2018年07月29日
沖縄スパイ戦史
監督:三上智恵、大矢英代(おおやはなよ)
プロデューサー:橋本佳子、木下繁貴
撮影:平田守
音楽:勝井祐二
1944年晩夏。陸軍中野学校出身者42名が沖縄へ渡った。兵隊としてではなく名前を偽り身分を隠し、各地に潜伏した彼らは何をしたのか。“護郷隊”としてゲリラ部隊を組織し、少年たちを愛国の名のもとに送り出す。住民の相互監視を煽り、スパイリストを作って処刑する。マラリアの蔓延する離島へ強制的に疎開させるetc、etc。諜報・謀略を学んできたエリートたちが秘密裏に行ってきたことが少しずつ明るみに出る。
米軍上陸後、激烈な戦闘が始まり、1945年6月23日に牛島満司令官が降伏するまで、民間人を含む20万人あまりが死亡した。
『標的の村』『戦場ぬ止み』『標的の島 風かたか』の三上智恵監督と、琉球朝日放送「テロリストは僕だった〜沖縄基地建設反対に立ち上がった元米兵たち〜」を制作した大矢英代監督が、当時の住民の方々に丹念に取材したドキュメンタリー。
反対運動が継続しているにも関わらず、今また沖縄に基地が建設されようとしています。沖縄を防波堤に、内地の人が安穏と暮らしていていいのか、できることがないのかと問う日々。せめて発信のお手伝いをいたします。
沖縄戦やその後についての映画は何本も見てきましたが、陸軍中野学校出身者が絡んでいたのをこの映画で初めて知りました。軍隊内には当然いたのでしょうが、こんな形で関わっていたのだとは。
武器を持っている少年たちはまだ幼な顔です。軍隊は国民を守るのではなく、国民は軍隊の人的資源にすぎないのだと気づきます。
地形が変わるほど爆撃され、逃げ惑った挙句、友軍には玉砕を強いられた村の人たちの無念はいかばかりであったでしょう。インタビューに応じてくださる方々に「話してくださってありがとうございます」と伝えたいです。「何も知らなかった」ではなく、今からでも「知るために」映画館へ足を運んでいただければ、明日が少し変わるはず。(白)
戦後70年以上語られなかった陸軍中野学校の秘密戦。
波照間島の事例が語られる。米軍は上陸せず、空襲や戦闘による死者は一人もいないにもかかわらず、島民の3分の1にあたる500名が命を落としている。
青年指導員として波照間国民学校に赴任し、島民に慕われていた山下虎雄先生がある日突然「西表島に移住せよ」と皆に迫る。西表島の悪性マラリアの蔓延する地帯への移住を拒むこともできず、その結果、多くの島民が亡くなったのだ。石垣島でも同様の事例があったという。強制移住は島民の保護のためではなく、軍の都合によるものだ。
「住民が米軍に捕まればスパイになる」という敗残兵の猜疑心が、島民を殺したともいう。
沖縄で、日本軍に殺された島民が多いとは聞かされていたけれど、こんなにも具体的な事例を知り、「国」は決して国民を守ってくれないことをあらためて思った。それは、今も変わらないスタンスだろう。(咲)
★『沖縄スパイ戦史』舞台挨拶
7/28(土)+7/29(日)
両日ともに 10:20の回上映後、15:30の回上映後、18:00の回上映前
登壇 :三上智恵監督、大矢英代監督
7/30(月) 10:20の回上映後 トークイベント
ゲスト:森達也(映画監督・作家)、三上智恵監督、大矢英代監督
7/31(火) 10:20の回上映後 ティーチイン
ゲスト : 三上智恵監督、大矢英代監督
8/1(水) 10:20の回上映後 トークイベント
ゲスト :金平茂紀(ジャーナリスト)、三上智恵監督、大矢英代監督
8/2(木) 10:20の回上映後 ティーチイン
ゲスト :三上智恵監督、大矢英代監督
2018年/日本/カラー/114分
配給:東風
(C)2018『沖縄スパイ戦史』製作委員会
http://www.spy-senshi.com/
★2018年7月28日(土)東京・ポレポレ東中野ほか全国順次ロードショー
○2013年『標的の村』公開時に(暁)さんが三上監督にインタビューしています。
記事はこちら。
大矢監督のドキュメンタリーについてはご自身のブログで、こちら。
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