2015年09月12日
カプチーノはお熱いうちに (原題:Allacciate le cinture)
監督・脚本:フェルザン・オズペテク
撮影:ジャンフィリッポ・コルティチェッリ
音楽:パスクァーレ・カタラーノ
出演:カシア・スムトゥアニク(エレナ)、フランチェスコ・アルカ(アントニオ)、フィリッポ・シッキターノ(ファビオ)、カロリーナ・クレシェンティーニ(シルヴィア)、パオラ・ミナッチョーニ(エグレ)
南イタリアの美しい街、レッチェのカフェで働くエレナは金持ちの御曹司ジョルジュと交際中だったが、カフェの同僚シルヴィアの恋人のアントニオと恋に落ちてしまう。波乱を乗り越えて結ばれ、2人の子宝にも恵まれた。エレナは親友のファビオと、夢見ていた自分たちの店を持つことができた。
多忙で充実した生活を送って13年。エレナはアントニオの浮気にも気づいていたが、事業を大きくすることで頭はいっぱいだった。しかし、叔母のがん検診に付き合って、自分が乳がんにおかされていたのを知って愕然とする。
フェルザン・オズペテク監督は『あしたのパスタはアルデンテ』(2011年)で知られているのではないでしょうか? 今回はさらに多くの個性的なキャストをうまく配して、イタリアで大ヒットしたそうです。恋愛と結婚、仕事、突然の病気、愛する家族・・・どの国でも共通する悩みや喜びを描いています。
ヒロインのカシア・スムトゥアニクは『パリより愛をこめて』(2010年)で、ジョナサン・リース・マイヤーズの恋人役で出演していました。スキン・ヘッドのジョン・トラボルタが強烈でしたっけ。フィリッポ・シッキターノは2013年公開の『ブルーノのしあわせガイド』や『ふたりの特別な一日』に主演。覚えているのは「冬ソナ」のパク・ヨンハ似だったから。マイペースな叔母さんと、病院での友人エグレが特に印象に残りました。
乳がんは日本でも罹患率が高いそうです。検診の機会を逃さないで。(白)
監督のフェルザン・オズぺテクという名前、イタリア人っぽくない、というかトルコ人?と思ったら、やはりそうでした。(今さらですが) 1959年2月3日トルコ、イスタンブール生まれ。1977年 イタリアへ移住。ローマ・ラ・サピエンチァ大学を経て、シルヴィオ・ダミーコ国立演劇アカデミーで演出を学ぶ。
監督デビュー作は、『私の愛したイスタンブール(Hamam)』(1997年)。2作目は、オスマン・トルコの最後の日々を描いたイタリア=フランス=トルコ合作映画 『ラスト・ハーレム(Harem suare)』(1999年)。いずれも故国を題材にしたものでした。
最近観た『あしたのパスタはアルデンテ』(2010年)も、本作も、まさにイタリアという映画で、監督がトルコの方とは資料を見るまで気が付きませんでした。
次回作は、著作“Rosso Istanbul”(赤いイスタンブール)の映画化。異国で成功した映画監督が故郷に帰るという自伝的物語とのこと。楽しみです。(咲)
2014年/イタリア/カラー/シネスコ/112分
配給:ザジフィルムズ
(C)2013 All rights reserved R&C Produzioni Srl - Faros Film
http://www.zaziefilms.com/cappuccino/
★2015年9月19日(土)シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
2015年08月19日
夏をゆく人々 原題: LE MERAVIGLIE 英題:THE WONDERS
監督:アリーチェ・ロルヴァケル
出演:マリア・アレクサンドラ・ルング、アルバ・ロルヴァケル、サム・ルーウィック、ザビーネ・ティモテオ、モニカ・ベルッチ
イタリア中部・トスカーナ州の人里離れた自然に囲まれた地に住むジェルソミーナは、養蜂を営む一家の4姉妹の長女。ちょっと頑固なドイツ人の父ヴォルフガングは、息子がいない分、長女のジェルソミーナに養蜂の仕事を教え込み頼りにしている。
ある晴れた日、家族そろって湖水浴に出かけた先で、「ふしぎの国」というテレビ番組の収録の場に出会う。司会をしているのは、きらきら輝く銀色のカツラに白いドレスを着た妖精のようなミリーという女性。ジェルソミーナは彼女の魅力に一気に惹かれてしまう。番組では、この地に根づくエトルリア文化の伝統に則した生活をする家族を募集しコンテストをするという。ジェルソミーナは秘かに応募する。
ある日、父親が14歳のドイツ人の少年マルティンを連れてくる。盗みと放火で捕まった彼を、「少年更生プラン」で預かることになったのだ。言葉を発せず、鳥のような口笛を吹く少年にジェルソミーナは次第に惹かれていく。
そんなある日、父が母アンジェリカと二人で外出し、留守の間、子どもたちだけで蜂蜜作りをしていた時、事故は起こる・・・
頑固者の父親が、有り金はたいて駱駝を買って帰ってきます。ジェルソミーナが小さい時に欲しいと言っていた駱駝。でも、夢見ていた幼い頃は脱していて、しかも両親不在の間に事故が起こったこともあって駱駝どころじゃないのです。駱駝の二つのコブが揺れる様がなんとも悲しくみえます。
映画の前半は、養蜂一家の日常生活を細かく見せてくれて、すごく現実的。後半、テレビ番組「ふしぎの国」のコンテストに家族ぐるみで出場することになって、嫌がる父を説得して、皆で伝統的な衣装に身を包んで収録現場の島の洞窟に行きます。そこは、古代エトルリアのお墓だったところ。モニカ・ベルッチ演じる司会者ミリーの妖艶な魅力もあって、幻想的な雰囲気。
一つの映画で、ドキュメンタリーのような場面と、ファンタジーのような場面が共存して、とても不思議な映画。
アリーチェ・ロルヴァケル監督は、1982年生まれで、まだ30代前半の女性。本作が長編2作目。実際にドイツとイタリアのハーフで実家は養蜂を営むが、物語はあくまでフィクション。なお、母親役のアルバ・ロルヴァケルは、監督の実の姉。また、ジェルソミーナを演じたマリア・アレクサンドラ・ルングは映画初出演。少年の口笛にあわせて蜜蜂を顔にはわせる姿が絶品でした。(咲)
☆第67回カンヌ国際映画祭グランプリ
2014年/イタリア・スイス・ドイツ/1時間51分/カラー/1:1.85/5.1chデジタル/DCP
配給:ハーク 配給協力:アークエンタテインメント
公式HP: http://natsu-yuku.jp/
★2015年8月22日(土)より岩波ホール他 全国ロードショー
2015年03月01日
ヴァチカン美術館4K3D 天国への入口(原題:The Vatican Museums 3D)
監督:マルコ・ピアジャーニ
脚本:ドナート・ダラバーレ
撮影:マッシミリアーノ・ガッティ
日本語版ナレーション:石丸謙二郎
カトリックの信者さんなら誰でも一度は訪問を夢見るヴァチカン市国。ローマ中心部の「不思議な国」の最大級の美術館には、歴代の教皇の収集品が収蔵展示されている。ルネサンス美術の3大巨匠ミケランジェロ、ダ・ヴィンチ、ラファエロをはじめ、近代・現代のゴッホ、シャガール、ダリ、フォンターナなど、そうそうたる美術品が集められている。初めて4Kカメラがとらえた精緻な映像を美術館長の案内で観ることができる。
なかなか観られないだろう有名な美術品が、次から次へと紹介されて“至福&濃い”体験ができます。66分という上映時間が短いのでは、と観る前は思ったのですが作品の力に圧倒されるので、これでも充分でした。西欧の美術は聖書と切り離せないので、いくらか知識があったほうがより深く鑑賞できるかと思います。が、何も知らなくても目が丸くなること必至。(白)
2013年/イタリア/カラー/66分(2D/3D)
配給:コムストック・グループ
(C)direzione dei muse i - governatorato s.c.v
http://vatican4k3d.com/
★2015年2月28日(土)よりシネスイッチ銀座にてロードショー
2014年05月04日
K2〜初登頂の真実〜 原題:K2 - La montagna degli Italiani

監督:ロバート・ドーンヘルム(『戦争と平和』『ラ・ボエーム』)
出演:マルコ・ボッチ、マッシモ・ポッジョ、ミケーレ・アルハイク、ジュゼッペ・チェデルナ、ジョルジョ・ルパーノ、アルベルト・モリナーリ
1954年、イタリア・ミラノのデジオ教授は世界で2番目に高い山K2(8611m)初登頂を目指して、12名の最強のアルピニスト・チームを組む。第二次世界大戦で負け、まだ貧しい時代のイタリア。遠征にお金は出せないと渋る首相に、ようやく後押しもして貰い、国の威信を賭けての挑戦となる。
そして、ついにアキッレ・コンパニョーニ、リーノ・ラチェデッリの二人が初登頂に成功する。だが、イタリア隊は「登頂は隊全体の名誉」として、長い間二人の名前を公表しなかった。その後、50年以上にわたり初登頂をめぐって名誉を賭けた訴訟が繰り広げられた。いったい、初登頂の栄光の蔭に何があったのか・・・
チーム12名中、最年少のボナッティ。若い彼は高所でも無類の強さで仲間を支え、初登頂を夢見ていた。だが、隊長が登頂アタックのクライマーに選んだのは、コンパニョ―二。そして、もう一人はコンパニョ―二自身に選ばせるというものだった。若いボナッティには酸素ボンベの荷揚げを指示するが、コンパニョ―二は合流予定地よりも高所にキャンプを設ける。出会うことのできなかったボナッティは、疲れ切ったハイポーターと共に下山。一方、コンパニョ―二はラチェデッリと共に、ボナッティが決死の思いで荷揚げした酸素ボンベを使って初登頂に成功する・・・ というのが、本作で描かれた「初登頂の真実」。でも、何が真実かは、その場にいた本人たちにしかわからない。
登山家たちの偉業を成し遂げたいという野望。でも、それは死をも覚悟の上での挑戦。チームを結成した教授が、「K2はイタリアの山」と豪語する場面がある。確かに、K2制覇は、敗戦で沈んでいたイタリアの人たちを元気づけたのだろう。一方で、「山は自分のものにならないけど、経験は残る」と語る登山家の姿も描いている。まさに、山に挑む勇士たちの気持ちだと思う。
K2というと、広島三朗さんを思い出す。日本人で K2に初登頂した一人だ。日本パキスタン協会の集まりで、裸足にサンダル履きの広島さんは、いつも大声で山のことや聖者廟のことを楽しそうに語ってくれたものだ。その広島さんも、カラコルムのスキルブルム峰(7360m)登頂成功後に遭難されてしまった。亡くなられる前年の日本パキスタン協会の泊りがけシンポジウムの最後に集合写真を撮る時に、「山の仲間だと、この中で来年いなくなってる奴がいるんだよな」とおっしゃっていたのが今でも耳に残っている。(咲)
2012年/イタリア/イタリア語/120分/カラー/アメリカン・ビスタ/ドルビーデジタル
配給:Republic-A
公式サイト:http://www.mtk2.net/
★2014年5月10日(土) ヒューマントラストシネマ有楽町にてロードショー
2014年04月13日
神聖ローマ、運命の日 〜オスマン帝国の進撃〜 原題:11 settembre 1683/英題:THE DAY OF THE SIEGE
監督:レンツォ・マルチネリ (『プロジェクトV 史上最悪のダム災害』)
出演:F.マーレイ・エイブラハム(『アマデウス』、『薔薇の名前』)ねイエジー・スコリモフスキ(『アンナと過ごした4日間』)、エンリコ・ロー・ヴェルソ(『ハンニバル』、『チェ・ゲバラ -革命と戦いの日々-』)
1683年9月、オスマン帝国の大宰相カラ・ムスタファ率いる30万の大軍が、ハプスブルク家の都ウィーンを包囲する。ウィーンを守るのは、わずか1万5千の兵力。オイゲン公の槍騎兵やザクセン、バイエルンなどの援軍を含めても、総勢5万足らず。絶体絶命の淵で、神聖ローマ皇帝レオポルト1世に召喚されウィーンに赴いたのは、病を治す奇跡の修道士として、民衆から慕い敬われるマルコ・タヴィアーノだった。さらにポーランド王ヤン3世ソビェスキが、4万の援軍を従えてウィーンを目指す・・・

(C) 2012 Martinelli Film Company International srl - Agresywna Banda
オスマン帝国軍が、ウィーン侵攻を果たせなかった第二次ウィーン包囲という歴史の断片を描いた作品。
キリスト教勢力が結集してイスラーム勢力を追い返したことを、イタリアとポーランドが合作で描いているところから、自ずから視点は想像できるでしょう。
少年時代に偶然出会ったマルコ修道士と大宰相カラ・ムスタファの因縁や、カラ・ムスタファと息子との関係など、背景に人間ドラマも描かれていて、戦闘場面だけに終始した作品ではありませんでした。
映画の使用言語が英語のため、言葉の違いによる意思の疎通に問題があったはずの現場が伝わってこないのが残念。せめて、キリスト教勢力とオスマン勢力とは言葉を違える工夫が欲しかった。ポーランド版やイタリア版はどうだったのでしょう・・・(咲)
2012年/イタリア・ポーランド映画/英語/120分/カラー
配給:アルシネテラン
公式サイト:http://www.alcine-terran.com/roma/
★2014年4月19日(土)、有楽町スバル座他全国順次ロードショー
出演:F.マーレイ・エイブラハム(『アマデウス』、『薔薇の名前』)ねイエジー・スコリモフスキ(『アンナと過ごした4日間』)、エンリコ・ロー・ヴェルソ(『ハンニバル』、『チェ・ゲバラ -革命と戦いの日々-』)
1683年9月、オスマン帝国の大宰相カラ・ムスタファ率いる30万の大軍が、ハプスブルク家の都ウィーンを包囲する。ウィーンを守るのは、わずか1万5千の兵力。オイゲン公の槍騎兵やザクセン、バイエルンなどの援軍を含めても、総勢5万足らず。絶体絶命の淵で、神聖ローマ皇帝レオポルト1世に召喚されウィーンに赴いたのは、病を治す奇跡の修道士として、民衆から慕い敬われるマルコ・タヴィアーノだった。さらにポーランド王ヤン3世ソビェスキが、4万の援軍を従えてウィーンを目指す・・・

(C) 2012 Martinelli Film Company International srl - Agresywna Banda
オスマン帝国軍が、ウィーン侵攻を果たせなかった第二次ウィーン包囲という歴史の断片を描いた作品。
キリスト教勢力が結集してイスラーム勢力を追い返したことを、イタリアとポーランドが合作で描いているところから、自ずから視点は想像できるでしょう。
少年時代に偶然出会ったマルコ修道士と大宰相カラ・ムスタファの因縁や、カラ・ムスタファと息子との関係など、背景に人間ドラマも描かれていて、戦闘場面だけに終始した作品ではありませんでした。
映画の使用言語が英語のため、言葉の違いによる意思の疎通に問題があったはずの現場が伝わってこないのが残念。せめて、キリスト教勢力とオスマン勢力とは言葉を違える工夫が欲しかった。ポーランド版やイタリア版はどうだったのでしょう・・・(咲)
2012年/イタリア・ポーランド映画/英語/120分/カラー
配給:アルシネテラン
公式サイト:http://www.alcine-terran.com/roma/
★2014年4月19日(土)、有楽町スバル座他全国順次ロードショー