2018年11月04日

十年 Ten Years Japan

10nen.jpg


『PLAN75』
監督・脚本:早川千絵
出演:川口覚、山田キヌヲ、牧口元美、美谷和枝

PLAN75とは、75歳以上の高齢者に安楽死を奨励することをうたった国の制度。公務員の伊丹は貧しい老人たちに勧誘を行っていた。

『いたずら同盟』
監督・脚本:木下雄介
出演:國村隼、川星哉、辻村羽来、中野龍 

IT特区の小学生たちはAIにより理想的な道徳を刷り込まれている。用務員の重田が日々世話をしている老馬に殺処分の決定が下った。クラスのはみ出しっ子たちが動き出す。

『DATA』
監督・脚本:津野愛
出演:杉咲花、田中哲司、前田旺志郎、三浦誠己
舞花の母が亡くなり、データが入った「デジタル遺産」を手に入れた。懐かしい母の映像を喜ぶ舞花だったが、知らなかった一面も見ることになってしまった。

『その空気は見えない』
監督・脚本:藤村明世
出演:池脇千鶴 三田りりや 田畑志真
地上は原発により大気が汚染され、人々は地下での暮らしを余儀なくされていた。
見たことのない世界に憧れを抱く少女ミズキは、母に禁じられるたびに上に行きたい気持ちが募ってくる。

『美しい国』
監督・脚本:石川慶
出演:太賀、木野花
自衛隊徴兵制が導入された日本。広告代理店に勤める渡邊は告知キャンペーンの担当になった。同僚がけむたがるベテランデザイナーの天達のもとへ報告に訪れる。

香港で2015年に製作された短編オムニバス作品『十年』(日本公開2017年)は、インデペンデント映画にも関わらず大ヒット。2016年の香港電影金像奨で最優秀作品賞を受賞しました。これを期にアジア地域および国際社会の相互理解のためにプロジェクトが2016年に始動、日本、タイ、台湾でそれぞれの十年後を見据えて新鋭監督たちが描きました。日本で製作されたこの5本の総合監修を是枝裕和監督がつとめています。日本版、タイ版はTIFF2018で上映されたばかり。

「十年後」は自分はいないかもしれないなぁと観ていました。身につまされたのは『PLAN75』
高齢者が医療費を圧迫している、と言われ続けていると「生きていてすみません」と刷り込まれそうになります。その前にムダな薬を山のように出すのをやめたらどうでしょう?>病院関係者&製薬会社さま
「PLAN75」制度は結果を要求され、良策であることを証明しなければなりません。当然金と力のある人はいろいろと逃れる術があるだろうから、身寄りのない(クレームをつけられない)老人たちをまずターゲットにするはず。未来版姥捨て山。
『いたずら同盟』『DATA』はありそうと思えます。ITの進化のスピードが越えてしまうかもしれません。予想があたってほしくないのは『その空気は見えない』、『美しい国』。じわじわと背後に近づいていて、気づいたときにはもう遅い・・・パターンは勘弁。みんな言い訳はやめて、せめて選挙に行って流れを変えて頂戴。

「まえだまえだ」の弟・前田旺志郎くんが『DATA』ではすっかり青年になっていて見違えました。『奇跡』(2011)の印象が強くて『海街diary』の風太くんだったのに、今調べて気づきました。あっというまに大きくなるんですね。『美しい国』の太賀さん、木野花さんは『母さんがどんなに僕を嫌いでも』のタイジくんとばあちゃんではありませんか。
こちらでも誠実さがにじみ出ています。(白)


新鋭監督5人が10年後の日本を描いたオムニバス形式の作品。高齢化、AI社会、死後のデジタルデータの管理、大気汚染、徴兵制について取り上げる。

「PLAN75」
75歳以上に安楽死を勧める制度を勧誘する公務員の葛藤はいかばかりか。政府のPR映像はつい本気で見てしまうほど出来栄え。すっかり引き込まれた。

「いたずら同盟」
AIによって管理された小学校が舞台。孫悟空の頭のリング的なものをつけ、非道徳的な行動を取ると頭痛が起こさせる。しかし、誰にとって道徳的であることを求めているのか。管理社会の怖さを見せつけられた。

「DATA」
亡くなった母親が残したデジタルデータを父親に内緒に再現した女子高生が母の不徳に悩む。しかし、SNSなどに残るものは前後やその時の状況を知らないと間違って解釈してしまうこともある。母の不徳の真偽はわからない。5作品の中でいちばんあり得る未来だろう。いや、すでに起きているかもしれない。自分のデータについては考えておかなければ。

「その空気は見えない」
母親の池脇千津はお母さん役がすっかり板についた感。

「美しい国」
戦争を体験した人が少なくなり、平和な日々に戦争の怖さがわからなくなっている。主人公もキャンペーンに関わりつつ、徴兵制は他人事。それをリアルに感じさせたラストに見ている者も背筋がヒヤリとするだろう。
『母さんがどんなに僕を嫌いでも』の太賀と木野花が出演。木野花はあちらの作品では町工場のおばちゃんだが、こちらでは知的なデザイナー。役が違うと全く別人に見える。(堀)


2018/日本/カラー/ビスタ&シネスコサイズ/99
配給:フリーストーン
(C)2018 “Ten Years Japan” Film Partners
http://tenyearsjapan.com/
★2018年11月3日(土)ロードショー
posted by shiraishi at 15:13| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

スマホを落としただけなのに

smafo.jpg

監督:中田秀夫
原作:志駕晃『スマホを落としただけなのに」(宝島社文庫)
主題歌:ポルカドットスティングレイ「ヒミツ」(UNIVERSAL SIGMA)
出演:北川景子、千葉雄大 、バカリズム、要潤、高橋メアリージュン、酒井健太、筧美和子、原田泰造、成田凌、田中圭

彼氏の富田(田中圭)に電話をかけた麻美(北川景子)は、スマホから聞こえてくる聞き覚えのない男の声に言葉を失った。たまたま落ちていたスマホを拾ったという男から、富田のスマホが無事に戻ってきて安堵した麻美だったが、その日を境に不可解な出来事が起こるようになる。
身に覚えのないクレジットカードの請求や、SNSで繋がっているだけの男からのネットストーキング。落としたスマホから個人情報が流出したのか?
ネットセキュリティ会社に勤める浦野(成田凌)に、スマホの安全対策を設定してもらい安心していた麻美だったが、その晩、何者かにアカウントを乗っ取られ、誰にも見られたくなかった写真がSNSにアップされてしまう。「違う! それ私じゃない! 私、何もやってない!」時を同じくして、人里離れた山の中で次々と若い女性の遺体が見つかり、事件を担当する刑事・加賀谷(千葉雄大)は、犯人が長い黒髪の女性ばかりを狙っていたことに気が付く。
スマホを拾ったのは誰だったのか。連続殺人事件の真犯人はいったい誰なのか。そして明らかになる“奪われた麻美の秘密”とは?
ただ、スマホを落としただけなのに……。

彼がスマホを落としたことで個人情報が漏洩。SNSが乗っ取られ、情報操作により人間関係が壊されるだけでなく、過去の秘密まで握られてしまった主人公の恐怖を描く。
恋人にプロポーズされ、幸せいっぱいの笑顔。同性さえ虜にする、北川景子の美しさを存分に味わうことができる。しかし、それ以上に北川景子らしさが発揮されたのが、犯人をキッと睨みつける顔。犯人がストーカーしたくなった気持ちが理解できてしまいそう。
その犯人を演じた役者もいい人の顔と狂気を解き放った顔を見事に演じ分けた。
便利な生活にはリスクが伴う。2時間かけてたっぷり教えられた。しかし、リスクを描くくだけでなく、正しい対処法を挟み込んでくれればさらにいいのにと思う。(堀)


2018年/日本/カラー/116分
配給:東宝
(C) 2018映画「スマホを落としただけなのに」製作委員会 http://sumaho-otoshita.jp/
★2018年11月2日(金)全国東宝系にてロードショー
posted by shiraishi at 11:22| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ビブリア古書堂の事件手帖

bibria.jpg

監督:三島有紀子
原作:三上延「ビブリア古書堂の事件手帖」(メディアワークス文庫/KADOKAWA 刊)
脚本:渡部亮平、松井香奈
出演:黒木華、野村周平、成田凌、夏帆

亡くなった祖母が遺した古い夏目漱石全集。青年・五浦大輔(野村周平)は祖母が買ったと思われる古書店にその本を持ち込む。洞察力と推理力の優れた女店主・篠川栞子(黒木華)は祖母の秘めた恋に気がつく。これをきっかけに青年は古書店でアルバイトを始めた。そして女店主が大事にしている太宰治「晩年」初版本を巡り、不審なことが起こり始める。それは青年にも関わりのあることだった。

本人も気がつかない、栞子に対する仄かな思い。ライバルの登場でやっと気がつき、自分なりのやり方で栞子を理解しようとする。恋に不器用な大輔に野村周平本人の誠実さが滲み出るよう。同業者の稲垣は栞子の前で知的に振る舞い、大輔に嫉妬心を抱かせるが、忍び寄るように狂気に蝕まれていく。妖しげな色気で成田凌にははまり役。
一方、大輔の祖母、絹子の若き日の秘めた愛を描く過去パートは原作に描かれていないエピソードが盛り込まれ、絹子を演じた夏帆の清純な愛らしさに切なさが増す。恋の行方をしっかり見届けたい。(堀)


神保町でアルバイトをしていたとき、よく古書店をのぞきました。今は何でもネットで済ませられますが、棚の間を歩き、目についた本を手にとる楽しみはかけがえのないものです。黒木華さん演じる栞子の佇まいがいいです。三島監督の『繕い裁つ人』の市江にも通じるものがありました。絶滅危惧種な女子だと思われますが、あの古書堂に行きたくなります。
本を通したやりとりは秘めやかで、ロマンチック。けれど、帰り道で頭に浮かぶのは「カツ丼食べたい」でした(映画に出てくる)。
本が詰まった棚の重さは相当なもののはず、下敷きになったらてっきり大怪我と思ったのに不死身(笑)。そして本の大敵は水と火だけれど、水に投じられたあの本が気になります。
三上延著の原作はシリーズ7巻の後、「ビブリア古書堂の事件手帖 〜扉子と不思議な客人たち〜」が今年9月に発売されました。これから読むと、黒木華さんと野村周平くんの姿で動き出すはず。(白)


2018年/日本/カラー/121分
配給:20世紀フォックス映画、KADOKAWA
(C) 2018「ビブリア古書堂の事件手帖」製作委員会 https://biblia-movie.jp/
★2018年11月1日(木) 全国ロードショー
posted by shiraishi at 11:19| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月03日

ぼけますから、よろしくお願いします。

bokemasu.jpg

監督・撮影:信友直子
プロデューサー:大島新、濱潤
出演:
テレビディレクターの信友直子さんは広島県呉市で生まれ育ったが、18歳で大学進学のために上京して以来ずっと東京在住だ。ひとり仕事に打ち込む娘を呉の両親は見守り続けてきた。45歳で乳がんの手術をした信友監督は、母親の助けにより病気を克服する。実家に帰るたび年取ってきた両親の記録を残しておこうとカメラを向けたことから、少しずつ変化していく母のようすに気づくことになった。母は認知症とわかり、仕事をやめて実家に帰ろうか悩む信友監督に、父は「介護はわしがする」と宣言する。

題名はお母さんが監督にぽつりと言ったひとこと。聡明でしっかり者だったお母さんが自分の変化に気づいたとき、どれだけショックだったろうと胸がつまります。老化の物忘れでなく、脳の病変により神経細胞が欠落するのがアルツハイマー型認知症。だんだん進行し、日常生活にも支障をきたします。家に帰る道や料理の順番がわからなくなるのは、想像するだけでも辛い。それまでお母さんに任せきりだった家事を、意を決したお父さんが担当。慣れない家事を引き受けたお父さんが、ある日疲れがたまったのか声を荒げる場面がありました。それはためないで、小出しにするのがいいですよ、と声をかけたくなりました。介護担当の人も自分の楽しみを見つけて、元気を充電しないと両方が不幸せになってしまいます。
子どもが成長するのと逆で、衰えていく親の介護は先が見えません。終わるのは亡くなるときです。だから介護はたくさんの手で支えることが肝心です。疲れたときに休みをとれるように、お役所の力も遠慮せずに使って、たくさんの人に応援を頼んで甘えてください。
監督のご両親に向ける目はやさしくて、それまでたくさん愛されて育ったんだとわかります。誰もが迎える老いの日々、幕を閉じるその日まで穏やかにすごせますように。(白)


「2週間前と同じ服を着ている」。娘が気付いた母の異変。指摘された母は洗濯機に溜め込まれていた汚れ物をぶちまけ、その中にうずくまったまま眠り込んでしまう。台所と洗濯機は母の領分で、たとえ娘であっても侵食してくることは我慢できない。しかし、認知症の母にはどうしたらいいのか分からないのだ。衝撃的だった。何年か先の自分の姿かもしれないと不安に駆られる。とても他人事には思えない話である。母の認知症は加速度つけて進み、ヘルパーの助けを受けるように。思うように動かない体に苛立つ母だが、ヘルパーはそれを父に構ってほしい気持ちの表れだという。強い絆ゆえの甘えにちょっぴりうらやましくなった。(堀)

2018年/日本/カラー/シネスコ/102分
配給:ネツゲン
(C)「ぼけますから、よろしくお願いします。」製作・配給委員会
http://www.bokemasu.com/
★2018年11月3日(土)ロードショー
posted by shiraishi at 23:52| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ボクはボク、クジラはクジラで泳いでいる。

bokuwaboku.jpg

監督:藤原知之 
脚本:菊池誠 
撮影:高木風太
音楽:稲岡宏哉 
主題歌:清水理子「Colorful〜あなたといた時間〜」
出演:矢野聖人(鯨岡太一)、武田梨奈(白石唯)、岡本玲(真柴望美)、末野卓磨、 秋吉織栄、長濱慎、葉山昴、近藤芳正(市長 特別出演) 鶴見辰吾(富樫館長)

和歌山県太地町にはクジラだけを飼育している「太地町立くじらの博物館」がある。鯨岡太一はクジラを愛する純朴な青年。「クジラすげー!」という自分の気持ちをみんなにも感じてほしいと思っている。来場者が減っていく今の状況を変えようと、館長は太一を飼育員のリーダーに任命する。反発した係員がやめて、東京の水族館からピンチヒッターに白石唯がやってきた。太一と学芸員の望美と同じ宿舎に入り、のんびりした太一と何かにつけ衝突する。一緒に働き、退勤後も一緒になる3人は次第に意気投合して、博物館を盛り上げるためにイベントを計画する。

クジラが好きで好きでたまらない太一くん、目をキラキラさせてクジラのことを語るようすがさかなクンそっくり。入館者を増やし、クジラへの関心が高まるようにと奮闘する若い飼育員たちの青春のひとこまが描かれます。裏方のご苦労も垣間見られ、クジラの豆知識も増えるお子様にもお奨めできる作品。大技を決める武田梨奈さんの勇姿もみどころです。
実在の「太地町立くじら博物館」が撮影に全面協力、出演者への指導もしているそうです。和歌山ラーメンもおいしそう、いつか訪ねてみたいところです。
武田梨奈さんインタビューはこちら
完成披露舞台挨拶はこちら
(白)


2018年/日本/カラー/16:9/DCP/117分
配給:キュリオスコープ
(c)2018映画「ボクはボク、クジラはクジラで、泳いでいる。」製作委員会.All Rights Reserved.
http://bokujira.com/
★2018年11月3日(土)シネ・リーブル池袋ほか全国順次公開
10月12日和歌山先行ロードショー
posted by shiraishi at 10:34| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。