2018年09月15日

顔たち、ところどころ   原題: Visages Villages

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脚本・監督・出演:アニエス・ヴァルダ、JR 
音楽:マチュー・シェディッド(-M-)

フランスの田舎町を旅する年の差54歳の男女二人。
ツートンカラーのおかっぱ頭の女性は、来春88歳になるアニエス・ヴァルダ。「ヌーヴェルヴァーグの祖母」と呼ばれる女性映画監督の先駆者。
サングラスを決してはずさない背の高い男性は33歳のJR(ジェイアール)。大きな写真を印刷できる装置付の「フォト・トラック」で、旅先に住む人たちの大きなポートレートを印刷して貼るという参加型アートプロジェクトを各地で展開している。
この旅では、アニエスと共に、気が向くまま元炭鉱の町、時が止まったような廃村、港町と巡っていく。
(注:年齢は撮影時)

大きく印刷された自分たちの顔が、建物の壁や、石などに貼られたのを楽しそうに見る人たち。そこで暮らす人たちの物語が、アニエスたちとの会話と写真で生き生きと語られる。ドイツ軍が残したトーチカには、悲しい歴史が蘇る。ル・アーヴルでは、ストライキ中の港湾労働者たちがコンテナを様々に並べ替えて、妻たちを被写体として表舞台に立たせて、微笑ましい。そして何より、アニエス・ヴァルダと、JRの会話のひとつひとつが楽しい。人生のヒントになる言葉もいっぱい!(咲)

2017年/フランス/89分/1.85:1/5.1ch/DCP
字幕翻訳:寺尾次郎 
配給・宣伝:アップリンク
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/kaotachi/
★2018年9月15日(土)シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次公開






posted by sakiko at 17:39| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月12日

オーケストラ・クラス(原題:La Melodie)

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監督:ラシド・ハミ
脚本:ラシド・ハミ、ギィ・ローラン
製作:ニコラ・モヴェルネ
音楽:ブリュノ・クーレ
出演:カド・メラッド(シモン・ダウド先生)、サミール・ゲスミ(ブラヒミ先生)、アルフレッド・ルネリー(アーノルド)、ザカリア・タイエビ・ラザン(サミール)、シレル・ナタフ(ヤエル)、ユースフ・ゲイエ(アブ)

バイオリニストのシモン・ダウドは小学校の音楽講師をすることになった。子どもが苦手で気難しいが、生活のためにしかたなくやってきた。本物の楽器をはじめて手にする生徒たちは、6年生。遊び盛り、なまいき盛りで30秒も集中することができない。すっかり自信喪失し、やめる口実を考えるシモン。そのとき外から教室を覗き込む男子生徒に気づいた。招き入れてみると、アーノルドはバイオリンの才能の片鱗を見せた。ほかの生徒たちもアーノルドに触発されて、やっとやる気になってきた。他校との合同練習で恥かしい思いもしながら自主的に練習に打ち込むようになる。

ダウド先生が派遣される音楽教育プロジェクト「Demos(デモス)」。音楽に触れる機会の少ない子供たちに、無料で楽器を贈呈しプロの音楽家が音楽の技術と素晴しさを教えるものです。フィルハーモニー・ド・パリが運営するこのプロジェクトは終了後も約半分の生徒たちがその後も音楽を続けるそうです。この活動を紹介するドキュメンタリーを見たのがきっかけで、映画作品が生まれました。
生徒と一緒に目標に向かって努力するうち、頑なだった親や気難しかった先生も変わっていくという、王道の音楽映画です。生徒たちが目指すのは、パリ19区の公園内にあるフィルハーモニー・ド・パリのホールでのコンサート。19区はパリの東北部にある移民が多い地区で、教室の生徒たちの顔ぶれも様々。オーディションで選ばれた子どもたちが個性豊かで『パリ20区、僕たちのクラス』(2008)を思い出します。
ニコラ・モヴェルネは『コーラス』『幸せはシャンソニア劇場から』を製作したプロデューサーです。ラシド・ハミ監督はこれが長編2作目。俳優としても出演した監督第1作『Choisir d'aimer』(08)は日本未公開。(白)


2017年/フランス/カラー/シネスコ/102分
配給:ブロードメディア・スタジオ
(C)2017 / MIZAR FILMS / UGC IMAGES / FRANCE 2 CINEMA / LA CITE DE LA MUSIQUE - PHILHARMONIE DE PARIS
http://www.orchestra-class.com/
★2018年8月18日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開
“夏休み親子割引き”を実施!
対象:高校生以下のお子様と保護者の方
料金:お二人で2,000円
posted by shiraishi at 20:38| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

大人のためのグリム童話 手をなくした少女(原題:La jeune fille sans mains)

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監督・脚本・作画:セバスチャン・ロデンバック
出演:アナイス・ドゥムースティエ(少女)、ジェレミー・エルカイム(王子)

水車の回る貧しい家。父親が金貨と水車の後ろにあるものを引き換えると契約する。リンゴの木があるだけだった水車の裏には、一人娘が立っていた。父親を騙したのは悪魔で、契約を取り消すことができず、娘の両手は自分の命を惜しんだ父親に切り落とされてしまった。娘は1人で生きていこうと家を出るが、悪魔は執拗に追いかけていく。娘は精霊に導かれ、川の水を飲み、森の中で木の実を食べて命をつなぐ。そこに通りかかった王子が清らかな娘を不憫に思い、城に連れ帰った。娘のために金の手を作らせて大切にするが、戦争に出ることになった。悪魔はまたも娘の邪魔をする。娘は王子の子どもを産み、城を出て無人となった家で赤ん坊と2人で暮らしていく。戦から戻った王子は、娘を探して国中を訪ねまわる。
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元のお話はグリム童話に収録されている民話「手なしむすめ」。世界各地に似たような話が伝えられていて、日本の話で娘が両手をなくすのは、悪魔ではなく継母のせいとなっています。宗教の違いでしょうが、鬼ではないんですね。
セバスチャン・ローデンバック監督は、たった一人でこの作品を描き上げました。背景も人物もシンプルで、水墨画をみるようです。高畑勲監督の『かぐや姫の物語』の作画もシンプルですが、かけた時間と予算が段違い。ローデンバック監督は予算も少なく早く描くために工夫して、これまでにないアニメーションを作り出しています。
いろいろなものをなくしながらも、生き抜く力を身につけていく娘の物語は、2017年フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭で、審査員賞と最優秀作品賞をダブル受賞しました。(白)


2016年/フランス/カラー/シネスコ/80分
配給:ニューディアー
(c)Les Films Sauvages - 2016
http://newdeer.net/girl/
★2018年8月18日(土)東京・ユーロスペースほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 19:33| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月29日

国家主義の誘惑 原題 Japan, La tentation nationaliste

2018.7.28(土)よりポレポレ東中野にてロードショーほか全国順次公開

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監督:渡辺謙一
プロデューサー:セルジュ・ゲズ、クリスティーヌ・渡辺
撮影:エマヌエル・ヴァレット
編集:マチュー・オーギュスタン
録音:渡辺顕、岸本宗司
音楽:ジェローム・クレ
歴史監修:クリスチャン・ソテール
語り:ブリジット・ベルジュ
音響効果:ロジェ・デュピュ グラフィック:シリル・プル
映像技術:アルノ・ランベール
技術顧問:ジル・ラビエ
キャスト
ピエール=フランソワ・スイリ
バラク・クシュナー
ミカエル・リュッケン
白井聡
山本太郎
喜納昌吉

世界的にナショナリズムの嵐が起こっている中、2015年『天皇と軍隊』(製作2009年)が日本公開され、話題を呼んだフランス在住の渡辺謙一監督が、この映画では、国際関係史・地政学の観点から、国内外の論客によるイ日本人にとってナショナリズムとは
日本社会の「今」を映し出すフランス発のドキュメンタリー

ンタビューを加え、日本社会を覆う政治の正体、「日本人にとってナショナリズムとは」と問いかける。
国益の名の下に強行採決し法律を変えたり、反対意見に耳を貸さず、嘘を通すのがまかり通る、そんな政治の実情の行く末。本当に知る必要があるものは何か。今、起こっている日本の政治の現状を紐解く。
どうなっているの?と、思っている間に、日本の社会、政治は戦前の様相に似てきてしまっている。そんな実情を、太平洋戦争に至った歴史を振り返り、軍隊の台頭で、立憲主義が終わり、天皇の統帥権を盾に軍が主導する政治に変わっていったことを、丁寧に検証する。日中戦争前夜の日本と今、どこか似ていると感じた監督は、「人々の政治に対する意識が醸し出す空気」を国家主義の誘惑と呼び、題名にしたという。
憲法9条を切り口に天皇制の護持と関連付け、戦後史を紐解いたのが『天皇と軍隊』でしたが、天皇の退位のビデオメッセージは衝撃的だったそうで、結果的にこの天皇メッセージが、政権の改憲プログラムを少なくとも1年遅らせたとし、「国家主義の誘惑」に対する唯一権威ある防壁が、「天皇」であるというパラドクスという観点から日本の政治を語っている。

協賛:フランス議会TV
制作:アルテ・フランス、クレッシェンド・メディア・フィルム、
カミ・プロダクション
日本語翻訳:渡辺謙一
字幕制作:平井かおり
予告編制作:石川翔平
宣伝美術:追川恵子
配給:きろくびと
フランス/2017 年/54 分
kiroku-bito.com/nationalism




posted by akemi at 15:43| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月13日

グッバイ・ゴダール!   原題:LE REDOUTABLE

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監督:ミシェル・アザナヴィシウス(『アーティスト』)
出演:ルイ・ガレル/ステイシー・マーティン/ベレニス・ベジョ

1968年、パリ。哲学科の学生アンヌ、19歳。祖父は、ノーベル文学賞受賞作家フランソワ・モーリアックという名家。そんなアンナが、世界から注目を集める映画監督ジャン=リュック・ゴダールと出会い、瞬く間に恋に落ちる。彼の新作『中国女』の主演に抜擢され、これまで知らなかった映画作りの世界で、ときめきの日々。やがてゴダールからプロポーズ。二人の結婚は世界から注目される。
街には革命の気運。ゴダールも映画よりも学生や労働者たちとデモや討論会に赴くことが多くなる。そんな中、アンヌは友人の監督の作品がカンヌ映画祭に出品されることになったと、カンヌに誘われる。一方、ゴダールは、ド・ゴール政権下での映画製作を批判し、映画祭を中止に追い込もうと、トリフォー、アラン・レネ、クロード・ルルーシュらと共にカンヌに乗り込む・・・

原作は、ゴダールの2人目の妻で、女優、作家として活躍したアンヌ・ヴィアゼムスキーによる自伝的小説。数々の映像化のオファーを断ってきたアンヌが、ミシェル・アザナヴィシウス監督から、「とても愉快で楽しいストーリーだ」と言われ、初めて映画化を承諾。アンヌは2017年10月に亡くなったが、何とか完成作を見てもらうことができ、とても気に入ったそうだ。

アンヌの青春時代が、5月革命の時代を背景に生き生きと描かれている。
ゴダールが中止に追い込んだカンヌ映画祭からパリに帰る車には、映画祭に出品したのに上映できなかった監督も同乗していて、6人がぎゅうぎゅう詰めの車中で口論になる。
辛辣な言葉が飛び交って愉快な場面だが、ワンカットで撮るのに、誰かしらが笑ってしまうので、2日かかったそうだ。
5月革命から、2018年で50年。アザナヴィシウス監督は、この映画を作ることで、5月革命の精神に最大級の敬意を表したかったという。(咲)


2017年/フランス/108分/ギャガ/DCP
配給:ギャガ
公式サイト:http://gaga.ne.jp/goodby-g/
★2018年7月13日(金)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座 他、全国順次ロードショー





posted by sakiko at 13:04| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする