2018年12月15日

シシリアン・ゴースト・ストーリー(原題:SICILIAN GHOST STORY)

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監督・脚本:アントニオ・ピアッツァ、ファビオ・グラッサドニア
撮影:ルカ・ビガッツィ
原作:マルコ・マンカッソーラ「白い騎士」
出演:ユリア・イェドリコヴスカ(ルナ)、ガエターノ・フェルナンデス(ジュゼッペ)、コリンヌ・ムサラリ(ロレダーナ)、アンドレア・ファルツォーネ(ニノ)、ビンチェンツォ・アマート(ルナの父親)、サビーネ・ティモテオ(ルナの母親)

1993年、イタリア。シチリアの小さな村で13歳の少年ジュゼッペが姿を消した。同級生のルナは彼に思いを寄せ、手紙を渡して心を伝えていた。幸せに包まれていたのに、何もいわずにいなくなるなんて考えられない。ジュゼッペの家を訪ねても母親は泣くばかり。マフィアの父親が仲間の情報を警察に渡したため、息子のジュゼッペを報復のために誘拐したらしい。
村の大人たちは関わりを怖れてみな口を閉ざし、誰もふれようとしない。ルナは両親の反対に耳を貸さず、たった一人でジュゼッペを探し歩く。

出だしはふたりの小さな恋の物語。ルナ役のユリア・イェドリコヴスカ、ジュゼッペ役のガエターノ・フェルナンデス、どちらもこの映画が初出演。周りをベテランが囲んでいるとはいえ、初めて演技する子どもたちには重い内容の作品です。何の色もついていない俳優のみずみずしさ、相手を思うひたむきさが良い作用をしていました。若いふたりがどんな風に成長していくのか、次の作品が楽しみです。
ジュゼッペに加えられる暴力のシーンに息をつめてしまいましたが、ルナがジュゼッペを探すシーンが幻想的で、気持ちを和らげてくれます。撮影のルカ・ビガッツィを検索しましたら、これまで映像が綺麗だったと思った作品のほとんどを撮影した方でした。元になった誘拐監禁事件は酷い結末を迎えるのですが、映画ではルナという少女が配されて、ジュゼッペばかりでなく何もできなかった人々の魂を救います。(白)


シチリアで起きた誘拐殺害事件に着想を得て作られた幻想的なラブストーリー。突然いなくなった少年を必死に探す少女。現実と幻想世界の狭間に落ちてしまうが、魂の自由を得た少年に救われる。二人の邂逅がアートな雰囲気で神秘的。残酷な結果に目をそむけるのではなく、確かに存在していたと記憶に留めることが何よりも大切なのかもしれない。(堀)

2018年/イタリア/カラー/シネスコ/123分/R15+
配給:ミモザフィルムズ
(C)2017 INDIGO FILM CRISTALDI PICS MACT PRODUCTIONS JPG FILMS VENTURA FILM
http://sicilian-movie.com/
★2018年12月22日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 16:07| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月03日

最初で最後のキス(原題:Un bacio)

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監督・脚本:イヴァン・コトロネーオ
撮影:ルカ・ビガッツィ
出演:リマウ・グリッロ・リッツベルガー(ロレンツォ)、ヴァレンティーナ・ロマーニ(ブルー)、レオナルド・パッツァーリ(アントニオ)、トマス・トラバッキ(レナト/ロレンツォの父)、デニス・ファゾーロ(サントロ先生)、アレッサンドロ・スペルドゥーティ(マッシモ/アントニオの兄)

イタリア北部の町。孤児のロレンツォに里親が決まった。養父母となった2人は心から彼を歓迎し、新しい部屋に案内する。転入する高校の前まで送ってもらい、出たときと違うポップな服に着替えて一人教室へと入るロレンツォ。さっそくに意地悪な視線にさらされるが、ひるまずに言い返す。同じように学校で浮いている女子生徒ブルーに自分はゲイだと明かすが、ブルーは「ゲイの友だちは初めて」と全く気にしない。バスケットボール部のアントニオは、ブルーを秘かに思っていたが、内気で声をかけることができない。ブルーを中傷する落書きを一人消し続けていた。そんなアントニオにロレンツォは惹かれ、3人はこれまでと違う高校生活を満喫するようになる。

男子2人と女子1人の青春のひとときを描いた作品。2008年にアメリカで実際にあった事件をもとに、コトロネーオ監督が小説「UN BACIO」を書き、それを映画化したもの。主演の3人が私には初めてだったので、何の色もつけずに観ることができました。くっきりした目鼻立ちが印象的なリマウ・グリッロ・リッツベルガーは、インドネシア人の父とオーストリア人の母とのハーフ。これが初の映画出演。
ロレンツォはスターになるのが夢で、わが道をゆくタイプ。アントニオがブルーを好きなのを知っていても、アントニオへの気持ちを抑えられません。年上の恋人に傷つけられても認めたくないブルー。1人浮いていても、耐えられる強さがあります。アントニオは兄が若くして死んで、両親の過干渉や兄の亡霊(アントニオの妄想?)に悩まされています。三者三様の屈託があるのですが、いっとき楽しい日々を送ります。そのシーンが眩しすぎるくらい明るいので、若くて無知なゆえに引き寄せてしまう痛切なラストにため息が出ました。救いは「もしも・・・だったら」という、もう一つのラストが示されること。
3人の家庭環境が特に悪いわけでもなく、それぞれの親たちも愛情を注ぐのに、悲劇は起こってしまいました。3人と同世代の若い人たちにぜひ観てほしい作品です。(白)


2016年/イタリア/カラー/シネスコ/106分
配給:ミモザフィルムズ
(c)2016 Indigo Film - Titanus
http://onekiss-movie.jp/
★2018年6月2日(土)ロードショー
posted by shiraishi at 15:16| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月13日

いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち  原題:Smetto quando voglio - Masterclass

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監督・原案・脚本けシドニー・シビリア
出演:エドアルド・レオ(『おとなの事情』)、ルイジ・ロ・カーショ(『夜よ、こんにちは』、『人間の値打ち』)、ステファノ・フレージ、グレタ・スカラーノ、ヴァレリア・ソラリーノ

神経生物学者のピエトロ・ズィンニ(エドアルド・レオ)は、研究者仲間と合法ドラッグを製造してひと儲けしようとするも逮捕され収監されていた。一方、新型ドラッグが蔓延して、摘発に苦慮していたパオラ・コレッティ警部(グレタ・スカラノ)は、研究者たちに犯罪履歴を帳消しにする代わりに、捜査に協力してほしいと持ちかける。
ピエトロは合法ドラッグの研究者仲間を再結集。さらに、国外に頭脳流出していた研究者3人を呼び寄せ、総勢10人で30種類のスマートドラッグ撲滅に向けて奔走する・・・

本作は、『いつだってやめられる 7 人の危ない教授たち』(2014年)の続編。
2009年にギリシャで始まった欧州危機がイタリアにもおよび、大学研究者たちも収入をカットされたり、職を失ったりする者が続出。前作は、研究者たちが結集して、その才能を活かして合法ドラッグを開発するも逮捕されてしまったという物語。
続編である本作は、収監されている場面から始まります。
監督は、最初から『いつだってやめられる』3部作を考えていたとのことで、この10人は完結編では何をしでかしてくれるのでしょう・

それにしても、これがイタリアらしい風刺コメディ? 笑いのツボが、日本人とはどうも違うような気がします。
マグレブ人は騒がしい、アラブ人は数字に強い、アルバニア人と騒ぎを起こせば、また収監される・・・などなど、イタリアの刑務所も国際色豊かなのが垣間見られます。
研究者仲間を集結させるのにあたって、あいつはトルコとシリア国境での紛争鎮圧に参加しているに違いないなんて言葉も。社会問題も、ちらりと盛り込んでます。(咲)


イタリア映画祭2017出品作品

2017年/イタリア/イタリア語/119分/シネスコ/カラー
配給:シンカ
公式サイト:http://www.synca.jp/itsudatte/
★2018年5月26日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国ロードショー








posted by sakiko at 21:57| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月21日

君の名前で僕を呼んで   英題:CALL ME BY YOUR NAME

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監督:ルカ・グァダニーノ (『ミラノ、愛に生きる』)
脚色:ジェームズ・アイヴォリー(『日の名残り』)
挿入曲:「ミステリー・オブ・ラヴ」スフィアン・スティーヴンスほか
出演:ティモシー・シャラメ、アーミー・ハマー、マイケル・スタールバーグ、アミラ・カサール

1983年夏。17歳のエリオは、北イタリアにある母が相続した17世紀に建てられたヴィラで家族と共に過ごしている。アメリカの大学でギリシャ・ローマの美術史を教えている父のもとに、博士課程に在学中の24歳のオリヴァーがやって来る。父は研究を手伝ってくれるインターンを毎夏ヴィラに呼ぶのだ。「今年の彼は素敵ね」と、さっそく女性たちが品定めしている。エリオとオリヴァーは、共用バスで繋がった部屋で過ごすことになる。エリオはオリヴァーの「後で」という口癖が横柄に思えて、ちょっと意地悪をするが、自転車で一緒に町に出かけたりしているうちに、お互い惹かれあうようになる・・・

男どうしの恋というより、人が人に自然に惹かれていく様子が描かれていて、さっぱりとした後味。ティモシー・シャラメ演じるエリオが実に初々しくて、オリヴァーが恋するのもわかります。(可愛かったティモシーも、『レディ・バード』では、女の子を軽くあしらう、ちょっと生意気な男の子)
アーミー・ハマーは、本作ではちょっと大味な感じ。いかにもアメリカの青年! 最初に登場した時の胸元にダビデの星が光っていて、おっユダヤ人!と思ったら、実はエリオの家族もユダヤ系。「クリスマスも祝うよと」いうエリオですが、映画の後半では、ユダヤ教の祭ハヌカを祝う言葉が出てきます。やっぱりユダヤの伝統を守る家族なのでした。
あと、もう一つ、私の心に響いたのが、オリヴァーが到着した時に、父である教授が、ある言葉の語源を彼に確認する場面。アラビア語が語源と言いかけて、その前の、ギリシャからアラビア語経由と言い直すのです。(たぶん、そうだったと! このあたり、ちょっと記憶があいまいです) いずれにしても、教授が引っかけ問題として出したもの。オリヴァーは見事正解して、教授の信頼を得ます。
皆そろっての食卓では、英語(米語)の合間に、イタリア語やフランス語など、いろんな言語が飛び交って、語学オタクには楽しい作品。(咲)


2017年/イタリア・フランス・ブラジル・アメリカ/132分
配給ファントム・フィルム
公式サイト:http://cmbyn-movie.jp
★2018年4月27日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、新宿シネマカリテ、Bunkamuraル・シネマ他全国ロードショー




posted by sakiko at 22:05| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月04日

修道士は沈黙する   原題:le confession

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監督・原案・脚本:ロベルト・アンドー(『ローマに消えた男』)
出演:トニ・セルヴィッロ、ダニエル・オートゥイユ、コニー・ニールセン、モーリッツ・ブライプトロイ、マリ=ジョゼ・クローズ

ドイツ、バルト海沿いハイリゲンダムの空港に降り立つイタリア人修道士、ロベルト・サルス。向かう先はG8財務相会議が開催される高級リゾートホテル。会議の前夜、国際通貨基金(IMF)のダニエル・ロシェ専務理事が自身の誕生日を祝う夕食会に、各国の財務相8名に加え、著名ロックスター、女性絵本作家と修道士のサルスを招いたのだ。賑やかな夕食会の後、サルスはロシェから部屋に呼ばれ、告解がしたいと言われる。翌朝、ロシェがビニール袋をかぶって窒息死しているのが発見される。自殺か、他殺か? 監視カメラでロシェの部屋から最後に出てきたサルスの姿が確認され、サルスに殺人の容疑がかかる。戒律に従って沈黙の誓いを立てているサルスは、自分の不利になろうともロシェの告解の内容を話そうとしない。

翌日のG8財務相会議では、貧富の格差を拡大させるような決定がされようとしているという設定。富を追求する大国の財務相たちとは真逆の、清貧を尊び精神世界に生きる神父を登場させた物語。
冒頭、神父の登場前に、ブルカ、チャードル、スカーフにコートなど、様々なヒジャーブ姿(イスラームを信仰する女性が髪の毛や身体の線を隠す格好)の女性たちの集団が出てきて、お〜っと思ったのですが、その後、彼女たちが映画に登場することはありませんでした。
ロシェの葬儀ミサでのサルスの説教は、今の世界にはびこる合理主義や拝金主義に警鐘を鳴らした痛烈な内容でした。冒頭でヒジャーブ姿の女性たちを登場させた思いを監督に聞いてみたいものです。抑圧された女性たちではなく、精神世界に生きる女性たちという解釈を私はしたいところです。富を追及する財務相会議と同じ場所で、ムスリマ(イスラーム女性)の権利拡大のために各地の女性たちが集まる大会が開かれているという設定なら、面白いと思いました。(咲)


「イタリア映画祭2017」で『告解』(原題の直訳)のタイトルで上映

2016年/イタリア・フランス/イタリア語・フランス語/カラー/108分/シネマスコープ/ドルビーデジタル
配給ミモザフィルムズ
公式サイト:http://shudoshi-chinmoku.jp
★2018年3月17日(土)よりBunkamura ル・シネマほか全国にて順次公開




posted by sakiko at 09:09| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする