2017年02月05日

海は燃えている イタリア最南端の小さな島  原題:FUOCOAMMARE 英題:FIRE AT SEA

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監督:ジャンフランコ・ロージ(『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』)

イタリア最南端にある小さな島、ランペドゥーサ島。
12歳の少年サムエレは、今日も友だちと手作りのパチンコで遊んでいる。男たちは海に漁に出て、女たちは料理をしたり刺繍をしたり、のどかな島の暮らし。
一方、島で唯一の医師ピエトロ・バルトロのところには、今日も島にたどり着いた難民を乗せた船からの病人が担ぎこまれている。船に赴き、死体を確認することもある。
小さな島なのに、医師以外の島の人たちは、島の片隅の難民キャンプにいる大勢の人たちと交わることもない・・・

チュニジアの海岸から東へわずか113kmに位置するランペドゥーサ島。数多くの難民が押し寄せるのに、島の人たちが彼らと接することもないという現実。映画を観ていて、両者が決して交わることがないことに、最初は不思議な思いがしていたけれど、実はこれが世界の縮図なのだと思いました。私とて、ニュースを見ていて、故国を逃げ出すしかない人たちのことを気の毒だと思っても、結局、何の行動も起こしていません。
誰だって、難民などになりたくないはず。解決策が見つからないのが、ほんとに悲しい。

原題FUOCOAMMAREは、“海の炎”の意。サムエレのおばさんマリアが、悪天候続きで漁に出れない日々が続いている時に、天気の回復を祈ってラジオ局にリクエストする曲のタイトル。 悪天候続きということは、難民を載せた船も、無事にたどり着いているのかしらと、ふと心配になりました。(咲)


第66回ベルリン国際映画祭金熊賞

2015年/イタリア・フランス/114分/イタリア語・英語/ドキュメンタリー
配給:ビターズ・エンド
後援:イタリア大使館、イタリア文化会館 
協力:国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/umi/
★2017年2月11日(土)より、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー!
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2016年12月23日

ルキーノ・ヴィスコンティ 生誕110年 没後40年メモリアル ―イタリア・ネオレアリズモの軌跡― 『郵便配達は二度ベルを鳴らす』『若者のすべて』『揺れる大地』

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名門貴族の末裔であるルキーノ・ヴィスコンティ(1906〜76)。中・後期の作品はその出自ゆえ創り得た絢爛豪華なもの。一方、前期には自身の階級と相反する社会の底辺の人たちが必死に生きる姿を描いている。今回上映される3作品は前期のもの。庶民の悲哀がずっしりと迫ってくるが、圧倒的な映像美は初期から一貫している。

(製作年度順)
『郵便配達は二度ベルを鳴らす デジタル修復版』(1942年製作)★監督デビュー作
『揺れる大地 デジタル修復版』(1948年製作)
『若者のすべて デジタル修復完全版』(1960年製作)

以下、上映日程順に紹介します。

◆『若者のすべて デジタル修復完全版』
原題:ROCCO E I SUOI FRATELLI
出演:アラン・ドロン、レナート・サルヴァトーリ、アニー・ジラルド、他
音楽:ニーノ・ロータ

今回上映される「179分完全修復版」は、マーティン・スコセッシ設立のザ・フィルム・ファンデーションとグッチの資金提供によりフィルムを4Kで修復、2015年に完成した「デジタル4Kリマスター版」。劇場では4K完全修復版マスターから変換した2Kで上映。
2015年第68回カンヌ国際映画祭カンヌ・クラシックスにてワールドプレミア上映。

父が亡くなり、南の村から長男の住むミラノにやってきた母親と四人の息子たち。長男は都会の女性と婚約し当てにならない。折りしもの大雪に雪かきで日銭を稼ぐしかない兄弟。
大都会で生きる術を模索する姿や、兄弟の愛憎を描いた大河ドラマ。

原題は、『ロッコと彼の兄弟たち』。アラン・ドロンが演じた三男ロッコが、物語の核となっている。ドゥオーモ(ミラノ大聖堂)の屋上で、愛する彼女との別れを決意するロッコ。アラン・ドロンの目から一筋の涙がこぼれる様の何と美しいこと!

1960年/イタリア=フランス/179分/モノクロ/ヨーロピアン・ヴィスタ/モノラル
日本初公開:1960年12月27日(イタリフィルム配給 旧・日比谷映画劇場)
完全版/1982年6月8日(東宝東和配給 俳優座劇場)
★2016年12月24日(土)から新宿武蔵野館ほか全国で順次開催


◆『郵便配達は二度ベルを鳴らす デジタル修復版』
原題:OSSESSIONE
原作:ジェイムズ・ケイン 
音楽:ジュゼッペ・ロザーティ
出演:クララ・カラマイ、マッシモ・ジロッティ、フアン・デ・ランタ、他

現存する最良の35mmネガコピーと、近年発見されたオリジナル・ネガから現像されたポジフィルムを元に、CSC-CINETECA NAZIONALE(ナショナル・フィルム・アーカイヴ)と、Ripley’s Film、Viggoのコラボレーションにより修復され、2016年6月に完成した「デジタル2Kリマスター版」

監督デビュー作。ジェームズ・M・ケインの原作を、舞台を北イタリアの田舎町に置き換えて製作。食堂を営む初老の夫と年の離れた女ざかりの妻。精悍な流れ者に妻が惚れたことから起こる悲劇。

1942年/イタリア/126分/モノクロ/スタンダード/モノラル
日本初公開:1979年5月26日(インターナショナル・プロモーション配給 有楽シネマ)
★2017年1月7日(土)から新宿武蔵野館ほか全国で順次開催


◆『揺れる大地 デジタル修復版』 
原題:LA TERRA TREMA (EPISODIO DEL MARE)
原案・脚本:ルキーノ・ヴィスコンティ
出演:アントニオ・アルチディアコノ、ジュゼッペ・アルチディアコノ、アントニオ・ミカーレ、他
音楽選曲:ルキーノ・ヴィスコンティ、ヴィリー・フェッレロ

CSC-CINETECA NAZIONALE (ナショナル・フィルム・アーカイヴ)と、Ripley’s Film、Viggoのコラボレーションにより、2016年3月に完成した「デジタル2Kリマスター版」。

シチリアの漁村。父を海で亡くし一家を支える長男。仲買人に搾取されていることに疑問を持ち、家を抵当に入れて船を買う。大漁の鰯に喜び、家族総出で鰯加工に勤しむが、嵐の日に海に出て船を失ってしまう。
家を差し押さえられ、行き場のなくなった一家の悲哀がずっしり迫ってくる。
どこかで観たと思ったら、『ニュー・シネマ・パラダイス』で、映画館でこの映画が上映されている場面がありました。
シチリア、アーチ・トレッツァの漁村で撮影。出演者もすべて住民からキャスティング。台詞はシチリア方言で標準語字幕をつけて上映という徹底したリアリズムにこだわった力作。

1948年/イタリア/160分/モノクロ/スタンダード/モノラル
日本初公開:1990年1月19日(日本ヘラルド映画配給 銀座文化劇場)
★2017年1月21日(土)から新宿武蔵野館ほか全国で順次開催


ルキーノ・ヴィスコンティ 生誕110年 没後40年メモリアル
配給:アーク・フィルムズ/スターキャット
公式サイト:http://www.visconti-neo.com/
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2016年10月05日

人間の値打ち(原題:Il capitale umano)

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監督・脚本:パオロ・ビルツィ
原作:ステファン・アミドン
脚本:フランチェスコ・ブルーニ、フランチェスコ・ピッコロ
撮影:ジェローム・アルメーラ
音楽:カルロ・ヴィルズィ
出演:ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ(カルラ・ベルナスキ)、ファブリッツィオ・ベンティボリオ(ディーノ・オッソラ)、マティルデ・ジョリ(セレーナ・オッソラ)、ファブリツィオ・ジフーニ(ジョヴァンニ・ベルナスキ)、バレリア・ゴリノ(ロベルタ)

クリスマスの近づいた夜、仕事を終えて家路を急いでいた自転車の男が事故に遭う。はねた車は逃げ去り、男は病院に収容される。
半年前。上流階級に憧れる不動産業者のディーノは、娘セレーナのボーイフレンドが投資家ジョヴァンニの息子と知り、丘の上に住む富豪の父親に接近する。リスクの高いファンドを扱っているジョヴァンニはディーノの下心に気づき釘をさすが、ディーノはウソでかためて多額の借金をして儲け話に乗る。
ジョヴァンニの妻カルラは何不自由ない生活を送りながら満たされず、空しい毎日を送っていた。高校生のセレーナはボーイフレンドとの付き合いに迷い始め、継母の勤める病院で出会ったルカに惹かれていく。

冬に起きる冒頭の事故から半年前にさかのぼり、登場人物たちそれぞれの視点から見せています。富裕層、中流層、貧困層の三家族の暮らしと欲望を描きながら、事故がなぜ誰によって起きてしまったのか真相を明らかにします。同じ場面を別の方向から見直す観客は、笑顔の裏での本音や隠された事情を知っていくことになります。この構成がうまくて緊張がゆるみません。
欲望がむき出しでわかりやすいのは最初に登場するディーノ、やり手のジョヴァンニは本心を見せず、紳士然としながら妻を少しも尊重していません。実際にイタリアの名家の出身というヴァレリア・ブルーニ・テデスキが、富豪の妻カルラを演じてさすがの品格。着こなすファッションや邸宅の美術も素敵です。ベテラン勢に加えて新進の俳優も魅力的です。お金がどれだけあればいいのか、幸せはお金で買えるのか、自分の幸せはなんだろうかとちょっと真面目に考えてしまいました。
イタリアのアカデミー賞と呼ばれるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で、最優秀作品賞など7部門受賞。(白)


2013年/イタリア・フランス合作/カラー/シネスコ/109分
配給:シンカ
http://neuchi-movie.com/
★2016年10月8日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー
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2016年10月02日

アルジェの戦い  デジタルリマスター/オリジナル言語版   原題:La Battaglia Di Algeri

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監督:ジッロ・ポンテコルヴォ
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:ジャン・マルタン、ヤセフ・サーディ、ブラヒム・ハギアグ

1954年から1962年にかけての、フランス支配に対するアルジェリアの独立戦争。
本作は、ユダヤ人で、ジャーナリスト出身のジッロ・ポンテコルヴォ監督が、記録映像を一切使わず、目撃者や当事者の証言、残された記録文書をもとにリアルな劇映画として戦争の実体をドキュメンタリー・タッチで再現したもの。
アルジェリア市民8万人が撮影に協力。戦車、武器類はアルジェリア軍より調達。フランス映画『望郷』の舞台となったアルジェのカスバでオールロケを敢行し、5年の歳月をかけて作られた。
1966年ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した折には、フランス代表団が“反仏映画”として、映画監督フランソワ・トリュフォーを除く全員が会場を退席。賛否両論を巻き起こした衝撃作。製作50周年を機に、デジタルリマスター/オリジナル言語版での公開。

1970年代後半のチリにおける政治的緊張と社会主義政権の終焉を記録したドキュメンタリー『チリの闘い』(パトリシオ・グスマン監督、1975年〜78年製作、2016年9月10日公開)は、実際の民衆のほとばしる動きを撮影したものだった。本作『アルジェの戦い』は再現したものながら、独立戦争直後に、実際に独立戦争を経験したアルジェリアの人々が係わったものだけに、まるで実録のような迫力がある。
理不尽な権力者に、自分たちの思いをぶつける姿に涙が出る。それは今もシリアやパレスチナをはじめ、各地で続いている人々の戦い。平穏に暮らしていることに感謝しつつ、いつ、我が身にふりかかるかもわからないことも覚悟しないといけないと思う。(咲)

この有名な作品を観たことがなくずっと気になっていたけど、今回リマスター版が作られ、やっと観ることができた。長く続いたアルジェリア独立への戦いを描いていて歴史の復習にもなった。圧倒的な力を持つフランスに対して、FLN(アルジェリア民族解放戦線)の様々な抵抗の行動が描かれる。しかし、警察や軍、警備隊を総動員したフランスに壊滅させられてしまった。でもまた、住民たちが立ち上がり行動を始める。最後、たくさん群衆によるデモ行動が圧巻だった。劇中「戦争も革命も同じだ。テロが有効なのは最初だけ。勝利を決めるのは民衆の行動だ」と語るFLN幹部の言葉が実現しとうとう独立を勝ち得た。この時代のカスバの雰囲気も見ることができた。(暁)


★初日 井筒和幸監督のトークショー!
10月8日(土)18時の回終映後〜20時頃より(30分程度)
【場所】新宿K's cinema 新宿区新宿3−35−13 SHOWAKANビル3F

高校生の時、京都でこの映画に出会ったという井筒監督に、この映画を観たときの思い出やその当時の世相、そして半世紀を経て再びこの映画を観ていただいての感想などを語っていただく予定とのことです。


1966年/イタリア=アルジェリア/モノクロ/121分/フランス語・アラビア語
配給 コピアポア・フィルム
公式サイト:http://algeri2016.com/
★2016年10月8日(土)新宿K’s cinemaにてロードショー
posted by sakiko at 09:25| Comment(0) | TrackBack(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月03日

フィレンツェ、メディチ家の至宝 ウフィツィ美術館3D・4K(原題:Firenze e gli Uffizi 3D/4K)

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監督:ルカ・ビオット
出演:サイモン・メレルズ、アントニオ・ナターリ、マルコ・チアッティ

2月に公開した『ヴァチカン美術館4K3D 天国への入口』の製作陣が、メディチ家歴代のコレクションを収蔵するフィレンツェ、ウフィツィ美術館を紹介するドキュメンタリー。全体が美術館のようなフィレンツェの街の空撮は圧巻。様々な角度から芸術家たちが残した名画や彫刻にせまり、美しい映像でイタリア・ルネッサンスを間近に感じさせてくれる。

銀行業で巨万の富を築いたメディチ家のコジモ1世が建てた行政庁舎がこの美術館の元です。“ウフィツイ”はイタリア語でオフィスのことだそうです。
映画冒頭に登場するロレンツォ・デ・メディチはコジモの孫で、20歳でメディチ家の当主になった人物。遺産を引き継いで当時の芸術家、建築家をバックアップしたそうです。ミケランジェロ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ボッティチェリなどなど、1点海を渡って来ただけでも展覧会は激混みになりそうな作品ばかりです。日本にいながらにしてすぐそこで見ているような贅沢な時間を過ごせました。日本語版ナレーションは小林薫さん。(白)


2015年/イタリア/カラー/ビスタ/97分
配給:コムストック・グループ
(C)2015 SKY ITALIA SRL - all rights reserved
http://uffizi4k3d.com/
★2016年7月9日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国公開
posted by shiraishi at 13:41| Comment(0) | TrackBack(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする