2018年12月02日
共犯者たち(英題:Criminal Conspiracy)
監督:チェ・スンホ
脚本:チョン・ジェホン
撮影:チェ・ヒョンソク
製作:ニュース打破
2008年、〈米国産牛肉BSE問題〉などの報道により国民の支持を失いかけた李明博政権は、メディアへの露骨な政治介入を始める。狙われたのは公共放送局KBSと公営放送局MBC。政権に批判的な経営陣が排除され、調査報道チームは解散、記者たちは非制作部門へと追われた。両局の労働組合はストライキで対抗するが、政権が送り込んだ新しい経営陣は解雇や懲戒を濫発。その結果、政府発表を報じるだけの「広報機関」となった放送局は、〈セウォル号惨事〉で「全員救助」の大誤報を流し、〈崔順実(チェ・スンシル)ゲート事件〉の隠蔽に加担することになった……。
しかし、それでも諦めないジャーナリストたちがいた。局内に残った記者たちは、さらに激しいストライキに突入。いっぽう、不当解雇されたチェ・スンホ監督たちは、市民の支援で立ち上げた独立メディア「ニュース打破」で調査報道を継続。言論弾圧の「主犯」である大統領と、権力に迎合して韓国の報道を骨抜きにした放送業界内の「共犯者たち」をカメラの前に立たせ、その実態と構造とを明らかにしていく。
テレビ局への露骨な介入がこれでもかと描かれる。狙われたのは受信料収入で運営される公共放送KBSと、政府が出資して民間が運営する半官半民の公営放送MBC。政権から送り込まれた経営陣によって不当解雇や配置転換が繰り返される。言論弾圧が現実にあったのだと思い知らされた。政権寄りの報道で市民の支持は失われ、局内に閉塞感が漂う。お昼休みに局内の廊下で「社長退陣!」と叫び自撮りでネット配信するプロデューサーは、妻に「変人扱いされて辞めさせられたらそれで終わり」と諭される。笑っているうちに、切なくて泣けてきた。監督のチェ・スンホがMBCの元社長に突撃取材で迫る。元社長が質問に答えず、「MBCは民営化しなくてはいけない」と繰り返したのが印象的。権力と放送メディアの距離感、放送労働者の連帯、市民からの支持・信頼…。隣国の出来事として片付けられないことばかりである。(堀)
2017年/韓国/カラー/DCP/105分
配給:東風
(C) KCIJ Newstapa
http://www.kyohanspy.com/
★2018年12月1日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開
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