2016年06月23日

好きにならずにいられない(原題:Fusi)

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監督・脚本:ダーグル・カウリ
撮影:ラスムス・ビデベック
制作:バルタザール・コルマウクル、アグネス・ヨハンセン
音楽:スロウブロウ
出演:グンナル・ヨンソン(フーシ)、リムル・クリスチャンスドッティル(シェヴン)、シガージョン・キャルタンソン(モルドゥル)

フーシは43歳独身。アイスランドの首都レイキャビクの空港で荷物係をし、母親とアパートで暮らしている。身体は大きいけれど気は小さく、女友達もいない。単調な仕事をこなした後は、カーステレオでヘビメタを聞き、ラジオにリクエストする。ジオラマ作りが趣味で、有名な「エル・アラインの戦い」を小さな兵士や戦車のフィギュアを使って再現している。母親はそんなフーシを心配して、誕生日にダンス教室のクーポンをプレゼントしてくれたが、フーシは気が進まない。いやいや出かけるが中に入れない。車の中でいつものようにラジオを聞いていると、小柄な女性が声をかけてきた。ダンス教室に通うシェヴンだった。

フーシ役のグンナル・ヨンソンはお相撲さんのような巨体で200sあるそうです。長髪にヒゲで、体形はほとんどベイマックスかトトロか?
フーシは、恋愛経験もなく純情で、オタク少年のまま中年になってしまった人。出会いのチャンスを、とママがプレゼントしてくれたダンス教室のクーポンは、功を奏するのですが。シェヴンの優しさに舞い上がったり、隣に引っ越してきた父子家庭の少女ヘラと遊んでやって誘拐と間違えられたリ、散々です。大きな事件は起きませんが、シャイなクマさんのようなフーシを「ネジでもあったら巻いてやりたい」気持で見守りました。ほぼ母親の心境です。
ダーグル・カウリ監督は『氷の国のノイ』(2003年)で長編デビューした方。別名義で音楽も担当しています。この優しい大男が主人公の映画は、北欧の映画祭をはじめ世界各地で様々な賞を受けました。フランシス・フォード・コッポラ監督のコメント「フーシ、君のような人が増えたなら、世界はもっと幸せになれるのに」に同意。(白)


2015年/アイスランド・デンマーク合作/カラー/シネスコ/94分
配給:マジックアワー
http://www.magichour.co.jp/fusi/
★2016年6月18日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
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2015年11月01日

1001グラム ハカリしれない愛のこと(原題:1001grams)

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監督・脚本・製作:ベント・ハーメル
出演:アーネ・ダール・トルプ(マリエ)、ロラン・ストケル(パイ)、スタイン・ヴィンゲ(アーンスト・アーンスト)

科学者のマリエはノルウェー国立計量研究所に勤めている。あらゆる計測に関するエキスパートだが、実生活では結婚に破れ、離婚手続き中。人生では規格ハズレになっている。そんなとき父親が倒れ、代理としてパリの国際セミナーに出席することになった。重さの基準となる「キログラム原器」を肌身離さず携えていかねばならない。

普段の生活でなにげなく使っている重さの規格の大元になるものを「原器」というんですね。聞いたことはあっても見たのは、この映画が初めてです。マリエの勤め先「ノルウェー国立計量研究所」と、マリエが出席する会議が開かれるパリ郊外の「国際度量衡局」は、撮影が許可されたほんもの。
にこりともしないマリエは、四角い部屋を丸く掃いたりはしないだろう、クールな理系女子なんだろうとつい思ってしまいます。ところが、パリで出会った男性パイのおかげですこしずつ表情がほぐれていき・・・。
『キッチン・ストーリー』『ホルテンさんのはじめての冒険』で、男性を主人公にしたベント・ハーメル監督。規則遵守、決まりきった日常からちょっと外れてしまうところにドラマが生れましたよね。この作品は規格そのものの「原器」を抱えた女性。なんということもないシーンにクスっと笑える種がまかれていました。(白)


2014年/ノルウェー、ドイツ、フランス/カラー/シネスコ/91分
配給:ロングライド
BulBul Film, Pandora Film Produktion, Slot Machine (c)2014
http://1001grams-movie.com/
★2015年10月31日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 20:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 北欧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月23日

バレエボーイズ(原題:Ballettguttene)

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監督:ケネス・エルベバック
撮影:トシュタイン・ノドランド
編集:クリストファー・ヘイエ
音楽:ヘンリク・スクラム
出演:ルーカス・ビヨルンボー、シーヴェルト・ロレンツ・ガルシア、トルゲール・ルンド

ノルウェーの首都オスロ。プロのバレエダンサーを目指し、ひたむきにレッスンに励む少年たちの12〜16歳の多感な時期を撮影したドキュメンタリー。ルーカス、トルゲール、シーヴェルトは互いにライバルではあったが、仲も良くレッスンの合間にお喋りしたりふざけあったりしている。このままの関係が続くかと思われたある日、ルーカスに名門のロイヤル・バレエ・アカデミーから招待があった。いつのまにか3人はそれぞれに将来の選択の岐路に立っていたのだった。

3人の少年たちが成長していく4年間を遠い親戚のおばちゃんのような気分で観ました。可愛い子たちが競い合いながらステップアップし、だんだんと青年らしくなっていくのが頼もしいです。同じようにバレエを愛していても、行く道が分かれていくのはちょっと胸が痛みますが、きっとどんなことも糧にして大人になっていくはずと勝手に期待しています。彼らのその後が気になりますが、公式サイトに記述がありました。
「ルーカスは英国ロイヤル・バレエ・アカデミー卒業後、ロイヤル・バレエ団に研修生として入団。2015年8月より本拠地であるロイヤル・オペラ・ハウスの舞台に立つ事が決まっている。シーヴェルトはローザンヌ国際バレエコンクール2015」のファイナリストに選ばれる。トルゲールは7月からノルウェー軍へ入隊」ルーカスとシーヴェルトのinstaglamをたどると最近の画像が観られます。もうすっかり大人でした。(白)

男の子3人のバレエといえば、ビョン・ヨンジュ監督の『僕らのバレエ教室』(2004年/韓国)を思い出します。男の子にとって、バレエをやっているというのは、ちょっと気恥ずかしい思いがあるもの。『バレエボーイズ』の3人の男の子たちも、そんな気持ちをちらつかせながら、お互いに切磋琢磨して、ひたむきにプロを目指して練習にいそしみます。まだ10代の頃から、はっきりとした目標があっていいなぁ〜と、うらやましい限りでした。3人の中でも、東洋系の顔立ちのシーヴェルトが特に気になりました。これからの活躍も注目したい魅力的な男の子。
そして、本作でオスロのオペラハウスが登場したのも注目です。昨年の東京国際映画祭特別招待作品『もしも建物が話せたら』(WOWOWの国際共同制作ドキュメンタリー第1弾)で取り上げられた6つの建物の中で一番気になった建物でした。フィヨルドの淵に、まるで海面からそそり立つ氷山のように建てられた新しいオペラハウス。緩やかなスロープになった屋根の上を歩く人や、バレエの練習をする人の姿が印象的でした。本作の3人の少年たちも、屋根の上で練習したりしたのでしょうか・・・ 本作の中で、新しいオペラハウスは、低所得者層の住む地区に建てられたと知りました。この地区の誇りとなるような素晴らしい建物の存在は、人々に希望を与えてくれているのではないかと思いました。(咲)


2014年/ノルウェー/カラー/16:9デジタル/75分
配給:アップリンク
http://www.uplink.co.jp/balletboys/
★2015年8月29日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか全国順次公開
posted by shiraishi at 14:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 北欧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月14日

ビッグゲーム 大統領と少年ハンター   原題:, Big Game

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監督:ヤルマリ・ヘランダー
出演:サミュエル・L・ジャクソン、オンニ・トンミラ、レイ・スティーヴンソン、フェリシティ・ハフマン、ジム・ブロードベント

フィンランドの山岳地帯。13歳の少年オスカルは、ハンターとして独り立ちをする通過儀礼として、父親をはじめ先輩ハンターたちに見送られ、一人で山に入る。ビッグな獲物をしとめ、獲物と撮った写真を先輩たちの写真のそばに飾るのが、彼にとっての命題だ。彼が森に入ったころ、アメリカ大統領が国際会議に出席するためにエアフォースワンでフィンランドの首都ヘルシンキを目指していた。それが、何者かの地対空ミサイルに撃墜され、大統領はあわやのところで脱出ポッドで脱出し、山岳地帯に着陸する。そこで大統領は少年オスカルに出会う。裏切り者の大統領の側近とテロリストたちが、大統領狩り(ビッグゲーム)を目論んでいることを察知した大統領は、オスカルとタッグを組んで、テロリストたちに対峙する・・・

伝説の狩人である父を持つオスカル。最初は一人で山に放り出されて、おどおどしていたのが、大統領に出会って、窮地を救えるのは自分だと意識し始めた頃から、みるみる大人びていく姿がたのもしい。
サミュエル・L・ジャクソンが大統領を演じていて、しかも、大がかりなバトルが繰り広げられて、一瞬、ハリウッド映画?と勘違いしてしまいますが、しっかりフィンランドの香りのする物語。オスカルを演じたオンニ・トンミラの東洋風の風貌は、フィン族が東から流れてきたらしいことを感じさせてくれます。壮大なフィンランドの景色も魅力。スカッと爽やかな映画です。(咲)



2014年/フィンランド・イギリス・ドイツ/1時間31分 /カラー/シネマスコープ
配給:松竹メディア事業部
公式サイト:http://biggame-movie.jp
★2015年8月15日(土)より全国ロードショー!!
posted by sakiko at 22:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 北欧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月06日

さよなら、人類 (原題:En duva satt pa en gren och funderade pa tillvaron)

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監督・脚本:ロイ・アンダーソン 製作:ペニラ・サンドストロム
撮影:イストバン・ボルバス 出演:ホルガー・アンダーソン、ニルス・ウェストブロムサム 他

第71回ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞(朝日新聞デジタル)した不条理物語。面白グッズを売り歩く冴えないセールスマンのサムとヨナタンは正反対の性格でありながらも友情を結んでいる。2人ともドヤ街らしき所に住んでいて商売は厳しく、口論がたえない… 訪れる先々で奇妙な人生を目撃する… 様々な死との出会い、18世紀のスウェーデン国王率いる騎馬隊、ブラックユーモアなエピソードが続く。この作品は昨年の第27回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門でも上映(映画祭上映時のタイトルは「実存を省みる枝の上の鳩」) 人間の愚かさ、希望と絶望、哀愁を織りなしている傑作。

懐かしいスウェーデン語が私の耳に心地いい・・私にとって生まれて初めての外国がスウェーデン・ヨーテボリでした。初海外が独り旅だったので空港に着いてもオロオロして沢山のスエ人に助けてもらったし見るもの、食べもの何でも初めてのスウェーデンにはビックリ仰天したことを今でも鮮明に覚えてます。映画の中でも出てきますが普通に国王が歩いてます。イケメンをナンパしたりはしないと思いますが(笑)ヨーテボリ出身の巨匠・ロイ・アンダーソン監督の、この長編最新作は『散歩する惑星』『愛おしき隣人』から続いた"リビング・トリロジー"(人間についての3部作)で、『さよなら、人類』の公開によって15年かけて完結。全39シーンを固定キャメラ、1シーン1カットで撮影。CG全盛の時代にロケではなく巨大なスタジオにセットを組み、マットペイントを多用して膨大な数のエキストラ(馬含む)を登場させ、まるで絵画のような映像は4年の歳月を費やして創り上げたそうです。スウェーデンと言えば「高福祉国家」をイメージする日本人ですが・・スウェーデンにだってホームレスは居るし、寒いせいかお酒呑んでるひとも結構いて不良も多い(苦笑)以前は自殺率が高かったことでも有名です。人間は生きていれば誰だって傷つくし、日々の生活に追われて暮らしているうちに死んでしまう…。恥をかいてばかり、なにをやっても上手くいかないひとたち(私含む)の哀しくも可笑しな人生。それでも一人一人の人生は愛おしくて美しい。万華鏡のような世界へと私たちを誘ってくれる壮大なアナログ巨編です!! (千)

2014/スウェーデン・ノルウェー・フランス・ドイツ合作/100分
配給:ビターズ・エンド
公式サイト
★8月8日より恵比寿ガーデン・シネマほか全国順次ロードショー





posted by chie at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 北欧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする