2018年11月04日
ボヘミアン・ラプソディ(原題:Bohemian Rhapsody)
監督:ブライアン・シンガー
脚本:アンソニー・マッカーテン
撮影:ニュートン・トーマス・サイジェル
音楽プロデューサー:ブライアン・メイ、ロジャー・テイラー
出演:ラミ・マレック(フレディ・マーキュリー)、ルーシー・ボイントン(メアリー・オースティン)、グウィリム・リー(ブライアン・メイ)、ベン・ハーディ(ロジャー・テイラー)、ジョセフ・マッゼロ(ジョン・ディーコン)
メンバーが抜けたばかりのブライアン・メイとロジャー・テイラーのバンドに自分を売り込んだフレディ、これまでのインド風の名前を捨て、フレディ・マーキュリーと改名する。フレディは恋人メアリーを得て、公私共に充実していた。メンバーで作る個性的な曲は、当初業界で評価されなかったがライブを重ねるごとにファンが増え、アルバムも発売された。数々のヒット曲を放ち、世界的なバンドとなっていくクイーン、フレディは輝かしいライトを浴びながら、孤独にさいなまれていた。
破格の契約金でソロとなったフレディはメンバーと仲たがいしてしまう。メアリーとも疎遠となって、ようやく自分が大切にしなければならないものに気づく。そんなとき、20世紀最大の音楽イベント「ライブ・エイド」に出演の話が持ち上がった。フレディは自分の非を認めてメンバーに許しを請う。崩壊寸前だったクイーンは再び結集した。
作品中披露されるのは28曲。フレディの独特なマイク・パフォーマンスの始まり、「ボヘミアン・ラプソディ」、「ウィ・ウィル・ロック・ユー」が生まれるときのエピソードも織り込まれ、名曲誕生の瞬間に立ち会ったような気がします。一旦仲間のもとを離れたフレディが参加を決意する1985年のチャリティー・ライブ「ライブ・エイド」は、クイーンが完全復活を果たす最高のパフォーマンスで、映画では冒頭がそのシーンで始まり、ラストをまるごと再現した圧倒的な映像でしめくくります。みんなで一斉に何かするのが苦手な私でも、思わず胸が熱くなりました。試写室で涙を拭いていたのは私だけではありません。
フレディを演じるラミ・マレックは少し細身ですが、堂々のパフォーマンス。撮影で使った”付け歯”と別れがたくて、金加工をして大切に持っているようです。メンバーも楽器演奏を特訓しての熱演。キャスト4人が来日するそうなので、芸能ニュースチェックをお忘れなく。
日本でもクイーン人気は高く、1975年には初来日、日本びいきでプライベート来日もあったそうです。ドラマの主題歌になったり、日本独自のベストアルバムも発売(2004年)チャート入りしています。フレディは日本の着物や陶磁器、日本庭園が好きで映画の中にも散見されます。ガウン代わりに着ているのは赤い襦袢でした。
歌舞伎町に新宿コマ劇場が健在だった2004年、「ウィ・ウィル・ロック・ユー」のミュージカル興行があり、大きな看板が掲げられ曲が鳴り響いていたのを思い出します。これはより大きな画面で、良い音響の劇場で体感するのがおすすめです。手拍子と足踏みが出そうですね。(白)
2018年/アメリカ/カラー/シネスコ/135分
配給:20世紀フォックス映画
(C)2018 Twentieth Century Fox
http://www.foxmovies-jp.com/bohemianrhapsody/
★2018年11月9日(金)ロードショー
<前夜祭上映>
大迫力の音響システムで一足早く体感
11月8日(木)、IMAXR/ドルビーアトモス上映劇場にて
<胸アツ応援上映>
11月9日(金)、TOHOシネマズ日比谷(東京)・梅田(大阪)にて
詳細はHPまで
華氏119 (原題:Fahrenheit119)
監督:マイケル・ムーア
出演:マイケル・ムーア
2016年11月9日にトランプが米国大統領選を勝利をしたことを受け、なぜヒラリー・クリントンが負けたのかを丁寧に解説する。さらに、マイケル・ムーア監督の故郷であるミシガン州で起こっている事実に目を向け、トランプ政権に導かれて、アメリカが向かおうとしている先を危惧し、警告を鳴らす。
多くのアメリカ人が確信していたアメリカ初の女性大統領の誕生。ところが蓋を開けてみれば、当選したのは、まさかのドナルド・トランプだった。ひとり1票ではない“選挙人制度”と無投票数が絡み合い、トランプを支持する少数派がアメリカ全土の意志へと変わってしまった恐ろしい“からくり”をマイケル・ムーア監督が明かしていく。その見せ方がうまい。ヒラリー支持者が開票前から当選を確信して祝杯を挙げるシーンを見せた後、お通夜かと思うような沈痛なトランプ陣営を映し出す。そして、トランプ当選直後の相反する反応も。エンタテインメントがよくわかっている。
ムーア監督はミシガン州フリントの水道問題にも切り込む。トランプの古くからの友人スナイダーがミシガン州知事になり、金儲けのために、黒人が多く住むフリントという街に民営の水道を開設したが、安い管を使用したことで水道水に鉛が溶け込んだのだ。知事の家にアポなし突撃をして見せたパフォーマンスはムーアならでは。
情報量が多く、一度で全てを理解するのは難しい。しかし、アメリカがナチス化する可能性を示唆するラストには不安が募る。(堀)
2018年/アメリカ/128分
配給:GAGA
(C)2018 Midwestern Films LLC 2018 cPaul Morigi / gettyimages
https://gaga.ne.jp/kashi119/
★2018年11月2日(金)より全国順次ロードショー
2018年10月28日
ヴェノム 原題:Venom
監督:ルーベン・フライシャー
出演:トム・ハーディ、ミシェル・ウィリアムズ、リズ・アーメッド、スコット・ヘイズ、リード・スコット
(日本語吹き替え)中村獅童、中川翔子、諏訪部順一
正義感溢れる記者、エディ・ブロック(トム・ハーディ)は、ライフ財団が人体実験で死者を出していると聞きつけ、財団トップのカールトン・ドレイク(リズ・アーメッド)に突撃取材する。エディは無謀な取材をしたことで会社をクビになる。恋人アン・ウェイング(ミシェル・ウィリアムズ)からも別れを告げられる。踏んだり蹴ったりのエディは、ライフ財団の科学者ドーラ・スカース(ジェニー・スレート)から真実を報道してほしいと研究所に侵入調査を懇願される。エディはそこで人体実験の被験者と接触したため、“シンビオート(地球外生命体)”に寄生されてしまう・・・
「さすが、トム・ハーディ、面白かった」と耳にして、どんな映画かも知らないまま試写室へ。実は、トム・ハンクスなら面白いはず・・・と、勘違いしていました。マッドマックスもスパイダーマンも全く観ていないので、馴染みがなかった次第。そんな私ですが、この映画、しっかり楽しめました。異星の生命体に寄生されるなんて、どんな気持ちでしょう。内から響いてくる声の主が、突然姿を表わすことも。
悪役を演じたリズ・アーメッドも、なかなか素敵で、名前からしてムスリム?と調べたら、パキスタン系イギリス人でした。『グアンタナモ、僕達が見た真実』や『ミッシング・ポイント』にも出演していたのですね。失礼しました。これから注目です♪(咲)
2018年/アメリカ/112分/2D・3D/字幕・吹替
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:http://www.venom-movie.jp/
★2018年11月2日(金)全国ロードショー
2018年10月21日
search サーチ(原題:Searching)
監督:アニーシュ・チャガンティ
脚本:アニーシュ・チャガンティ
セブ・オハニアン
出演:ジョン・チョー(デビッド・キム)
デブラ・メッシング(ヴィック捜査官)
ジョセフ・リー(ピーター)
ミシェル・ラー(マーゴット)
デビッドは妻に先立たれて、16歳の娘マーゴットとふたり暮らし。思春期の娘の扱いに戸惑う毎日だが、正しく躾けているつもりだった。しかし、マーゴットが出かけたまま帰宅せず、心当たりに連絡しても行き先がわからない。警察に行方不明として届け出るが、家出か、事件か確定できないまま時間がたっていく。やり手らしい女性捜査官ヴィックに力づけられて、手がかりになるものを探す。マーゴットのパソコンを開いたデビッドは、そこに全く知らなかった娘の姿を見い出して愕然とする。
始まりからラストまで、全編がパソコンの中だけで展開していく。いやはやこんな映画初めてです。でもこれだけパソコンやSNSが普及したら「あり」です。いち早く目をつけて作ってしまった監督&クルーのみなさんに脱帽。アニーシュ・チャガンティ監督は1991年生まれ、27歳の新鋭で、しかも初長編です。うーん、すごい!アイディアだけではなく、サスペンスドラマとしてもよく作られていて、ラストまでぐいぐい引っ張ります。
お父さんのデビッド役は、『スタートレック』シリーズ(2009〜)のエンタープライズ号の主任パイロット、スールー役で世界的にブレイクしたジョン・チョー。HPも映画にあわせて作られていて面白いですよ。2018年サンダンス映画祭観客賞受賞。(白)
連絡が取れなくなった娘を探すため、父はSNSを駆使する。それによってわかる外での娘の様子。一番近くにいるつもりが何もわかっていなかった親子の距離感が浮かび上がってくる。しかし、SNSで見せる顔は本物か。パソコンの向こうにいる存在に父親が違和感を持つ。最後のどんでん返しに驚き、ほっとするラストに後味の良さを感じた。
パソコンの画面に畳みかけるようにいくつものウインドウが出てきて話が展開する。新しい試みは緊迫感たっぷり。アメリカの作品に監督がインド人で、主演が韓国人。そういう時代になったんだと改めて感じた。(堀)
2018年/アメリカ/カラー/シネスコ/102分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
http://www.search-movie.jp/
★2018年10月26日(金)ロードショー
ザ・アウトロー(原題:Den of Thieves)
監督:クリスチャン・グーデガスト
製作:ライアン・カヴァナー、マーク・キャントン
脚本:クリスチャン・グーデガスト、ポール・シェアリング
出演:ジェラルド・バトラー、パブロ・シュレイバー、オシェア・ジャクソン・Jr、カーティス”50 セント”ジャクソン
ロサンゼルス郡保安局の重犯罪特捜班を率いるニック(ジェラルド・バトラー)は、恐ろしいほど冷静なレイ・メリーメン(パブロ・シュレイバー)が率いる集団が銀行強盗を企てていることを突き止める。彼らは特殊部隊に従軍したことがあり、刑務所で刑期を終えたばかりの強者揃い。連邦準備銀行のロサンゼルス支店を襲い、米国通貨として不適当な3000万ドルがシュレッダーにかけられる前に強奪する計画を立てていた。ニックたちはメリーメンたちを少しずつ追い詰めるが、ドラマは予想しない結末へと進展していった。
作品冒頭の説明では、ロサンゼルスでは48分に1回、銀行強盗が発生しているという。想像できないレベルの危険性に驚いていると、さっそく派手な銃撃戦が始まった。緊張感あふれるスタートに期待が高まる。
そこに登場するのが、ロサンゼルス郡保安局特別班を率いるニック。「これでも刑事?」というワイルドなアウトローぶりをジェラルド・バトラーがヤニ臭さ満載に体現する。武闘派の印象だ。一方、強盗集団リーダー・メリーメンは「非武装の民間人は撃つな」と厳命し、人を傷つけずにミッションの完遂を目指す。こちらはむしろ知性が感じられる。
ニックたちは強盗集団の銀行襲撃計画を阻止するために奔走するが、メリーメンは先手先手でかわす。本能と知能の対決である。この過程で双方のバックボーンがしっかり描かれ、ただのクライムアクション作品とは一線を画す。
ラストの派手な銃撃シーンは一騎打ちにもつれ込むが、矜持をかけた戦いに胸が熱くなった。
ところが本作はそこでは終わらない。伏線をきっちり回収。まさかの勝者に驚くとともに、気持ちよく騙されたと爽快さが残るだろう。(堀)
2018年/アメリカ/カラー/140分
配給:プレシディオ
(C) Motion Picture Artwork (C) 2017 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
https://the-outlaw.jp/
★2018年10 月 20 日(土)新宿バルト9ほか 全国ロードショー