監督:パブロ・ラライン
出演:ルイス・ニェッコ、メルセデス・モラーン、ガエル・ガルシア・ベルナル
1971年にノーベル文学賞を受賞したチリの国民的詩人パブロ・ネルーダ。
本作は、1948年、ビデラ政権によってチリで共産党が非合法とされ、共産党員だったネルーダが国外逃亡を余儀なくされた時代を描いた物語。
第二次世界大戦終結から3年。上院議員のネルーダが、共産党を裏切った政府を批判したことから、ビデラ大統領は警察官ペルショノーに、ネルーダの逮捕を命じる。ネルーダは妻で画家のアルゼンチン女性デリア・デル・カリルと共に亡命を試みるが失敗し、国内で身を潜める。追われる中で、代表作となる詩集「大いなる歌」を綴る。欧州では、パブロ・ピカソ率いるアーティストたちが詩人ネルーダの自由を訴えていた。
逃亡生活中にもネルーダは酒場に繰り出し、追っ手が近づくと姿をくらましていた。
いよいよ国を出る手はずが整い、ネルーダはチリ南部の山奥をマプチェ族に助けられながら馬で進む・・・
追う側の警察官ペルショノーが、詩人としてのネルーダに徐々に惹かれていく姿や、追いかける中で亡くなったペルショノーを手厚く葬るネルーダに、二人の不思議な関係を見て取れました。圧倒的なチリの大自然にも目を奪われました。
ネルーダの存在感を体現したチリの人気コメディアン俳優ルイス・ニェッコもなかなかなのですが、なんといっても、徐々にネルーダに傾倒していく警察官ペルショノーの思いを静かに演じたガエル・ガルシア・ベルナルが光ります。
冒頭、男ばかりの集会でネルーダがアラビアのロレンスに扮して、詩について熱く語る場面。立派な部屋の壁際に男性用便器が並んでいて、酒に酔った男たちが時折、用を足していて、この部屋って一体???? 宴会場なのか大きな立派なトイレなのかと。
その後は、警察官役ガエル・ガルシア・ベルナルの心地よい語りで物語は進むのですが、最初に観た光景の不思議さがずっと後を引きました。
ネルーダは、1934年に外交官として赴任したスペインで内戦を目の当たりにしています。友人となった詩人ガルシア・ロルカがフランコ派のファシストに暗殺されたことが、その後の共産党への入党に繋がったようです。
『エンドレス・ポエトリー』が11月18日に公開されるアレハンドロ・ホドロフスキー監督もチリの出身。やはりスペインの詩人ガルシア・ロルカに影響を受けたそうで、ロルカが海を越えて多くの人に愛されたのを感じます。(咲)
2016年/チリ・アルゼンチン・フランス・スペイン/108分/カラー/シネマスコープ/5.1ch
配給:東北新社 / STAR CHANNEL MOVIES
後援:チリ大使館 / セルバンテス文化センター東京
公式サイト:http://www.neruda-movie.jp/
★2017年11月11日(土)より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー