監督:コーネル・ムンドルッツォ(『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲ラプソディ』)
出演:メラーブ・ニニッゼ、ギェルギ・ツセルハルミ、ゾンボル・ヤェーゲル、モーニカ・バルシャイ
シリアの少年アリアン・ダシュニは、父ムラッドと共に貨物列車でハンガリー国境近くにたどり着く。川を船で渡り国境を目指すが、国境警備隊のラズロに撃たれ、父ともはぐれてしまう。瀕死の状態で難民キャンプに運び込まれるアリアン。
医師シュテルンは、医療ミスで将来有望なアスリートを死なせてしまい、今は難民キャンプで働いている。遺族からの訴訟を取り下げさせる賠償金稼ぎに難民を違法に逃していた。 アリアンを担当したシュテルンは、彼が重力を操り浮遊できることを知り、これで金儲けできると難民キャンプから連れ出す。一方、国境警備員のラズロは違法に撃ってしまったアリアンを探しだし、シュテルンに違法な銃撃について口封じしようとする。そんな折、アリアンは見失った父の手がかりをつかみ、飛び出していく・・・
空中に浮遊する少年の物語はファンタジーでありながら、難民問題を背景にしていて、まさに現代社会を描いたものと感じました。
コーネル・ムンドルッツォ監督は、「本作は“alien(宇宙人、外国人、よそ者)"についてのアイディアを描いたもので、一体誰がよそ者なのかを問いかけたもの。”信用”や“奇跡”“周りとは違う”ということに対して新たな問題を提起するには、木星の遠く離れているイメージが適していると思った」と語っています。
私が印象に残ったのは、出身地を尋ねられたアリアンが、シリアのホムスで、自分の部屋もあったし、なんでも持っていたと語っていた場面。何不自由なく幸せに暮らしていても、いつ自分も難民になるかもしれないことを誰しもが思えば、他者への思いやりも自然に生まれるでしょう。
空から眺めたブダペストの町や鎖橋、オスマン帝国が遺したトルコ風呂(水を抜いた場面も!)など、ハンガリー映画ならではの場面も楽しみました。(咲)
『ジュピターズ・ムーン』 タイトルの由来:
木星(ジュピター)に67ある衛星の一つ「エウロパ」は、ガリレオ・ガリレイが発見したもので「ヨーロッパ」の語源となったラテン語「EUROPA」と同じ綴り。生命体が存在する可能性があり、人類や生命体の「新たな命の揺りかご」となり得るかもしれない衛星。
コーネル・ムンドルッツォ監督は、その「エウロパ」の名の下に、現在、そして近未来のヨーロッパ、ひいては世界の物語として観てもらうことに意義があるとして本作を『ジュピターズ・ムーン』と名付けたとのことです。
2017年/ハンガリー・ドイツ/128分/シネマスコープ /カラー/DCP/5.1ch/PG-12
配給:クロックワークス
公式サイト:http://jupitersmoon-movie.com/
★2018年1月27日(土)より新宿バルト9ほか全国公開
2018年01月21日
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