2017年07月23日

静かなる情熱 エミリ・ディキンスン  原題:A Quiet Passion

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監督:テレンス・デイヴィス
出演:シンシア・ニクソン、ジェニファー・イーリー、キース・キャラダイン

アメリカを代表する女性詩人エミリ・ディキンスン(1830−1886)のベールに包まれた半生を描いた物語。

清教徒主義の影響を受けるアメリカ東部の上流階級で生まれ育ったエミリ。ある時を境に、白いドレスを身にまとい、自然に包まれた屋敷から出ることなく、1986年、55歳の生涯を閉じた。エミリの死後、妹のラヴィニアは姉の整理ダンスの引出から、清書されて46束にまとめられた1800篇近くに及ぶ詩稿を発見する・・・

エミリの詩は、彼女が生きている間にはほとんど評価されることがなかったそうですが、死後発見された詩が発行され、その後、多くの芸術家に影響を与えています。サイモン&ガーファンクルは彼女にまつわる歌「エミリー・エミリー」「夢の中の世界」をアルバムに収め、ターシャ・テューダーは「まぶしい庭へ」で挿絵を手がけ、チャールズ・シュルツの漫画「スヌーピー」の題材にもされています。ウディ・アレンもエミリのファン。
こんなにも多くの芸術家に愛された詩人エミリ・ディキンスンのことを、私は全く知りませんでした。孤独な半生を送ったエミリの胸のうちを垣間見ることのできる一作。アメリカも相当男尊女卑の社会だったことも知ることができました。(咲)


2016年/イギリス・ベルギー/英語/カラー/125分/シネマスコープ/ドルビーデジタル/DCP
配給:アルバトロス・フィルム、ミモザフィルムズ
公式サイト:www.dickinson-film.jp
★2017年7月29日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー
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2017年05月21日

光をくれた人(原題:The Light Between Oceans)

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監督・脚本:デレク・シアンフランス
原作:M・L・ステッドマン「海を照らす光」(早川書房刊)
撮影:アダム・アーカポー
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演:マイケル・ファスベンダー(トム・シェアボーン)、アリシア・ヴィカンダー(イザベル)、レイチェル・ワイズ(ハナ)、ブライアン・ブラウン(セプティマス・ポッツ)、ジャック・トンプソン(ラルフ・アディコット)

1918年オーストラリア。トム・シェアボーンは第一次世界大戦から深い心の傷を抱えて戻った。人と関わらずにすむ無人の孤島・ヤヌス島の灯台守に志願する。3ヶ月の試用期間をすぎて本採用となり、契約のために町に戻ったトムは生命力に溢れた娘イザベルに出会う。町の名士である校長の一人娘のイザベルもトムに好意を抱き、二人は手紙をかわすようになった。やがて祝福されて結婚し、夫婦はヤヌス島で幸せな新婚生活を送る。
イザベルが妊娠して喜んだのもつかの間、流産してしまう。悲しみを乗り越え、細心の注意を払って2度目の妊娠期間を過ごしたにも関わらず、死産となってしまった。イザベルが立ち直れず、夫婦が悲劇に沈んでいたとき、沖に漂流するボートを見つけた。すでに亡くなっている男性と泣き声をあげる女の子の赤ちゃんがいた。トムは早速打電しようとするが、イザベルは赤ちゃんを休ませてからと懇願する。一日母子のように過ごしたイザベルは、もはや手放すことができなくなっていた。イザベルの頼みに負けたトムは悪いことと思いつつ遺体を埋め、イザベルが早産したことにする。女の子をルーシーと名付け、二人は我が子として愛情を注いで育てていく。

イザベルは太陽のように明るく、戦争で傷ついたトムを癒しますが、2度の流産で悲しみの淵に沈んでしまいます。そんなときに海から赤ちゃんがやってきたら、イザベルならずとも“神様からの贈り物”と思いたくなるでしょう。愛する妻が喜ぶことをしてやりたいと思うのも道理。二人が救わなければすでになかったはずの命ですが、実の親のことを考えないのは、やはり罪でしょうね…。案の定、実の母親であるハナと出会ってもっと辛い選択をしなければならなくなりました。あなたがトムだったら、イザベルだったらどんな選択をしたでしょうか?
島の名前“ヤヌス”とは前後二つの顔を持つローマ神話の出入り口と扉の神。二つの顔が違うものを見るので、二つの間で引き裂かれるトムとイザベルを象徴しているように思えます。(白)


2016年/イギリス・ニュージーランド・アメリカ合作/カラー/シネスコ/133分
配給:ファントム・フィルム
(C)2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC
http://hikariwokuretahito.com/
★2017年5月26日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
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2017年05月14日

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2016/17 ロイヤル・オペラ『蝶々夫人』

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(C)ROH. PHOTO BILL COOPER

作曲:ジャコモ・プッチーニ
演出:モーシュ・ライザー/パトリス・コーリエ
指揮:アントニオ・パッパーノ
出演:エルモネラ・ヤオ(蝶々夫人〉、マルセロ・プエンテ(ピンカートン)、スコット・ヘンドリックス(シャープレス領事)、カルロ・ボッシ(ゴロー)

バレエ、オペラともに世界最高の名門歌劇場、英国ロイヤル・オペラ・ハウスの人気公演の舞台映像を『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2016/17』と題して上映される9本目の作品。

上空から見た英国ロイヤル・オペラ・ハウス。
そこに続々と集まる人々。
開演前の楽屋。
ナビゲーターの女性による解説で、プッチーニが3年かけて作りあげた渾身の作も、1904年の初演は失敗に終わり、1幕目が長すぎるなどの批判をもとに練り直して上演。それが評判をよび、現在も演じられていることが語られる。
そして、いよいよ1幕目。
長崎の港を見晴らす丘に立つ家。アメリカ人士官ピンカートンと結婚することになった蝶々さんは15歳。裕福な士族の娘だったが、父親がお上の命で切腹し家が没落、芸者となった。結婚仲介人ゴローの口利きで現地妻を娶るピンカートンの行為を、アメリカ総領事シャープレスは軽率だと忠告するが意に介さない。そんなことも知らず、キリスト教に改宗し、親族とも縁を切って、ピンカートンを信じて結婚する蝶々さん。やがて、ピンカートンは任期を終えて帰国する。

10分の休憩をはさんで、第2幕の前に、また解説。
蝶々さんを演じたアルバニア人のエルモネラ・ヤオの練習風景も。

3年後。ピンカートンが帰ってくるのを信じて待つ蝶々さん。女中のスズキに、彼の乗った船が入港したと眼を輝かせて告げるが、夜になっても彼はやってこない。寝ずに待っている蝶々さんの傍らには3歳になる男の子が寝ている。早朝、ようやく蝶々さんが横になった頃、ピンカートンがアメリカ人の妻ケイトを伴ってやって来る。後ろめたさに逃げるピンカートン。ケイトは、蝶々さんの息子を引き取り、アメリカでわが子として育てると進言する。息子の幸せを願う蝶々さんは承諾し、父が切腹した時の短剣で自害する。

ロイヤル・オペラの音楽監督アントニオ・パッパーノが、 明るく興奮に満ちた少女から、愛によって自己を犠牲にする女性へと変化する蝶々のドラマチック な心の旅を指揮する。

あまりにも有名な「ある晴れた日に」の歌と共に、知っているつもりだった「蝶々夫人」ですが、オペラを全編通して観たことはありませんでした。解説付きの本作を通じて、日本を舞台にした物語が、どんな風に演じられているのかを知ることができ、興味津々。
日本人からみると、衣装がどこかおかしいとか、室内にある仏像を拝んでいるとか、違和感があるのは否めません。まぁご愛嬌。映画だと、顔がアップになるので、日本人役なのに西洋人の顔であることや、年齢が設定年齢と違うことなどが気になりますが、微妙な表情がよく見えて、それはそれで利点でしょう。舞台だと、遠くから見て、きっとそれらしく見える演技者たちの実力。

長崎のグラバー園にあるリンガー邸で、戦前のヨーロッパで蝶々夫人を演じて名を馳せた喜波貞子(Teiko Kiwa)さんの展示を見たのを思い出しました。長崎に住む母親から送ってもらった着物やかんざしなど装飾品の数々が目を引きました。ヨーロッパで使われていた衣装に違和感を覚えて、本物にこだわり、取り寄せたのでしょう。

一途に夫を愛する純情な蝶々さんの悲恋物語。(若いですからね)
まったくひどい男だと思うけど、こんな輩はどこの国にもいるでしょう。
百年以上にわたって上演し続けられている「蝶々夫人」。外国人は、きっと異国情緒に惹かれるのでしょう。
それにしても、長崎があんなにも風光明媚なところと、原作者も、プッチーニも知っていたでしょうか。グラバー邸のあるのは南山手で、蝶々さんの家のある東山手ではないのですが、グラバー邸に佇むと、いかにも蝶々さんの舞台という思いがします。あの景色を毎日眺められるなら、待っていられるかな。(咲)


配給:東宝東和
公式サイト:https://www.tohotowa.co.jp/roh/
★2017年5月26日(金)より全国順次公開 
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2017年04月29日

フリー・ファイヤー(原題:Free Fire)

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監督:ベン・ウィートリー
脚本:エイミー・ジャンプ、ベン・ウィートリー
製作総指揮:マーティン・スコセッシ
撮影:ローリー・ローズ
音楽:ベン・サリスベリー、ジェフ・バロウ
出演:ブリー・ラーソン(ジャスティン)、アーミー・ハマー(オード)、キリアン・マーフィ(クリス)、シャールト・コプリー(ヴァーノン)、ジャック・レイナー(ハリー)、サム・ライリー(スティーヴォ)、バボー・シーセイ(マーティン)、エンゾ・シレンティ(バーニー)、ノア・テイラー(ゴードン)

銃の取引のために2組のギャングがある倉庫に集まった。簡単な取引のはずだったが、ちょっとした行き違いが火種になり、1発の銃声が響いて壮絶な銃撃戦が始まった。倉庫から逃げ出したくとも雨あられと降ってくる銃をかいくぐらなければならない。なにしろ銃は売るほどある。支払うはずだった現金もある。方向も敵味方も定かでないまま、混沌へとなだれ込んだ彼らはどうなる?!生き残るのは誰だ?!

アカデミー賞受賞のブリー・ラーソンが紅一点。タイトスカートにハイヒール姿で登場、初めは混乱を収集しようと仲間をなだめますが…。双方のメンツは、せっかくのイケメン王子様顔が髯ぼうぼうでわからないアーミー・ハマーはじめ、キリアン・マーフィ、今主演作『ハードコア』が上映中のシャールト・コプリー、『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』のジャック・レイナー、サム・ライリーたちが、徹頭徹尾の銃撃戦。何度か弾が当たっても死なず、罵り泣きわめき、這いずりながら逃げ回ります。とっても香港映画っぽいです(『ディパーテッド』のスコセッシ監督が製作総指揮だからかも?)。
山ほどの資料を読み込んだベン・ウィートリー監督が「人間そう簡単に死ぬもんじゃない」と、銃撃・アクションシーンを構築していったそうです。命がけの応酬の中にユーモアもあって90分飽きずに見せてくれました。2016年・第41回トロント国際映画祭ミッドナイト・マッドネス部門で最高賞にあたる観客賞を受賞。同賞は北野武監督『座頭市』(2003)、園子温監督『地獄でなぜ悪い』(2013)も受賞しています。(白)


2016年/イギリス、フランス/カラー/スコープ/90分/PG12
配給:REGENTS
(C)Rook Films Freefire Ltd/The British Film Institute/Channel Four Television Corporation 2016/Photo:Kerry Brown
http://freefire.jp/
★2017年4月29日(土)より全国GWロードショー
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2017年04月09日

T2  トレインスポッティング(原題:T2 Trainspotting)

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監督:ダニー・ボイル
原作:アーヴィン・ウェルシュ
脚本:ジョン・ホッジ
撮影:アンソニー・ドッド・マントル
出演:ユアン・マクレガー(マーク・レントン)、ユエン・ブレムナー(スパッド)、ジョニー・リー・ミラー(シック・ボーイ サイモン)、ロバート・カーライル(ベグビー)、ケリー・マクドナルド(ダイアン)

スコットランド、エディンバラ。マーク・レントンはオランダから20年ぶりに帰ってきた。当時悪友と一緒に麻薬取引で手に入れた大金を持ち逃げしたマークは、恐る恐るかつての仲間を訪ねていく。ジャンキーのスパッドは、妻子に出て行かれ、孤独の淵に沈んでいた。シック・ボーイことサイモンは、表向きは流行らないパブを経営し、裏では恋人に美人局をさせて食べている。大金を独り占めしたマークを一番恨んでいる凶悪なベグビーは殺人罪で服役中、顔を合わせずに済むとホッとしたマークだったが、実は脱獄して妻子のもとに現れていた。20年経っても、少しも大人になっていないダメな4人はこれからどうなる…?

約20年前に発表された『トレインスポッティング』(1996年)、世界中で好評を博した青春映画の続編。同じ監督、主要キャストが終結した「あの4人のその後」です。これはなかなかすごいことじゃありませんか?!しかも、どちらも面白い〜!
前作の映像がいいタイミングで挿入され、当時観ていなくても充分わかるようにできています。まだ20代だった彼らは、麻薬におぼれ悪さばかりしています。気のいいスパッドや主人公のマークは、喧嘩にあけくれるベグビー、麻薬を売買するシック・ボーイと縁を切りたくても切れず、彼らとつるんで麻薬取引に絡んでしまいました。それが前編。当時のスコットランドは不況の真っただ中で失業率が高く、学歴もスキルも持たない若者たちが仕事にあぶれ、未来への夢も希望も持てずにいたようです。だからといってヘロイン中毒になるのはあかん。堕ちるのは簡単でも這い上がっていくのは何倍も難しい。そして20年経って年はとっても中身はそうそう変わらず…これは自分を振り返ってもわかります(冷や汗)。

この20年の間にダニー・ボイル監督は『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)でオスカーを受賞、主演のユアン・マクレガーは『スター・ウォーズ』に出演、世界中で知られる俳優になりました。
原作者のアーヴィン・ウェルシュが続編の製作に参加し、麻薬の売人役で出演しています(スキンヘッドの人)。スコットランドの歴史や政治事情をちょっと調べるといろんなシーンの意味がよりわかると思います。(白)


2017年/イギリス/カラー/ビスタ/117分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
http://www.t2trainspotting.jp/
★2017年4月8日(土)よりロードショー
posted by shiraishi at 20:17| Comment(0) | TrackBack(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする