2018年08月18日
追想 原題:On Chesil Beach
監督:ドミニク・クック
原作・脚本:イアン・マキューアン「初夜」
出演:シアーシャ・ローナン(『ブルックリン』『レディ・バード』)、ビリー・ハウル、アンヌ=マリー・ダフ、エイドリアン・スカーボロー、エミリー・ワトソン
1962年夏、ロンドン。結婚式を終えたフローレンスとエドワードの二人。新婚旅行でドーセット州のチェジル・ビーチへと向かう。バイオリニストのフローレンスは、実業家の父と過保護な母のもと裕福な家庭で育ったお嬢様。かたや、歴史学者をめざすエドワードは、教師の父と脳に損傷を負った母という質素な家庭で育った青年。偶然出会って恋に落ち、育ちの違いを越えて結婚にこぎつけた二人。チェジル・ビーチのホテルで幸せな初夜を迎えるはずだった・・・
新婚旅行に向かうフローレンスは濃いスカイブルーのドレス、ビリーは紺のスーツで白いシャツにはきちんとネクタイとカフスボタン。思えば、日本でも新婚旅行というと、きちんとしたドレスやスーツに帽子という時代がありました。もちろん、初体験は結婚までお預けでした。
1962年というとビートルズがデビューした年。西洋社会も性に対して自由な気運が広がる直前の保守的な時代。初めての夜を迎える二人の緊張感は、夕食の時のぎこちなさからも伝わってきます。おまけに、ロマンチックとは言いがたい殺風景なホテルの部屋。チェジル・ビーチは、リゾート地というより、特別環境保全地域(SSSI)に指定されている地で、化石が多く、野生生物にとって重要な場所。(“ チェジル” の由来は“ 砂利浜” を意味する古英語の単語。)ずいぶん地味な場所を新婚旅行に選んだものです。
映画の最後に、二人の人生のその後が明かされます。『追想』という邦題は、そこからつけられたイメージなのかもしれません。映画の原題『On Chesil Beach』や、原作の「初夜」が、やはりしっくりきます。
バイオリニストとして活躍し始めていたフローレンスは、仕事を失うことを恐れて、結婚したことを隠します。日本でも「結婚退職」が当然だった時代があったことを思い起こしました。半世紀の間に、時代はずいぶん変わったものです。でも、このチェジル・ビーチの初夜に起こったことは、いつの時代にもありえるのではと思いました。何が起こったか? ぜひ映画をご覧ください。(咲)
2017年/イギリス/英語/110分/カラー/5.1ch/スコープサイズ
配給:東北新社、STAR CHANNEL MOVIES
公式サイト:http://tsuisou.jp/
★2018年8月10日(金)TOHOシネマズ シャンテ ほか全国ロードショー
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