2018年04月08日

ラッカは静かに虐殺されている   原題:City of Ghosts

racca sizukani.jpg

監督・製作・撮影・編集:マシュー・ハイネマン(『カルテル・ランド』)
製作総指揮:アレックス・ギブニー(アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞『闇へ』監督)

様々な勢力が台頭し混迷を極めるシリア情勢。そんな中で、2014年6月、過激派「イスラム国」(IS ※注)がシリア北部の町ラッカを制圧し、首都と定める。女性たちは布ですっぽり身体を隠すよう強要され、厳しい解釈でのイスラームの規範のもと公開処刑が行われているらしいことが漏れ聴こえてくる。メディアが町に入ることもシャットアウトされ、ラッカで何が起こっているのか闇の中だ。死の恐怖と隣り合わせの惨状を国際社会に伝えようと、市民ジャーナリスト集団“RBSS”(Raqqa is Being Slaughtered Silently/ラッカは静かに虐殺されている)が秘密裡に結成される。スマホで撮った動画をSNSに投稿し、ラッカで何が起こっているかを発信、その惨状に世界は騒然となる。RBSSの活動に脅威を感じたISは、直ちにメンバーを割り出し、暗殺を実行していく。魔の手は、ドイツに逃れたメンバーにも忍び寄る・・・

※イスラム国の表記について (公式サイトより)
本編字幕における「イスラム国」の呼称に関して、シリア人が発言している部分は、初出の「ダーイシュ」にISとルビを振り、 以降はISとしています。これは、アラビア語圏ではISに敵対する立場から、アラビア語での組織名(Islamic State in Iraq and al-Sham)の頭字語をとった(ダーイシュ)という呼び名が定着しているためです。ダーイシュは、(ダーイス=踏みにじる者)や(ダーヒス=裏切り者)といった否定的な ニュアンスのある語に近い発音や綴りを有しています。また、 「イスラム国」自身の発言部分については、そのまま「イスラム国」としています。

そこで何が起こっているか、外部メディアが入れない場合、現地からの発信がない限り、ほんとうのことはわかりません。まさに命がけで実態を伝えようとするラッカの人たちの勇気に涙が出ました。人々の手に町が戻っても、町がかつての姿を取り戻すことは不可能なくらい破壊し尽されたことにも胸が痛みます。

実はラッカを訪れたことがあり、まさかこんなことでラッカの名前を聞くことになるとは思いもよりませんでした。私がラッカの町を訪れたのは、昭和63年9月。旅行中に昭和天皇が病に倒れられたので、訪れた時期を忘れることのないシリアの旅でのことです。どこの旅行会社のツアーにするか(といっても、3社位しか選択肢はなかったのですが)決め手になったのは、ラッカに泊まるからでした。古くはアッバース朝の宮殿があったところで、町の散策を楽しみにしていたのですが、宿泊はラッカではなく、デリゾールという別の町になり、がっかり。それでも、昼食を取りにラッカに寄ったので、町並みに興味津々。“かつて「ユーフラテス川の花嫁」と呼ばれるほど美しかった街”と、プレス資料にありますが、私の印象は、ただただ乾いた町。気温が50度近くありました。昼食後、ほんの少しレストランの周りを散策しましたが、これといった記憶が残念ながらありません。
ツアーは、ヨルダンに先に入り、その後陸路でシリアに入るという旅程だったのですが、ヨルダンの人々が明るかったのに比べ、シリアの人々は全般に暗いという印象を受けました。思えば、すでにその頃から独裁政治が人々の性格にも影を落としていたのかもしれません。シリアの人たちが平和に暮らせる日の早く来ることを切に願うばかりです。(咲)


2017年/アメリカ/92分/英語・アラビア語/1:2.35/5.1ch/DCP
配給:アップリンク
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/raqqa/
★2018年4月14日(土)よりアップリンク渋谷、ポレポレ東中野ほか全国順次公開






posted by sakiko at 09:29| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月31日

レッド・スパロー(原題:Red Sparrow)

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監督:フランシス・ローレンス
原作:ジェイソン・マシューズ
脚本:ジャスティン・ヘイス
撮影:ジョー・ウィレムズ
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演:ジェニファー・ローレンス(ドミニカ・エゴロワ)、ジョエル・エドガートン(ネイト・ナッシュ)、マティアス・スーナールツ(ワーニャ・エゴロフ)、シャーロット・ランプリング(監督官)、ジェレミー・アイアンズ(コルチノイ)

ボリショイバレエのプリマとして人気絶頂だったドミニカ・エゴロワは、最も大事な足を怪我してしまいバレリーナの道を断念せざるを得なくなった。これまでバレエ団から受けていた支援も打ち切られ、病気の母の治療を続けるための資金に苦慮する。ロシア情報庁に勤める叔父に、母の世話と交換条件を提示され、ロシア政府の極秘施設に入ることになった。そこでは、ターゲットの欲望を操り、ハニートラップで任務遂行を図るスパイ“スパロー”の養成学校だった。ドミニカは厳しく過酷な訓練に耐え続ける。
ロシア情報庁内部では、アメリカに情報を流す二重スパイ“モグラ”がいることをつかむも、いまだ特定できずにいた。優秀な成績を収めたドミニカは、モグラを探し出す重要任務を与えられる。モグラと通じているCIA工作員ネイト・ナッシュはモスクワからブタペストに飛び、ドミニカはネイトの後を追う。

元CIA工作員として33年間勤めたジェイソン・マシューズの同名小説が原作。ハヤカワ文庫から刊行されています(上下巻)。何もかもさらけ出してはいないのでしょうが、内側にいたからこその実態の描写にはドキドキさせられます。
養成学校の冷徹な監督官シャーロット・ランプリングは怖くて震えそうでした。これまで映画で観た新兵の訓練も似たようなもの、まず徹底的に自我を否定し捨て去るところから始まっていました。上官の命令を絶対とし、自分の考えを持つことは許されません。優秀な道具になるわけですね。ハニー・トラップの手練手管は「ほぉ〜」と感心するだけにとどめておきましょう。使う機会がないことを祈ります。
ドミニカを演じるジェニファー・ローレンスとフランシス・ローレンス監督は『ハンガー・ゲーム』シリーズ3作でタッグを組んでいます。充分な信頼関係があってこそのシーンがあります。使用するか否かはジェニファーに選択権があったとか。叔父役のマティアス・スーナールツはベルギーの俳優ですが、プーチン大統領にそっくりで若き日を演じられそうです!
冒頭のバレエのシーン、ドミニカの相手役はセルゲイ・ポルーニンです。背中のタトゥーがなかったので、そこはスタントか、それとも消したのかも?(白)


2018年/アメリカ/カラー/シネスコ/140分
配給:FOX
(C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation
http://www.foxmovies-jp.com/redsparrow/
★2018年3月30日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 23:00| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月25日

トレイン・ミッション(原題:The Commuter)

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監督:ジャウム・コレット=セラ
脚本:バイロン・ウィリンガー、フィリップ・デ・ブラシ、ライアン・イングル
撮影:ポール・キャメロン
音楽:ロケ・バニョス
出演:リーアム・ニーソン(マイケル・マコーリー)、ベラ・ファーミガ(ジョアンナ)、パトリック・ウィルソンマーフィー)、サム・ニール(ホーソーン警部)、エリザベス・マクガバン(カレン・マコーリ)

マイケル・マコーリーは、警官の職を辞して保険会社のセールスマンになった。そして10年、なんの予告もなくリストラに遭う。60歳になった彼に次の仕事がそう簡単に見つかるとも思えない。屈託を抱えて乗った帰りの電車で、見知らぬ女性が前に座り「ゲームをしない?」と話しかけてきた。不審顔のマイケルに「終点に到着するまでの間に、乗客の中から“あるものを運んでいる人間”を1人見つけてほしい」という。マイケルの心中を見透かすように多額の報酬を提示し「元警官なら簡単でしょ」と電車を降りていく。携帯に連絡が入るが、100人もの乗客の中から探せるわけがない。拒否すると顔なじみの乗客が事故に遭うのを目撃、妻が人質に取られたことがわかる。マイケルは走る電車の中で必死に手がかりを探す。

止まれば死ぬとか、爆弾とか乗り物ミステリーは数多くありますが、これも相当縛りが強いです。ただのオジさんがそんなわけのわからない脅迫をされても何の対応もできません。マイケルが元刑事というのがミソでもあります。
100人の乗客の中にいるたった1人とは?依頼人は何者か?あやしいと思うと全てが怪しく、刻々と過ぎていく時間に、まにあうのか〜と、こちらも手に汗握ることになります。
リーアム・ニーソンとジャウム・コレット=セラ監督は『アンノウン』(2011)『フライト・ゲーム』(2014)『ラン・オールナイト』(2015)、とタッグを組みこれが4作目。できれば事前情報を入れずに、マイケルと一緒にドキドキしてくださいませ。(白)


2018年/アメリカ・イギリス合作/カラー/シネスコ/105分
配給:ギャガ
(C)STUDIOCANAL S.A.S.
http://gaga.ne.jp/trainmission/
★2018年3月30日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 21:10| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月18日

ボス・ベイビー(原題:The Boss Baby)

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監督:トム・マクグラス
脚本:マイケル・マッカラーズ
音楽:スティーブ・マッツァーロ、ハンス・ジマー
声の出演:アレック・ボールドウィン/ムロツヨシ(ボス・ベイビー)、マイルズ・バクシ/芳根京子(ティム)、ジミー・キンメル/石田明(パパ)、リサ・クドロー/乙葉(ママ)、スティーヴ・ブシェミ/山寺宏一(フランシス・フランシス)、トビー・マクガイア/宮野真守(大人になったティム)

ティムは6歳。パパとママの愛情を独占して幸せな毎日を過ごしていた。そう、ベイビーが来るまでは・・・。
タクシーから降り立ったママの腕に抱かれていたのは、ベビー服でなく黒いスーツを着たあかちゃんだった。パパとママはそんなこと少しも疑問に思わず、わがままなベイビーにかかりきり。ティムが寝る前のお楽しみの時間はもうなくなってしまった。眠れないティムは、夜中にベイビーが電話で誰かと話すのを聞いて、正体を知ってしまう。ティムがパパとママにおかしいと訴えても話は聞いてもらえず、近所のベイビー軍団に散々な目に遭う。彼らも仲間だった。ティムはベイビーたちの任務が終わるまで、協力することをしぶしぶ承諾した。さて・・・。

マーラ・フレイジーの絵本「あかちゃん社長がやってきた」(講談社から2012年に翻訳絵本が出ています)をもとにしています。ユニバーサル・スタジオとドリームワークス・アニメーションが初タッグを組んだ作品+『マダガスカル』シリーズのトム・マクグラス監督ときたら面白くないわけがありません。予告篇でおわかりのように、あかちゃんが表情豊かで(特に口元)、もうたまらなく可愛いです!可愛い見た目なのに、中味がおっさんというギャップ!!あるところから「任務」のために派遣された中間管理職でした。
どれだけ研究したのかと思うほど、あかちゃんたちのしぐさがリアルです(そうそうこんなことしていたんだった、とすっかりおっさんになった息子たちの可愛かった日々を思い出しました)。
初めは敵視していたティムがベイビーと良きチームとなるのも、それには共通の目的があるにしろ、実際の兄弟の仲を見るようでほほえましいです。
ムビチケカードには「ぷにぷにストラップ」がついていたそうで(すでに在庫ゼロ)買わなかったのが惜しまれます。(白)


2017年/アメリカ/カラー/シネスコ/97分
配給:東宝東和
(C)2016 Dreamworks Animation LLC. All Rights Reserved.
http://bossbaby.jp/
★2018年3月21日(水・祝)ロードショー
posted by shiraishi at 18:20| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ラッキー(原題:Lucky)

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監督:ジョン・キャロル・リンチ
脚本:ローガン・スパークス
撮影:ティム・サーステッド
出演:ハリー・ディーン・スタントン(ラッキー)、デビッド・リンチ(ハワード)、ロン・リビングストン(ボビー・ローレンス)

90歳のラッキーは、神も信じずにこれまで生きてきた気難しい現実主義者。砂漠の広がる小さい町できままな1人暮らしをしている。ラッキーの毎日はいつも同じ。体操をして、外に出かけ、馴染みの店でコーヒーを飲み、新聞のクロスワードを解き、夜はバーでいつも同じ酒を注文する。そんな日常がいつまでも続かない、と気づいたのは、ある日倒れて病院にかつぎこまれてから。

『パリ、テキサス』『ツイン・ピークス』で知られるハリー・ディーン・スタントン、あて書きされて主演し遺作となった作品。2017年9月に逝去したのを知っているので、余計にしみてきました。町の人たちとかわす何気ない言葉の中に、日々忍び寄ってくる老いと、誰もが行き着く最期のときが見え隠れします。ペットの亀がいなくなった、と嘆くバーの馴染み客に盟友のデビッド・リンチ監督。最初と最後にその亀がゆっくりと登場していますので、お見逃しのないように。ジョン・キャロル・リンチが初メガホンをとりました。
試写が終わったら知り合いのライターさんが「今年のベストテンにもう入った」と一言。(白)


2017年/アメリカ/カラー/シネスコ/88分
配給:アップリンク
(C)2016 FILM TROOPE, LLC All Rights Reserved
http://donten-movie.jp/
★2018年3月17日(土)ロードショー
posted by shiraishi at 17:30| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする