監督:クリフトファー・ドイル、ジェニー・シュン
出演:アンジェラ・ユン、オダギリジョー
香港の片隅にたたずむ漁村、珠明村。
透き通るような白い肌の16歳の少女は、太陽を浴びるとやせ細って死んでしまう奇病だとして、父親から昼間は外に出ることを禁じられている。村人たちからは幽霊のようだと疎んじられている。
ある日、幼い頃に亡くなったと聞かされている母親のドレスと、歌声が入ったカセットテープを見つける。村を出ることを夢見て、ミスコンテストのオーディションの時のものだったと知る。母に思いを馳せ、歌をくちずさむ少女。
一方、村を見下ろす丘の上の廃屋に、どこからかともなくやってきた異邦人の男が住みつく。屋上に取り付けた望遠鏡のような特殊カメラで、村の様子を部屋にいながらにして眺めていた男は、神秘的な美少女の存在に気づく。ある月夜、彼は海辺の洞窟にたたずんでいた少女に声をかける。初めて自分の存在を認めてくれた彼に、次第に心を開く少女。
二人が心を通わせるようになった頃、村では大企業と村長の間で開発計画が密かに進められていた。男が住みついた廃屋も目を付けられ、開発計画の渦中に巻き込まれる。そんな折、少女は母親の秘密を知る・・・
『欲望の翼』(91)『恋する惑星』(94)などウォン・カーウァイ監督作品をはじめ、ジム・ジャームッシュ、アレハンドロ・ホドロフスキーといった世界の名匠と組んで、独特の映像を楽しませてくれる撮影監督クリフトファー・ドイルが、公私共にパートナーのジェニー・シュンと組んで放った物語。環境問題を盛り込みながらも、映像はあくまで幻想的。
ロケ地の大澳(たいおう)は、ランタオ島の西に位置する小さな漁村。ランタオ島の東側には香港国際空港やディズニーランドが出来て、橋で九龍半島とも繋がり便利になったけれど、山にはばまれて、大澳は今も辺鄙なところ。
まだ空港の出来る前、1990年代半ばに訪れたことがあります。村の中央を流れる水路の両側に水上家屋が並ぶ独特の光景。当時は、狭い水路を綱で引っ張る渡し船で行き来していたのですが、橋が出来て渡し船はなくなったと聞いていました。『宵闇真珠』に映し出される大澳には、確かに水路を渡る橋が出来ていましたが、水上家屋の並ぶさまはかつてのまま。香港の原点のような風情がいつまでも壊されないことを願うばかりです。(咲)
2017年/香港・マレーシア・日本/広東語・北京語・英語・日本語/97分/カラー/ビスタ
配給:キノフィルムズ/木下グループ
公式サイト:https://yoiyami-shinju.com/
★2018年12月15日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかにて全国順次公開