2018年05月13日
海を駆ける
監督・脚本・編集:深田晃司(『淵に立つ』)
出演者:ディーン・フジオカ、太賀、阿部純子、アディパティ・ドルケン、セカール・サリ、鶴田真由
インドネシア、一番西の端の町バンダ・アチェ。
海から男がやってきて、波打ち際に倒れる。
その日、NPO法人で災害復興の仕事をしている貴子は、息子タカシの同級生クリスと、その幼馴染でジャーナリスト志望のイルマから取材を受けていた。身元不明の日本人らしき男が海辺で発見されたので、至急来て欲しいと連絡が入る。折りしも、日本からやって来る親戚のサチコは、息子のタカシたちに空港に迎えに行かせる。
貴子は、記憶を失っている男の身元捜しをする間、家で預ることになる。海辺で発見された男に、インドネシア語で海という意味の「ラウ」と名付ける。いつも静かに微笑んでいるラウ。イルマは、ラウが起こした不可思議なマジックのような現象を動画に撮り、スクープとして取り上げて貰おうとする・・・
2004年12月26日に起こったインド洋津波。アチェ州では17万3000人が犠牲になった。アチェ州では、30年にわたってインドネシア政府からの独立を目指して内戦状態が続いていたが、津波をきっかけに独立運動は終結。内戦と津波の二つの災いからの復興の道を歩んでいる。
深田監督は、2011年12月、京都大学とアチェのシアクアラ大学が共同で開催した津波と防災のシンポジウムの撮影を依頼され、バンダ・アチェを訪れる。インドネシア自体が始めての訪問だった。津波で家族が亡くなったのも神様が望んだことという運転手。日本の津波被災者とは違う捉え方に、価値観の違いをずっしり感じたという。帰路には、アチェで映画を撮りたいと思い始めていたところ、縁あってアチェで映画を撮ることになり、脚本を執筆。全編、アチェで撮影している。
ジャーナリスト志望の女性イルマは、元々裕福な家庭で育ったが、津波で家を流され、津波で足を悪くした父親と共に復興住宅で暮らしている。大学に行くのも諦め、自力でジャーナリストとなるべく頑張っているという設定。ラウという男の起こす摩訶不思議な現象を映像に捉えて、スクープとして発信しようとしたのに、まんまとプロのジャーナリストに横取りされてしまいます。イルマは、髪の毛もきっちり隠したムスリマ。幼馴染で大好きなクリスから告白されたのに、宗教の違いから振ったという過去がある。そのクリスは、日本から来たサチコに惚れて、タカシから日本語での殺し文句を教えてもらうのですが撃沈・・・ という場面も。
青春群像劇が繰り広げられる中、ディーン・フジオカが、言葉少ない謎の男を存在感たっぷりに演じている。
先日、深田監督のお話を伺う機会があり、その中で印象的だったのが、インドネシア特有のスタッフの話。撮影費用が膨れ上がったので、なんとか減らせないかと、目をつけたのが、rain stopper。ところが、インドネシア側からは、これは外せないと進言されたそうだ。確かに、雨が降りそうな空模様の時に、彼が祈祷すると撮影中に雨は降らなかったとか。
エンドロールに、ちゃんと二人、お名前が載っているのを確認! (咲)
2018年/日本・フランス・インドネシア/107分/5.1ch/ヨーロピアンビスタ/カラー/デジタル
配給:日活 東京テアトル
公式サイト:http://umikake.jp
★2018年5月26日(土)テアトル新宿、有楽町スバル座ほか全国ロードショー
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