2018年11月03日
ぼけますから、よろしくお願いします。
監督・撮影:信友直子
プロデューサー:大島新、濱潤
出演:
テレビディレクターの信友直子さんは広島県呉市で生まれ育ったが、18歳で大学進学のために上京して以来ずっと東京在住だ。ひとり仕事に打ち込む娘を呉の両親は見守り続けてきた。45歳で乳がんの手術をした信友監督は、母親の助けにより病気を克服する。実家に帰るたび年取ってきた両親の記録を残しておこうとカメラを向けたことから、少しずつ変化していく母のようすに気づくことになった。母は認知症とわかり、仕事をやめて実家に帰ろうか悩む信友監督に、父は「介護はわしがする」と宣言する。
題名はお母さんが監督にぽつりと言ったひとこと。聡明でしっかり者だったお母さんが自分の変化に気づいたとき、どれだけショックだったろうと胸がつまります。老化の物忘れでなく、脳の病変により神経細胞が欠落するのがアルツハイマー型認知症。だんだん進行し、日常生活にも支障をきたします。家に帰る道や料理の順番がわからなくなるのは、想像するだけでも辛い。それまでお母さんに任せきりだった家事を、意を決したお父さんが担当。慣れない家事を引き受けたお父さんが、ある日疲れがたまったのか声を荒げる場面がありました。それはためないで、小出しにするのがいいですよ、と声をかけたくなりました。介護担当の人も自分の楽しみを見つけて、元気を充電しないと両方が不幸せになってしまいます。
子どもが成長するのと逆で、衰えていく親の介護は先が見えません。終わるのは亡くなるときです。だから介護はたくさんの手で支えることが肝心です。疲れたときに休みをとれるように、お役所の力も遠慮せずに使って、たくさんの人に応援を頼んで甘えてください。
監督のご両親に向ける目はやさしくて、それまでたくさん愛されて育ったんだとわかります。誰もが迎える老いの日々、幕を閉じるその日まで穏やかにすごせますように。(白)
「2週間前と同じ服を着ている」。娘が気付いた母の異変。指摘された母は洗濯機に溜め込まれていた汚れ物をぶちまけ、その中にうずくまったまま眠り込んでしまう。台所と洗濯機は母の領分で、たとえ娘であっても侵食してくることは我慢できない。しかし、認知症の母にはどうしたらいいのか分からないのだ。衝撃的だった。何年か先の自分の姿かもしれないと不安に駆られる。とても他人事には思えない話である。母の認知症は加速度つけて進み、ヘルパーの助けを受けるように。思うように動かない体に苛立つ母だが、ヘルパーはそれを父に構ってほしい気持ちの表れだという。強い絆ゆえの甘えにちょっぴりうらやましくなった。(堀)
2018年/日本/カラー/シネスコ/102分
配給:ネツゲン
(C)「ぼけますから、よろしくお願いします。」製作・配給委員会
http://www.bokemasu.com/
★2018年11月3日(土)ロードショー
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