2014年09月07日

リスボンに誘われて  ( リスボンに誘われて  (原題: Night Train to Lisbon)

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監督:ビレ・アウグスト
出演:ジェレミー・アイアンズ、メラニー・ロラン、ジャック・ヒューストン、マルティナ・ゲデック、トム・コートネイ、アウグスト・ディール、ブルーノ・ガンツ、レナ・オリン、クリストファー・リー、シャーロット・ランプリング

スイスの首都ベルンの高校で古典文献学を教えるライムント・グレゴリウス。57歳になるが、5年前に離婚して孤独な一人暮らし。眠れぬ夜、一人二役のチェスに興じている。
ある激しい嵐の朝、学校に向かう途中、吊り橋から飛び降りようとしている赤いコートの若い女性を引き留め、学校に連れていく。授業の途中で出て行ってしまった彼女が残したコートのポケットには1冊の本が入っていた。本にリスボン行の発車間近の切符が挟まれていたので駅に駆け付けるが、女性は見当たらない。衝動的に列車に飛び乗ったライムントは、「言葉の金細工師」と題する本を読み始める。深い感銘を受けた彼は、リスボンに着いてすぐ、著者アマデウ・デ・プラドの住所を調べて訪ねていく。すでに亡くなったことを知り、墓地を訪ねた帰り道、自転車にぶつかり眼鏡のレンズが割れてしまう。眼科に行った彼は、初対面の女医マリアナに、リスボンにやって来た経緯をとうとうと話し始める。翌日、アマデウと反体制派の仲間だったというマリアナの伯父を介護施設に訪ねる・・・

徐々に明かされていく「言葉の金細工師」の著者アマデウ・デ・プラドの人生に、ぞくぞくさせられます。一方、ベルンで孤独な暗い毎日をおくっていたライムントは、陽光溢れるリスボンの街で、まるで人が変わったように生き生きとしてきます。眼科のマリアナ先生が作ってくださった眼鏡がとてもお洒落で、ダンディになった彼は、マリアナ先生ともいい雰囲気になっていきます。
遠く離れた、誰も自分を知らない街で、前とは違った自分を演出することができる! 
私自身、高校入学の時に神戸から横浜に引っ越して、性格を変えることができたのを思い出しました。(小中学校の時はおとなしかったのです・・・)

映画に話戻って、この主人公ライムントは、古典文献学が専門で、ラテン語、ギリシア語、ヘブライ語に精通していると資料にありました。女性が忘れていった「言葉の金細工師」に馴染みの古本屋の名前が記されていて、古本屋を訪ねると、「ペルシア語の文法書はまだ入荷してないよ」と言われます。なるほど、ペルシア語も学ぼうとしているのか・・・と、興味津々。
ちなみに、映画の中で登場人物はベルンでもリスボンでも英語で話していて、本来だったら、リスボンに行って、地元の人とスムーズに会話できるとは思えません。アマデウの妹や、アマデウが亡くなったことを示唆してくれた家政婦さんとすんなり意志疎通しています。まぁ映画ですから。
本作を通じて、ポルトガルにも長く暗い独裁政権時代があったのを知りました。1910年に王制を打倒して共和制になったものの、庶民の暮らしはよくはならず、その後サラザールが政権を取って抑圧的な時代が半世紀も続いたのです。カーネーション革命と呼ばれる動きで自由を得たのは、1974年4月25日のこと。
32年前にリスボンを訪れたことがあるのですが、思えば、その革命から10年も経っていない時。そんなことは何も知らず、穏やかな国民性を感じたものですが、独裁政権を倒すエネルギーを秘めた人たちがいたのですね。(咲)


第63回ベルリン国際映画祭特別招待作品

配給:キノフィルムズ
2012年/ドイツ・スイス・ポルトガル/111分/英語
公式サイト: http://lisbon-movie.com/
★2014年9月13日(土)、Bunkamuraル・シネマほかにて全国ロードショー
posted by sakiko at 08:28| Comment(0) | TrackBack(0) | ポルトガル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月14日

家族の灯り 原題:O Gebo e a Sombra

監督:マノエル・ド・オリヴェイラ(『アブラハム渓谷』『夜顔』『コロンブス 永遠の海』『ポルトガル、ここに誕生す〜ギマランイス歴史地区』)

出演:クラウディア・カルディナーレ、ジャンヌ・モロー、マイケル・ロンズデール、リカルド・トレパ、レオノール・シルベイラ、ルイス・ミゲル・シントラ

 

帳簿係のジェボは8年前に息子ジョアンが家出した理由を知っているが、妻ドロテイアに言えないでいる。息子の妻ソフィアも事情をわかっているが、いつ帰るともしれない夫を待つしかない。そんなある日、いつものようにカフェタイムにやってきた隣人のカンディニアが「息子さんが帰ってきてよかったわね」という。息子が帰ってきたのだ・・・

 

ポルトガルの作家ラウル・ブランダンの戯曲をもとにオリヴェイラ監督自身が脚本を書き映画化。家出した息子を待つ両親と息子の妻、そして友人たちが室内で語る光景がまったりと続く本作。まるで重厚な絵画に描かれている人物が会話しているかのよう。
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(C) 2012 - O SOM E A FURIA / MACT PRODUCTIONS

「我が息子!」と時折ため息をつく老母を演じたカルディナーレと、口達者な隣人を演じたジャンヌ・モローが圧巻。20131211日に105歳を迎えた現役最高齢の監督。どうぞまだまだ映画を作り続けてください

 

69回ヴェネチア国際映画祭アウト・オブ・コンペティション正式出品

2012年/ポルトガル・フランス/フランス語/1時間31分/35mm/カラー

配給:アルシネテラン 

公式ホームページhttp://www.alcine-terran.com/kazoku/

20142月15日(土)より岩波ホールにてロードショー



posted by sakiko at 22:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ポルトガル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする