2018年11月11日

生きてるだけで、愛。

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監督・脚本:関根光才
原作:本谷有希子
撮影:重森豊太郎
音楽:世武裕子
出演:趣里(寧子)、菅田将暉(津奈木)、田中哲司(村田)、西田尚美(真紀)、松重豊(磯山)、石橋静河(美里)、織田梨沙(莉奈)、仲里依紗(安堂)

寧子と津奈木は同棲して3年になる。寧子はもともとメンタルに問題を抱えており、過眠症で引きこもり状態。週刊誌の編集部でゴシップ記事を書いている津奈木が会社帰りに2人分のお弁当を買って帰る。しかし、感情をコントロールできない寧子は津奈木に当たり散らしていた。
ある日突然、津奈木の元恋人・安堂が寧子を訪ねてくる。津奈木に未練を残す安堂は、寧子を自立させて津奈木の部屋から追い出そうと、強制的にカフェバーのアルバイトを決めてしまう。寧子は戸惑うものの、思いがけないチャンスを得て、今の生活から抜け出そうと次第に前向きになっていくが…。

鬱による過眠症で、自分自身をコントロールできない女。物静かで心を病む女に理解があるように振る舞うが、実はやり過ごしているだけの男。人との距離感がうまく取れない不器用な男女の歪な愛を描いた。原作は本谷有希子の同名小説で、芥川賞・三島賞候補作となった。
主人公の寧子を演じるのは趣里。ドラマ「ブラックペアン」で演じたミステリアスな看護婦・猫田麻里役が記憶に新しい。恋人の津奈木役には映画『あゝ、荒野』で第41回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞に輝いた菅田将暉。『銀魂2』『帝一の國』でのパワフルなキャラを封印して、受け身の演技に徹した。メガホンを取ったのは、CMやMVディレクターとしてキャリアを積んできた関根光才監督。劇場長編映画デビュー作である。フィルムで映すことで人の心が映ると考える監督は本作も16oフィルムで撮影。生きにくさの中でもがく若者たちを誤魔化すことなく冷静にとらえた脚本を自身で書き、それを柔らかく見つめて映し出した。
とにかく趣里が素晴らしい。他人を寄せ付けないネコのような冷めた目をしながら、内面には煮えたぎるマグマを感じさせる。例えば、バイト先の人と距離が近づいたと思ったのに、いきなり深い溝を感じた瞬間、エキセントリックに感情を爆発させた。心が切り裂かれる痛みへの悲鳴が聞こえてくる。そして、冬の夜に外へ飛び出し、走り出した。その様は火山が噴火したかのよう。趣里の華奢な体のどこにそんなエネルギーがあったのか。全身全霊で寧子を演じ切った趣里を見るには、こちらにも覚悟が必要だ。(堀)


趣里さんをちゃんと記憶したのは『勝手にふるえてろ』でした。金髪に赤と白のストライプの制服のウエィトレス役。印象は「くるくる回るオルゴールの人形みたい」。後で水谷豊・伊藤蘭夫妻の一人娘で、バレリーナを目指していたと知りました(怪我のため断念)。そういえば蘭ちゃんに面差しが似ています。細くてかよわそうなのに、芯がしっかりしてみえますが、本作では布団から出られない躁鬱女子。自分でどうしようもないイライラを同居人にぶつけて、ますます落ち込む悪循環。痛々しさ満点です。
こういう人が身近にいたらどうしたらいいんでしょ。ひたすら聴いてあげても怒りそう、あげるって何!?って言われそう。自分のしたいことしか見えない安堂が誰よりも無敵です。津奈木は戻らないだろうけど。
責める(攻める)趣里さんを受け(流す)菅田将暉くんが新鮮。自分なら重すぎてめんどうになって、逃げ出しそうです。でも諦めないで生きていれば、愛も見つかるかもしれないんだよね。寧子さん、津奈木くんがいてくれてよかったね。
「一瞬だけでもわかりあえたら」ってコピーには、あれ?一瞬だけでもわかりあえたから、一緒に暮らし始めたんじゃなかったの?と思う私はずれているのでしょうか?(白)


2018年/日本/カラー/シネスコ/110分
配給:クロックワークス
(C)2018「生きてるだけで、愛。」製作委員会
http://ikiai.jp/
★2018年11月9日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 01:34| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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