2018年04月07日
港町
監督・制作・撮影・編集:想田和弘
岡山・牛窓。想田監督は前作『牡蠣工場』を撮りつつ、合間に小さな港町を歩き回った。
そこに暮らす人々と言葉を交わしながら日常を写していく。音楽も説明のナレーションも入らない淡々とした白黒の画面が続く。
想田監督7作目の観察映画。東野英治郎さん似の漁師ワイちゃん、世話好き・お喋り好きのクミさん始め、トラックで家々を回る魚屋さん、代々の墓を守るおばちゃんたちにカメラはついていきます。時折はさまれる監督からの質問に答える声を聞きながら、散歩している気分になります。クミさんの突然の告白のほかは、ほとんど静かな映画なのに、居眠りもせず空気にとっぷりとひたりました。知らない町なのに懐かしさを感じました。試写にいらした想田監督が挙げられた「観察映画の十戒」をせっせとメモしましたが、HPにちゃんとありました。こちらにも貼っておきます。(白)
1 被写体や題材に関するリサーチは行わない。
2 被写体との撮影内容に関する打ち合わせは、原則行わない。
3 台本は書かない。作品のテーマや落とし所も、撮影前やその最中に設定しない。行き当たりばったりでカメラを回し、予定調和を求めない。
4 機動性を高め臨機応変に状況に即応するため、カメラは原則僕が一人で回し、録音も自分で行う。
5 必要ないかも?と思っても、カメラはなるべく長時間、あらゆる場面で回す。
6 撮影は、「広く浅く」ではなく、「狭く深く」を心がける。「多角的な取材をしている」という幻想を演出するだけのアリバイ的な取材は慎む。
7 編集作業でも、予めテーマを設定しない。
8 ナレーション、説明テロップ、音楽を原則として使わない。それらの装置は、観客による能動的な観察の邪魔をしかねない。また、映像に対する解釈の幅を狭め、一義的で平坦にしてしまう嫌いがある。
9 観客が十分に映像や音を観察できるよう、カットは長めに編集し、余白を残す。その場に居合わせたかのような臨場感や、時間の流れを大切にする。
10 制作費は基本的に自社で出す。カネを出したら口も出したくなるのが人情だから、ヒモ付きの投資は一切受けない。作品の内容に干渉を受けない助成金を受けるのはアリ。
2017年/日本、アメリカ/カラー/シネスコ/122分
配給:東風、gnome
(c)Laboratory X, Inc.
http://minatomachi-film.com/
★2018年4月7日(土)よりシアター・イメージフォーラムにてロードショー、他全国順次公開
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