2018年09月18日
飢えたライオン
監督:緒方貴臣
脚本:緒方貴臣、池田芙樹
撮影:根岸憲一
音楽:田中マコト
出演:松林うらら(杉本瞳)、水石亜飛夢(藤川ヒロキ)、筒井真理子(杉本裕子)、菅井知美(木下美咲)、日高七海(尾田七海)
女子高生の瞳は、優しい彼氏や友だちグループとの学校生活を楽しんでいる。ある朝のホームルーム中、クラス担任が警察に連行された。未成年との淫行動画が出回ったと、またたくまに噂がひろまる。しかもその相手が瞳だというのだ。身に覚えのない瞳は、すぐに立ち消えになるだろうとほっておいたが、彼氏や妹からも疑われて愕然とする。ネットの噂はどこまでも拡がり、瞳は追い詰められて死を選んでしまう。
瞳が死んだことでネットでは瞳の虚像が形成され、報道はさらにエスカレートした。
緒方貴臣監督の作品では、若いシングルマザーのネグレクトを描いた『子宮に沈める』(2013)の衝撃を思い出します。あれから時間が経ちましたが、子どもを取り巻く環境は少しもよくなっていないのか、悲しいニュースが後を絶ちません。
これだけの情報社会なのに(だから?)、自分の好きなこと意外は無関心。強いものには抗えず(抗わず?)、たまったストレスを反撃しない弱いものにぶつける無慈悲。限りなく拡がっていくデマや言葉の暴力を新作は描いています。
子どものころは、テレビや新聞の報道を疑ったりしませんでした。友だちや学校の中での噂が、外にあっというまに流れていくこともなかったと思います。そんなネットワークがないかわり、思いやる想像力はありました。時間もゆっくりだったからでしょうか。
流れてくる報道やネットの噂を鵜呑みにしてはいけない、と最近は考えます。その量に溺れそうになります。便利だと取り入れたものが、逆に生活や人間を壊していくことがあります。怖くなるほどあります。
瞳にしても、一人でも丸ごと信じてくれる人がいたら、生きる支えになったでしょうに。映画を観て自分が誰かに重なったら、ちょっとだけ変える勇気を出してみませんか。(白)
2017年/日本/カラー/78分
配給:キャットパワー
(C)2017 The Hungry Lion.All Rights Reserved.
http://hungrylion.paranoidkitchen.com/
★2018年9月15日(土)ロードショー
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