監督・脚本:野尻克己
撮影:中尾正人
音楽:明星
出演:岸部一徳(鈴木幸男)、原日出子(鈴木悠子)、木竜麻生(鈴木富美)、加瀬亮(鈴木浩一)、吉本菜穂子(日比野さつき)、岸本加世子(鈴木君子)、大森南朋(吉野博)
長くひきこもっていた鈴木家の長男浩一が自ら命を断ってしまった。食事の時間に声をかけた母親の悠子が遺体を発見。ショックで倒れ、意識不明で入院する。葬儀も過ぎた四十九日目にようやく目覚めた悠子は、見守る家族に「浩一はどこ?」と尋ねる。みんなが顔を見合す中、長女の富美はとっさに「お兄ちゃんはアルゼンチンにいる!」と嘘をついてしまう。以後、再びショックを与えないように、家族全員で浩一画生きているかのごとく嘘をつき続けるはめになった。
開始早々の自死場面はショッキングで、自分もこの母親のように記憶を失うかもと思ってしまいました。母親にはあまりに辛いことだったので、自分を守るために「なかったこと」としてしまったのでしょう。残された父親や妹が、自分がしてきたことを思い出しては後悔し、我が身を責めるさまが痛々しいです。何をどうすれば浩一ををとどめることができたのか、残された人はいつまでも自問自答するはずです。
そんな悲痛な幕開けですが、家族みんながあの手この手で、嘘をつくようすはコメディタッチで、いつバレてしまうのかと観客をハラハラさせたり笑わせたりします。家族だけでは隠しきれなくなり、真実は明らかになります。どん底につきおとすのも家族なら、手を差し伸べて一緒に歩んでくれるのも家族でした。
長く助監督をつとめてきた野尻克己監督のオリジナル脚本による監督デビュー作品。2018年第31回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門に出品され、同部門の作品賞。木竜麻生が「菊とギロチン」「鈴木家の嘘」の2作品の演技を認められ、ジェムストーン賞を受賞しました。(白)
(撮影:宮崎暁美@TIFF)
2018年/日本/カラー/シネスコ/133分
配給:松竹ブロードキャスティング、ビターズ・エンド
(C)松竹ブロードキャスティング
http://www.suzukikenouso.com/
★2018年11月16日(金)ロードショー