2017年11月11日

人生はシネマティック!(原題:Their Finest)

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監督:ロネ・シェルフィグ
原作:リッサ・エバンス
脚本:ギャビー・チャッペ
撮影:セバスチャン・ブレンコー
音楽:レイチェル・ポートマン
出演:ジェマ・アータートン(カトリン・コール)、サム・クラフリン(トム・バックリー)、ビル・ナイ(アンブローズ・ヒリアード)、ジャック・ヒューストン(エリス・コール)、ヘレン・マックロリー(ソフィー・スミス)、エディ・マーサン(サミー・スミス)、ジェレミー・アイアンズ(陸軍長官)

1940年のロンドン。カトリンは傷痍軍人で画家志望の夫を支え、コピーライターの秘書として働いていた。人手不足のため、彼女が代わりに書いたコピーが情報省映画局特別顧問バックリーの目に留まる。そのころ話題だったのはダンケルクでドイツ兵の包囲の中、イギリス兵を救出した姉妹の感動秘話。戦争で疲弊した国民を勇気づけるため映画化されることになっていた。カトリンは脚本執筆の経験はなかったが抜擢されて脚本チームに加わり、女性ならではのセリフを期待される。
いざ製作が始まるとベテラン俳優アンブローズの要求、軍部から検閲や横やりなどトラブルが続出する。問題が起こるたびに脚本の書き直しに迫られるが、厳しい状況の中スタッフや俳優の結束は高まっていく。

第2次世界大戦中にもかかわらず、映画製作に情熱を傾けていた人たちがいました。実話とは書かれていませんが、どこの国でもプロバガンダであれ、映画が作りたいと頑張っていた映画人たちがいたはずです。劇中劇のプロバガンダ映画製作の過程や楽屋話は面白く、それにからめての家族や恋人との愛憎など小さなドラマが詰め込まれています。不慣れな脚本執筆に悪戦苦闘しながらも、やりがいを見出していく主人公の気持ちにいつか共感します。英国の名優が多数出演している映画愛もたっぷりの作品。
ロネ・シェルフィグ監督は『幸せになるためのイタリア語講座』(00)、『17歳の肖像』(09)、『ワン・デイ 23年のラブストーリー』(11)などで知られています。ちょっとお久しぶりの全国上映。(白)


2016年/イギリス/カラー/シネスコ/117分
配給:キノフィルムズ
(C)BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THEIR FINEST LIMITED 2016
http://jinsei-cinema.jp/
★2017年11月11日(土)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開中
posted by shiraishi at 13:46| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月22日

ゴッホ 最期の手紙   原題:LOVING VINCENT 

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監督・脚本:ドロタ・コビエラ、ヒュー・ウェルチマン 
出演:ダグラス・ブース、ジェローム・フリン、ロベルト・グラチーク、ヘレン・マックロリー、クリス・オダウド、シアーシャ・ローナン、ジョン・セッションズ、エレノア・トムリンソン、エイダン・ターナー

南仏、アルル。青年アルマン・ルーランは、郵便配達人の父、ジョゼフ・ルーランから1通の手紙をパリに届けるよう託される。それは、父が親しくしていた友人で、1年ほど前に自殺したオランダ人の画家、フィンセント・ファン・ゴッホが弟・テオに宛てて書いたまま出し忘れていたもの。
耳を切り落として精神病院へ送られた外国人の画家であるゴッホを、アルルの人たちは疎ましく思っていた。彼を知る警官によれば、ゴッホが病んだのは、彼が画家たちの宿にしたいと願った“黄色い家”に友人のゴーギャンが来たことが原因だという。友人ゴッホへの父の思いに応えようと、アルマンは手紙を携えパリに向かう。そこで知る弟テオの運命・・・

誰もがきっと見たことのあるゴッホが油絵で描いた人物たちが動く!
こってりとした油絵そのままが、動く!
観ているうちに、くらくら。
船酔い注意です。
絵に描かれた人物を、どうやって動かしたのかは、ぜひ公式サイトで確認を!

生きている間には、たった1枚しか売れなかったという不遇なゴッホ。
2017年7月にSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で上映された『中国のゴッホ』では、中国のある町の一画でゴッホの複製画が多くの人の手によって大量に「生産」されている様が描かれていた。その絵を買い付けているオランダの画商に招かれてゴッホゆかりのオランダの町を訪ねた現代のゴッホたちが見たのは、土産屋で売られている自分たちの描いた絵。手ごろな値段で売られている複製画を観光客たちが記念に買っていく。なんという皮肉でしょう。(咲)


2017年/イギリス・ポーランド/96分/カラー
提供:パルコ、NHKエンタープライズ、カルタクリエイティブ 
配給:パルコ  宣伝:太秦 
協力:TOKYO FM、ファン・ゴッホ美術館
公式サイト:http://www.gogh-movie.jp
★2017年11月3日(祝・金) TOHOシネマズ六本木ヒルズ ほか全国順次ロードショー
posted by sakiko at 15:53| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月19日

ボブという名の猫 幸せのハイタッチ(原題:A Street Cat Named Bob)

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監督:ロジャー・スポティスウッド
原作:ジェームズ・ボーウェン
脚本:ティム・ジョン、マリア・ネイション
撮影:ピーター・ウンストーフ
美術:アントニア・ロウ
衣装:ジョー・トンプソン
音楽:デビッド・ハーシュフェルダー
キャスト:ルーク・トレッダウェイ(ジェームズ・ボーエン)、ルタ・ゲドミンタス(ベティ)、ジョアンヌ・フロガット(ヴァル)、アンソニー・ヘッド(ジャック・ボーエン)、キャロライン・グッドオール(メアリー)

ロンドンの片隅で食べ物をあさっている若いホームレスのジェームズは、自称ミュージシャン。親に反発して家を出、歌い続けていたが芽が出ずに挫折。ドラッグに溺れて福祉局の指導を受けて更生プログラム中だった。意思の弱さからヘロインに手を出し、福祉局のヴァルから「次はない」ときつく念を押され、やっと小さなアパートに入ることができた。久しぶりの家に感激していると、どこからか茶トラ猫が迷い込んできた。
猫を保護したのをきっかけに、動物好きで優しい隣人ベティと知り合う。ベティは薬物中毒の兄を亡くしていた。茶トラ猫をボブと名付け、肩にのせてストリートに連れていくと、これまでになく人が集まってくれる。ボブはジェームズのお守りで「招き猫」になった。ある日ベティに中毒者であることを知られたジェームズは、今度こそ本気でクスリを断とうとする。

原作は本人のジェームズ・ボーウェンが書いた「ボブという名のストリート・キャット」。猫とミュージシャンの実話は英国のベストセラーとなり、日本でも翻訳出版(辰巳出版刊)されていてさっそく読みました。ハイタッチしてくれるボブは、ストリートですっかり有名になり、ジェームズが生活を立て直す原動力となりました。映画に出演する猫はたいていトレーナーに訓練されたプロの役者猫?ですが、このボブは本人。全く物怖じせず、カメラなどないかのように自然に動いています。
ルーク・トレッダウェイは結合双生児のロックミュージシャンの映画『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』(2005)で双子のハリーと出演、そちらでも歌声を披露していましたが、以後の出演は別々のようです。ただの猫大好き映画ではなく、イギリスの若者の貧困と薬物中毒もリアルに描き出しています。ジェームスにヘロインを薦めた中毒の若者の悲惨な最後に、この子にも仕事と住むところがあれば違っただろうにと思ってしまいます。ボブがいることで立ち直ったジェームズは、そういう若者たちの支援活動中とか。ラストのサイン会に本人がちょっと出演しています。ボブはもちろん今も元気で、ジェームズのかけがえのない相棒です。私もボブとハイタッチしたい〜。(白)


2016年/イギリス/カラー/シネスコ/103分
配給:コムストック・グループ
(C)2016 STREET CAT FILM DISTRIBUTION LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.
http://bobthecat.jp/
★2017年8月26日(土)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 13:33| Comment(2) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月23日

静かなる情熱 エミリ・ディキンスン  原題:A Quiet Passion

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監督:テレンス・デイヴィス
出演:シンシア・ニクソン、ジェニファー・イーリー、キース・キャラダイン

アメリカを代表する女性詩人エミリ・ディキンスン(1830−1886)のベールに包まれた半生を描いた物語。

清教徒主義の影響を受けるアメリカ東部の上流階級で生まれ育ったエミリ。ある時を境に、白いドレスを身にまとい、自然に包まれた屋敷から出ることなく、1986年、55歳の生涯を閉じた。エミリの死後、妹のラヴィニアは姉の整理ダンスの引出から、清書されて46束にまとめられた1800篇近くに及ぶ詩稿を発見する・・・

エミリの詩は、彼女が生きている間にはほとんど評価されることがなかったそうですが、死後発見された詩が発行され、その後、多くの芸術家に影響を与えています。サイモン&ガーファンクルは彼女にまつわる歌「エミリー・エミリー」「夢の中の世界」をアルバムに収め、ターシャ・テューダーは「まぶしい庭へ」で挿絵を手がけ、チャールズ・シュルツの漫画「スヌーピー」の題材にもされています。ウディ・アレンもエミリのファン。
こんなにも多くの芸術家に愛された詩人エミリ・ディキンスンのことを、私は全く知りませんでした。孤独な半生を送ったエミリの胸のうちを垣間見ることのできる一作。アメリカも相当男尊女卑の社会だったことも知ることができました。(咲)


2016年/イギリス・ベルギー/英語/カラー/125分/シネマスコープ/ドルビーデジタル/DCP
配給:アルバトロス・フィルム、ミモザフィルムズ
公式サイト:www.dickinson-film.jp
★2017年7月29日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー
posted by sakiko at 10:19| Comment(0) | TrackBack(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月21日

光をくれた人(原題:The Light Between Oceans)

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監督・脚本:デレク・シアンフランス
原作:M・L・ステッドマン「海を照らす光」(早川書房刊)
撮影:アダム・アーカポー
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演:マイケル・ファスベンダー(トム・シェアボーン)、アリシア・ヴィカンダー(イザベル)、レイチェル・ワイズ(ハナ)、ブライアン・ブラウン(セプティマス・ポッツ)、ジャック・トンプソン(ラルフ・アディコット)

1918年オーストラリア。トム・シェアボーンは第一次世界大戦から深い心の傷を抱えて戻った。人と関わらずにすむ無人の孤島・ヤヌス島の灯台守に志願する。3ヶ月の試用期間をすぎて本採用となり、契約のために町に戻ったトムは生命力に溢れた娘イザベルに出会う。町の名士である校長の一人娘のイザベルもトムに好意を抱き、二人は手紙をかわすようになった。やがて祝福されて結婚し、夫婦はヤヌス島で幸せな新婚生活を送る。
イザベルが妊娠して喜んだのもつかの間、流産してしまう。悲しみを乗り越え、細心の注意を払って2度目の妊娠期間を過ごしたにも関わらず、死産となってしまった。イザベルが立ち直れず、夫婦が悲劇に沈んでいたとき、沖に漂流するボートを見つけた。すでに亡くなっている男性と泣き声をあげる女の子の赤ちゃんがいた。トムは早速打電しようとするが、イザベルは赤ちゃんを休ませてからと懇願する。一日母子のように過ごしたイザベルは、もはや手放すことができなくなっていた。イザベルの頼みに負けたトムは悪いことと思いつつ遺体を埋め、イザベルが早産したことにする。女の子をルーシーと名付け、二人は我が子として愛情を注いで育てていく。

イザベルは太陽のように明るく、戦争で傷ついたトムを癒しますが、2度の流産で悲しみの淵に沈んでしまいます。そんなときに海から赤ちゃんがやってきたら、イザベルならずとも“神様からの贈り物”と思いたくなるでしょう。愛する妻が喜ぶことをしてやりたいと思うのも道理。二人が救わなければすでになかったはずの命ですが、実の親のことを考えないのは、やはり罪でしょうね…。案の定、実の母親であるハナと出会ってもっと辛い選択をしなければならなくなりました。あなたがトムだったら、イザベルだったらどんな選択をしたでしょうか?
島の名前“ヤヌス”とは前後二つの顔を持つローマ神話の出入り口と扉の神。二つの顔が違うものを見るので、二つの間で引き裂かれるトムとイザベルを象徴しているように思えます。(白)


2016年/イギリス・ニュージーランド・アメリカ合作/カラー/シネスコ/133分
配給:ファントム・フィルム
(C)2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC
http://hikariwokuretahito.com/
★2017年5月26日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 20:44| Comment(0) | TrackBack(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする