2018年10月06日

曙光

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監督・脚本・撮影:坂口香津美
プロデューサー:落合篤子
出演:黒沢あすか(文絵)、森山太、新倉真由美、染野有来、田中爽一郎、東京湾ジロー、順堂静葉、狩野美彩子、田村幸士、山下直ほか書き切れないほどたくさん

文絵は13年前中学生の娘を自殺で失ってしまった。娘が死ぬほど辛い思いをしていたのに、気づいてやれなかった自分を責め続けた。失意を抱えたまま文絵はもう誰一人死なせたくない、と「ハートビート」という自殺志願者を救助する組織を立ち上げた。山間の実家を開放し、実父の介護をしながら保護した人たちとの共同生活を続けている。長男と弟家族が手助けしてくれ、保護した人々と農作業をしながら自立を応援している。文絵は自殺を願う人からの電話を受け、夜昼なく走り回っているが理解されないことも多々ある。
ある晩、不審を覚えながら見捨てることはできず、連れ帰った男が事件を起こしてしまった。

坂口監督は『夏の祈り』(2012)『抱擁』(2015)などドキュメンタリー作品が印象深いですが、こちらは実際に自殺志願者の救助をしている牧師の藤藪庸一さん、妻の亜由美さん夫妻をモデルにしたフィクションです。宗教色は入れず、様々な理由で死にたいと願う人を登場させています。文絵はレスキューの訓練を受けたわけではないので、かける言葉や対応は専門家のマニュアルどおりではありません。リスクも承知で、ただただ手を差し伸べ、寄り添おうとしています。
文絵の志は尊いものですが、観ていて運営のしかたが危なっかしく、遠からず金銭的に破綻してしまうと思いました。野菜の自給自足や衣服の寄付などでは到底まかないきれないでしょう。保護した人が身寄りもなく、自立の気持ちが湧かなければいつまでも面倒を見ることになります。暖かい手がそばにあって居心地よければ、なおのこと出る決心がつきません。文絵は「いつまでもいていい」、送るときには「困ったら戻っておいで」と言います。

昔話には、困っている人、戸を叩く人をよく招き入れる話がありますが、今、素性もしれない他人を家の中に招くことはしません。信頼するには勇気も覚悟も要ります。
そこまではできなくとも、自分も何かできるのではないか?と考えさせられます。始めてくれた人を応援するのもいい。監督の言われるように自殺志願者は「隣の人かもしれないし、家族かもしれない。自分もいつそうなるかもわからない」のです。
交通事故死者が1万人を越えたころ、大キャンペーンがありました。シートベルトも普及して毎年減少(昨年は3694人)。一方、年間2万3千人もの人が自殺しているのに、お役所の対応は遅々としています(国会議員の給料を2割アップすることならすぐに決まるのに)。
試写と坂口監督のトークを聞いた日のスタッフ日記はこちら。坂口監督がこれを読まれてメールを下さいました。

「私の映画は、見た人に心地よく、幸福な気持ちになって欲しいがために作るのではなく、痛く感じてもらうためにつくっています。もっといえば、欠落感を感じてもらうために。
自殺はなぜしてはいけないのか。
なぜ自殺を救助することが必要なのか。
そのようなことを疑問として抱え込んで劇場を後にしてほしいのです。
そして、白石さんの書かれたように、だれかと話してほしいのです。
それでこの映画の使命は終えています」


バトン受け取りました。(白)


2018年/日本/カラー/シネスコ/120分
配給:スーパーサウルス
http://shokoumovie.com/
★2018年10月6日(土)UPLINK渋谷ほかにて全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 13:10| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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