2018年07月15日
ストリート・オブ・ファイヤー(原題:Streets of Fire)
監督:ウォルター・ヒル
脚本:ウォルター・ヒル、ラリー・グロス
撮影:アンドリュー・ラズロ
音楽:ライ・クーダー
出演:マイケル・パレ(トム・コーディ)、ダイアン・レイン(エレン・エイム)、リック・モラニス(ビリー・フィッシュ)、エイミー・マディガン(マッコイ)、デボラ・バン・フォルケンバーグ(リーバ・コーディ)
大人気のロック歌手となったエレン・エイムの凱旋ライブが満員のホールで行われている。そこへストリートギャングのボンバーズが大挙乗り込んで、ボスのレイブンが目をつけていたエレンを誘拐してしまった。おりしも風来坊のトム・コーディが、この町に戻ってくる。彼はかつてエレンと恋人同士だったが、エレンのために別れてしまっていた。トムは酒場で知り合った女兵士のマッコイやエレンのマネージャーのビリーと協力して、ボンバーズのアジトに急襲をかける。エレンを無事に救い出すことに成功するが、面目を潰されたボンバーズのボス、レイブンがトムに決闘を申し込んできた。
1984年製作、日本で大ヒットした作品が、このほどデジタルリマスター版でリバイバル公開です。ダイアン・レインは10代で映画デビューし、コッポラ監督作品に続けて出演して日本での知名度を得ていました。トム役に抜擢されたマイケル・パレはこの作品で大ブレイク。美男っぷりに、日本でも女性ファンの熱が上がったはずです。そしてお肌つるつるのウィレム・デフォー(29歳)がストリートギャングを怪演。車やバイクの80年代ではあるものの、中味は西部劇。アクション場面が結構派手で、タイトルどおりあちこちから火の手があがります。
音楽がとても良くて、中で歌われた「TONIGHT IS WHAT IT MEANS TO BE YOUNG」は日本で椎名恵がカバー。「今夜はANGEL」としてテレビドラマ「ヤヌスの鏡」の主題歌にもなりました。懐かしい。最初と最後のエレンのライブ場面では、当時19歳のダイアン・レインが堂々としたパフォーマンスを見せています。歌は吹き替えで、1人だけの声でなく数人のボーカリストの声を合成したものなんだとか。それであの迫力が出ているんですね。
HPには使われた音楽のタイトルをはじめ、84年がどんな年だったかが挙げられています。上映劇場欄には立川シネマシティ「極音上映」、川崎チネチッタ「LIVE ZOUND」、福山シネマモード「激音上映」と赤い文字が!?お近くの皆様、どんな音響になるのかぜひお確かめください。 (白)
1984年/アメリカ/カラー/シネスコ/94分
配給:コピアポア・フィルム
(C)1984 Universal Studios. All Rights Reserved.
http://streets-of-fire-jp.com/
★2018年7月21日(土)ダイナマイト・ロードショー
2018年07月01日
バトル・オブ・ザ・セクシーズ(原題:Battle of the Sexes)
監督:ヴァレリー・ファリス、ジョナサン・デイトン
脚本:サイモン・ビューフォイ
撮影:リヌス・サンドグレン
音楽:ニコラス・ブリテル
出演:エマ・ストーン(ビリー・ジーン・キング)、スティーブ・カレル(ボビー・リッグス)、アンドレア・ライズボロー(マリリン・バーネット)、サラ・シルバーマン(グラディス・ヘルドマン)、ビル・プルマン(ジャック・クレイマー)、アラン・カミング(テッド)、エリザベス・シュー(プリシラ・リッグス)
1973年、女子テニスの世界チャンピオンのビリー・ジーン・キングは全米テニス協会が発表した次期大会の女子の優勝賞金が、男子の1/8であることに抗議する。男子と変わらず集客しながら評価されず、女性差別がまかり通っていることに業を煮やして“女子テニス協会”を立ち上げる。一方、元男子世界チャンピオンのボビー・リッグスはギャンブル癖から妻に愛想をつかされ、起死回生のチャンスを狙っていた。男性至上主義を唱え、真っ向から対立。ボビーはキングへ挑戦状を叩きつけるが、キングは見せ物になりたくないと断る。しかし、キングのライバルだったマギーがボビーと戦って完敗、得意満面のボビーをこのままにしておけない。女性は男性に劣るものではない、と挑戦を受けることにする。全米、いや世界中のテニスファンが注目する世紀の試合が始まろうとしていた。
テニス愛好家の方々には周知の事実でしたか?こんな性差を越えた戦いがあったということを、この映画で初めて知りました。1970年代は男女平等を求める機運が高まっていたとき。ウーマン・リブの運動家たちも注目したこの戦いは事実なので結果はわかっているのですが、映画の面白さをそぐものではありません。試合に一喜一憂していました。また、キング自身が自分の隠されていた面に気づいていく過程も織り込み、1人の女性の生き方も描いています。力強く、しかも繊細なストーリーを担うのは、納得の俳優陣。ヴァレリー・ファリス、ジョナサン・デイトン監督夫妻は、俳優選びが上手です。
監督夫妻の『リトル・ミス・サンシャイン』(2006)が世界中で好評でしたが、第19回東京国際映画祭で最優秀監督賞、主演女優賞(アビゲイル・ブレスリン)、観客賞。アカデミー賞では助演男優賞(アラン・アーキン)、脚本賞を受賞しています。スティーブ・カレルはこの作品で叔父役で出演していました。オーチャードホールで満席の観客から暖かい拍手を贈られて本当に嬉しそうだったのを思い出します。
通路で遭ったご夫妻に思わず“Congratulations!”と握手できたのは我ながら上出来でした。ほかの俳優さんたちもみんな現在も活躍中です。(白)
2017年/アメリカ/カラー/シネスコ/122分
配給:20世紀フォックス映画
(C)2017 Twentieth Century Fox
http://www.foxmovies-jp.com/battleofthesexes/
★2018年7月6日(金)TOHOシネマズシャンテほか、全国順次ロードショー
2018年06月28日
アメリカン・アサシン
監督:マイケル・クエスタ
原作:ヴィンス・フリン
脚本:スティーヴン・シフ
撮影:エンリケ・シャディアック、マイケル・フィンチ
音楽:スティーヴン・プライス
出演:ディラン・オブライエン(ミッチ・ラップ)、マイケル・キートン(スタン・ハーリー)、サナ・レイサン(アイリーン・ケネディ)、デヴィッド・スーシェ(スタンスフィールド)、テイラー・キッチュ(ゴースト)
スペインのイビサ島でバカンスを過ごしているミッチ・ラップ、恋人のカトリーナにプロポーズを受けてもらったばかりで幸せの絶頂にあった。飲み物を取りに彼女から離れたとき、武装した集団が観光客を無差別に銃撃する。カトリーナも銃弾を受け、かけつけたミッチの腕の中で絶命する。復讐に燃えたミッチは、無差別テロの首謀者に近づくためにアラビア語を学び、銃撃や格闘技の訓練をしていた。長い時間をかけて過激派の組織に潜入しようとしたミッチは、同時に自分もCIAの監視下にあったことを知る。ミッチの才能を見込んだCIAは、極秘ミッションを遂行するチームに取り込もうとする。ミッチは元ネイビーシールズの鬼教官スタン・ハーリーが指導する工作員の養成プログラムの特訓を受けることになった。
本作はヴィンス・フリンのベストセラー“ミッチ・ラップシリーズ”のうち、後半に書かれていますが、時系列では最初の部分。ミッチ・ラップが暗殺者になったきっかけを描いています。私怨から過激派組織を狙ううちに、CIAにスカウトされるという、男子大好きそうなストーリー。それも『メイズ・ランナー』3作に主演し(第3弾公開中)、ハリウッドで認められた若手ディラン・オブライエンと初代バードマンのマイケル・キートンが、危ないくらい熱い青年役と冷徹な教官役で火花を散らします。ストーリーはミッチの復讐に留まらず、あれあれというまに大きく拡がっていくのですが、身体を張ったスタントとめまぐるしいアクションに見ほれているうち、突っ込むのも忘れました。さすがにあの爆発だけでことが済むとは思えませんが。ディランが終始髭面なのがちょっと残念。原作者は惜しくも40代で亡くなられましたが、シリーズはまだまだあるので、この先も期待しています。(白)
2017年/アメリカ/カラー/シネスコ/112分
配給:キノフィルムズ
(c)2018 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.
http://american-assassin.jp/
★2018年6月29日(金)ロードショー
2018年06月15日
ワンダー 君は太陽(原題:Wonder)
監督・脚本:スティーブン・チョボスキー
原作:R・J・パラシオ
スティーブン・チョボスキー、スティーブ・コンラッド、ジャック・ソーン
音楽:マーセロ・ザーボス
出演:ジュリア・ロバーツ(イザベル)、ジェイコブ・トレンブレイ(オギー)、オーウェン・ウィルソン(ネート)、マンディ・パティンキン(トゥシュマン先生)、ダビード・ディグス(ブラウン先生)、イザベラ・ヴィドヴィッチ(ヴィア)、ダニエル・ローズ・ラッセル(ミランダ)、ナジ・ジーター(ジャスティン)、ノア・ジュプ(ジャック)、ミリー・デイヴィス(サマー)、ブライス・ガイザー(ジュリアン)、エル・マッキノン(シャーロット)
10歳のオーガスト・プルマンは、スタートレックが大好きで宇宙旅行に憧れている男の子。パパとママとお姉ちゃんのヴィアとの4人家族。オギーと呼ばれている。オギーは顔に障害を持って生まれてきて、今までに27回も手術を受けた。特別な顔なので、外に行くとみんながびっくりし、怖がったりじろじろ見たりする。パパとママはこれまで自宅でオギーに勉強を教えてきた。けれどママは、5年生になる日から他の子と同じように、学校に行かせようと決めた。夏休みのうちにママとオギーは校長先生を訪ねる。愉快な校長先生はオギーを歓迎し、同級生になるジュリアン、ジャック、シャーロットの3人に学校の中を案内させる。新学期が始まって、1人で校門をくぐるオギーを家族が心配そうに見つめている。クラスにとけこめないオギーはランチの時間も一人ぼっち。でもあるきっかけで、サマーという女の子とジャックと仲良くなれた。
オギーの病気は“トリーチャーコリンズ症候群”という遺伝子突然変異により、顔面やあごの骨が形成不全となるものです。ずいぶん前に同じ症状の男の子に会ったときは、なんの知識もなかったのでやっぱり驚いてしまいました。知ることは大事とつくづく思いました。
オギーは家族に恵まれ、持ち前の賢さや明るさもあって周りの人たちに受け入れられていきます。けなげなオギーや心を砕く両親に泣かされますが、姉のヴィアの心情にも光を当てています。オギーにかかりきりになってしまった両親に、ヴィアは「手のかからない子」と言われてきました。良い子でい続けたヴィアも高校生ですが、たまには甘えたいでしょう。そのへんもジーンとします。ハンカチ、ティッシュを忘れずに。
ジュリア・ロバーツとオーウェン・ウィルソンを食ってしまいそうなジェイコブ・トレンブレイくんすごい。『ルーム』(2016)で閉じ込められていた母から生まれた男の子役でした。大きくなってさらに上手くなっています。子どもたちの演技を引き出した監督、えらい。
ブラウン先生がいいことを言います。「正しいことをするか、親切なことをするか、 どちらかを選ぶときには、親切を選べ」って。親切のほうがわかりやすいですよね。これも忘れないようにしよっと。原作の「ワンダー」は2015年にほるぷ出版より刊行。続編は書かないと言っていた著者が、2017年にいじめっ子のジュリアン、優等生のシャーロットたちの側から「もうひとつのワンダー」を書きました。1作目で語られなかったジュリアンの思いがわかります。これを読んだときはティッシュの山ができました。2018年には絵本「みんな、ワンダー」も出ています。(白)
2017年/アメリカ/カラー/シネスコ/113分
配給:キノフィルムズ
(C)2017 Lions Gate Films Inc. and Participant Media, LLC and Walden Media, LLC. All Rights Reserved.
http://wonder-movie.jp/
★2018年6月15日(金)ロードショー
2018年05月27日
レディ・バード 原題:Lady Bird
監督・脚本:グレタ・ガーウィグ
出演:シアーシャ・ローナン、ローリー・メトカーフ、トレイシー・レッツ、ルーカス・ヘッジズ、ティモシー・シャラメ、ビーニー・フェルドスタイン、スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン、ロイス・スミス
2002年、カリフォルニア州サクラメント。クリスティンはカトリック系の高校で最後の年を迎えていた。クリスティンは「私は今日からレディ・バード」と、親友ジュリーをはじめ周りの人たちにそう呼ばせる。
ある日、母マリオンと地元の大学を見学に行った帰り道、「私はニューヨークの大学に行きたいの」と言って、地元にいてほしい母と大喧嘩。車から飛び降りて右腕を骨折。ピンクのギブスに「くたばれママ」と書く。そんな彼女を失業中の父ラリーは、東部の大学に入るための助成金を申請して、こっそり応援している。
シスターに勧められて参加したミュージカルのオーディションに受かり、練習中に親しくなったダニーと高校のダンスパーティの後に初キス。ダニーの祖母の家が憧れの豪邸と知って、有頂天になるクリスティン。順調に彼との恋をはぐくむが、ミュージカル本番の終わった夜、ダニーが男の子とキスしているのを見てしまう。
年が明けて、カフェでアルバイトを始めたクリスティン。以前、ダニーと行ったライブでクールな演奏をしていた美青年カイルがカフェにやってくる。デートの約束をして心浮き立つクリスティン。学校では、カイルと同じ人気グループにいる派手なジェナとつるむようになって、親友ジュリーとは疎遠になる・・・
『フランシス・ハ』で、不器用だけど愛すべきフランシスを演じた女優グレタ・ガーウィグが、故郷サクラメントへの愛を込めて、自身の高校時代の体験も盛り込んで監督・脚本を手掛けた物語。
バグダードで米兵が大勢犠牲になったというニュースが流れて、9.11同時多発テロのあと、アメリカ社会が大きく変わった時期だとわかります。でも、まだスマホはない時代。
クリスティンの初キスの相手ダニーが、男の子とキスしている場面がありますが、当時はまだLGBTQの認知度も低くて、権利も認められてなかったのでした。
『君の名前で僕を呼んで』で初々しい美少年を演じていたティモシー・シャラメが、本作ではちょっと鼻持ちならないプレイボーイの美青年。これも本作の見どころ。
高校卒業を目前にして、これからの進路をどうするか惑う時期。少女から大人の女性へと脱皮していく年頃で、クリスティンも初恋、初キス、そして初体験と段階を踏んでいきます。一方で、そんな年頃の娘を持つ母親の思いもずっしり描かれています。
そして、アメリカの高校生にとって大切なプロム(学年の最後に開かれるフォーマルなダンスパーティー)にどんなドレスを着て、誰と行くかは本人にも母親にも大問題。クリスティンの最後の選択がとても素敵です。
映画の最後に、「愛してる、ママ、ありがとう」のメッセージ。いろんなことを描きたかったけど、一番は、ちょっと反発したこともあるママへの思いなのだなと! (咲)
c 2017 InterActiveCorp Films, LLC.
シネマジャーナル Annually Vol.1 通算101号(2018年4月発行)に、アメリカ・カリフォルニア州在住の斉藤愛さんの「桑港ベイエリア便り」の中で、『レディ・バード』の素敵な評を掲載しています。
☆第75回ゴールデン・グローブ賞作品賞、主演女優賞
2017年/アメリカ/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/94分
配給:東宝東和
公式サイト:http://ladybird-movie.jp/
★2018年6月1日(金)より、TOHOシネマズシャンテ他にて全国ロードショー