2018年09月30日

あまねき旋律(しらべ)   原題:kho ki pa lü  英題:Up Down & Sideways

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監督:アヌシュカ・ミーナークシ、イーシュワル・シュリクマール
製作:ウ・ラ・ミ・ル プロジェクト

インド東北部ナガランド州ペク県。急な斜面に作られた棚田や、山間の道には、いつも歌が轟いている。農作業をする時にも、重い荷物を運ぶ時にも、そして恋をする時にも、ここの村人たちの生活は歌と共にある。
ミャンマー国境近く位置するこの地に住む民族「チャケサン・ナガ」の民謡で、「リ」と呼ばれる歌は、南アジアの音楽文化では極めてまれなポリフォニー(多声的合唱)で歌われる。二部合唱から最大では混成八部合唱。
共同監督の、アヌシュカ・ミーナークシとイーシュワル・シュリクマールは、インドの南部出身。インド各地の踊りや歌のパフォーマンスを取材する中で、ナがランドの労働歌に魅せられて、1本のドキュメンタリーに仕立て上げた。


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イーシュワル・シュリクマール監督(左)とアヌシュカ・ミーナークシ監督 (撮影:宮崎暁美)
監督のお二人が来日されたのは、8月初め。暑い熱い真っ只中でした。「私たちは、もっと暑いところから来ましたら大丈夫」とにっこり。

プレス資料に、この映画に魅了され、日本公開に一役買った大澤一生さんによる、詳細なインタビューが掲載されていて、取材時間をいただいたものの、さて、それ以上に何をお伺いすればいいのかと思いながら、お二人にお会いしました。
(大澤さんの充実のインタビューの掲載されたパンフレットが、劇場でも入手できます。)
インタビューの詳細は別途お届けしますが、印象的だったことを、ここで少しだけ披露します。(咲)

*キリスト教のはたした役割
村の中で、ひときわ目立つ白い大きな教会。キリスト教が入ってきて、冠婚葬祭はキリスト教式のものにすっかり変わっています。ですが、決してキリスト教が伝統を壊してしまったわけではなく、価値ある伝統は何なのかを気づかせてくれた存在になっていると思います。また、民族祭り開催に資金的サポートをしています。
一番人口の多いのがバプテスト教会。リバイバル(復興)教会の会派の人たちは伝統的なことを歌に歌ってはいけないので旋律だけ残しています。

*伝統的衣装を写真に残す意味
写真家が外国からきた歴史が英国統治時代からありました。民族衣装のまま畑仕事をしている写真が出たりしていますが、年に1回くらいは正装することはありますが、日常は違います。
「撮る」と言うと、着がえてくる! インド軍がナガランドの80%を焼き尽くした時に、民族衣装やアクセサリーがずいぶん消えてしまったので、ナガランド独自のものを写真に残すことは大きな意味があります。

アヌシュカ&イーシュワル監督インタビュー 全容はこちらで!
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/462148044.html



◆ポレポレ東中野 トークイベント
(※トークは全て上映後)
・10/6(土)12:30〜 アヌシュカ・ミーナークシ & イーシュワル・シュリクマール監督スカイプトーク (インドから中継)
・10/7(日)12:30〜 村山 和之 (中央大学・和光大学講師)
・10/7(日)19:00〜 今福 龍太(文化人類学者・批評家)×金子 遊(映像作家、批評家)
・10/11(木)19:00〜 望月 優大 (ライター/編集者)
・10/12(金)19:00〜 木村 真希子 (津田塾大学学芸学部准教授)
・10/13(土)19:00〜 藤井 美佳 (字幕翻訳者)
・10/14(日)12:30〜 松岡 環 (アジア映画研究者)
・10/15(月)19:00〜 鎌仲 ひとみ (映像作家)
・10/19(金)19:00〜 纐纈 あや (映画監督)
・10/20(土)17:00〜 井口 寛 (レコーディングエンジニア) ×大石 始 (ライター/エディター)


山形国際ドキュメンタリー映画祭(日本)・アジア千波万波部門 奨励賞/日本映画監督協会賞

2017年/インド/83分/チョークリ語/16:9/カラー
配給:ノンデライコ
公式サイト:http://amaneki-shirabe.com/
★2018年10月6日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開





posted by sakiko at 22:10| Comment(0) | インド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月20日

人間機械   原題:MACHINES

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監督・脚本:ラーフル・ジャイン

インド、北西部グジャラート州にある繊維工場。
機械の大きな音が響く中、黙々と働く人々。
化学染料の取り扱いにも、それほど気を使ってない。
汗まみれになって彼らが作り出すのは、美しい花柄の布。
まさに機械としてしか見られていない、そこで働かざるをえない人々・・・

「故郷で働くことが出来れば、ここには来ない」
「1600キロ離れた地から、36時間すし詰めの列車で来た」
家族を養うため、家族と離れて、過酷な環境の中で働く人たちの言葉に、もう虚しさしかない。
ここで働く人たちの楽しみは、嗜好品のパーン。一日2ルピーの楽しみ。煙草は、5〜10ルピーもするので買えないのだ。映画大国インドだけど、彼らにとって映画館で映画を楽しむ余裕もないのだろう。
ラーフル・ジャイン監督は、小さい頃、祖父の所有する繊維工場を遊び場にしていたという。繊維工場を初監督作品の舞台にしたのは、その強烈な記憶。地獄のような劣悪な環境の中で働く人々のことを知らしめ、世の中を動かしたいという思いもあるのだろう。けれども、その地獄をあまりに芸術的に描いていて、所詮、富める層のおごりと感じてしまう。
もちろん、このような世界があることを知らないよりは知ったほうがいい。ボリウッド映画や『バーフバリ』でインドに目覚めた方には、対極にある『人間機械』もぜひご覧いただきたい。(咲)


山形国際ドキュメンタリー映画祭2017上映作品

2016年/インド・ドイツ・フィンランド/DCP/カラー/71分
配給:株式会社アイ・ヴィー・シー/配給協力:ノーム
公式サイト:http://www.ivc-tokyo.co.jp/ningenkikai/
★2018年7月21日(土) 渋谷ユーロスペースほかにて全国順次ロードショー




posted by sakiko at 09:09| Comment(0) | インド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月01日

ダンガル きっと、つよくなる(原題:Dangal)

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監督・脚本:ニテーシュ・ティワーリー
撮影:サタジット・パンデ
音楽:プリータム・チャクラボルティー
出演:アーミル・カーン(マハヴィル)、サークシー・タンワル(ダーヤ)、ファーティマー・サナー(ギータ青年期)、サニヤー・マルホートラバ(バビータ青年期)、ザイラー・ワシーム(ギータ幼少期)、スハーニー・バトナーガルバ(バビータ幼少期)、アパルシャクティ・クラーナー(オムカル)

レスリングを愛するマハヴィルは、生活のため選手の道を諦めなければならなかった。彼の夢は息子を金メダリストにすること。しかし生まれてきたのは、4人連続で女の子だった。夢を叶えられずがっかりしたマハヴィルだったが、ある日、上の娘2人が男の子とケンカして負かしたことを知る。格闘技のセンスはちゃんと受け継がれていた。女の子でもレスリングができると、マハヴィルは長女のギータと次女のバビータをコーチとして鍛え始める。娘2人はスパルタ指導をする父に逆らえず、女の子らしいお洒落も遊びもできないことに抵抗するが・・・。オリンピック出場を目指す父には全く通じなかった。

実際にオリンピックに出場した父と娘のストーリーを元にした作品。『きっと、うまくいく』(2013)『PK ピーケイ』(2016)のアーミル・カーンが、娘達を熱血指導する父親を演じています。『きっと、うまくいく』の大学生を演じたのは40代でそれにも驚きましたが、今回も引き締まった身体の若いときから、充分に中年体型となったときまで実際に体重を増減させたそうで(70kg-97kg-70kg)、役者魂に脱帽。あのぜい肉は自前です。また娘役の女の子たちも実際に細心の注意を払ってウエイトトレーニング+試合のためのトレーニングをしていて、試合もガチです。
ギータが友だちに愚痴る場面がありますが、その友だちは親の決めた相手と結婚しなければなりません。それが女の子には普通のことでした。友だちはギータに素晴らしいお父さんだと言います。
マハヴィルは娘たちに夢を託しましたが、それは自分のためだけではありません。才能を認めて男子と同様に機会を作ってくれたのです。実話に上手くユーモアをまぶしてあり気持ち良く泣かせてもらいました。見終わった後に「ダンガル♪ダンガル♪」が頭の中でヘビロテすること必至。(白)


2016年/インド/カラー/シネスコ/140分
配給:ディズニー、ギャガ
(C)Aamir Khan Productions Private Limited and UTV Software Communications Limited 2016
★2018年4月6日(金)TOHOシネマズシャンテ他全国公開
posted by shiraishi at 18:41| Comment(0) | インド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月24日

クイーン 旅立つわたしのハネムーン(原題:Queen)

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監督:ビカース・バール
脚本:ボーべエス・シークほか
音楽:アミ・トリヴェーディー
出演:カンガナー・ラーナーウト(ラーニー)、ラージクマール・ラーオ(ヴィジャイ)、リサ・ヘイドン(ヴィジャイラクシュミ)

インドの首都デリー。保守的な家庭で生まれ育ったラーニーは、一人で外出したこともない晩生な娘。積極的なヴィジャイにアタックされて婚約したが、デートにも弟がついてくる。結婚式の用意も整って、嬉しさいっぱいのラーニー。しかしヴィジャイから突然婚約破棄を告げられる。ラーニーはショックで部屋に閉じこもって泣き暮らす。ようやく部屋から出てきたラーニーは、心配して見守っていた家族に、新婚旅行を取り消さず、自分ひとりで行くと宣言する。
楽しみにしていたパリでは食事の注文も思うようにできず、2人で行くはずだった凱旋門が目に入って、ますます孤独になってしまう。ホテルのインド系の従業員ヴィジャイラクシュミと知り合い、自由で逞しく生きている彼女に励まされた。次に訪れたアムステルダムのゲストハウスは満室で、やむなく男性3人との相部屋になってしまった。

結婚式直前にドタキャンされて、茫然自失のヒロインが、一大決心をして新婚旅行のはずだったヨーロッパへ(インドの方は英語が使えるのでいいなぁといつも思います)。婚約者は失ったけれども、一歩踏み出したおかげで結婚していたら出会うはずもなかった人々や文化に出会い、たくさんの経験をして自分の殻を破っていきます。
カンガナー・ラーナーウトはじめどのキャストも好演で、次第に背筋が伸びて笑顔が多くなるラーニーにとても嬉しくなります。ヴィジャイを演じたラージクマール・ラーオも人気俳優だそうですが、今回は女性に総スカンにあいそうな憎まれ役。「あれでは破談になってかえってよかったね」と、試写で一緒になった(咲)さんと。
ゲストハウスで出会う3人の中に“日本人のタカ”さんがいました。セリフの感じでは中華系の方かなと思いましたが、資料に説明はありませんでした。ヨーロッパの人にはアジア人はみな同じに見えるのかもしれませんが(その逆もあり)日本人役の俳優さんはやはり気になります。試写は短くしたバージョンでしたが、劇場ではオリジナル完全版での上映。(白)


2013年/インド/カラー/シネスコ/146分
配給:ココロヲ・動かす・映画社 ◯
(c)Viacom 18 Media Pvt Ltd & Phantom Films Pvt Ltd
https://www.cocomaru.net/queen
★2018年1月6日(土)シネマート新宿、ココロヲ・動かす・映画館◯ロードショー
posted by shiraishi at 16:46| Comment(0) | インド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月17日

バーフバリ 王の凱旋(原題:Baahubali 2: The Conclusion)

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監督・脚本:S・S・ラージャマウリ
原案:V・ビジャエーンドラ・プラサード
音楽:M・M・キーラバーニ
出演:プラバース(シヴドゥ/バーフバリ)、アヌシュカ・シェッティ(デーヴァセーナ)、ラーナー・ダッグバーティ(パラーラデーヴァ)、ラムヤ・クリシュナ(シヴァガミ)、ナーサルビッジャラ(デーヴァ)

はるか遠い昔、インドに栄えたマヒシュマティ王国。シヴドゥは自分が伝説の英雄アマレンドラ・バーフバリの息子であると知った。父の家臣だったカッタッパから父の辿った悲劇を聞く。
国母シヴァガミから王位継承の命を受けたバーフバリは、忠臣カッタッパと共に国の視察の旅に出る。クンタラ王国のデーヴァセーナ姫と出会って恋に落ちるが、彼を恨むパラーラデーヴァは2人を引き裂く策略を練っていた。パラーラデーヴァが王位につき、バーフバリと生まれたばかりの息子の命が狙われる。

今年4月に公開した『バーフバリ 伝説誕生』の続編。プラバースがバーフバリ父子を一人で演じているので、あれどっちの話だっけ?とわからなくなるのですが、周りの顔ぶれで判断してください(え?)。前編はほぼ息子バーフバリ、今回の後篇は時を遡り父バーフバリの話が半分以上で、全てを知った息子バーフバリが父の復讐にたちあがる熱い熱いストーリーです。
装備なしでも動きも力もハリウッド映画の超人なみのバーフバリ、普通死んでますって!という場面が何度あったことか。流れるような超絶アクション、奇想天外な武器や戦車、ここぞというときのスローモーションに、キメポーズ。過剰に見える演出もインド映画ならでは。数を頼んだ陣形の戦闘シーンは中国映画にも似ていますが、とにかく主人公は雨あられと降る矢にもあたりません。今回も女優さんが強くて逞しくて美しい!(白)


おさらい 
本作予告編
2017年/インド/カラー/シネスコ/141分
配給:ツイン
(C)ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.
http://baahubali-movie.com/
★2017年12月29日(金)新宿ピカデリー、丸の内TOEIほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 11:39| Comment(0) | インド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする