2017年05月21日

マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白 英題:MRS. B, A NORTH KOREAN WOMAN

madam b.jpg

監督:ユン・ジェホ
撮影:ユン・ジェホ、タワン・アルン
プロデューサー:ギョーム・デ・ラ・ブライユ、チャ・ジェクン
音楽:マシュー・レグノー
編集:ナディア・ベン・ラキド、ポーリーン・カサリス、ソフィ・プロー、ジャン=マリー・ランジェル

マダム・ベーは、北朝鮮の中国国境近くで暮らしていたが、10年前、家族のため1年間だけの出稼ぎのつもりで中国にわたる。だが、気がついた時には、騙されて、中国の貧しい農村に嫁として売り飛ばされていた。最初は中国の夫と義父母との生活を受け入れられないでいたが、そこで生き抜くために脱北ブローカーとなる。中国の夫と生きて行く決意をした彼女だが、北朝鮮に残してきた息子たちの将来を案じて、息子と共に北朝鮮の夫も脱北させる。やがて、北朝鮮の夫や息子たちと国境を越えタイ経由で韓国に行く。韓国のパスポートが取れれば、正式に中国の夫と結婚できると信じて・・・

衝撃の予告編は、こちらで! 

とにかく、マダム・ベーのパワフルな姿に引き込まれます。監督は、脱北を背景にした家族の物語を撮ろうと思って、中国に住む脱北者を取材する中で、マダム・ベーと知り合い、やがて彼女から自分のドキュメンタリーを撮らないかと提案されたそうです。
韓国で暮らすうちに、どんどん綺麗になっていくマダム・ベー。監督にうかがったところ、今は、どちらの家族とも暮らさず、独立されているとのこと。たくましく一人でお店を切り盛りしている姿が目に浮かぶようです。
体制に翻弄されて、引き裂かれてしまった大事な人との関係。いつか、幸せな日を迎えてほしいものです。(咲)


●PICT0195補正 (1).jpg
ユン・ジェホ監督インタビューは、特別記事で!


カンヌ国際映画祭ACID部門正式出品
2016年モスクワ国際映画祭、チューリッヒ国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー映画賞受賞

配給:33 BLOCKS 
2016年/韓国・フランス/72分/DCP/ドキュメンタリー
(C)Zorba Production, Su:m
公式サイト:http://www.mrsb-movie.com
★2017年6月10日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
posted by sakiko at 15:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月20日

あの日、兄貴が灯した光

anohi aniki.jpg

監督:クォン・スギョン(『裸足のギボン』)
出演:チョ・ジョンソク(『建築学概論』)、D.O.(EXO)、パク・シネ(『7番房の奇跡』)

詐欺前科10犯で服役中のコ・ドゥシク(チョ・ジョンソク)は、弟のコ・ドゥヨン(D.O.)が、柔道の試合中に不慮の事故で失明したことを知る。国家代表選手として活躍していたドォヨンにとって、それは将来を絶たれる出来事だった。目が不自由になって一人暮らしが難しい弟の世話をするという理由で、まんまと仮釈放のチャンスを手に入れるドゥシク。
一方、ドゥヨンのコーチだったスヒョン(パク・シネ)は、パラリンピックの選手として、なんとかドゥヨンを柔道の世界に復帰させたいと、オリンピックコーチの座を捨てて、ドゥヨンのもとに来る・・・

兄弟といっても、兄は15年前に家出していて、しかも異母兄弟。物語が進むにつれて、なぜ家を出たのかの秘密が明かされていきます。
好青年の印象が強いチョ・ジョンソクが、本作では、ちょっとずる賢い詐欺師にちゃんと見えます。兄弟が、少しずつ心を通わせていく姿に、ほろり。チョ・ジョンソク、やっぱり好青年! (咲)


2016/韓国/110分/シネスコ/カラー/5.chデジタル
配給:CJ Entertainment Japan
公式サイト:http://aniki-themovie.jp/
★2017年5月19日(金)TOHOシネマズ 新宿ほか全国順次ロードショー
posted by sakiko at 20:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月07日

トンネル 闇に鎖(とざ)された男    英題:TUNNEL

tuunel.jpg

監督:キム・ソンフン
出演:ハ・ジョンウ、ペ・ドゥナ、オ・ダルス、チョン・ソギョン、パク・ヒョックォン

「6時前に帰る。ケーキは買った」と妻セヒョンに電話し、娘の誕生日で家路を急ぐジョンス。開通して1ヶ月の長いトンネルに車がさしかかる。真ん中を過ぎたあたりで、突然轟音が響き、トンネルが崩落し、瞬く間に暗闇の世界に閉じ込められる。ラジオのニュースがトンネル事故を伝える。頼りはバッテリー残量78%の携帯電話。妻に電話し、状況を伝える。やがて、救助隊長キム・テギョンから連絡が入る。崩落の惨状から、救助にはかなりの時間を要することを知るジョンス。はたして無事生還し、妻や娘に会えるのか・・・

冒頭、ガソリンスタンドで、3万ウォン分と言ったのを、年老いた店員が満タンと聞き間違え、お詫びに水のボトルを2本受け取る。この水と娘のための誕生日ケーキが命綱になることを予測させる見事な導入部分。
突然トンネルが崩壊し、コンクリートの塊に囲まれ、絶望の淵に立つ男を体現したハ・ジョンウ。
切実な思いで夫の救出を祈りながらも、救助隊や世間に気を使う妻を演じたペ・ドゥナ。
閉じ込められたジョンスに励ましの声をかけ、救助作業中止命令が出ても決して諦めない救助隊長を演じた名脇役オ・ダルス。もう、脇役ともいえない見事な救助隊長ぶり。
トンネルの中の様子を探るためドローンが飛ばされる時、報道陣のドローンも一斉に飛ばされます。災害時の報道のあり方についても考えさせられる場面。
自分もトンネルに閉じ込められたような息苦しさも感じながらの2時間強。3人の名優たちが演じた等身大の登場人物に寄り添った時間でもありました。ふぅ〜 (咲)


2016年/韓国/カラー/シネマスコープ/127分
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト:http://tunnel-movie.net
★2017年5月13日(土)より シネマート新宿、シネマート心斎橋他にて順次ロードショー
posted by sakiko at 15:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月03日

汚れたミルク/あるセールスマンの告発  原題:Tigers

yogoreta milk.jpg

監督 ダニス・タノヴィッチ
脚本 ダニス・タノヴィッチ、アンディ・パターソン
撮影 エロル・ズブツェヴィッチ
編集 プレールナー・サイガル
音楽 プリータム
出演 イムラン・ハシュミ、ギータンジャリ、ダニー・ヒューストン、カーリド・アブダッラー、アディル・フセイン

大手グローバル企業を告発した男の実話に基づく物語。
パキスタンの国産製薬会社の営業マンだったアヤン。1994年、多国籍企業の台頭で国産の薬が売れなくなり、経験を活かし多国籍企業に転職する。「結果を残せ」と賄賂用のお金も渡され、粉ミルクを販売するトップセールスマンとなる。
1997年、親しい医師より、粉ミルク育ちの赤ちゃんの多くが汚い水で薄めたことが原因で死亡していると聞かされる。カラチのスラムで実態を見て、医師の言葉を理解したアヤン。上司は、「政府が水道を整備しないから」という。知っていて販売させていたのかと、アヤンは会社を辞め、多国籍企業を相手に闘う日々が始まる・・・

ダニス・タノヴィッチ監督がこの告訴のことを聞いたのは、2006年。すぐにパキスタンに飛び、事実関係を調べる。いまだに貧困層の母親たちが安全とはいえない粉ミルクを買うよう促されている実態を知り、映画化を決意する。
映画の冒頭、製作側とアヤンが、映画化は、お互いにリスクがあることをスカイプで顔を見ながら確認する場面がある。まさに監督にとっても、この題材は大きなリスク。『めぐり逢わせのお弁当』製作チームとタッグを組み、インドで撮影していて、印パ紛争が起こるのではと心配にもなります。
特定できる大企業を扱っている為、2014年に完成したものの、上映がなかなか叶わず、今回の日本公開が世界初公開だそうです。(ほんとうの社名が一瞬出るのをお見逃しなく!)

アヤンのモデルであるセイッド・アミール・ラザは、身の危険を感じて祖国パキスタンを離れ、7年間、家族にも会えず、親を看取ることもできなかったとのこと。映画の中で、彼のお父さんは「領収書のオリジナルは必ず保管しておくこと」とか「告訴状は、一カ所のポストじゃなくて、別のポストから届けなさい」など、とても知恵者。そのお父様を看取れなかったのですね。現在は、家族とも再会。カナダのトロントでタクシー運転手をしながら家族と暮らしているそうです。覚悟して声をあげた勇気を褒め称えたい。政府の規制が何よりの解決策という思いで映画化した監督にも拍手を送りたい。

もう30年程前に、トルコの旅の帰りにカラチで赤痢を拾ったことがあるのを思い出しました。数年後、シリアからカラチ経由で帰る時には、トランジットホテルでの食事は避けて、駐在員の方のご自宅でお世話になりました。その時に、水が悪いので歯を磨いて口をゆすぐのも湯冷ましを使っていると聞かされました。歯ブラシを洗うのも、もちろん蛇口の水は駄目。
それでも庶民がちゃんと生きているのは、長年住むうちに免疫ができるから。生まれたばかりの赤ちゃんは一発でやられてしまうようです。母乳で育てれば問題ないとのこと。売らんかなの企業精神が庶民を犠牲にした功罪はほんとに大きい。でも、それは衛生状態の良し悪しに関係なく、私たちも知らないうちに身体に悪いものを口にさせられているのではないでしょうか。(咲)


☆『ノーマンズランド』で監督デビューしたボスニア・ヘルツェゴビナ出身のダニス・タノヴィッチ監督。最新作『サラエヴォの銃声』(2017年)が本作に引き続き3月25日(土)より新宿シネマカリテで公開される。

配給 ビターズ・エンド
2014年/インド=フランス=イギリス//94分/シネマスコープ
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/tanovic/
★2017年3月4日(土) 新宿シネマカリテにてロードショー
posted by sakiko at 22:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月26日

アシュラ   原題:阿修羅

ashura.jpg

監督/脚本:キム・ソンス
主演:チョン・ウソン、ファン・ジョンミン、チュ・ジフン、クァク・ドウォン、チョン・マンシク

悪の渦巻くアンナム市。刑事ハン・ドギョン(チョン・ウソン)は、街の利権を牛耳る市長パク・ソンベ(ファン・ジョンミン)のために裏の仕事を引き受け手間賃を貰っている。難病の妻の治療費を稼ぐために始めたことだったが、今や、市長の犬に成り下がっていた。
一方、悪徳市長の逮捕に燃える検事キム・チャイン(クァク・ドウォン)がドギョンを脅し、市長の不正の証拠を掴もうと必死だった。ドギョンは警察を辞めて市長のもとで働く予定だったが、検察ににらまれた状態では辞めることもできず、自分を兄と慕う後輩刑事ムン・ソンモ(チュ・ジフン)を説き伏せて、市長のもとに送り込む・・・

冒頭、「人間が嫌いだ」というチョン・ウソンの声が聴こえたときから、ぞくぞく。
今回のチョン・ウソンは、もう、ぼろぼろ。悪徳市長には尻尾を振り、可愛がっていた後輩には裏切られ、これでもかというくらい、みじめな姿を見せつけてくれます。でも、やっぱりウソンさまはウソンさま! また一段と、役者魂を感じさせてくれました。
キム・ソンス監督といえば、『ビート』(1997)や『太陽はない』(1998)で、チョン・ウソンをスターダムに押し上げた監督。また違った魅力を引き出してくれました。
そして、悪徳市長役として、ほんとに嫌な奴を演じきったファン・ジョンミン! いい人も悪い人も、どっちも地?と思わせてくれる名優ですね。可愛いお尻も見せてくれます。(見たくないって?!)
チュ・ジフンも、先輩を裏切る調子のいい奴を演じきってます。
あ〜、凄かったけどキツイ映画でした。(咲)


2016年/韓国/133分/韓国語/原題:아수라
配給:CJ Entertainment Japan
公式サイト:http://asura-themovie.jp
★2017年3月4日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー 
posted by sakiko at 19:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする