2018年11月11日

母さんがどんなに僕を嫌いでも

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監督:御法川修
原作:歌川たいじ
脚本:大谷洋介
撮影:板倉陽子
音楽:YOSHIZUMI
主題歌:ゴスペラーズ
出演:太賀(タイジ)、吉田羊(光子)、森崎ウィン(キミツ)、白石隼也(大将)、秋月三佳(カナ)、小山春朋(タイジ(幼少期)、斉藤陽一郎(タイジの父親)、おかやまはじめ(婆ちゃんの弟)、木野花(婆ちゃん)

タイジの母の光子は、いつも美しくておしゃれで人に囲まれて輝いて見えた。けれど家での母はいつも情緒不安定で、何かというとタイジにあたり、タイジの身体には傷や痣が絶えなかった。それでも古くからの従業員の婆ちゃんが気にかけてくれたし、母の作る混ぜご飯は大好物だった。母は父と喧嘩が絶えず、ついには離婚で有利になるようにと、タイジを児童保護施設に入れてしまう。離婚が有利に成立してタイジは母に引き取られ、新しい生活を始めたが暴力は止まない。17歳のある日、身も心も深く傷ついたタイジは一人で生きる決心をして家を出る。
懐かしい婆ちゃんに再会して、これまでの母の呪縛から逃れたタイジは、人一倍努力して一流企業に就職、社会人劇団にも参加した。劇団で出会った毒舌家のキミツ、会社の同僚のカナ、カナの恋人の大将が、タイジを丸ごと受け止めてくれた。彼らに力づけられて、タイジはあきらめずに母と向き合おうとする。

映画化の前から歌川さんのブログのファンで、著書も何冊か読んでいました。映画化されると聞いて、誰がキャスティングされるのかと気にしていました。綺麗で不安定で見放せないお母さんは誰が演じるのか、タイジくんとお母さんの壮絶なやりとりはどうなるのか。完成した作品は期待に違わず、太賀くんと吉田羊さんの渾身の演技に辛くとも目が離せません。肩の力が抜けたのは婆ちゃんや周りの友人たちが現われてからでした。旧知の子どものように、いい人に出逢って良かったねぇと思いました。
誰かの人生を丸ごと背負うことは家族でも難しいことです。でももつれてしまったところを見つけるのにちょっと手伝うこと、黙ってそばにいることはできるんじゃないか、と、この映画は気づかせてくれます。
御法川修監督、原作者の歌川たいじさんにお話を伺えました。お二人とも作品に対する熱い思いを語ってくださっています。書き起こしたばかりの舞台挨拶記事もどうぞごらんください。(白)


☆御法川修(みのりかわおさむ)監督インタビューはこちら
☆歌川たいじさんインタビューはこちら
☆完成披露試写会舞台挨拶はこちら

2018年/日本/カラー/シネスコ/104分
配給:REGENTS
(C)2018「母さんがどんなに僕を嫌いでも」製作委員会
http://hahaboku-movie.jp/
★2018年11月16日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 02:47| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ポルトの恋人たち 〜時の記憶〜

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監督:舩橋淳
脚本:舩橋淳、村越繁
撮影:古屋幸一
音楽:ヤニック・ドゥズインスキー
出演:柄本佑(宗次/加勢柊次)、アナ・モレイラ(マリアナ/マリナ)、アントニオ・ドゥランエス(ガスパール)、中野裕太(四郎/幸四郎)

18世紀リスボン大震災後のポルトガル。宗次と四郎は復興のためにインドから連れてこられる。やがて、宗次は屋敷で働く女中マリアナと心を通わせるようになるが、理不尽な雇い主にたてついたことで銃殺されてしまう。
21世紀東京オリンピック後の日本。多くの日系人が工場で働いていた。その1人、幸四郎はポルトガルギターの店を出す夢を持っていたが、リストラに遭い、ポルトガル人の妻マリナを残して自殺してしまう。リストラを敢行したのは柊次だった。

18世紀リスボン大震災後のポルトガルと21世紀の日本を舞台に、柄本佑、アナ・モレイラ、中野裕太の3人が時代を超えた愛憎劇を繰り広げる。柄本佑はポルトガルパートではヒロインが愛する男性、日本パートでは復讐相手と相反する立場を2つの時代で切なく演じ分ける。英語、イタリア語、フランス語を話す中野裕太が、本作ではポルトガル語を習得。マルチリンガルぶりを発揮した。
メガホンをとったのは舩橋淳監督。これまでに、オダギリジョーを主演に迎えた日米合作映画『ビッグ・リバー』(2006年)、福島県双葉町の人々に長期密着したドキュメンタリー映画『フタバから遠く離れて』(2012、2014年)などを手掛けてきた。日本とポルトガルの合作作品で、日本人監督によるものは初めてである。ポルトガルの世界遺産ギマランイスを始め、ポルト、ブラガ、ペニシェ、そして静岡県浜松市でロケが行われた。
ヒロインは愛する者を奪われた悲しみを復讐によって癒そうとする。その過程で憎しみの対象者の心情に触れ、労わりの気持ちが生じる。この感情も愛情なのか。ヒロインは憎しみと愛情の狭間で揺れ動く。両パートでヒロインを演じたアナ・モレイラが千々に乱れる女心を繊細に表現。観る者の共感を誘う。
復讐は悲しみの連鎖を引き起こす。ポルトガルパートではそれを食い止められなかったが、明るい未来の象徴だった椿の種が日本パートで悲劇を止める。悲しみもいつかは乗り越えられるという希望が伝わってきた(堀)


2018年/日本/カラー/シネスコ/139分
配給:パラダイス・カフェ フィルムズ
(c)2017『ポルトの恋人たち』製作委員会
http://porto-koibitotachi.com/
★2018年11月10日(土)シネマート新宿・心斎橋ほか全国公開
posted by shiraishi at 02:08| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

体操しようよ

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監督:菊地健雄
脚本:和田清人、春藤忠温
撮影:佐々木靖之
音楽:野村卓史
主題歌:RCサクセション「体操しようよ」
出演:草刈正雄(佐野道太郎)、木村文乃(佐野弓子)、きたろう(神田義彦)、渡辺大知(馬場薫)、和久井映見(藤澤のぞみ)

佐野道太郎は妻に先立たれ、シングルファーザーとして娘と二人三脚で円満な家庭を築いてきたつもりだった。ところが、定年退職の日に娘からエプロンを渡されて家事デビュー。慣れない家事に失敗ばかり。暇を持て余していたところ、元上司に誘われて、地元のラジオ体操に参加する。さまざまな世代の人と関わることで、新たな世界を知り、変わっていく。

定年退職した男性が地域で生きがいを見つけ、子離れするまでを描く。
パリっとしたスーツがよく似合う、二枚目の代名詞のような草刈正雄が、ポロシャツをジャージにインしてくたびれた姿をスクリーンに晒す。かなり驚いたが、誰にでも公平に老いは訪れるのねと妙に安心をした。舘ひろし主演の「終わった人」とテーマはかぶるが、普通の人の参考になるのはこちらだろう。定年になったことで会社という居場所を失くした男が会社の代わりになるところを地域で見つけた。うれしくて、ついつい張り切り過ぎて孤立する。他人事とは思えない話である。
結婚したいという若者への対応が、他人と自分の娘では基準が変わる。あるあるな話だろう。それでも父と娘は互いの我慢をぶつけ合うことで分かり合う。笑って泣いて、ラストにホッとする。寒い季節にはこういうハートウォーミングな作品がうれしい。(堀)


2018年/日本/カラー/ビスタサイズ/5.1ch/109分
配給:東急レクリエーション
(C)2018「体操しようよ」製作委員会
http://taiso-movie.com/
★2018年11月9日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 02:06| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ういらぶ。

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監督:佐藤祐市
原作:星森ゆきも
脚本:高橋ナツコ
撮影:小宮山充
音楽:佐藤直紀
主題歌King & Prince
出演:平野紫耀(和泉凛)、桜井日奈子(春名優羽)、玉城ティナ(坂下暦)、磯村勇斗(藤蛍太)、桜田ひより(佐伯実花)、伊藤健太郎(佐伯和真)

子どものころから同じマンションに住んでいる凛(りん)と優羽(ゆう)、暦(こよみ)と蛍太(けいた)の幼馴染の4人組。男子2人、女子2人は大親友。凛と優羽はお互いが大好きなのに、凛は自己嫌悪の塊りに、優羽はこじらせすぎた凛にゴミ扱いされてすっかり自信ゼロのネガティブ女子になってしまった。そこへ頭もよければ顔もいい、おまけに「好きなら好きとハッキリ言う」和真と実花兄妹が現われて、4人組の土台が動きはじめた。凛は素直になれるのか?

いまどきの小学生のほうがもっと大人じゃないか?と思われる凛のこじらせっぷりにあきれます。蛍太と暦はちゃんと相応に成長しているというのに・・・ま、コミック原作なのでかなりオーバーではあります。いい大人になった知人男性が「男は中学生くらいからあんまり進歩しないんだよ」と独白していましたっけ。しょうがないか。
紫耀くんは関ジャニ出身で、6人組ユニットKing & Prince(キンプリ)のセンターというアイドルでありますが、ハスキーボイスでわりと個性的なお顔立ちなので(他の子と間違えない)すぐ記憶に残りました。『honey』で優しくしてくれた平祐奈さんを一途に思う純情な不良?役でしたが、今回も見た目と中味にギャップのある男子。次は高校生でなく、も少し大人の役の彼が見たいものです。(白)


好きだからいじめてしまうドSな男子と超ヘタレ女子の不器用な恋。主人公の凛のSぶりは許容範囲を超えるほどだが、いじめた後に後悔して悶絶する姿を見ていると、そんなやり方しかできない彼を守ってあげたくなる。平野紫耀と桜井日奈子の魅力を最大限に活かした作品。最強の「チーム幼馴染」に私も入りたい!(堀)

2018年/日本/カラー/シネスコ/100分
配給:アスミック・エース
(C)2018「ういらぶ。」製作委員会 (C)星森ゆきも/小学館
http://welove.asmik-ace.co.jp/
★2018年11月9日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 01:35| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

生きてるだけで、愛。

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監督・脚本:関根光才
原作:本谷有希子
撮影:重森豊太郎
音楽:世武裕子
出演:趣里(寧子)、菅田将暉(津奈木)、田中哲司(村田)、西田尚美(真紀)、松重豊(磯山)、石橋静河(美里)、織田梨沙(莉奈)、仲里依紗(安堂)

寧子と津奈木は同棲して3年になる。寧子はもともとメンタルに問題を抱えており、過眠症で引きこもり状態。週刊誌の編集部でゴシップ記事を書いている津奈木が会社帰りに2人分のお弁当を買って帰る。しかし、感情をコントロールできない寧子は津奈木に当たり散らしていた。
ある日突然、津奈木の元恋人・安堂が寧子を訪ねてくる。津奈木に未練を残す安堂は、寧子を自立させて津奈木の部屋から追い出そうと、強制的にカフェバーのアルバイトを決めてしまう。寧子は戸惑うものの、思いがけないチャンスを得て、今の生活から抜け出そうと次第に前向きになっていくが…。

鬱による過眠症で、自分自身をコントロールできない女。物静かで心を病む女に理解があるように振る舞うが、実はやり過ごしているだけの男。人との距離感がうまく取れない不器用な男女の歪な愛を描いた。原作は本谷有希子の同名小説で、芥川賞・三島賞候補作となった。
主人公の寧子を演じるのは趣里。ドラマ「ブラックペアン」で演じたミステリアスな看護婦・猫田麻里役が記憶に新しい。恋人の津奈木役には映画『あゝ、荒野』で第41回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞に輝いた菅田将暉。『銀魂2』『帝一の國』でのパワフルなキャラを封印して、受け身の演技に徹した。メガホンを取ったのは、CMやMVディレクターとしてキャリアを積んできた関根光才監督。劇場長編映画デビュー作である。フィルムで映すことで人の心が映ると考える監督は本作も16oフィルムで撮影。生きにくさの中でもがく若者たちを誤魔化すことなく冷静にとらえた脚本を自身で書き、それを柔らかく見つめて映し出した。
とにかく趣里が素晴らしい。他人を寄せ付けないネコのような冷めた目をしながら、内面には煮えたぎるマグマを感じさせる。例えば、バイト先の人と距離が近づいたと思ったのに、いきなり深い溝を感じた瞬間、エキセントリックに感情を爆発させた。心が切り裂かれる痛みへの悲鳴が聞こえてくる。そして、冬の夜に外へ飛び出し、走り出した。その様は火山が噴火したかのよう。趣里の華奢な体のどこにそんなエネルギーがあったのか。全身全霊で寧子を演じ切った趣里を見るには、こちらにも覚悟が必要だ。(堀)


趣里さんをちゃんと記憶したのは『勝手にふるえてろ』でした。金髪に赤と白のストライプの制服のウエィトレス役。印象は「くるくる回るオルゴールの人形みたい」。後で水谷豊・伊藤蘭夫妻の一人娘で、バレリーナを目指していたと知りました(怪我のため断念)。そういえば蘭ちゃんに面差しが似ています。細くてかよわそうなのに、芯がしっかりしてみえますが、本作では布団から出られない躁鬱女子。自分でどうしようもないイライラを同居人にぶつけて、ますます落ち込む悪循環。痛々しさ満点です。
こういう人が身近にいたらどうしたらいいんでしょ。ひたすら聴いてあげても怒りそう、あげるって何!?って言われそう。自分のしたいことしか見えない安堂が誰よりも無敵です。津奈木は戻らないだろうけど。
責める(攻める)趣里さんを受け(流す)菅田将暉くんが新鮮。自分なら重すぎてめんどうになって、逃げ出しそうです。でも諦めないで生きていれば、愛も見つかるかもしれないんだよね。寧子さん、津奈木くんがいてくれてよかったね。
「一瞬だけでもわかりあえたら」ってコピーには、あれ?一瞬だけでもわかりあえたから、一緒に暮らし始めたんじゃなかったの?と思う私はずれているのでしょうか?(白)


2018年/日本/カラー/シネスコ/110分
配給:クロックワークス
(C)2018「生きてるだけで、愛。」製作委員会
http://ikiai.jp/
★2018年11月9日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 01:34| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする