2018年10月14日

スカイライン 奪還(原題:Beyond Skyline)

skyline.jpg

監督・脚本:リアム・オドネル
撮影:クリストファー・プロブスト
出演:フランク・グリロ(マーク)、ボヤナ・ノヴァコヴィッチ(オードリー)、ジョニー・ウェストン(トレント)、カラン・マルヴェイ(ハーパー)、アントニオ・ファーガス(サージ)、イコ・ウワイス(スア)、ヤヤン・ルヒアン(チーフ)

突如未確認飛行物体が世界各地に現われた。上空に留まったまま人々が次々と吸い込まれ、たった3日間で謎の生命体に征服されたかと思われた。ロサンゼルスの刑事マークは息子を追って自らも吸い込まれていき、宇宙船内部を破壊していく。人類の反撃が始まった。迷走した宇宙船はラオスに不時着し、脱出したマークは内乱に巻き込まれる。反政府組織のスアに出会ったマークは、彼らのアジトでエイリアンを倒すヒントを掴む。わずかな武器とこの肉体だけで侵略者から地球を取り戻すことができるのか?

『スカイライン-征服-』(2010)の続編。このとき監督だったグレッグ・ストラウス&コリン・ストラウスのストラウス兄弟は製作に。この二人が設立したVFXスタジオ「ハイドラックス」が高い技術力でバックアップしています。
前作で製作と脚本を務めたリアム・オドネルが監督デビュー。2011年6月に公開されているのですが、観なかったのか紹介しそびれたのか、記憶がありません。今回は前回のSF巨編(エイリアン侵略)に加えて、なんと『ザ・レイド』(2011/インドネシア)のふたり、アクションファンを熱狂させたイコ・ウワイスとヤヤン・ルヒアンが登場しているのです。このコンビは『スター・ウォーズ フォースの覚醒』(2015)にも出演しています。これで格闘技アクションがぐっと前面に出てきました。エイリアンに有効かどうかは、その目でお確かめ下さい。副題が「奪還」ですからね。
主演は『パージ:アナーキー』(2014)『パージ:大統領令』 (2016)で頼れる男レオを演じたフランク・グリロ。シラット(東南アジアの伝統武術)に負けじと、新たな武器を装着してエイリアンと戦います。人間が次々吸い込まれていく内部がグロい×えぐいので、苦手な人はご用心。シラット好きなら大丈夫ですね。
昨年2月に『ザ・レイド』のハリウッドリメイク版を、フランク・グリロとジョー・カーナハン監督がタッグするというニュースを見ましたがその後進んでいるのかな?(白)


2017年/英・中・カナダ・インドネシア・シンガポール・米/カラー/シネスコ/106分
配給:REGENTS=ハピネット
(c)2016 DON'T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD
https://skyline-dakkan.jp/
★2018年10月13日(土)ロードショー
posted by shiraishi at 14:43| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月26日

テル・ミー・ライズ   原題:Tell Me Lies

tell me lies.jpg

監督:ピーター・ブルック
出演:マーク・ジョーンズ、ポーリーン・マンロー、ロバート・ラングドン・ロイド、グレンダ・ジャクソン、イアン・ホッグ

1968年、ロンドン。ベトナム戦争で傷ついた子どもの写真に何か行動を起こさなければと歌う若者。コミックやロックで表現する者。デモする人たち・・・ 舞台演出家であるピーター・ブルックは、ベトナムについて、歴史や兵士の証言、テレビニュース、アメリカ上院の審議の議事録等々、出来る限りの資料を集め、さらに様々な国籍のジャーナリスト、戦争レポーター、アメリカ大使館の公務員、歴史家、僧侶などを呼び寄せる。それぞれが混迷を深めるベトナム戦争への思いを語る・・・

本作は、カンヌ映画祭で上映されることになっていたのに、その後、どういう理由からかは不明ながら上映が取り下げられました。5月革命で、結局、カンヌ映画祭自体が中止になってしまった時のこと。
当時は、社会が右派か左派かに分極化し、ベトナム戦争に反対するということは、左派の全ての考えに全面的に賛同することを意味していた時代。本作は右派左派どっちの視点も取ってないと酷評もされたそうです。
ヴェネツィア映画祭で審査員特別賞とルイス・ブニュエル審査員賞の2部門受賞した後、アメリカやイギリスの一部の劇場で公開されましたが、様々な妨害を受け、短期間しか上映できなかった上、本編も紛失してしまいました。2011年に本編が発見され、修復し2012年に復活上映。50年の時を経て、日本で公開されることになりました。
どっちの視点も取ってないことが、逆にいろいろなことを考えさせてくれます。
ベトナム戦争は終わりましたが、世界の各地で戦争は絶えません。世の中から戦争がなくなってほしいと思う人も多い一方、他者を排除しようという風潮も強くなっているような気がします。
本作の中では、どうすればいいかわからないけれど、純粋にベトナム戦争を終わらせたい思いで、いろいろな行動を起こした人々の姿をみることができます。今や、声をあげる人も少なくなっているのではないでしょうか。(咲)


表向きはベトナム反戦映画ですが、こういう分極化はあらゆる時代と場所で起きたのではないかと思います。
二つの選択肢しかないように追い込まれた状況下で繰り返されてきた葛藤を、演劇的な手法を駆使して描いた作品でした。
分極化の渦中にいながら複雑な視点を持って問題に対峙する姿勢、解決できない問題や矛盾とともにあろうとする態度、時折訪れる静かな場面がよかったです。

それから私自身が舞台作品をよく観るので、オリジナルの演劇と映画の変化を想像しながら観ました。
おそらく舞台の方は俳優の身体や佇まいが、映画にはないユーモアを醸し出していたと思います。
一方で、映画の終盤に「最大の快楽、最小の痛み」と言うコートの男は、二次元独特のフラットさで身体性がうまく消えていました。映画の中の人物として台詞を言っているのではなく、スクリーンのこちら側の本音を喋っているような効果が出ていました。

舞台のメイキングのドキュメンタリー「Benefit of the Doubt」も、いずれ機会があれば観てみたいです。(Simone)


イギリス/1968年/英語/DCP/ビスタサイズ/98分
配給:キノフィルムズ
公式サイト:http://tellmelies.jp/
★2018年8月25日(土)シアターイメージフォーラムにてロードショー





posted by sakiko at 21:09| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月18日

追想  原題:On Chesil Beach

tuiso.jpg

監督:ドミニク・クック
原作・脚本:イアン・マキューアン「初夜」
出演:シアーシャ・ローナン(『ブルックリン』『レディ・バード』)、ビリー・ハウル、アンヌ=マリー・ダフ、エイドリアン・スカーボロー、エミリー・ワトソン

1962年夏、ロンドン。結婚式を終えたフローレンスとエドワードの二人。新婚旅行でドーセット州のチェジル・ビーチへと向かう。バイオリニストのフローレンスは、実業家の父と過保護な母のもと裕福な家庭で育ったお嬢様。かたや、歴史学者をめざすエドワードは、教師の父と脳に損傷を負った母という質素な家庭で育った青年。偶然出会って恋に落ち、育ちの違いを越えて結婚にこぎつけた二人。チェジル・ビーチのホテルで幸せな初夜を迎えるはずだった・・・

新婚旅行に向かうフローレンスは濃いスカイブルーのドレス、ビリーは紺のスーツで白いシャツにはきちんとネクタイとカフスボタン。思えば、日本でも新婚旅行というと、きちんとしたドレスやスーツに帽子という時代がありました。もちろん、初体験は結婚までお預けでした。
1962年というとビートルズがデビューした年。西洋社会も性に対して自由な気運が広がる直前の保守的な時代。初めての夜を迎える二人の緊張感は、夕食の時のぎこちなさからも伝わってきます。おまけに、ロマンチックとは言いがたい殺風景なホテルの部屋。チェジル・ビーチは、リゾート地というより、特別環境保全地域(SSSI)に指定されている地で、化石が多く、野生生物にとって重要な場所。(“ チェジル” の由来は“ 砂利浜” を意味する古英語の単語。)ずいぶん地味な場所を新婚旅行に選んだものです。
映画の最後に、二人の人生のその後が明かされます。『追想』という邦題は、そこからつけられたイメージなのかもしれません。映画の原題『On Chesil Beach』や、原作の「初夜」が、やはりしっくりきます。

バイオリニストとして活躍し始めていたフローレンスは、仕事を失うことを恐れて、結婚したことを隠します。日本でも「結婚退職」が当然だった時代があったことを思い起こしました。半世紀の間に、時代はずいぶん変わったものです。でも、このチェジル・ビーチの初夜に起こったことは、いつの時代にもありえるのではと思いました。何が起こったか? ぜひ映画をご覧ください。(咲)


2017年/イギリス/英語/110分/カラー/5.1ch/スコープサイズ
配給:東北新社、STAR CHANNEL MOVIES
公式サイト:http://tsuisou.jp/
★2018年8月10日(金)TOHOシネマズ シャンテ ほか全国ロードショー





posted by sakiko at 17:14| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月05日

英国総督 最後の家   原題:Viceroy's House

eikokusoutoku.jpg

監督・脚本:グリンダ・チャ―ダ(『ベッカムに恋して』)
出演:ヒュー・ボネヴィル、ジリアン・アンダーソン、マニシュ・ダヤル、フマー・クレイシー、マイケル・ガンボン

英領インドがインドとパキスタンに分離独立するまでの激動の6ヶ月を、総督官邸を舞台に描いた物語。

1947年2月、インドからの撤退を決めた大英帝国の最後の総督マウントバッテン卿が主権譲渡の任務を帯びてデリーに着任する。
パンジャーブ出身のヒンドゥー教徒のジートは、友人のツテでマウントバッテン卿の秘書官となる。ラホールの刑務所で勤務していたが、国の将来を思う政治犯を監禁していることに嫌気がさしての転職だった。総督官邸で、ジートはラホールの刑務所に父親が収監されていたアーリアというイスラーム教徒の女性とすれ違う。父親との面会を許されない彼女の手紙や差し入れを預るうち、恋心を抱くようになった女性だ。アーリアは、マウントバッテン卿の娘パメラの世話係として官邸に着任したのだった。
マウントバッテン卿は最良の主権譲渡をしたいと願い、独立後について、統一インドを望む国民議会派のネルーやガンディー、分離してパキスタン建国を望むムスリム連盟のジンナーと話し合いを続けるが、ついに印パ分離独立を決意する。主権譲渡の時期も予定より10ヶ月も早め、1947年8月と決める。それまでに人々は、自分の国をどちらにするか決めなければならない。人々の大移動が始まり、各地で暴動が起こる。
アーリアはジートを愛していたが、実はアースィフという親の決めた婚約者がいて、父親と共に彼の実家のあるパキスタンとなるラホールへ行くことを決める。アーリアを見送ったジートは、彼女が乗った夜行列車で大虐殺が起きたと報じる新聞を目にする。ジートはアーリアの安否を確認しに国境に向かう・・・

印パ分離独立にいたるまでの各派の動きや、民族大移動の大混乱の様子が当時のモノクロ映像で挟み込まれます。国民会議派のネルーやガンディー、ムスリム連盟のジンナーを演じている役者さんが、まるでアーカイヴ映像からそのまま出てきたようにそっくりで驚かされます。
統一インドの初代首相をジンナーにと進言したガンディーの思いにもかかわらず、分離独立という形になり、今なお両国の関係はぎくしゃくしています。故郷を離れなければならなかった多くの人々、そして移動中の混乱の中で命を落とした人々・・・ 
シク教徒の家庭に生まれたグリンダ・チャ―ダ監督自身の祖父母や親戚も、今はパキスタンとなった地から移住を余儀なくされた当事者でした。政治家の決めた分離独立が、どれだけ多くの人たちの人生を翻弄させたのか・・・ 本作は、分離独立にいたるプロセスを背景に、宗教の違う二人の恋の行方を劇的に見せて、庶民の受けた痛みをみごとに描き出しています。

実は、マウントバッテン卿が国境線の詳細について、両国指導者に明かしたのは、独立宣言直後の8月18日でした。大混乱を恐れてのことだったそうです。そんなマウントバッテン卿ですが、分離独立を決めた時、すでに2年前にチャーチル首相が分離独立を予測して国境線を考えていたことを知ります。天然資源の積出港としてカラチをパキスタンの領土とすることで、独立後の英国に有利になるよう画策していたのです。
パキスタンの独立式典に赴いたマウントバッテン卿に、ジンナーが「チャーチルが来るべきだった。パキスタンの助産婦だから」と語る場面が映画に出てきます。ジンナーは「私も騙された。もっと領土がほしかった」とも語ります。パンジャーブやベンガルなど、宗教の比率が五分五分の州は、インドとパキスタンに分割されてしまったことにも恨みがあるでしょう。住民の大半がムスリムで、マハラジャがヒンドゥーだったカシミールにいたっては、いまだに帰属が確定していません。

さて、この総督官邸ですが、数百人の使用人が必要なほど大きな邸宅。着任したマウントバッテンの夫人が、「バッキンガム宮殿より立派ね」とつぶやきます。
大英帝国の威光を感じさせる総督官邸が完成したのは、1929年。20年も経たないうちに、インドの国家元首の官邸になると、誰が予想したでしょう。
本作の邸宅の撮影の大部分は、ジョードプルのマハラジャの館ウメイド・バワン・パレスで行われましたが、本物の元総督官邸の外観の撮影許可が出て、その威光を見ることができます。 
余談ですが、一部がホテルとなっているウメイド・バワン・パレスに泊まったことがあって、懐かしく拝見! 大理石の床の広々とした部屋!(咲)


★印パ分離独立の際の大混乱については、イスラーム映画祭3 『熱風』上映後の麻田豊氏トークを是非参照してください。

イスラーム映画祭3 『熱風』  印パ分離独立に翻弄されたムスリム一家を描いた名作 
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/459740338.html

2017年/イギリス/カラー(一部モノクロ)/2.39 : 1/106分/5.1ch/英語、パンジャービー語・ヒンディー語
配給:キノフィルムズ/木下グループ   後援:日印協会
公式サイト:http://eikokusotoku.jp/
★2018年8月11日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー





posted by sakiko at 03:33| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月03日

バンクシーを盗んだ男   原題:The Man Who Stole Banksy

banksy.jpg

監督:マルコ・プロゼルピオ
ナレーション:イギー・ポップ
出演:
ロン・イングリッシュ(現代アーティスト)
スティーブ・ラザリデス(バンクシーの元マネージャー)
ステファン・ケスラー(収集家)
クリスチャン・オモデオ(芸術史家)
ベラ・バブウン(ベツレヘム市長 *撮影当時)
パオロ・ブッジャーニ(芸術家/パフォーマー/収集家)
フィリップ・トイヒトラー(収集家/芸術家)
カミッロ・タロッツイ(修復家)
ワリド・“ザ・ビースト”・ザワラー(タクシー運転手)
アブ・ヤメン(BANKSY’S SHOP店主)
マイケル・カナワッティ(壁の元持ち主)

2007年、パレスチナ・ヨルダン川西岸地区ベツレヘムの巨大な分離壁に、姿を見せないことで有名なグラフィティアーティスト、バンクシーが集めた14人のアーティストによって6つの壁画が描かれた。その内の1枚「ロバと兵士」は、パレスチナ人をロバに見立てたとして怒った地元住民たちによって切り出され、オークションサイト「eBay」に出品される。コンクリートの塊のまま! 
5年後、ベツレヘムに取材に行った監督のマルコ・プロゼルピオが最初に出会ったのが、「ロバと兵士」を売りとばす一旦を担ったタクシー運転手ワリド・“ザ・ビースト”だった。それを機に、様々な人に話を聞き、切り出された絵を追って、デンマーク、ロンドン、ロサンゼルスへと飛ぶ・・・

バンクシーといえば、分離壁に描いた絵が『オマールの壁』に登場したり、昨年2017年には、3方を分離壁に囲まれてしまったベツレヘム地区の家を世界一眺めの悪いホテル“The Walled off Hotel”として開業したりと、イスラエルの横暴な政策に一石を投じているアーティストという印象が強い。
本作の中でも、取材当時のベツレヘム市長のベラ・バブウンさん(女性です!)が、「バンクシーは私にとっては哲学者。誰よりも正確に気持ちを表わしてくれたことに感謝」と語っている。『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』(2014年)で、壁などにゲリラ的に描かれた絵がオリジナルのまま見られるのは時間の問題ということが描かれていたけれど、パレスチナの分離壁の絵は、警察も価値を認め、汚す者がいないか見張っているそうだ。
一方で、タクシー運転手のワリド・“ザ・ビースト”は、「壁に絵を描いて偽善者ぶってやがる。バンクシーはクソ野郎だ」と言い放つ。彼は、壁の絵の売り主カナワッティに「壁を切り取って売れば」と進言したのに、1銭も貰ってないとも言う。実は、この壁画、いまだに売れてないそうだ。
バンクシー自身、この騒動をどんな思いで見ているのだろう。 アーティストとしてのバンクシーには、高さ8メートル、そして、長さはまだまだ伸びる分離壁は、大きなキャンパス。でも、パレスチナの地に描く場所がなくなることを願っているに違いない。(咲)


2018年/イギリス・イタリア/カラー/デジタル/英語/93分
配給:シンカ
公式サイト:http://banksy-movie.jp/
★2018年8月4日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほか全国順次公開





posted by sakiko at 18:48| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする