2015年08月06日

さよなら、人類 (原題:En duva satt pa en gren och funderade pa tillvaron)

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監督・脚本:ロイ・アンダーソン 製作:ペニラ・サンドストロム
撮影:イストバン・ボルバス 出演:ホルガー・アンダーソン、ニルス・ウェストブロムサム 他

第71回ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞(朝日新聞デジタル)した不条理物語。面白グッズを売り歩く冴えないセールスマンのサムとヨナタンは正反対の性格でありながらも友情を結んでいる。2人ともドヤ街らしき所に住んでいて商売は厳しく、口論がたえない… 訪れる先々で奇妙な人生を目撃する… 様々な死との出会い、18世紀のスウェーデン国王率いる騎馬隊、ブラックユーモアなエピソードが続く。この作品は昨年の第27回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門でも上映(映画祭上映時のタイトルは「実存を省みる枝の上の鳩」) 人間の愚かさ、希望と絶望、哀愁を織りなしている傑作。

懐かしいスウェーデン語が私の耳に心地いい・・私にとって生まれて初めての外国がスウェーデン・ヨーテボリでした。初海外が独り旅だったので空港に着いてもオロオロして沢山のスエ人に助けてもらったし見るもの、食べもの何でも初めてのスウェーデンにはビックリ仰天したことを今でも鮮明に覚えてます。映画の中でも出てきますが普通に国王が歩いてます。イケメンをナンパしたりはしないと思いますが(笑)ヨーテボリ出身の巨匠・ロイ・アンダーソン監督の、この長編最新作は『散歩する惑星』『愛おしき隣人』から続いた"リビング・トリロジー"(人間についての3部作)で、『さよなら、人類』の公開によって15年かけて完結。全39シーンを固定キャメラ、1シーン1カットで撮影。CG全盛の時代にロケではなく巨大なスタジオにセットを組み、マットペイントを多用して膨大な数のエキストラ(馬含む)を登場させ、まるで絵画のような映像は4年の歳月を費やして創り上げたそうです。スウェーデンと言えば「高福祉国家」をイメージする日本人ですが・・スウェーデンにだってホームレスは居るし、寒いせいかお酒呑んでるひとも結構いて不良も多い(苦笑)以前は自殺率が高かったことでも有名です。人間は生きていれば誰だって傷つくし、日々の生活に追われて暮らしているうちに死んでしまう…。恥をかいてばかり、なにをやっても上手くいかないひとたち(私含む)の哀しくも可笑しな人生。それでも一人一人の人生は愛おしくて美しい。万華鏡のような世界へと私たちを誘ってくれる壮大なアナログ巨編です!! (千)

2014/スウェーデン・ノルウェー・フランス・ドイツ合作/100分
配給:ビターズ・エンド
公式サイト
★8月8日より恵比寿ガーデン・シネマほか全国順次ロードショー





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2015年07月04日

フレンチアルプスで起きたこと(原題:Turist)

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監督・脚本:リューベン・オストルンド
撮影:フレドリック・ウェンツェル
音楽:オラ・フロットゥム
出演:ヨハネス・バー・クンケ(トマス)、リサ・ロブン・コングスリ(エバ)、クリストファー・ヒビュー(マッツ)、クララ・ベッテルグレン(ヴェラ)、ビンセント・ベッテルグレン(ハリー)

家族サービスでスキーリゾートにやってきた「できるビジネスマン」のトマス。愛する妻エバと可愛い子どもたちからの信頼は絶大。自他ともに認める良きパパ、だった。あの瞬間までは。
レストランのテラスでランチを楽しんでいたたくさんの家族連れやカップルのお客達。その目の前にスキー場が人工的に起こした雪崩がせまってきた。子どもたちが怖がるのを余裕でなだめていたパパのトマス。テラスが雪に包まれたとき、妻子を置いて一人その場から逃げ出してしまった。戻ってきたトマスを見るエバと子どもたちの目は雪よりも冷たかった。

豪華なリゾートホテルでの5日間のできごと。誰だって自分が大事、最初に素直に謝ればよかったのに、あ〜あと誰もがおもうはず。プライドが邪魔したのか、つい保身を図ったトマスはどんどんドツボにはまっていきます。その気持ちもわからないではありませんが、それは一番やっちゃいけなかったですね。観た人たちが「自分だったらどーする?」と議論できそうです。
憤懣やるかたないエバは友人たちを相手に話を蒸し返し、そこでも墓穴を掘るトマス。寝る前に並んで歯磨きをしていた家族は次第にバラバラになっていきます。休日を針のムシロの上で味わったトマスがようやく率直に認めたあと、帰りにもうひとつ監督がしかけるトラップがあります。
そういえばこのリューベン・オストルンド監督の『プレイ』(2011年の東京国際映画祭で上映され、監督賞受賞)も傑作でした。人間を辛らつだけど暖かい視線で描いているのが共通しています。(白)


2014年/スウェーデン・デンマーク・フランス・ノルウェー合作/カラー/118分
配給:マジックアワー
(C)Fredrik Wenzel
http://www.magichour.co.jp/turist/
★2015年7月4日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 10:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 北欧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ルック・オブ・サイレンス(原題:The Look of Silence)

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監督:ジョシュア・オッペンハイマー
撮影:ラース・スクリー

1965年9月30日、インドネシアで発生したクーデター未遂事件。失脚したスカルノ大統領の後の座におさまったスハルト少将らは、事件の背後には共産党がいたとして非難した。その後1、2年間に100万人以上の共産党関係者が虐殺された。陸軍が直接あたったのではなく、反対勢力や民間人を扇動し武器を渡して殺害させた。共産党員を殺した加害者は法的制裁を課せられず、罪の意識はない。被害者や家族は恐怖のため口をつぐむしかなかった。2012年オッペンハイマー監督が世に出したドキュメンタリー『アクト・オブ・キリング』では、加害者たちがカメラの前で殺害の様子を誇らしげに語り、喜々として再現して見せている。
兄の死後に生まれ、母親からも詳しく聞かされなかったアディは、兄に手を下した加害者のインタビュー映像を観て衝撃を受ける。彼らに会い、謝罪してもらいたいと、メガネ技師の腕を生かし無料の検眼をしながら相手と話すことにした。
アディが被害者家族と知ると必ず「上からの命令でやっただけ」と言い逃れをする。誰一人謝罪の言葉を発することもない。行為を扇動し、容認してきた社会が背景にあるが、一人の人間として思うことは何もないのかと愕然とする。
冷静に語りかけるアディの心中は察するに余りある。この作品が世界中に知られ、被害者のせめてもの供養になったことだけは良かったと思う。(白)

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軍部は自分たちで手をくださず、イスラーム教徒やならず者をうまく利用して虐殺を実行させた。ある信心深いイスラーム教徒は、「共産主義者は無神論者だから罰していい」と悪びれない。実際、軍部の手先となって虐殺の加害者となった民間人は、罰せられないどころか、その見返りに金や権力を得て、地域にのさばっている。身内を虐殺された家族が、ほかの地に逃げる術もなく、息を殺して暮らしていることに、どんな思いだろうと身の毛がよだった。
本作の中心人物アディは、自分の生まれてくる前に殺された兄や、今も怯えながら暮らす母のために、加害者に罪を認めさせたいという思いで、「無料の視力検査」を行うという名目で加害者に近づく。『アクト・オブ・キリング』で、加害者たちが誇らしげに共産主義者を惨殺したことを語る様子が描かれていたが、本作でも、加害者たちは被害者の関係者だとわかっても、決して謝罪することはない。1960年代当時、虐殺された100万人とも200万人とも言われる犠牲者。被害者の家族が、インドネシアの各地で加害者への恨みをはらせないまま暮らしていることに、言葉もない。(咲)


『アクト・オブ・キリング』作品紹介
http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/393841128.html

2014年/デンマーク・フィンランド・インドネシア・ノルウェー・イギリス合作/カラー//103分
配給:トランスフォーマー
(C)Final Cut for Real Aps, Anonymous, Piraya Film AS, and Making Movies Oy 2014
http://los-movie.com/
★2015年7月4日(土) シアター・イメージフォーラム他全国順次公開
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2015年02月13日

劇場版 ムーミン 南の海で楽しいバカンス(原題:Muumit Rivieralla)

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監督:グザビエ・ピカルド、ハンナ・ヘミラ
原作:トーベ・ヤンソン
声の出演:高山みなみ(ムーミン)、大塚明夫(ムーミンパパ)、谷育子(ムーミンママ)、フローレン(かないみか)、クラーク(さまぁ〜ず大竹一樹)

ムーミン一家はこの夏、南の海へとバカンスに出ることになりました。やってきたのはリゾート地リビエラ。高級ホテルに泊まり、VIP待遇の日々に一家は目を白黒。パパとフローレンは大喜びで毎日を遊び暮らしますが、ママはなんだか落ち着かず、ムーミンはフローレンがプレイボーイと一緒に楽しんでいるのが気に入りません。とうとうママとムーミンはホテルから出て、海岸で過ごすことにしました。

原作者トーベ・ヤンソン生誕百年記念作品。いつも静かなムーミン谷で暮らしている一家が高級リゾート地にやってきます。大きな町にたくさんの登場人物と勝手が違い、とってもにぎやかです。豪華なホテル住まいを満喫するのかと見ていると、思いがけない展開になります。あれれ大丈夫なの?と心配させられますが、ちゃんと収束していきます。どんな風に?はスクリーンでお確かめください。フローレンがビキニの水着姿を披露しますが、いつもは何にもつけていませんよね。は、裸?(白)

2014年/フィンランド/カラー/77分
配給:ファントム・フィルム
(C)2014 Handle Productions Oy & Pictak Cie (C) Moomin Characters TM
http://moomins-movie.com/
★2015年2月13日(金)TOHOシネマズ日本橋ほかロードショー
posted by shiraishi at 22:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 北欧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月19日

パンク・シンドローム(原題:Kovasikajuttu)

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監督・脚本:ユッカ・カルッカイネン、J=P・パッシ
出演:ペルッティ・クリッカ、カリ・アールト、サミ・ヘッレ、トニ・バニリタロ、カッレ・パジャマー

「ペルッティ・クリカン・ニミパイヴァト」は、フィンランドの知的障害者4人のパンク・バンド。ギターのペルッティ、ヴォーカルのカリ、ベースのサミ、ドラムのトニが自分達で作ったオリジナルの曲を演奏する。歌詞には彼らの社会の偏見、身近な施設への不満など、率直なアピールが込められている。これまでにテープ、CD、7インチのレコードなどを発売し、ほぼ完売。障害者・健常者の別なく受け入れられている人気のバンドなのだ。彼らの日常に密着し、練習風景、海外ツアー、メンバー一人ひとりのつぶやきも紹介する。

このバンドは障害のある成人向けのワークショップから生まれました。撮影当時、メンバーは20代後半から50代ですが、みな率直に言いたいことを言い合ってケンカしたり、うまく行かなければ口惜しくて泣いたりと全く自然そのものです。しかし、いったんステージに上がればパワフルな歌唱を聞かせ、聴衆もノリノリ。元気の出るこの作品は、2013年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で「市民賞」を受賞しています。
一昨年の東京国際映画祭のサクラグランプリは『ウィー・アー・ザ・ベスト!』。スウェーデンの女子中学生3人がパンク・バンドを作る話でした。北欧はパンクが盛んなのでしょうか。社会の批判や不満を歌にぶつけるなら、福祉国家の北欧より今の日本のほうがよほどネタが豊富です。日本のバンドは何を歌っているのか門外漢だけれど気になってきました。(白)


2012年/フィンランド・ノルウェー・スウェーデン合作/カラー/ビスタサイズ/88分/フィンランド語
配給:エスパース・サロウ
(C)Mouka Filmi oy
http://punksyndrome.net/

★2015年1月17日(土)シアター・イメージフォーラム他にて全国順次公開
posted by shiraishi at 22:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 北欧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする