2018年06月17日
ゲッベルスと私(原題:A German Life)
監督:クリスティアン・クレーネス
オーラフ・S・ミュラー
ローラント・シュロットホーファー
フロリアン・バイゲンザマー
出演:ブルンヒルデ・ポムゼル
ブルンヒルデ・ポムゼルは1911年1月11日ベルリン生まれ。1942年から1945年までナチス・ドイツの国民啓蒙・宣伝大臣ゲッベルスの秘書として働く。1945年、第二次世界大戦終戦後、ソヴィエト軍に捕らえられ1950年までの5年間、強制収容所に抑留される。1950年に解放され、1971年の定年退職までドイツ公共放送連盟ARDで働く。この映像のブルンヒルデ・ポムゼルは103歳。69年の沈黙を破って30時間に及ぶインタビューに答えた。
深く刻まれた皺にこれまでの年月を思います。まるでファンタジー映画に出てくる老樹の精のようです。はっきりした口調で、「何も知らなかった。自分に罪はない」と繰り返し訴えます。全体主義の社会で良い職を得、有能で好ましい容姿(美声でもあったようです)の上司を疑わず、知ろうとせずに過ごしたのでしょう。知るとどうなるか予想がついたから、考えるのをやめたとしか思えません。
『ハンナ・アーレント』(2013年10月 岩波ホールにて上映)の中で、アイヒマンの裁判を傍聴したハンナが「凡庸な悪」と言ったのを思い出しました。悪は悪人が作り出すのではなく、思考停止の凡人が作るという意味です。
著書「イエルサレムのアイヒマン――悪の陳腐さについての報告」はこの映画の後増刷されたそうです。
ブルンヒルデ・ポムゼルは2017年1月27日、106歳で亡くなりました。この日は「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」だそうです。挿入されている多くのアーカイブ映像も貴重。(白)
2016年/オーストリア/カラー/シネスコ/113分
配給:サニーフィルム
(C)2016 BLACKBOX FILM & MEDIENPRODUKTION GMBH
https://www.sunny-film.com/a-german-life
★2018年6月16日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー
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