2018年12月23日

こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話

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監督:前田哲
原作:渡辺一史「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」(文春文庫刊)
脚本:橋本裕志
撮影:藤澤順一
音楽:富貴晴美
主題歌:ポルノグラフィティ「フラワー」
出演:大泉洋(鹿野靖明)、高畑充希(安堂美咲)、三浦春馬(田中久)、萩原聖人(高村大助)、渡辺真起子(前木貴子)、宇野祥平(塚田心平)、韓英恵(泉芳恵)、竜雷太(鹿野清)、綾戸智恵(鹿野光枝)、佐藤浩市(田中猛)、原田美枝子(野原博子)

札幌で一人暮らしをしている鹿野靖明34歳目下独身。ちょっと違っているのは彼が子どものころから難病の筋ジストロフィーを患っていること。病状が進んだ今、動かせるのは首と手だけ。食事や排泄はもちろん、夜中の寝返りも人の手を借りないとできない。施設で一緒に暮らした仲間たちのうち、進行の早かった者はすでにこの世にいない。医師や家族の反対を押し切って、鹿野は一人暮らしに踏み切ったのだ。
身体は不自由でも心と口は自由な鹿野は、大勢のボランティアに支えられながら毎日を過ごしている。ある日、ボランティアの医大生田中の彼女・美咲が訪れる。お喋りで惚れっぽい鹿野、さっそく美咲をボランティアに引き入れる。

原作は渡辺一史さんの書かれたノンフィクション。第35回大宅壮一ノンフィクション賞・第25回講談社ノンフィクション賞をダブル受賞しています。舞台が札幌で、同じころに住んでいたこともあり早くに原作を読んでいました。自分ができないことを手助けしてもらうのに、多少は相手を考えて遠慮がちになってしまうものですが、この鹿野さんは真夜中に「バナナ食べたい!」と主張します。朝になってから、ではありません。ボランティアは24時間体制でついているので、財布片手にコンビニへと走っていきます。新人の美咲ちゃんがわがまま言い放題の鹿野に「何様!?」とキレてしまいます。そうやって何人ものボランティアがぶつかったり辞めたりしました。
鹿野さんはついに呼吸器をつけるようになりますが、不可能と言われた発声を可能にします。何事もあきらめず、42歳までを生き抜いた鹿野さん、ご家族、ボランティアのみなさんがこの作品の中で生きていました。
大泉洋さんが鹿野さん。この人が演じたら憎まれるより理解されるに違いない、と思わせます。高畑充希さん、三浦春馬さんが鹿野さんに出会って人生が変わっていった若者を。とりまくベテランたちが物語を支えていました。「あの人のわがままはいのちがけなんです」という医大生田中くんの台詞が今も耳に残っています。(白)


60歳までの15年ほど、障害者たちが立ち上げた会社で働いていました。障害があっても自分ができることは自分で行う。なんでもやってあげることが介護ではないという思いの元、自分たちができることをやっていくという思いで4,5人の障害者で立ち上げた会社だけど、私が入ったときにはすでに100人以上の社員がいる会社になっていた。そして、障害者だけでなく、高齢者も対象になっていて、車いす、杖、などのほか、大型のリハビリ機器なども扱っていた。入社して数年後には介護保険も始まり、デイサービス、高齢者用入居施設、グループホームなどにも広がっていった。
この映画を観た時、その会社に入って1ヶ月目くらいの経験を思い出した。車いすの人も行けるツアーに参加した人たちの、旅行後の写真交換会に初めて参加した時、そこでこの鹿野さんのように傍若無人で、やってくれるのが当然という感じの障害者がいて、私も美咲ちゃんのように「障害者だからって、何様?」と思ったのでした。その方のことを詳しくは知らないけど、もしかして鹿野さんのような心境だったのかもしれなかったのかな?と、この作品を観て思いました。でも、その後、そういう障害者にはほとんど会わず、人に何かをやってもらう時は、丁寧に頼む人がほとんどでした。
でも、何も知らずの状態で、鹿野さんのような態度で言われては、やはりびっくりしますよね。
その会社には車いすの人や杖を使っている人が20人以上いたけど、けっこう活躍していました。車いすの人などは器用に段差をクリアしていたし、スポーツをやっている人もいて、長野オリンピックのアイスレッジホッケーに出場した人もいました。鹿野さんのような進行性の筋ジストロフィーを患っている人はいなかったからかもしれませんが、それぞれ車いすの床ずれに悩んでいたり、障害のせいでそれなりにいろいろありました。
でも、杖にしても車いすにしても、ほかのリハビリ機器にしろ、障害の状態に合わせて、さまざまなものがあるということを知りました。
それに、電話相談室が隣だったので、いろいろな制度のことや、介護保険制度の使い方などについて、「門前の小僧、習わぬ経を読む」ではないけど、耳学問で知ることができ、母の介護の時にとても役立ちました。
なによりも障害者の人たちや高齢者の人の気持ちや付き合い方を知りました。気を使いすぎても使わなくてもいけない。良い加減が大事ということです。やれることは自分でやってもらう。やれないことだけ手伝うという精神が大事。なんでもやってあげるのは障害者や高齢者自身のできることを減らしてしまということでした。そして、介護は自分ひとりで担っては介護者自身がだめになる。鹿野さんのように仲間が大事です(暁)。


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11月12日完成披露試写会

12月4日にあった試写会+講演(原作者の渡辺一史氏、大泉洋さん、パラリンピックで活躍のランナー/大西瞳さん登壇)のレポを書き起こし中です。もう少しお待ちください。(白)

完成披露試写会 舞台挨拶のほぼ書き起こしアップしました。こちら

特別試写会 講演会は2回に分けてアップしました。
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/463437741.html 
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/463489650.html  こちらが続き
2018年/日本/カラー/ビスタ/120分
配給:松竹
(C)2018「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会
http://bananakayo.jp/
★2018年12月28日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 19:55| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月09日

輪違屋糸里 京女たちの幕末

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監督:加島幹也
原作:浅田次郎
脚本:金子成人、門間宣裕、加島幹也
撮影:江原祥二
音楽:平原誠之
出演:藤野涼子(天神糸里)、溝端淳平(土方歳三)、松井玲奈(吉栄)、佐藤隆太(平山五郎)、田畑智子(お梅)、塚本高史(芹澤鴨)、石濱朗(隠居)、榎木孝明(松平容保)

幕末の京都島原。遊郭の輪違屋(わちがいや)で働く糸里(いとさと)。姉のように糸里を可愛がってくれた音羽太夫が新選組筆頭局長 芹澤鴨に無礼打ちされてしまった。理不尽な制裁に怒りがおさまらない糸里たちだったが、武士の力の前に屈するしかなかった。
その場を収めたのは切れ者の新選組副長・土方歳三。新選組には農民出身の近藤勇と、生まれながらの武士の芹澤鴨という二人の局長がいて両派は対立を深めていた。糸里は土方歳三を秘かに慕い、糸里と仲の良い芸妓吉栄は芹澤の腹心の部下、平山五郎と恋仲だった。そして芹澤鴨の愛人お梅。男たちの抗争に女たちも巻き込まれてゆく。

浅田次郎の同名小説が原作。これまで数多くの新選組のドラマが発表されてきましたが、男性中心のものが多かったですね。この原作は、彼らに関わった数人の女性の目線で書かれたもので、とても面白く読みました。主演の天神糸里を『ソロモンの偽証』(2015)で1万人の中から映画未体験ながらヒロインに選出された藤野涼子。役名をそのまま芸名にしています。花街で生きねばならない女の哀しさと強さを体現していて、すっかり大人の女優になられたんだなーと、またまた遠縁のおばちゃんのような思いで観ていました。(白)

2018年/日本/カラー/シネスコ/116分
配給:アークエンタテインメント
(C)2018 銀幕維新の会/「輪違屋糸里」製作委員会
http://wachigaiya.com/
★2018年12月15日(土)有楽町スバル座ほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 15:18| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

春待つ僕ら

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監督:平川雄一朗
原作:あなしん
脚本:おかざきさとこ
撮影:小松高志
音楽:高見優
主題歌:TAOTAK
出演:土屋太鳳(春野美月)、北村匠海(浅倉永久)、小関裕太(神山亜哉)、磯村勇斗(若宮恭介)、杉野遥亮(多田竜二)、稲葉友(宮本瑠衣)

春野美月は、これまで友達ができず一人寂しい思いをしてきた。高校入学をきっかけに自分から働きかけるように努力するが、なかなか「ぼっち」から抜け出せない。バイト先のカフェが唯一の自分の場所だった。ある日そのカフェに、バスケ部のイケメン四天王とよばれている1年の永久(とわ)、瑠衣、2年の恭介と竜二がやってくる。くったくのない彼らは美月を仲間に引き込んで、なにかと一緒にすごすようになる。そんな美月を幼馴染の亜哉(あや)が見守っていた。亜哉はアメリカに留学し、バスケの超有名選手となって戻ってきていた。

イケメンのスポーツ選手と引っ込み思案の女子、そこへ幼馴染がからんでくるという青春王道もの。人気の若手が揃ったこのメンツ、「え、高校1、2年生かい!」と突っ込みました。いくら制服が強力アイテムとはいえ、高校3年でも大学生の設定でもいいんじゃない?同名原作漫画(絵柄が可愛い。累計380万部突破!?すごい)がそうなのですが、もっと年齢相応の役をやらせてあげたいです。ちょうどの、もっと若手はいないのか?
とはいえ、おくてな美月と天然の永久、戻ってきた幼馴染の亜哉との今後が気になるストーリーです。このメンバーで続編ができるのでしょうか?なんやかや言いましたが、やっぱり先が観たいです。(白)


2018年/日本/カラー/シネスコ/109分
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)あなしん/講談社 (C)2018 映画「春待つ僕ら」製作委員会
http://wwws.warnerbros.co.jp/harumatsumovie/
★2018年12月14日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 14:35| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月02日

旅するダンボール

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監督:岡島龍介
製作:汐巻裕子
撮影・編集:岡島龍介
L.A.撮影:サム・K・ヤノ
音楽:吉田大致
ナレーション:マイケル・キダ
出演:島津冬樹

段ボールアーティスト島津冬樹さんの活動に密着したドキュメンタリー。大学生のころから、ただただ純粋に段ボールに魅せられている島津さんは、国内外で道端やゴミ捨て場にうち捨てられている段ボールを拾い集める。ゴミだった段ボールからたった一つの財布を作り出したことから、島津さんの活動が始まった。ガラクタから価値あるものを生み出す「アップサイクル」は世間の目を集め、展示やワークショップを通じて広がっていく。ある日、市場で可愛いキャラクターの描かれた「徳之島産のジャガイモの段ボール箱」に目が止まる。島津さんはその作り手を捜し出すことになり、カメラはその旅を追ってどこまでも行く。

試写を観て「こんなにユニークな人がいるとは!」と驚きました。大手の広告会社に勤めたときのエピソードも型破りで、本人はガチガチの芸術家ではなく、いたって飄々としています。段ボール愛に突き動かされて、地球のどこまででも段ボール拾いに出かけ、見つけたお宝をリュックやケースにいっぱい詰めて意気揚々と帰ってきます。小さいころから好きだったモノ集めが、今に繋がっています。段ボールのお財布から始まった「Carton」の活動が、海を渡って海外にも広がりリサイクルよりさらに進んだ「アップサイクル」となり、多くの人の目を開かせています。段ボールから始まった人と人との繋がりは、やはり「あったかい」ものでした。
かくいう私も段ボール熱に感染、島津さんにインタビューしましたのでご覧下さいね。最近は近所の酒屋さんに「収集前の段ボールの中から欲しいものがあったらもらえる」許可をいただきました。その前にうちにある段ボールでワークショップのおさらいをしなくては。(白)


2018年/日本/カラー/91分
配給・宣伝:ピクチャーズデプト 特別協賛:サクラパックス株式会社
(c)2018 pictures dept. All Rights Reserved.
http://carton-movie.com/
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★2018年12月7日(金)YEBISU GARDEN CINEMA/新宿ピカデリーほか全国順次公開

「段ボールはたからもの 偶然のアップサイクル」
映画公開と同じ12月7日に、島津冬樹さん初のエッセイ本が発売されます。
これまでの旅の記録や語り尽くせない段ボール愛、段ボールクラフトの作り方までたっぷりつまっています。
ぜひ映画とあわせてごらんください。

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著者 : 島津冬樹(文と絵)
発行 : 柏書房
出版年月日 : 2018/12/7
ISBN : 9784760150731
判型・ページ数 : 4-6・208ページ
定価 : 本体1,400円+税
posted by shiraishi at 16:38| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

選挙に出たい

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監督・撮影・編集:ケイヒ
出演:李小牧

中国・湖南省出身の李小牧さんは、1988年留学生として日本にやって来た。日本で勉強して祖国に貢献したいと考えていた李さんは、生活のために様々な職業を体験する。中国人観光客を相手に、飲食店や風俗店をガイドする「歌舞伎町案内人」として身を立て、その経験が本になり映画にもなった。そんな李さんが、中国籍を捨て日本に帰化して、2015年に新宿区議選に立候補した。そこまでして政治家になろうとする理由は何か?
自身も日本在住の中国人女性、ケイヒ監督が李さんの選挙活動に密着した。

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試写室にかけつけた李小牧さん

李小牧さんの著書「歌舞伎町案内人」は評判を呼び、2004年(張加貝監督)に、チューヤン(李暁強)、山本太郎(劉剛)のキャストで映画化されています。チューヤンといえば、1998年人気のテレビ番組「進ぬ!電波少年」で過酷なヒッチハイクの旅をするユニット 朋友(パンヤオ:チューヤン、伊藤高史)の一人でした。今は香港に戻ってディレクターになっているそうですし、共演した山本太郎さんは2013年から参議院議員です。
挨拶に登場したケイヒ監督(暗くて写真失敗)は河北省の出身。中国の大学で日本語を専攻、ジャーナリストを目指して来日したそうです。途中から映像の道に進み、英国で映像製作を学んだ方。知的でクールな印象で日本語も正確でした。李小牧さんは長く日本にいるわりに日本語が不確かなところがあるのですが明るく賑やか、人好きのする方でした。選挙運動中罵声を受けても腐ることなく、街頭で話し続けます。離婚した妻子まで選挙運動を手助けしていたのが印象的。(白)


選挙権を得た40年以上前、政治に全然期待できなくて、「選挙なんて意味がない」と思って以来、ずっとその思いがある。20歳の頃は選挙になんて行くものかと思っていたけど、一応ずっと参加している。でも、私が投票した人はほとんど当選していない。なので、やはり選挙に行くのが嫌になることも多い。今まで日本の政治に自分の思いが反映されたことがないから。
そんな思いでいたら、なんと中国から日本に帰化してまで選挙に出た人がいるという。いったいどういう思いでと思っていたら、出馬の原点は文化革命だという。中国では選挙権自体がないというのは知っていたが、なかなか自分の思いは反映されなくても、選ぶ権利があるというのはやはりいいことなのだろう。これからも選挙に行き続けるしかないかな。(暁)


◆『選挙に出たい』シネマジャーナル紹介記事

特別記事 
山形国際ドキュメンタリー映画祭2017 高野史枝記事内
http://www.cinemajournal.net/special/2017/yamagata/index.html#p02

スタッフ日記
座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバルに行ってきました2
宮崎暁美記事内
http://cinemajournal.seesaa.net/article/456954971.html

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2018座・高円寺ドキュメンタリーフェステイバルでの李小牧さん

2016年/中国、日本/カラー/シネスコ/78分
配給:きろくびと
http://kiroku-bito.com/election/
★2018年12月1日(土)ロードショー
posted by shiraishi at 13:48| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする