化した記憶力の問題か。ともあれ、お金にこだわらず、自分の好きなものだけに囲まれていたい彼女と組織としての成長は相反する。図らずも組織の在り方も炙り出す。他のブランドが大企業の傘下に入っている理由がわかった気がした。(堀)
2018年/イギリス/カラー/5.1ch/ビスタ/84 分
配給:KADOKAWA
公式サイト:http://westwood-movie.jp/
★2018年12月28日(金)角川シネマ有楽町、新宿バルト9ほか全国順次ロードショー
2018年12月09日
メアリーの総て 原題:Mary Shelley
監督:ハイファ・アル=マンスール(『少女は自転車にのって』)
出演:エル・ファニング、ダグラス・ブース、スティーブン・ディレイン、ジョアンヌ・フロガット、
200年前、フランケンシュタインを生み出したのは、わずか18歳のメアリー・シェリーだった!
1800年代初頭のイギリス。作家を夢見る16歳の少女メアリー。有名な思想家の母は自分を生んで亡くなり、貧しく誇り高い作家の父と暮らしていた。継母と折り合いが悪いのを案じて、父はメアリーをスコットランドの友人のもとに送る。そこで開かれた読書会で、メアリーは異端の天才詩人と評判のパーシー・シェリーと出会い、恋に落ちる。義妹クレアが病に倒れたという嘘でメアリーはロンドンに呼び戻される。そんなメアリーを追いかけてくるほど、パーシーはメアリーにぞっこんだったが、彼には妻子がいた。反対を押し切り駆け落ちし、メアリーは女の子を産むが、借金の取り立てから逃げる途中で娘は亡くなってしまう。失意のメアリーは、義妹クレアに誘われてスイスの詩人・バイロン卿の別荘に赴く。そこで、「皆で一つずつ怪奇談を書いて披露しよう」と持ちかけられる・・・
孤独な怪物フランケンシュタインの物語には、メアリーの人生経験が深く投影されているとのこと。わずか18歳で、それほど波乱に満ちた経験をしていることに驚かされます。
プロデューサーのエイミー・ベアーが、数多くの脚本からこの物語を選び、さらに監督をサウジアラビア出身のハイファ・アル=マンスールを選んだことに興味津々。女性の権利が著しく奪われているサウジアラビアで育ったハイファ・アル=マンスールは、「自分を取り巻く慣習からなんとか解放されるために、自身を見つけようとしながら成長する若い女性の物語」に強く惹かれたといいます。エイミー・ベアーの思惑通り、素晴らしい作品に仕上がっているのですが、いつかまた、自身の経験を生かして、サウジアラビアを舞台に映画を紡いでほしいものです。(咲)
2017年/イギリス・ルクセンブルク・アメリカ/ 121分/ギャガ/DCP
配給: ギャガ
公式サイト:https://gaga.ne.jp/maryshelley/
★2018年12 月15日(土) シネスイッチ銀座、シネマカリテ 他全国順次ロードショー.
暁に祈れ(原題:A Prayer Before Dawn)
監督:ジャン=ステファーヌ・ソヴェール
原作:ビリー・ムーア
脚本:ジャン=ステファーヌ・ソヴェール、ニック・ソルトリーズ、ジョナサン・ハーシュベイン
製作:リタ・ダゲール
撮影:ダヴィッド・ウンガロ
音楽:ニコラス・ベッカー
編集:マーク・ブクワ
出演:ジョー・コール、ポンチャノック・マブラン、ビタヤ・パンスリンガム、ソムラック・カムシン
ボクサーのビリー・ムーア(ジョー・コール)は、タイで自堕落な生活を過ごすうちに麻薬中毒者になってしまう。ある日、警察から家宅捜索を受けたビリーは逮捕され、タイで最も悪名高い刑務所に収容される。そこは殺人、レイプ、汚職が横行する、この世の地獄のような場所だった。死と隣り合わせの日々を過ごすビリーだったが、所内に設立されたムエタイ・クラブとの出会いが彼を変えていく。
危ない雰囲気が充満する路地裏。喧騒が溢れる。タイ語には字幕がつかないので、何を言っているのか、さっぱりわからず、見ていていらついた気分になる。これこそ、主人公ビリーの気持ちであろう。
イギリス人ボクサーのビリー・ムーアが再スタートを切ろうとしたタイで刑務所に服役し、汚職・レイプ・殺人が蔓延する中、ムエタイでのし上がっていったことを描いた自伝ベストセラー小説をベースにした作品である。ビリーを演じたのは、ポスト“トム・ハーディ”の呼び声高いジョー・コール。『きみへの距離、1万キロ』で演じた中東の女性に恋をするドローン・オペレーターから一転、ボクサー役を務めるため何か月も肉体改造に励み、鋼の肉体を手に入れ、過酷な30日間の撮影に挑んだ。
ビリーが服役する刑務所はまるで、映画でよく見る捕虜収容所。広めのスペースだが、収容人数を超えると思われる囚人がうごめき合う。不衛生極まりない状況だ。しかも、囚人役の大半に元囚人たちを起用。体験に基づいた迫真の演技に、思わず身の毛がよだつ。
しかし、最初こそ言葉が通じず、孤立していたビリーも次第に囚人仲間と絆を育んでいき、その絆が苦難を乗り越える力となっていく。どんな状況でも希望は捨ててはいけないのだと作品は伝えてくれる。
カンヌ国際映画祭の2017年ミッドナイト・スクリーニング部門にて大きな話題となり、批評家サイト、ロッテン・トマトでも96%という高評価を獲得した。(堀)
2017年/イギリス・フランス/英語、タイ語/シネスコ/117分
配給:トランスフォーマー
(C) 2017 - Meridian Entertainment - Senorita Films SAS
http://www.transformer.co.jp/m/APBD/
★2018年12月8日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷&有楽町、シネマート新宿ほか全国順次公開
2018年12月02日
アース:アメイジング・デイ(原題:Earth:One Amazing Day)
監督:リチャード・デイル、ピーター・ウェーバー、ファン・リーシン
脚本:フランク・コットレル・ボイス、ゲリン・ヤン
監修:新宅広二
音楽:アレックス・ヘッフェス
ナレーター:佐々木蔵之介
日の出から日の入りまで1日の太陽の流れを軸に、動物たちに限りなく近づき、同じ目線で見ているかのような迫力の映像で生き物の姿を捉えたネイチャー・ドキュメンタリー。
全世界で120億円以上の興行収入を叩き出した『アース』を制作したBBCアース・フィルムズが最新の4K技術や超軽量カメラ、1秒に1,000コマ以上の撮影を可能にしたハイスピード4Kカメラ、200台のドローンを駆使して、世界22カ国でロケを行い、生き物たちの貴重な姿を撮影した。
ウミイグアナの赤ちゃんはヘビの大群からの脱出に挑み、シマウマの親子はサバイバルな移動を続ける。ペンギンの親は過酷な通勤を耐え、ヒナに餌を与える。穏やかそうに見えるキリンの世界にも縄張り争いはある。ヒグマは季節の変わり目に冬毛を落とそうと、体を木に擦り付けて腰を揺らす。その様はちょっとセクシーで笑ってしまう。ナマケモノが求愛相手のもとに必死に出掛けるが、そこで知る状況に同情したくなる。マッコウクジラは大きな体を垂直に立て、家族みんなで眠りにつく。技術の進歩が見せてくれる動物の世界にワクワクする。
私たちが住む地球では多くの生命が生き延びていくためにさまざまな活動をしている。いま、ここに生きていることは奇跡の積み重ねかもしれない。(堀)
亡くなった父が動物好きで、子どものころからよく一緒にテレビの番組を見ていた。父も私も自然豊かな(というより、それしかない)島で育ったので、自然に生きている姿をこそっと見られる映像が嬉しい。以前『WATARIDORI』(2003年)で鳥と一緒に空を飛んでいるようで、ニルスもこうだったかもと想像しました。前作の『アース』(2007年)よりもさらに進んだカメラや技術が、どうやって撮ったのだろうと驚くほどの映像を見せてくれる。いのちはただ生きることに向かうのに、金銭欲にまみれて他者を省みない人間は自滅していくだろうな、と思う。(白)
2017年/イギリス・中国/5.1ch/アメリカン・ビスタ/94分
配給:KADOKAWA
(C) Earth Films Productions Limited 2017
https://earthamazingday.jp/
★2018年11月30日(金)、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
2018年11月10日
ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲(原題:Johnny English Strikes Again)
監督:デビッド・カー
脚本:ウィリアム・デイビス
撮影:フロリアン・ホーフマイスター
音楽:ハワード・グッドオール
出演:ローワン・アトキンソン(ジョニー・イングリッシュ)、ベン・ミラー(ボフ)、オルガ・キュリレンコ(オフィーリア)、ジェイク・レイシー(ヴォルタ)、エマ・トンプソン(首相)
イギリスの諜報機関「MI7」が大規模なサイバー攻撃を受け、現役スパイたちの情報が漏洩してしまった。動けるのはすでに隠居している元スパイのみ。子どもたちにあやしげなスパイ術を教えていたジョニー・イングリッシュも召集された。相棒のボブとともに、ハッカーを探し出そうと意気込むジョニー、アナログ人間の二人には荷が重過ぎる捜査だった・・・。
『ジョニー・イングリッシュ』(2003)、『ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬』(2011)に続く第3弾。おなじみのスパイ映画のパロディを全力で脱力してやっています(?)。あいかわらず、とんちんかんなジョニー・イングリッシュは、何かやらかすだろうという期待にたがわないはちゃめちゃぶり。首相も美女も怖くない。アナログなおっさんのやることなすこと、最先端のスキルを持つ敵には想定外のことばかり。CG満載の新作映画を見慣れた目には、なんだかなつかしい秘密兵器の数々や、カーチェイスのシーンが出てきました。女優陣もなかなか楽しませてくれました。あははと笑えて元気になれるこういう映画もたまにはいいですよ。(白)
2018年/イギリス/カラー/シネスコ/89分
配給:東宝東和
(C)2018 Universal Studios and Studiocanal SAS
https://johnnyenglish.jp/
★2018年11月9日(金)ロードショー