監督・シナリオ・編集:アルフォーズ・タンジュール
シリアの悲劇は2011年に始まったわけではない。
1980年代にアサド体制に反対した多くの若者が当局に追われ、国を去らざるを得なかった。監督の個人的な物語が、他の4人の語り手の物語と重なり合う。くすんだ軍服に象徴される沈黙や恐怖、戦慄の記憶。赤い風船に託されたと自由と抵抗。何故シリア社会が爆発し、革命が始まったのか、その背景に迫る。
過去を語りながら、未来を見すえるシリア人の物語。(公式サイトより)
国を出ざるを得なかったシリアの知識人、短編小説家、画家、通訳者、映画監督を通じて、1980年代以来、アサド独裁政権下のシリアで何が起こったかを検証した作品。
美しい映像と裏腹に、シリアの人たちの抱えている憂いはあまりにも深いと胸が痛みました。
『ラッカは静かに虐殺されている』の感想にも書きましたが、昭和63年(1988年)にツアーで、ヨルダンから陸路でシリアに入ったときに、ヨルダンの人々が明るかったのに比べ、シリアの人々は全般に暗いという印象を受けました。当時は考えがおよびませんでしたが、国の支配者の違いが人々の暮らしにも影を落とすのだと思い当たりました。
さらに混迷を極めるシリア。人々が平穏に幸せな暮らしを営める日の来ることを切に願います。
山形国際ドキュメンタリー映画祭で最優秀賞を受賞した直後、10月13日に早稲田大学で開かれた上映会で監督のお話も伺いました。レポートを書きたいと思いながら、さぼってしまいました。この上映会後のトークで、聞き手を務められた岡崎弘樹氏(アラブ政治思想)が奔走して、公開が実現したとのことです。
岡崎氏より、「タルコフスキーに負けずとも劣らない素晴らしいものなので、是非多くの方に見ていただきたいと願っております」とのメッセージもいただいております。
ほんとに素晴らしい映像です。
また、字幕は山形で上映された版とは違い、アラビア語から訳し直した新字幕です。
ぜひ足をお運びください。(咲)
★シリア映画割¥900 (『ラッカは静かに虐殺されている』または『ラジオ・コバニ』の全国共通鑑賞券ご提示)
シネマジャーナル 山形国際ドキュメンタリー映画祭 報告
http://www.cinemajournal.net/special/2017/yamagata/index.html
アルフォーズ・タンジュール監督 (撮影:宮崎暁美)
2016年/カタール/108分/アラビア語/BD
配給:アップリンク
公式サイト:http://www.memory-khaki.com/
★2018年4月14日(土)〜20日(金)アップリンク渋谷
★2018年5月19日(土)〜 横浜シネマリン にて公開
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