2018年04月01日

ラブレス(原題:Nelyubov)

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監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ
脚本:オレグ・ネギン、アンドレイ・ズビャギンツェフ
撮影:ミハイル・クリチマン
音楽:エフゲニー・ガルペリン
出演:マリヤーナ・スピヴァク(ジェーニャ)、アレクセイ・ロズィン(ボリス)、マトヴェイ・ノヴィコフ(アレクセイ)、マリーナ・バシリエバ(マーシャ)、アンドリス・ケイシス(アントン)

一流企業で働くボリスと美容サロンを経営するジェーニャは離婚協議中の夫婦。12歳の息子アレクセイがいるが、2人には新しいパートナーがすでにいて早く新生活を始めたい。その前にどちらが息子を引き取るかでもめている。2人の言い争いを毎日聞いているアレクセイは、自分が両親には必要のない子どもだとわかってしまう。いつもの時間に学校へと向かったアレクセイは、そのまま戻らなかった。

おざなりな食事を出して、息子の顔を見もせず、いつもいつも手元の携帯に眼を落としている母親。父親の若い恋人は妊娠していて、父親はそちらに入りびたり、めったに家に帰りません。目下の心配は厳格な原理主義者の上司のこと。離婚がばれるとクビになるので戦々恐々としています。2人とも自分の都合ばかりで、目の前のアレクセイの幸せなどツメの先ほども考えていません。アレクセイが可哀想で、行方不明になる前から泣けてしまいました。
失踪した子どもを捜す市民ボランティアチームがいるということは、それだけ多いということなのでしょうか? 寒々しい風景にアレクセイを呼ぶ声が響いても、応える声は期待できずさらに冷え冷えとします。
アンドレイ・ズビャギンツェフ監督の作品はこれまでも『父、帰る』(2004)『ヴェラの祈り』『エレナの惑い』(2014)『裁かれるは善人のみ』(20015)を観てきました。心にぐっさりと刺さり、観終わって身体が重くなるのですが、観ずにいられません。どの作品も世界的に高く評価されています。この作品は昨年の第70回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞しました。
日本の行方不明者は年間8万人という数字(平成21年度)をネットで見つけましたが、98%が1年以内に見つかっているようです。見つからない人はどこに?(白)


行方不明になった息子を探す過程で、ジェ―ニャが身籠ったとき母親から中絶するよう言われたけれど、その母親から離れたいために妊娠を口実に結婚したことが明かされます。愛のない結婚。そして、我が子にも愛をそそがず、自分の幸せだけを求める身勝手さ。
ウクライナ侵攻のニュ―スが流れる中、高級マンションのバルコニーで自転車を漕ぐジェ―ニャ。戦争や災害でつらい思いをしている人たちがいても、自分に関係がなければ無関心な社会の風潮。いえ、自分さえよければいいという私自身の姿を見せつけられた思いがしました。(咲)


2017年/ロシア、フランス、ドイツ、ベルギー/カラー/シネスコ/127分
配給:クロックワークス、アルバトロス・フィルム、STAR CHANNEL MOVIES
(c)2017 NON-STOP PRODUCTIONS - WHY NOT PRODUCTIONS
http://loveless-movie.jp/
★2018年4月7日(土)新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA他全国ロードショー
posted by shiraishi at 20:03| Comment(0) | ロシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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