監督:関根光才
製作:映画『太陽の塔』製作委員会
1970年3〜9月に開催された大阪万博(正式名称:日本万国博覧会)。アジアで初めて開催された国際博覧会として、「人類の進歩と調和」をテーマに、77カ国が参加。
「太陽の塔」は、そのシンボルとして、テーマプロデューサーを務めた芸術家・岡本太郎が製作したもの。高さ70メートルの太陽の塔は、万博終了後も万博記念公園に残され、2018年3月、48年ぶりに内部の「生命の樹」の一般公開が始まり、今また脚光を浴びている。
本作は、岡本太郎に影響を受けた人々をはじめ、様々な分野の29人へのインタビューから、岡本太郎と「太陽の塔」、そして日本人とアートの将来を検証するドキュメンタリー。
映画『焼肉ドラゴン』(監督:鄭義信、2018年)の中で、大阪万博見物に行ったお土産に太陽の塔のミニチュアを掲げる場面がありました。まさに、大阪万博の象徴。
万博が終わった後も、万博記念公園の正面にあって、モノレールの駅を降りて、大好きな国立民族学博物館に行くたびに、いつも太陽の塔を眺めながら高校3年生の時に行った万博を思い出していました。でも、実は万博に行った当時、太陽の塔はこんなに目立つ存在ではなかったのです。

(C)2018 映画「太陽の塔」製作委員会
建築家丹下健三氏が設計した中央広場の大屋根を突き破る感じで、まさにこの写真の岡本太郎のように、太陽の塔の先端が飛び出ていたのです。大屋根の下では、太陽の塔の胴体しか見えず、大屋根の上の先端は、かなり遠くからでないと見えなかったのです。
単独で太陽の塔だけが万博記念公園に残されたからこそ、象徴として長く愛されているのだと思います。
そして、太陽の塔が、縄文時代の土偶にインスピレーションを受けて作ったものだと知ったのは、今年の夏に東京国立博物館で開催された特別展「縄文―1万年の美の鼓動」(縄文展)でのことでした。万博の理念の「未来に向けて」というより、一万年も前の縄文の人々のおおらかで自由な発想にこそ、岡本太郎は人間の可能性を見出していたのだと感じます。
本作は、万博当時を知らない世代の関根光才監督が作ったもの。だからこそ、大阪万博を体験していない人にも、岡本太郎の思いや、太陽の塔が人々に与えてくれることが様々な角度から伝わってくるものになっているのだと思います。(咲)
2018年/日本/112分/DCP
配給:パルコ
公式サイト:http://taiyo-no-to-movie.jp/
★2018年9月29日(土) 渋谷・シネクイント、新宿シネマカリテ、シネ・リーブル梅田他全国公開