2018年04月21日

君の名前で僕を呼んで   英題:CALL ME BY YOUR NAME

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監督:ルカ・グァダニーノ (『ミラノ、愛に生きる』)
脚色:ジェームズ・アイヴォリー(『日の名残り』)
挿入曲:「ミステリー・オブ・ラヴ」スフィアン・スティーヴンスほか
出演:ティモシー・シャラメ、アーミー・ハマー、マイケル・スタールバーグ、アミラ・カサール

1983年夏。17歳のエリオは、北イタリアにある母が相続した17世紀に建てられたヴィラで家族と共に過ごしている。アメリカの大学でギリシャ・ローマの美術史を教えている父のもとに、博士課程に在学中の24歳のオリヴァーがやって来る。父は研究を手伝ってくれるインターンを毎夏ヴィラに呼ぶのだ。「今年の彼は素敵ね」と、さっそく女性たちが品定めしている。エリオとオリヴァーは、共用バスで繋がった部屋で過ごすことになる。エリオはオリヴァーの「後で」という口癖が横柄に思えて、ちょっと意地悪をするが、自転車で一緒に町に出かけたりしているうちに、お互い惹かれあうようになる・・・

男どうしの恋というより、人が人に自然に惹かれていく様子が描かれていて、さっぱりとした後味。ティモシー・シャラメ演じるエリオが実に初々しくて、オリヴァーが恋するのもわかります。(可愛かったティモシーも、『レディ・バード』では、女の子を軽くあしらう、ちょっと生意気な男の子)
アーミー・ハマーは、本作ではちょっと大味な感じ。いかにもアメリカの青年! 最初に登場した時の胸元にダビデの星が光っていて、おっユダヤ人!と思ったら、実はエリオの家族もユダヤ系。「クリスマスも祝うよと」いうエリオですが、映画の後半では、ユダヤ教の祭ハヌカを祝う言葉が出てきます。やっぱりユダヤの伝統を守る家族なのでした。
あと、もう一つ、私の心に響いたのが、オリヴァーが到着した時に、父である教授が、ある言葉の語源を彼に確認する場面。アラビア語が語源と言いかけて、その前の、ギリシャからアラビア語経由と言い直すのです。(たぶん、そうだったと! このあたり、ちょっと記憶があいまいです) いずれにしても、教授が引っかけ問題として出したもの。オリヴァーは見事正解して、教授の信頼を得ます。
皆そろっての食卓では、英語(米語)の合間に、イタリア語やフランス語など、いろんな言語が飛び交って、語学オタクには楽しい作品。(咲)


2017年/イタリア・フランス・ブラジル・アメリカ/132分
配給ファントム・フィルム
公式サイト:http://cmbyn-movie.jp
★2018年4月27日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、新宿シネマカリテ、Bunkamuraル・シネマ他全国ロードショー




posted by sakiko at 22:05| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月04日

修道士は沈黙する   原題:le confession

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監督・原案・脚本:ロベルト・アンドー(『ローマに消えた男』)
出演:トニ・セルヴィッロ、ダニエル・オートゥイユ、コニー・ニールセン、モーリッツ・ブライプトロイ、マリ=ジョゼ・クローズ

ドイツ、バルト海沿いハイリゲンダムの空港に降り立つイタリア人修道士、ロベルト・サルス。向かう先はG8財務相会議が開催される高級リゾートホテル。会議の前夜、国際通貨基金(IMF)のダニエル・ロシェ専務理事が自身の誕生日を祝う夕食会に、各国の財務相8名に加え、著名ロックスター、女性絵本作家と修道士のサルスを招いたのだ。賑やかな夕食会の後、サルスはロシェから部屋に呼ばれ、告解がしたいと言われる。翌朝、ロシェがビニール袋をかぶって窒息死しているのが発見される。自殺か、他殺か? 監視カメラでロシェの部屋から最後に出てきたサルスの姿が確認され、サルスに殺人の容疑がかかる。戒律に従って沈黙の誓いを立てているサルスは、自分の不利になろうともロシェの告解の内容を話そうとしない。

翌日のG8財務相会議では、貧富の格差を拡大させるような決定がされようとしているという設定。富を追求する大国の財務相たちとは真逆の、清貧を尊び精神世界に生きる神父を登場させた物語。
冒頭、神父の登場前に、ブルカ、チャードル、スカーフにコートなど、様々なヒジャーブ姿(イスラームを信仰する女性が髪の毛や身体の線を隠す格好)の女性たちの集団が出てきて、お〜っと思ったのですが、その後、彼女たちが映画に登場することはありませんでした。
ロシェの葬儀ミサでのサルスの説教は、今の世界にはびこる合理主義や拝金主義に警鐘を鳴らした痛烈な内容でした。冒頭でヒジャーブ姿の女性たちを登場させた思いを監督に聞いてみたいものです。抑圧された女性たちではなく、精神世界に生きる女性たちという解釈を私はしたいところです。富を追及する財務相会議と同じ場所で、ムスリマ(イスラーム女性)の権利拡大のために各地の女性たちが集まる大会が開かれているという設定なら、面白いと思いました。(咲)


「イタリア映画祭2017」で『告解』(原題の直訳)のタイトルで上映

2016年/イタリア・フランス/イタリア語・フランス語/カラー/108分/シネマスコープ/ドルビーデジタル
配給ミモザフィルムズ
公式サイト:http://shudoshi-chinmoku.jp
★2018年3月17日(土)よりBunkamura ル・シネマほか全国にて順次公開




posted by sakiko at 09:09| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月21日

ロング,ロングバケーション(原題:The Leisure Seeker)

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監督・脚本:パオロ・ヴィルズイ
原作:マイケル・ザドゥリアン「旅の終わりに」(東京創元社刊)
脚本:ステファン・アミドン、フランチェスコ・ピッコロ、フランチェスカ・アルキブージ
撮影:ルカ・ビガッツィ
出演:ヘレン・ミレン(エラ)、ドナルド・サザーランド(ジョン)、ジャネル・モロニー(ジェーン)、クリスチャン・マッケイ(ウィル)、ダナ・アイビリリアン

ジョンとエラはもう50年も連れ添ってきた。子どもたちが呆れるほど仲がいい。しかしジョンはアルツハイマーが進行し、エラは末期がんで先は長くない。エラは病院での治療を打ち切り、最愛の夫とキャンピングカーで旅に出るつもりだ。残りの人生は自分たちの好きなようにしたい。元教師だったジョンは敬愛するヘミングウェイの家に行くのが夢だった。フロリダ・キーウェストを目指して二人は出発する。母を病院に、父を施設にと考えていた娘と息子は大パニックだが、心配することしかできない。ジョンの記憶はときどき混乱し、また元に戻り、と不安定だ。エラは知らずにいた秘密をジョンの口から知ってしまう。

ドナルド・サザーランドとヘレン・ミレン、大ベテランの名優2人が夫婦!広いアメリカを南北に横断するキャンピングカーの旅!イタリアで脚本を手にしたパオロ・ヴィルズィ監督は、物語は気に入ったものの、アメリカまで来たくなくて「ドナルド・サザーランドとヘレン・ミレンが出てくれるなら映画を作る」と(当然無理だと思って)プロデューサーに約束したそうです。そしたら2人が出演を快諾した(脚本と監督が気に入って)ので、動かずにいられなくなったとか。そんな相思相愛のスタッフ・キャストから生まれた愛とユーモアに満ちた作品です。ジョンの運転にハラハラし、痛みをこらえるエラに闘病中の友人を思いました。このラストにはいろいろ感想が出るでしょうが、ジョンとエラには相応しいと思いました。皆様はいかがでしょう?(白)

2017年/イタリア、フランス/カラー/シネスコ/112分
配給:ギャガ
(C)2017 Indiana Production S.P.A.
http://gaga.ne.jp/longlongvacation/
★2018年1月26日(金)TOHOシネマズ 日本橋他全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 17:58| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月09日

歓びのトスカーナ(原題:La pazza gioia)

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監督:パオロ・ヴィルズイ
脚本:フランチェスカ・アルキブージ、パオロ・ヴィルズイ
出演:ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ(ベアトリーチェ)、ミカエラ・ラマッツォッティ(ドナテッラ)

イタリア トスカーナ州。心に問題を抱える女性の診療施設“ヴィラ・ビオンディ”で、ブランド服を着こなし、女主人のようにふるまっているのはベアトリーチェ。虚実混ぜた絶え間ないおしゃべりで煙たがられている。新入りのドナテッラが入所した。体中にタトゥーをほどこしているが、沈んだ顔をして誰とも関わらない。ベアトリーチェは強引に同室にして何かと世話を焼く。息子と離されてしまったドナテッラの事情を知ったベアトリーチェは、「二人で息子に会いに行こう」と外出先で車を盗んで走り出す。

2013年『人間の値打ち』のパオロ・ヴィルズイ監督が再びヴァレリア・ブルーニ・テデスキを主演に、妻である女優ミカエラ・ラマッツォッティを助演に作り上げた作品。前作と同じくダビッド・ディ・ドナテッロ賞に多数ノミネート、作品賞、監督賞、主演女優賞など5部門を受賞したヒット作。正反対な二人の女性が破天荒な旅をしているうちに、深い友情をはぐくんでいく様子が描かれています。嘘が暴かれてもしたたかなベアトリーチェは、寂しがり屋。おしゃべりは愛情不足で空っぽの心を埋めるためだったようです。そんな彼女が今にも壊れそうなドナテッラの支えになります。
女性二人のドライブというと1991年の『テルマ&ルイーズ』(リドリー・スコット監督/スーザン・サランドン、ジーナ・デイヴィス)を思い出します。同じく友情は固く結ばれますが、殺人もジャンプもありませんのでご安心ください。(白)


2016年/イタリア、フランス/カラー/シネスコ/116分
配給:ミッドシップ
(C)LOTUS 2015
http://yorokobino.com/
★2017年7月8日(土)よりシネスイッチ銀座ほかにて全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 16:43| Comment(0) | TrackBack(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月28日

ローマ法王になる日まで   原題:Chiamatemi Francesco - ll papa della gente

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監督・原案・脚本:ダニエーレ・ルケッティ
主演:ロドリゴ・デ・ラ・セルナ、セルヒオ・エルナンデス、ムリエル・サンタ・アナ、メルセデス・モラーン

現ローマ法王フランシスコの半生を描いた物語。
2013年3月、第266代ローマ法王に就任したホルヘ・マリオ・ベルゴリオは、イタリア移民2世のアルゼンチン人。266代にして、史上初のアメリカ大陸出身のローマ法王。

コンクラーベ(法王選挙)のためにバチカンを訪れたベルゴリオは、自身の半生を振り返る。
1960年、ブエノスアイレス。大学で化学を学んでいたベルゴリオは、神に仕えることが自分の道と確信し、イエズス会に入会する。35歳の若さでアルゼンチン管区長に任命される。時は、ビデラ大統領による軍事独裁政権。多くの市民が反政府として捕らえられ、謎の失踪を遂げる。
ベルゴリオのもとに、家族が行方不明になった一般市民や彼らを支援する神父たちが相談に訪れるが、神学校にも軍のスパイの神父がいて、安全な場ではなかった。ベルゴリオは行方不明者の家族の訴えに耳を傾けるオリベイラ判事に助言を求めるが、彼女も軍に目を付けられて、職場を追われる。恩師エステルの妊娠中の娘も失踪したと知り、ベルゴリオはたった一人でビデラ大統領官邸を訪れる。やがて、行方不明者家族の会のメンバーとして活動していたエステルと友人たちも、密告により逮捕されてしまう・・・

カトリック世界を描いた宗教的な物語かと思っていたら、1970年〜80年代のアルゼンチンの独裁政権時代を中心に描いていて、過酷な時代を経てきたことが、法王フランシスコの弱者への温かい眼差しを作ったことをずっしり感じさせてくれるものでした。
『チリの闘い』(パトリシオ・グスマン監督)や、『アルジェの戦い』(ジッロ・ポンテコルヴォ監督)を彷彿させられる内容で、独裁政権に対して果敢に闘う市民の物語にもなっています。なおかつ、独裁政権が、いかに卑劣な手段で市民を抹殺したかも描かれていて、胸が痛みます。

選挙運動中に、「メキシコ国境に壁を作る」と発言したトランプに、「壁ではなく橋を」と苦言を呈したフランシスコ法王。この度、トランプ大統領との対談が実現しましたが、成金のトランプに、清貧のフランシスコ、二人きりの場で、どんな会話がなされたのか気になるところです。(咲)


2015/イタリア/スペイン語、イタリア語、ドイツ語/カラー/113分/2.39:1/ドルビーデジタル
提供・配給:シンカ・ミモザフィルムズ
後援:駐日バチカン市国ローマ法王庁/在日アルゼンチン共和国大使館/イタリア大使館/イタリア文化会館/セルバンデス文化センター東京
推薦:カトリック中央協議会広報
公式サイト:http://roma-houou.jp/
★2017年6月3日(土) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA 他にて全国公開
posted by sakiko at 21:50| Comment(0) | TrackBack(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする