2018年03月10日
北の桜守
監督:滝田洋二郎
脚本:那須真知子
撮影:浜田毅
音楽:小椋佳
舞台演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:吉永小百合(江蓮てつ)、堺雅人(修二郎)、篠原涼子(江蓮真理)、阿部寛(江連徳次郎)、佐藤浩市(菅原信治)、岸部一徳(山岡和夫)、高島礼子(島田光江)、永島敏行(三田医師)、安田顕(杉本)、野間口徹(木村学)、毎熊克哉(岩木)
1945年5月、南樺太に住む江蓮(えづれ)家の桜が開花した。夫・徳次郎が本土から持ってきた種を妻のてつが丹精し、見守ってきたのだ。近隣の友人達と喜ぶ一家だったが戦火はせまっていた。8月ソ連軍が侵攻して来たため、義勇軍に召集された徳次郎はてつと子どもたちを北海道へ逃がすことにし、戦地に赴く。再会を約して別れた母子は壮絶な逃避行の末、網走にたどり着く。戦後の生活は厳しいものだった。
1971年、アメリカに渡って成功した次男の修二郎は、結婚したばかりの妻と帰国する。札幌でアメリカ企業の支店を作り、ようやく網走のてつを訪ねていく。15年ぶりに再会したてつは年老いて、一人暮らしさせることはもうできなかった。札幌に連れ帰って同居を始めるが、互いを思うあまりにすれ違っていく。
『北の零年』(2005)『北のカナリアたち』(2012)に続く「北の三部作」の最終章。吉永小百合さん120本目の出演作となります。満州からの引揚げの苦労は義母からも聞いていました。幸運にも両親が揃っていたため、6歳を頭に乳飲み子までの4人の子供を連れ帰ることができたそうです。
樺太(サハリン)には40万人ほどの日本人が住んでいたそうで、終戦前後に続々と本土へと引揚げていきます。この映画の江蓮一家の味わう辛苦は史実によったものだそうで、多くの方々が同じような苦労をして引揚げ、戦後を生き抜いてこられたのでしょう。終戦後、樺太から北海道へ向かう3隻の引揚げ船が潜水艦の魚雷攻撃を受け、1700人もの犠牲者が出ていた史実を初めて知りました。
愛情溢れる、しかし凛として強い母親てつの30年近い月日を演じた小百合さん。1945年3月13日生れなのでもうすぐ73歳になりますが、サユリストのみならず多くの後進の俳優にとっても特別な女優であるようです。主役を張れる俳優さんが勢ぞろいした記念作となりました。『ケンとカズ』(2014)で強い印象を残した毎熊克哉さんが佐藤浩市さんの部下役で出演。ベテランの中でさぞ得がたい経験をしたことでしょう(良かったですね)。
物語の重要な転換となるシーンが舞台劇で表現されているのにのれるか否かが分かれ目になりそう。北の三部作にはどれも寒そうなシーンがありますが、この作品は特に身を切られるような寒さを感じました。主題歌作詞・作曲は小椋佳さん。(白)
2018年/日本/カラー/シネスコ/126分
配給:東映
(C)2018「北の桜守」製作委員会
http://www.kitanosakuramori.jp/
★2018年3月10日(土)ロードショー
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