2017年07月30日

スターシップ9(原題:Orbiter 9)

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監督・脚本:アテム・クライチェ
出演:クララ・ラゴ(エレナ)、アレックス・ゴンザレス(アレックス)、ベレン・ルエダ(シルビア)、アンドレス・パラ(ヒューゴ)

近未来の地球は汚染され、人間は移り住むことのできる新たな星を探している。エレナはあるときから一人旅となった。両親の姿を映像でくりかえし見つめ、スターシップの音声だけを相手に長い旅を続けている。毎日決まったルーティンをこなし健康に気を付けていたが、給気システムに不具合が起きた。酸素不足の救援信号を送ると、その要請にこたえてエンジニアのアレックスが到着する。両親と分かれて以来の人間だった。急速にアレックスに惹かれたエレナは食事をふるまい、作業疲れで眠っているアレックスの部屋に入っていく。

長い間独りぼっちで過ごしていた年頃の女の子の前に、頼りがいのあるイケメンが現れたらそりゃあもうこの展開になりますね。それにしてもエレナのメンタルは強い!!『パッセンジャー』(3月公開)のクリス・プラットはアンドロイドのアーサーがいても孤独に耐えきれなかったではないですか。音声だけを相手に何年も一人ってひどすぎる!と半ば憤慨していたら、なんとストーリーが思わぬ方向へ動いていきました。ネタバレすると面白さ半減なのでここまで。
試写会に登壇したアテム・クライチェ監督も「事前情報や先入観を持たずに観て」と力説。もともとジャンルにとらわれず、初めのスト―リーが転換して身近な問題を現していくストーリーが好きなのだそうです。
人間が住めなくなっている地球は格差社会がさらに進んでいるという設定です。そのロケ先に選んだのがコロンビアの都市メデジン。林立する近代的なビル群の地域と、壊れそうな家が密集する地域とが同居している街が近未来を現すのにぴったりだったとか。初めて訪れたアレックスが顔を見せるシーン、大きな目を見開いて期待いっぱいで見つめるエレナの表情がいいです。よかったね、タイプで>エレナ(白)



2016年/スペイン、コロンビア合作/カラー/95分
配給: 熱帯美術館
(C) 2016 Mono Films, S.L. / Cactus Flower, S.L. / Movistar + / Orbita 9 Films, A.I.E
http://starship9.jp/
★2017年8月5日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー
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2017年05月20日

オリーブの樹は呼んでいる   原題:El Olivo/英語題:The Olive Tree

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監督:イシアル・ボジャイン(『ザ・ウォーター・ウォー』)
脚本:ポール・ラヴァーティ(『天使の分け前』『わたしは、ダニエル・ブレイク』)
出演:アンナ・カスティーリョ、ハビエル・グティエレス、ペップ・アンブロス

スペイン、バレンシア郊外。養鶏場で働くアルマは、気の強い、ちょっと変わり者の20歳の女の子。家族の営むオリーブ農園が経営難で、お祖父ちゃんの大事にしていた樹齢2000年のオリーブの樹を、お父さんが売り払ってしまう。食事も喉を通らなくなって、しょんぼりしているお祖父ちゃんの為に、オリーブの樹を取り戻そう! 
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c Morena Films SL-Match Factory Productions-El Olivo La Película A.I.E

アルマは、叔父や同僚のラファに、ドイツの会社と交渉成立したので受け取りに行くと嘘をついて、大きなトレーラー車を借り、ドイツを目指す・・・
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c Morena Films SL-Match Factory Productions-El Olivo La Película A.I.E

樹齢2千年ものオリーブの樹が切られて、環境をアピールする会社のシンボルに飾られている! 
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c Morena Films SL-Match Factory Productions-El Olivo La Película A.I.E

新聞記事でそのことを知って驚いた脚本家のポール・ラヴァーティが、妻であるイシアル・ボジャイン監督に話したことが、この映画の始まりだったそうです。
イシアル・ボジャイン監督は、ビクトル・エリセ監督の『エル・スール』でヒロインを演じるなど女優として活躍した後、監督に転じた、スペインを代表する女性監督。ケン・ローチ監督の『麦の穂を揺らす風』『わたしは、ダニエル・ブレイク』の脚本を担当したポール・ラヴァーティとご夫妻とは、実に名コンビですね。

オリーブの樹が切られるというと、パレスチナの人たちが大事にしてきたオリーブが、イスラエルの入植で無残にも切られていることが頭にまず浮かびます。スペインでは、経営難で切って売られることが増えているのだとか。
無謀にもドイツの会社に乗り込もうとするアルマは、まさに現代のドン・キホーテ。
長い長い年月を生きてきた樹を切ってしまうという愚かさを、ユーモアを交えながら、しっかりと伝えてくれる物語。型にはまらない若者のエネルギーが、社会を変えてくれることも感じさせてくれます。(咲)


2016年/スペイン/99分
配給:アット エンタテインメント 宣伝:ムヴィオラ
公式サイト:http://olive-tree-jp.com/
★2017年5月20日(土)よりシネスイッチ銀座にてロードショー、他全国順次公開
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2017年02月18日

サクロモンテの丘 ロマの洞窟フラメンコ  原題:Sacromonte, los sabios de la tribu

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監督:チュス・グティエレス
参加アーティスト:クーロ・アルバイシン、ラ・モナ、ライムンド・エレディア、ラ・ポロナ、マノレーテ、ペペ・アビチュエラ、マリキージャ、クキ、ハイメ・エル・パロン、フアン・アンドレス・マジャ、チョンチ・エレディア
他多数

スペイン、アンダルシア地方グラナダのサクロモンテ地区。
この地には、かつて迫害を受けたロマたちが集い、独自の文化が形成されていった。ロマたちが洞窟で暮らしていたことから洞窟フラメンコが生まれ、その力強く情熱的な踊りや歌に、世界中が熱狂した。隆盛をきわめたサクロモンテだが、1963年の水害により全てを失い、人々は住む場所を追われた――。

本作は、伝説のフラメンコ・コミュニティに深く入り込み、激動の時代を生き抜いてきたダンサー、歌い手、ギタリストなどのインタビュー、そしてアンダルシアの乾いた大地を舞台に繰り広げられる詩の朗読、そして力強い舞の数々を通して、大地に根付く魂が紡がれ、代々引き継がれていくさまを描く。

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公開を機に来日されたチュス・グティエレス監督にお話を伺いました。
好奇心旺盛で、とてもパワフル!
インタビュー記事は、こちらでどうぞ!  (咲)

2014年/スペイン語/94分/カラー/ドキュメンタリー/16:9/ステレオ
配給:アップリンク
後援:スペイン大使館、セルバンテス文化センター東京、一般社団法人日本フラメンコ協会
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/sacromonte/
★2017年2月18日(土)より、有楽町スバル座、アップリンク渋谷ほか全国順次公開
posted by sakiko at 21:26| Comment(0) | TrackBack(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年11月22日

スガラムルディの魔女   原題:LAS BRUJASDE ZUGARRAMURDI  英題:WITCHING AND BITCHING

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監督・脚本:アレックス・デ・ラ・イグレシア
出演:ウーゴ・シルバ、マリオ・カサス、カロリーナ・バング、テレール・パベス、カルロス・アレセス、カルメン・マウラ(『ボルベール〈帰郷〉』)

スペインの首都マドリードのプエルタ・デル・ソル広場。雑踏の中で突然銃撃戦が起こる。イエス・キリストに変装したホセを頭に、兵士、ミニーマウスなどのコスプレ大道芸人に成りすました強盗団が宝飾品買い取り店を襲撃。2万5000個の金の指輪を強奪し、通りがかったタクシーに乗り込んで北のフランス国境を目指して逃走する。パトカーを巻いたものの道に迷い、森の中にひっそり建つバーに立ち寄る。店を切り盛りする白髪の老女に場所を尋ねると、スガラムルディだという。それは魔女伝説の言い伝えで有名な村だった・・・

スガラムルディの母子3代の魔女と、ホセたち強盗団、はたまた追いかけてきた刑事たちが繰り広げるバトルは、こってりどろどろしたスペインテイスト。アレックス・デ・ラ・イグレシア監督独特の世界にクラクラ。おどろおどろしいのに、笑えます。一番気の毒なのは、強盗団を乗せてしまったタクシー運転手! 彼がまたいい味出してます。
スガラムルディはバスク地方のフランスとの国境すぐ近くにある人口200人ほどの小さな村。実際に魔女伝説が伝えられ、アケラレと呼ばれる魔女集会が行われていたとされる洞窟や、魔女博物館があるそうです。怖いもの見たさに、ちょっと行ってみたくなりました。(咲)


配給:松竹メディア事業部
後援:スペイン大使館 / セルバンテス文化センター東京
2013 年/スペイン/スペイン語/カラー/114 分/R-15
公式サイト:http://www.shochiku.co.jp/iglesia/
★2014年11月22日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開


☆同時に公開される『刺さった男』については、「ミッキーの毎日・映画三昧」をご覧ください。
http://mikki-eigazanmai.seesaa.net/article/408223894.html
こちらも、アレックス・デ・ラ・イグレシア監督の鬼才ぶりを体験できる実にユニークな作品です。


posted by sakiko at 09:03| Comment(0) | TrackBack(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月09日

メキシカン・スーツケース(原題:THE MEXICAN SUITCASE)

メキシカン・スーツケース チラシ 2013年8月24日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開

 監督・脚本:トリーシャ・ジフ

スペイン内戦時にロバート・キャパ、ゲルダ・タロー、デヴィッド・シーモア“シム”の3のユダヤ人カメラマンが撮影した4500枚もの写真のネガが、メキシコで見つかった。内戦から70年もの時を経た2007年のことである。
撮影日時と場所を記録したネガからは、歴史が鮮明に蘇る。キャパたちが前線で危険と隣りあわせで撮った写真の数々。兵士だけでなく民間人もが内戦に翻弄されたことが克明に浮かび上がってくる。
それにしても、これら<メキシカン・スーツケース>と呼ばれる写真は、なぜメキシコに渡ったのか? メキシコ在住のトリーシャ・ジフ監督は、写真を保管していた人物の信用を得て、ロバート・キャパの弟であるコーネル・キャパが創設した国際写真センター(ICP・在ニューヨーク)に橋渡しする。そして、写真の辿った運命を映画化することを許される。 フランコ将軍の台頭で、祖国を捨てるしかなかった共和派の人々。ヨーロッパ各国が受け入れを拒む中、当時のメキシコ大統領が亡命希望者に手を差し伸べる。実に20万人ものスペイン人がメキシコに渡った。
実は、ジフ監督にとっても、スペイン内戦は人事ではない。彼女の息子の父親はスペインからの亡命者なのだ。亡命者の子孫は、メキシコで生まれた理由を知るべきだと監督は語る。
当時、スペインの人ならどの家族も内戦に巻き込まれた。右派も左派も心穏やかでなく、当事者たちは口をつぐむ。孫の世代が祖父の埋葬されているらしい墓地を掘り起こす姿が映し出される。まだ内戦の傷は癒えていないのだ。亡命者と同じ運命を辿ったネガは、当時を知る生存者も少なくなった今、歴史の真実を語りかけてくれる。


iメキシカン・スーツケース
(c) 212 Berlin/Mallerich Films Magnum Photos/International Center of Photography, NY


スペイン・メキシコ合作/2011年/86分/16:9/Color・B&W
配給:フルモテルモ×コピアポア・フィルム
公式サイト: http://www.m-s-capa.com/

 ロバート・キャパ、ゲルダ・タロー、デヴィッド・シーモアの3人は、ハンガリー、ドイツ、ポーランドとそれぞれ出身地は違うが、パリで出会い、国を追われたユダヤ人という共通点で行動共にしたのが興味深い。ロバート・キャパとゲルダ・タローが恋人どうしだったのは有名だが、彼らの友人であるデヴィッド・シーモア“シム”のことは本作で初めて知った。シムは共和派の人たちがメキシコに向かう船に同乗して写真を撮っている。船の中での様子や、メキシコで岸壁にあふれんばかりの人が船を出迎えた様子も船の上からおさめている。歴史的瞬間がこうした写真家たちの自らの命も惜しまぬ行動のお陰で後世に残されていることをずっしりと感じさせてくれる一作である。(咲)
別のスタッフの感想
posted by staff at 23:24| Comment(0) | TrackBack(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする