2018年12月23日
それだけが、僕の世界 英題:Keys to the Heart
監督/脚本:チェ・ソンヒョン
出演: イ・ビョンホン、パク・ジョンミン、ユン・ヨジョン、ハン・ジミン
かつては東洋チャンピオンだった元プロボクサーのジョハ(イ・ビョンホン)。40歳を過ぎた今、チラシ配りのバイトをしながらネットカフェで寝泊りする日々。そんなある日、17年前、家を飛び出して以来、会ってなかった母親(ユン・ヨジョン)と再会。一緒に暮らそうと言われる。家には、存在を知らなかった弟ジンテ(パク・ジョンミン)がいた。サヴァン症候群のジンテは、日常生活で介助が必要だが、純粋で、何を言っても「は〜い」と無邪気だ。そんな弟に苛立ちながらも、母との3人暮らしに慣れてきた頃、母から1ヶ月仕事で釜山に行くので弟の世話をよろしく頼むと言われる。さらに、近々開催されるピアノコンクールに、ジンテを出場させてほしいと懇願される。実は、ジンテは一度音を聴いただけで、ピアノ演奏できる天才的な音感を持っていることに母は気づいていたのだ。ジョハは、ジンテが憧れるピアニストのハン・ガユル(ハン・ジミン)に手助けを求める。ジョハは因縁があって彼女と知り合いだったのだ。
いよいよ、コンクールの日を迎える・・・
ぶっきらぼうで、すさんだ生活をしながらも、過去の栄光をどこか片隅に捨てきれずにいるジョハを体現したイ・ビョンホンに唸りました。ほんとに、その辺にいそうな兄ちゃん。ハリウッドで華々しく活躍する姿よりも、ぐっと親近感が持てます。弟役パク・ジョンミンも、サヴァン症候群の方たちのことを徹底的に調べ、ピアノも猛特訓して自身で弾くという渾身の演技。『空と風と星の詩人〜尹東柱(ユン・ドンジュ)の生涯〜』での、独立運動家のソン・モンギュと同じ役者とは!
そして、息子の将来を案じる母親役のユン・ヨジョン、心に傷を抱えたピアニスト役のハン・ジミンと、まさに演技派の役者が勢ぞろい。それが、監督第一作のチェ・ソンヒョンからのオファーに、脚本を読んで即決したというからすごいです。チェ・ソンヒョンの代表的な脚本作としては、『王の涙、イ・サンの決断』(2014年)があります。
『国際市場で逢いましょう』のユン・ジェギュン監督が、脚本に惚れこんで製作総指揮を引き受けたのも、名優たちのキャスティングに繋がったようです。
なんらかの障がいのある人を支えるのは、大変なこと。家族だからという義務感以上の愛と絆が大事だということを感じさせられた物語です。(咲)
別々に生きてきた兄弟が出会う。育ちや状況の違いから互いに戸惑うが、次第に大切な存在として強い絆で結ばれていく。
兄を演じるのはイ・ビョンホン。散切り頭にジャージを着て、スターのオーラを封印。弟相手に本気でテレビゲームに挑んで負けて悔しがる。家族で外食したときにお店の人に撮ってもらった家族写真のひょうきんぶりには絶句。こんな身近な存在のイ・ビョンホンは見たことない!
少しずつ兄らしくなっていくジョハだったが、ジンテと一緒にいるとトラブルは起こる。母にとって障害を持つジンテはどんなことがあっても守るべき存在ゆえ、ジョハに対してきつい言葉を投げかけてしまう。そのときのジョハの表情がなんと悲しげなことか。コミカルな演技から深い感情表現まで演じ切るイ・ビョンホンをたっぷり堪能したい。(堀)
2018年/韓国/120分/カラー/シネスコ/5.1chデジタル
配給:ツイン
http://sorebokumovie.com/
★2018年12月28日(金) TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
いつか家族に(英題:Chronicle of a Blood Merchant)
監督:ハ・ジョンウ
原作「血を売る男」余華(河出書房新社)
出演:ハ・ジョンウ、ハ・ジウォン、チョ・ジヌン、ユン・ウネ
1953年、朝鮮戦争終戦直後。現場仕事で生計を立てるサムグァン(ハ・ジョンウ)は、ポップコーン売りの美しい女性オンナン(ハ・ジウォン)に一目ぼれ。オンナンには羽振りのいい恋人がいると知りながら、猛アタックして結婚。3人の息子に恵まれて幸せいっぱいのはずだったが、長男は元カレの子と判明。家族の絆が解けてしまう。そんなとき、長男が脳炎にかかる。
血が繋がっていないとわかった途端、息子に冷たく当たるサムグァン。コミカルに見えるくらい、いい父親全開だった前半との対比が半端ない。付き合っている男性がいることを知りつつ、結婚したのだから覚悟すべき。子どもに罪はない。男としての器の小ささを突きつける。
そんなサムグァンが息子の病を知り、父親としての意識を取り戻す。命懸けで息子を助けようとする姿は気迫に満ちていた。
コミカルからシリアスまで振り幅のあるサムグァンを『1987、ある闘いの真実』のハ・ジョンウが見事に演じきる。妻は『マンハント』のハ・ジウォン(堀)
2015/韓国/韓国語/124分
配給:ファインフィルムズ
(C) 2015 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & DHUTA. All Rights Reserved
http://www.finefilms.co.jp/kazoku/
★12月22日(土)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋他にてロードショー
2018年12月09日
ときめき プリンセス婚活記(原題:The Princess and the Matchmaker)
監督:ホン・チャンピョ
脚本:イ・ソミ
撮影:イ・ヒョンドク
音楽:キム・ドンキ
出演:イ・スンギ、シム・ウンギョン、ヨン・ウジン、カン・ミンヒョク(CNBLUE)、チェ・ウシク、ミンホ(SHINee)他
英祖 29年(1753年)、王(キム・サンギョン)は深刻な大干ばつから民を救うために、あらゆる策を尽くしていた。だが雨は一向に降らない。困り果てた王は占術に頼り、陰陽の均衡の崩れを元通りにするため、婚期を迎えた娘・ソンファ姫(シム・ウンギョン)と、最高の相性を持つ男性を婿として迎え入れ、婚礼を執り行うことを決断する。姫に相応しい婿を見つけるため、朝鮮最高の監察官(占い師)ソ・ドユン(イ・スンギ)を抜擢。一大婚活プロジェクトが始動した。国中から選りすぐりの花婿候補が集い、占いによって最終的に4人に絞られる。しかしソンファは見ず知らずの男性と結婚する事はできないと、4人の素顔を知るべく、宮中を抜け出して町へ出るのだが、ソ・ドユンに見つかり…
結婚する前に相手の顔を見てみたい。主人公ソンファ姫の気持ちはよくわかる。しかし、文字通り、お姫様育ちで世間を知らないソンファ姫が臆することなく出掛けていくので、見ている方はハラハラが止まらない。そんな姫のピンチに遭遇するのが監察官のソ・ドユン。姫の身分を知らずに助け、2人が反発しあいながらも気になってしまうのは、ラブコメ、お決まりの展開である。『怪しい彼女』『サニー 永遠の仲間たち』で人気を博したシム・ウンギョンがはつらつとした明るさでソンファ姫を好演。イ・スンギも朝鮮最高の占い師を知的に演じた上に、アクションまで披露する。年末の忙しさに疲れたときに、頭を空っぽにして楽しめる作品に仕上がった。(堀)
2018年/韓国/シネスコ/110分
配給:ツイン
(C) 2018 CJ E&M CORPORATION, JUPITER FILM, ALL RIGHTS RESERVED
http://tokipuri.jp/
★2018年12月8日(土)シネマート新宿他にて全国順次ロードショー
2018年12月02日
共犯者たち(英題:Criminal Conspiracy)
監督:チェ・スンホ
脚本:チョン・ジェホン
撮影:チェ・ヒョンソク
製作:ニュース打破
2008年、〈米国産牛肉BSE問題〉などの報道により国民の支持を失いかけた李明博政権は、メディアへの露骨な政治介入を始める。狙われたのは公共放送局KBSと公営放送局MBC。政権に批判的な経営陣が排除され、調査報道チームは解散、記者たちは非制作部門へと追われた。両局の労働組合はストライキで対抗するが、政権が送り込んだ新しい経営陣は解雇や懲戒を濫発。その結果、政府発表を報じるだけの「広報機関」となった放送局は、〈セウォル号惨事〉で「全員救助」の大誤報を流し、〈崔順実(チェ・スンシル)ゲート事件〉の隠蔽に加担することになった……。
しかし、それでも諦めないジャーナリストたちがいた。局内に残った記者たちは、さらに激しいストライキに突入。いっぽう、不当解雇されたチェ・スンホ監督たちは、市民の支援で立ち上げた独立メディア「ニュース打破」で調査報道を継続。言論弾圧の「主犯」である大統領と、権力に迎合して韓国の報道を骨抜きにした放送業界内の「共犯者たち」をカメラの前に立たせ、その実態と構造とを明らかにしていく。
テレビ局への露骨な介入がこれでもかと描かれる。狙われたのは受信料収入で運営される公共放送KBSと、政府が出資して民間が運営する半官半民の公営放送MBC。政権から送り込まれた経営陣によって不当解雇や配置転換が繰り返される。言論弾圧が現実にあったのだと思い知らされた。政権寄りの報道で市民の支持は失われ、局内に閉塞感が漂う。お昼休みに局内の廊下で「社長退陣!」と叫び自撮りでネット配信するプロデューサーは、妻に「変人扱いされて辞めさせられたらそれで終わり」と諭される。笑っているうちに、切なくて泣けてきた。監督のチェ・スンホがMBCの元社長に突撃取材で迫る。元社長が質問に答えず、「MBCは民営化しなくてはいけない」と繰り返したのが印象的。権力と放送メディアの距離感、放送労働者の連帯、市民からの支持・信頼…。隣国の出来事として片付けられないことばかりである。(堀)
2017年/韓国/カラー/DCP/105分
配給:東風
(C) KCIJ Newstapa
http://www.kyohanspy.com/
★2018年12月1日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開
2018年10月13日
ファイティン! 原題:챔피언/Champion
10月20日(土)よりシネマート新宿ほか全国ロードショー
監督:キム・ヨンワン
製作:ハン・ドンファン
脚本:キム・ヨンワン
撮影:ユ・ジソン
美術:イ・ハナ
音楽:ナム・デウォン
キャスト
マ・ドンソク:マーク
クォン・ユル:ジンギ
ハン・イェリ:スジン
チェ・スンフン:ジュニョン
オク・イェリン:ジュニ
生まれてすぐにアメリカに養子に出されたマーク(マ・ドンソク)。しかし引き取って育ててくれた親も亡くなり、ひとりぼっちでアメリカで生きてきた。アームレスリングのチャンピオンを目指していた孤独な男マークだが、八百長疑惑によりアメリカのアームレスリング界から追放されて、今はクラブの用心棒で生計を立てていた。マークを金づるにしようと目をつけた自称スポーツ・エージェントのジンギ(クォン・ユル)に反発しつつ、口車に乗せられ、韓国に戻って再びアームレスリングの世界に身を委ねて行くことにした。そしてジンギは、マークの実の母親の連絡先も調べていた。
この情報を知り、生みの母親が住む家に行くが、そこに住んでいたのは、知らなかった妹(スジン)とその子供達だった。子供たちと友達になり、妹とも不器用ながらも距離が近づいていったが、妹は借金を抱えているようだった。そんな中、アームレスリングの世界大会に向けて、韓国代表を選ぶ戦いが始まった。
マークを演じるのは、『新感染 ファイナル・エクスプレス』で注目され、『犯罪都市』で主演を演じ、本国韓国で個性的かつマッチョな風貌で人気上昇中のマ・ドンソク。彼が本格的アームレスリング映画の主演を演じた感動の腕相撲アクションドラマ+存在を知らなかった妹とその子供たちとの「絆」が、大きな感動を与えてくれる。ジンギ役は、『バトル・オーシャン 海上決戦』のクォン・ユル、スジンは『ハナ 奇跡の46日間』のハン・イェリが演じ、芸達者な子役(ジュニョン )は、多くのTVドラマに出演しているチェ・スンフン。 そんな出演者が描く物語。チャンピオンになることを夢見ているマーク。怪しげなスポーツエージェントのジンギ。そしてマークが新しく見つけた家族である妹スジンと子供たち。エネルギッシュなアームレスリングの場面と心温まるストーリーが合わさり、感動の物語が誕生した。
キム・ヨワン監督は「この映画は、マ・ドンソクがアームレスリングをしたら面白いだろうというシンプルなアイデアからスタートしました」と語り、さらに「脚本を執筆中に考えていたことは養子に出された人たちやシングルマザーのことです。社会からの厚い偏見に直面しなければならない人たちについてのストーリーを書くということはとても意義があるとことだと思っていました」と語り、様々な社会的地位に置かれている多様なキャラクターのいる映画を作ったそうです。
貧しさからアメリカに養子に出された韓国人のマーク。弟のような友人ジンギかマークの腕相撲の実力を見込んで韓国に呼ぶ。ジンギはエージェントを気取ってマークを怪しげな人物に売り込むが、相手はイカサマを強要。マークが従わず、トラブルに。
一方、マークはジンギから実の母の家を教えられ探しに出掛ける。そこには若い母と2人の子どもが住んでおり、おばあちゃんは亡くなったという。マークにとって妹と甥、姪。突然の家族に戸惑いながらも、家族との生活に楽しみを見出していく。そして、腕相撲大会での優勝を姪と約束する。
いくつかの腕相撲試合に出た後、全国大会にエントリー。マークは姪との約束を果たすことができるのか。
たかが腕相撲と思うのは間違い。テクニックを要し、世界大会も行われる競技である。ガタイのいい男たちが言葉通り手に汗握る熱い戦いを繰り広げる。思わず身を乗り出してしまった。エンタメ性ばっちり。
一方で、戸惑い、思いに反して傷つけてしまいながら、妹一家と家族となっていく様子に心がほっこり温かくなる。優勝を約束する姪との指切りは、姪の手の小ささが際立ち、可愛らしさに萌えてしまう。姪を演じたオク・イェリン、なかなかの役者だわ!(堀)
私がマ・ドンソクのことを認識したのは『新感染 ファイナル・エクスプレス』。それまでも彼の出演作品を観てはいたけど、あまり印象に残っていない。『新感染 ファイナル・エクスプレス』では心優しい力持ちという典型的な役だったけど、この『ファイティン!』でも「心優しい力持ち」の役だった。彼にはこういう役がよく似合う。さらにこの作品では、子供の頃アメリカに養子に出されて「親に捨てられた」と思い、心に傷を持つ役だった。この国際養子縁組を描いた作品は、これまでも『はちみつ色のユン』や『冬の小鳥』など心に残る作品があったが、『ファイティン!』もそれに加わった(暁)。
主人公マークは養子に出されて、アメリカ育ちという設定で、英語の発音がさすが本格的と思ったら、マ・ドンソクさんご自身、10代の頃に家族でアメリカに渡り、米国籍なのでした。コロンバス州立大学校 体育学科を出ていて、なるほど!と思ったら、なんと、デビューはミュージカル俳優として! 同時に、ボディービルダーとヘルストレーナーとして活動されていて、『ファイティン!』のマーク役は、まさにはまり役。これまで数多くの映画やドラマで、ちょっと笑いを誘う名脇役を務められてきましたが、堂々の主役。
本作で、私が楽しみにしていたのは、クォン・ユルさん。ドラマ「ゴハン行こうよ2」のいかにも坊ちゃん育ちのエリート公務員役を演じた時に、お〜私の好み♪とぞっこんに。今回は、調子のいいスポーツエージェントで、チンピラ風。
お金がなくて、マークが子どもたちを連れてトルチャンチ(満1歳誕生日のパーティ)にちゃっかり潜り込んでご馳走を食べる場面がありました。これもクォン・ユルさん演じたジンギの入れ知恵でした。
生後100日目だけでなく、満1歳を祝う習慣はますますエスカレートして、最近はホテルやレストランでのビュッフェ形式が多いのだそうです。これなら、ご近所さんという顔をして入れそう!
一方で、韓国では、本作の主人公のように、事情があってやむを得ず養子に出されるケースも多く聞きます。生まれた子どもの運命の明暗を感じさせてくれました。(咲)
公式HP http://fightin.ayapro.ne.jp/about.php
2018年/韓国/韓国語・英語/カラー/スコープサイズ/ステレオ/108分/
日本語字幕:根本理恵 映倫G
配給:彩プロ 宣伝:フリーマン・オフィス
監督:キム・ヨンワン
製作:ハン・ドンファン
脚本:キム・ヨンワン
撮影:ユ・ジソン
美術:イ・ハナ
音楽:ナム・デウォン
キャスト
マ・ドンソク:マーク
クォン・ユル:ジンギ
ハン・イェリ:スジン
チェ・スンフン:ジュニョン
オク・イェリン:ジュニ
生まれてすぐにアメリカに養子に出されたマーク(マ・ドンソク)。しかし引き取って育ててくれた親も亡くなり、ひとりぼっちでアメリカで生きてきた。アームレスリングのチャンピオンを目指していた孤独な男マークだが、八百長疑惑によりアメリカのアームレスリング界から追放されて、今はクラブの用心棒で生計を立てていた。マークを金づるにしようと目をつけた自称スポーツ・エージェントのジンギ(クォン・ユル)に反発しつつ、口車に乗せられ、韓国に戻って再びアームレスリングの世界に身を委ねて行くことにした。そしてジンギは、マークの実の母親の連絡先も調べていた。
この情報を知り、生みの母親が住む家に行くが、そこに住んでいたのは、知らなかった妹(スジン)とその子供達だった。子供たちと友達になり、妹とも不器用ながらも距離が近づいていったが、妹は借金を抱えているようだった。そんな中、アームレスリングの世界大会に向けて、韓国代表を選ぶ戦いが始まった。
マークを演じるのは、『新感染 ファイナル・エクスプレス』で注目され、『犯罪都市』で主演を演じ、本国韓国で個性的かつマッチョな風貌で人気上昇中のマ・ドンソク。彼が本格的アームレスリング映画の主演を演じた感動の腕相撲アクションドラマ+存在を知らなかった妹とその子供たちとの「絆」が、大きな感動を与えてくれる。ジンギ役は、『バトル・オーシャン 海上決戦』のクォン・ユル、スジンは『ハナ 奇跡の46日間』のハン・イェリが演じ、芸達者な子役(ジュニョン )は、多くのTVドラマに出演しているチェ・スンフン。 そんな出演者が描く物語。チャンピオンになることを夢見ているマーク。怪しげなスポーツエージェントのジンギ。そしてマークが新しく見つけた家族である妹スジンと子供たち。エネルギッシュなアームレスリングの場面と心温まるストーリーが合わさり、感動の物語が誕生した。
キム・ヨワン監督は「この映画は、マ・ドンソクがアームレスリングをしたら面白いだろうというシンプルなアイデアからスタートしました」と語り、さらに「脚本を執筆中に考えていたことは養子に出された人たちやシングルマザーのことです。社会からの厚い偏見に直面しなければならない人たちについてのストーリーを書くということはとても意義があるとことだと思っていました」と語り、様々な社会的地位に置かれている多様なキャラクターのいる映画を作ったそうです。
貧しさからアメリカに養子に出された韓国人のマーク。弟のような友人ジンギかマークの腕相撲の実力を見込んで韓国に呼ぶ。ジンギはエージェントを気取ってマークを怪しげな人物に売り込むが、相手はイカサマを強要。マークが従わず、トラブルに。
一方、マークはジンギから実の母の家を教えられ探しに出掛ける。そこには若い母と2人の子どもが住んでおり、おばあちゃんは亡くなったという。マークにとって妹と甥、姪。突然の家族に戸惑いながらも、家族との生活に楽しみを見出していく。そして、腕相撲大会での優勝を姪と約束する。
いくつかの腕相撲試合に出た後、全国大会にエントリー。マークは姪との約束を果たすことができるのか。
たかが腕相撲と思うのは間違い。テクニックを要し、世界大会も行われる競技である。ガタイのいい男たちが言葉通り手に汗握る熱い戦いを繰り広げる。思わず身を乗り出してしまった。エンタメ性ばっちり。
一方で、戸惑い、思いに反して傷つけてしまいながら、妹一家と家族となっていく様子に心がほっこり温かくなる。優勝を約束する姪との指切りは、姪の手の小ささが際立ち、可愛らしさに萌えてしまう。姪を演じたオク・イェリン、なかなかの役者だわ!(堀)
私がマ・ドンソクのことを認識したのは『新感染 ファイナル・エクスプレス』。それまでも彼の出演作品を観てはいたけど、あまり印象に残っていない。『新感染 ファイナル・エクスプレス』では心優しい力持ちという典型的な役だったけど、この『ファイティン!』でも「心優しい力持ち」の役だった。彼にはこういう役がよく似合う。さらにこの作品では、子供の頃アメリカに養子に出されて「親に捨てられた」と思い、心に傷を持つ役だった。この国際養子縁組を描いた作品は、これまでも『はちみつ色のユン』や『冬の小鳥』など心に残る作品があったが、『ファイティン!』もそれに加わった(暁)。
主人公マークは養子に出されて、アメリカ育ちという設定で、英語の発音がさすが本格的と思ったら、マ・ドンソクさんご自身、10代の頃に家族でアメリカに渡り、米国籍なのでした。コロンバス州立大学校 体育学科を出ていて、なるほど!と思ったら、なんと、デビューはミュージカル俳優として! 同時に、ボディービルダーとヘルストレーナーとして活動されていて、『ファイティン!』のマーク役は、まさにはまり役。これまで数多くの映画やドラマで、ちょっと笑いを誘う名脇役を務められてきましたが、堂々の主役。
本作で、私が楽しみにしていたのは、クォン・ユルさん。ドラマ「ゴハン行こうよ2」のいかにも坊ちゃん育ちのエリート公務員役を演じた時に、お〜私の好み♪とぞっこんに。今回は、調子のいいスポーツエージェントで、チンピラ風。
お金がなくて、マークが子どもたちを連れてトルチャンチ(満1歳誕生日のパーティ)にちゃっかり潜り込んでご馳走を食べる場面がありました。これもクォン・ユルさん演じたジンギの入れ知恵でした。
生後100日目だけでなく、満1歳を祝う習慣はますますエスカレートして、最近はホテルやレストランでのビュッフェ形式が多いのだそうです。これなら、ご近所さんという顔をして入れそう!
一方で、韓国では、本作の主人公のように、事情があってやむを得ず養子に出されるケースも多く聞きます。生まれた子どもの運命の明暗を感じさせてくれました。(咲)
公式HP http://fightin.ayapro.ne.jp/about.php
2018年/韓国/韓国語・英語/カラー/スコープサイズ/ステレオ/108分/
日本語字幕:根本理恵 映倫G
配給:彩プロ 宣伝:フリーマン・オフィス