監督:前田哲
原作:渡辺一史「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」(文春文庫刊)
脚本:橋本裕志
撮影:藤澤順一
音楽:富貴晴美
主題歌:ポルノグラフィティ「フラワー」
出演:大泉洋(鹿野靖明)、高畑充希(安堂美咲)、三浦春馬(田中久)、萩原聖人(高村大助)、渡辺真起子(前木貴子)、宇野祥平(塚田心平)、韓英恵(泉芳恵)、竜雷太(鹿野清)、綾戸智恵(鹿野光枝)、佐藤浩市(田中猛)、原田美枝子(野原博子)
札幌で一人暮らしをしている鹿野靖明34歳目下独身。ちょっと違っているのは彼が子どものころから難病の筋ジストロフィーを患っていること。病状が進んだ今、動かせるのは首と手だけ。食事や排泄はもちろん、夜中の寝返りも人の手を借りないとできない。施設で一緒に暮らした仲間たちのうち、進行の早かった者はすでにこの世にいない。医師や家族の反対を押し切って、鹿野は一人暮らしに踏み切ったのだ。
身体は不自由でも心と口は自由な鹿野は、大勢のボランティアに支えられながら毎日を過ごしている。ある日、ボランティアの医大生田中の彼女・美咲が訪れる。お喋りで惚れっぽい鹿野、さっそく美咲をボランティアに引き入れる。
原作は渡辺一史さんの書かれたノンフィクション。第35回大宅壮一ノンフィクション賞・第25回講談社ノンフィクション賞をダブル受賞しています。舞台が札幌で、同じころに住んでいたこともあり早くに原作を読んでいました。自分ができないことを手助けしてもらうのに、多少は相手を考えて遠慮がちになってしまうものですが、この鹿野さんは真夜中に「バナナ食べたい!」と主張します。朝になってから、ではありません。ボランティアは24時間体制でついているので、財布片手にコンビニへと走っていきます。新人の美咲ちゃんがわがまま言い放題の鹿野に「何様!?」とキレてしまいます。そうやって何人ものボランティアがぶつかったり辞めたりしました。
鹿野さんはついに呼吸器をつけるようになりますが、不可能と言われた発声を可能にします。何事もあきらめず、42歳までを生き抜いた鹿野さん、ご家族、ボランティアのみなさんがこの作品の中で生きていました。
大泉洋さんが鹿野さん。この人が演じたら憎まれるより理解されるに違いない、と思わせます。高畑充希さん、三浦春馬さんが鹿野さんに出会って人生が変わっていった若者を。とりまくベテランたちが物語を支えていました。「あの人のわがままはいのちがけなんです」という医大生田中くんの台詞が今も耳に残っています。(白)
60歳までの15年ほど、障害者たちが立ち上げた会社で働いていました。障害があっても自分ができることは自分で行う。なんでもやってあげることが介護ではないという思いの元、自分たちができることをやっていくという思いで4,5人の障害者で立ち上げた会社だけど、私が入ったときにはすでに100人以上の社員がいる会社になっていた。そして、障害者だけでなく、高齢者も対象になっていて、車いす、杖、などのほか、大型のリハビリ機器なども扱っていた。入社して数年後には介護保険も始まり、デイサービス、高齢者用入居施設、グループホームなどにも広がっていった。
この映画を観た時、その会社に入って1ヶ月目くらいの経験を思い出した。車いすの人も行けるツアーに参加した人たちの、旅行後の写真交換会に初めて参加した時、そこでこの鹿野さんのように傍若無人で、やってくれるのが当然という感じの障害者がいて、私も美咲ちゃんのように「障害者だからって、何様?」と思ったのでした。その方のことを詳しくは知らないけど、もしかして鹿野さんのような心境だったのかもしれなかったのかな?と、この作品を観て思いました。でも、その後、そういう障害者にはほとんど会わず、人に何かをやってもらう時は、丁寧に頼む人がほとんどでした。
でも、何も知らずの状態で、鹿野さんのような態度で言われては、やはりびっくりしますよね。
その会社には車いすの人や杖を使っている人が20人以上いたけど、けっこう活躍していました。車いすの人などは器用に段差をクリアしていたし、スポーツをやっている人もいて、長野オリンピックのアイスレッジホッケーに出場した人もいました。鹿野さんのような進行性の筋ジストロフィーを患っている人はいなかったからかもしれませんが、それぞれ車いすの床ずれに悩んでいたり、障害のせいでそれなりにいろいろありました。
でも、杖にしても車いすにしても、ほかのリハビリ機器にしろ、障害の状態に合わせて、さまざまなものがあるということを知りました。
それに、電話相談室が隣だったので、いろいろな制度のことや、介護保険制度の使い方などについて、「門前の小僧、習わぬ経を読む」ではないけど、耳学問で知ることができ、母の介護の時にとても役立ちました。
なによりも障害者の人たちや高齢者の人の気持ちや付き合い方を知りました。気を使いすぎても使わなくてもいけない。良い加減が大事ということです。やれることは自分でやってもらう。やれないことだけ手伝うという精神が大事。なんでもやってあげるのは障害者や高齢者自身のできることを減らしてしまということでした。そして、介護は自分ひとりで担っては介護者自身がだめになる。鹿野さんのように仲間が大事です(暁)。
11月12日完成披露試写会
12月4日にあった試写会+講演(原作者の渡辺一史氏、大泉洋さん、パラリンピックで活躍のランナー/大西瞳さん登壇)のレポを書き起こし中です。もう少しお待ちください。(白)
☆完成披露試写会 舞台挨拶のほぼ書き起こしアップしました。こちら。
☆特別試写会 講演会は2回に分けてアップしました。
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/463437741.html
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/463489650.html こちらが続き
2018年/日本/カラー/ビスタ/120分
配給:松竹
(C)2018「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会
http://bananakayo.jp/
★2018年12月28日(金)ロードショー