2018年05月13日

『29歳問題』  原題『29+1』(香港)

2018年5月19日(土)、ロードショー! YEBISU GARDEN CINEMA他.

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(c) 2017 China 3D Digital Entertainment Limited

監督・脚本 彭秀慧(キーレン・パン)
撮影ジェイソン・クワン
音楽アラン・ウォン、ジャネット・ユン
挿入歌:レスリー・チャン、レオン・ライ、ビヨンドほか
出演 
クリスティ役   周秀娜(クリッシー・チャウ)
ウォン・ティンロ 鄭欣宜(ジョイス・チェン) 
チョン・ホンミン  蔡瀚億(ベビージョン・チョイ)
ヨン・チーホウ   楊尚斌(ベン・ヨン)
エレイン   金燕玲 (エレイン・チン) 
家主   林海峰 (ジャン・ラム)
タクシー運転手  葛民輝 (エリック・コット)
レコード店店主 鄭丹瑞 (ローレンス・チェン)

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(c) 2017 China 3D Digital Entertainment Limited
 
1ヶ月後に30歳の誕生日を迎える女性の心の葛藤がテーマ。
1975年生まれのクリスティ(クリッシー・チャウ)は、おしゃれな一人暮らしを楽しんでいるように見えるけど、30歳の大台に乗ったら女は終わりと焦っていた。しかし、仕事は順調。突然の抜擢で責任ある仕事を任され、ストレスが増大する。長年付き合っていた彼とは、忙しさの中、歯車が噛み合わなくなってしまい別れてしまった。先行き不安な時に認知症の父親が急逝。更に会社を結局やめることに。そして、雨漏りのひどいアパートで文句を言ったら、突然アパートを追い出されるはめに。
さんざんな目にあったけど、大家の甥の友人であるティンロ(ジョイス・チェン)がパリ旅行で不在の間、彼女の家に1ヶ月住まわせてもらうことに。ティンロがパリに1ヶ月旅行する間「部屋代が旅行費の足しになれば」と貸してもらったのだ。彼女の部屋は、壁にエッフェル塔を形どりたくさんの写真を貼り、80年代のレコードがたくさんあった。レコード店に勤めるティンロが収集したものだった。この部屋で「自伝」と称された彼女の日記をみつけ読み始める。そして、ティンロが偶然、自分と同じ誕生日だとわかり、自分と彼女を重ね合わせていく。クリスティは短気で怒りんぼう。なんでもせかせかしないと気がすまない。ティンロはふんわかしたのんびり屋でマイペースな人柄。正反対な性格なのに、日記を読んで、彼女の思いに共鳴する。

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(c) 2017 China 3D Digital Entertainment Limited

監督のキーレン・パンは舞台女優で、脚本や演技指導までこなす。初脚本はパン・ホーチョン監督の『イサベラ』。
本作はもともとキーレン・パン監督が演じていた芝居。主人公をキーレン・パン監督自身が一人二役で演じていた一人芝居を自身の手により映画化したもの。映画版では2人の役者が演じた。時代は10年くらい前を設定。
クリスティを演じるのは、香港の若手人気No.1のクリッシー・チャウ。ティンロを演じるのは香港芸能界のサラブレッド、ジョイス・チェン(沈殿霞/リディア・サムと鄭少秋/アダム・チェンの娘)。舞台演劇的な作りと、映画だからこそできる映像のミックスを楽しめる。
去年(2017)3月に開催された「大阪アジアン映画祭」で観客賞を受賞。
2018年4月15日に行われた第37回香港電影金像獎で、最優秀新人監督賞を受賞。

1980年代から90年代の香港芸能界の出来事や、主人公のティンロがTVで放映されたレスリーの「日落巴黎(夕暮れのパリ?)」で夢見たパリへ行ったり、そして最後、エッフェル塔の下でクリスティとティンロが二人で歩いていくシーン(夢?)には、レスリー・チャンの「由零開始(0から始めよう)」がフルバージョンで流れる。また、亡くなった香港歌手へのオマージュがあったり(張国栄、陳百強、黄家駒の話題)と、香港芸能にハマっている人にとっては親しい話題が含まれていたのでシンパシーを感じると思います。地下鉄のシーンではBYONDの黄家駒が歌う「早班火車」が流れ、日本のTVのバラエティ番組内での事故で亡くなった彼をそっと偲びました。
友人の誕生日に送られた『花様年華』のポスターネタも伏線だったし、二人が知らぬ間に出会っていたというのがだんだんにわかってくるシーンの作りもうまいと思いました。
 レスリーの話題が多かったので、監督はレスリーのファンかと思ったのですが、大家さん(林海峰/ジャン・ラム)とタクシー運転手(葛民輝/エリック・コット)を演じていたラップコンビ軟硬天師のファンだそうです。エッフェル塔のシーンで「由零開始」がフルバージョンで流れるので、レスリーファンは感涙もの。また、監督は香港の映画界も、ミュージックシーンも一番輝いていた時代に育ったんだなと思います。 そういうところが香港芸能ファンには嬉しいところではありますが、30歳を目前にした女性の揺れる心というのは万国共通。それがうまく表現されていました。最近、日本でもTV(NHK「デイジー・ラック」)や映画(『見栄を張る』)で、30歳を目前にした女性たちの真情を描いた作品がありました(暁)。

5月11日に発行されたシネマジャーナル101号にキーレン・パン監督インタビュー記事が掲載されています。
またシネマジャーナルHPでもキーレン・パン監督インタビュー記事を見ることができます。
http://www.cinemajournal.net/special/2017/aichi/index03.html

●『29+1』キーレン・パン監督.jpg
キーレン・パン監督(大阪アジアン映画祭2017にて)
公式HP:29saimondai.com
2017年/香港/広東語/111分/字幕翻訳:鈴木真理子
配給 ザジフィルムズ、ポリゴンマジック
posted by akemi at 20:43| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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